遠くに力強い足音が聞こえる。
「……政宗様」
小十郎は先を歩く政宗を呼んだ。
政宗は一度肩をそびやかし、肩越しに小十郎を見た。
「解ってるぜ小十郎。下がってな」
すばらしい勢いで近づいてくる足音。
今日も男装束の幸村の姿が、角から現れ、そして政宗を見つけて、体全体で笑った。
髪が夕暮れの日差しをを弾いて、磨いた銅色に肩先を流れる。
駆け寄りながら両腕があげられる。
「O-Key!come on!」
「政宗殿ぉぉぉぉぉっ!某やりましたぞぉぉっ!」
応えて広げられた政宗の腕の中に飛び込む赤い姿。
政宗の踏みしめた足がずっ、と僅かに後退する。
全力疾走の勢いでぶつかっているのだから当然だが。
また、廊下が傷む。
幸村が来て二年と少し、彼女が行く場所は順調にすり減り続けている。
しかし、熱いだけでなくここまではしゃいだ幸村も珍しい。
控えたまま、小十郎は二人の様子を窺った。
「……政宗様」
小十郎は先を歩く政宗を呼んだ。
政宗は一度肩をそびやかし、肩越しに小十郎を見た。
「解ってるぜ小十郎。下がってな」
すばらしい勢いで近づいてくる足音。
今日も男装束の幸村の姿が、角から現れ、そして政宗を見つけて、体全体で笑った。
髪が夕暮れの日差しをを弾いて、磨いた銅色に肩先を流れる。
駆け寄りながら両腕があげられる。
「O-Key!come on!」
「政宗殿ぉぉぉぉぉっ!某やりましたぞぉぉっ!」
応えて広げられた政宗の腕の中に飛び込む赤い姿。
政宗の踏みしめた足がずっ、と僅かに後退する。
全力疾走の勢いでぶつかっているのだから当然だが。
また、廊下が傷む。
幸村が来て二年と少し、彼女が行く場所は順調にすり減り続けている。
しかし、熱いだけでなくここまではしゃいだ幸村も珍しい。
控えたまま、小十郎は二人の様子を窺った。
「某、懐妊にござる!月満ちたあかつきには、良き子をお目にかけましょうぞ!」
刹那小十郎は息を止めた。
大きく見張られる政宗の目。
顔をくしゃくしゃにして笑っている幸村。
「Good!マジだな!」
「いえすにござる!」
政宗も大きく笑い、幸村を抱えたまま、振り回すように二三度回った。
「政宗様!妊婦を振り回すのはよくないと」
思わず口を挟んだが、どちらも聞いちゃいない。
政宗は幸村の両頬に代わる代わる掠めるような口づけをし、
幸村は破廉恥でござるよー、と言いながらも笑っている。
大きく見張られる政宗の目。
顔をくしゃくしゃにして笑っている幸村。
「Good!マジだな!」
「いえすにござる!」
政宗も大きく笑い、幸村を抱えたまま、振り回すように二三度回った。
「政宗様!妊婦を振り回すのはよくないと」
思わず口を挟んだが、どちらも聞いちゃいない。
政宗は幸村の両頬に代わる代わる掠めるような口づけをし、
幸村は破廉恥でござるよー、と言いながらも笑っている。
二人はいつでも仲の良い夫婦だったが、
臆面がなくなったのはひとえに政宗の努力のたまものだった。
人前で手を繋いでは破廉恥、
廊下で出会い、頬に口づけられれば拳が出てそのまま大乱闘、その際起こったボヤは数知れない。
襖などは取り替えたが、柱には修復しきれないほどの傷跡焦げ痕が山ほど残っている。
臆面がなくなったのはひとえに政宗の努力のたまものだった。
人前で手を繋いでは破廉恥、
廊下で出会い、頬に口づけられれば拳が出てそのまま大乱闘、その際起こったボヤは数知れない。
襖などは取り替えたが、柱には修復しきれないほどの傷跡焦げ痕が山ほど残っている。
床でボヤが起こったことがないからには、おそらく”人前で”がいけなかったのだろう。
つまり政宗が人前で腰に腕を回したり、手を繋いだり、頬に口づけなければ済んでいた問題なのだ。
ついでに言えばその”人前”というのは大概政宗の傍らに控える小十郎のことを差す。
つまり政宗が人前で腰に腕を回したり、手を繋いだり、頬に口づけなければ済んでいた問題なのだ。
ついでに言えばその”人前”というのは大概政宗の傍らに控える小十郎のことを差す。
それがいつの間にか、幸村は頬に口づけされても飛び退くだけになり、
飛び退かなくなり、硬直しながらも無抵抗になり、
笑って受け止めるようになり、嬉しい時は飛びついてくるようになった。
時折ぶんぶん振り回される尻尾がついている気がする。
飛び退かなくなり、硬直しながらも無抵抗になり、
笑って受け止めるようになり、嬉しい時は飛びついてくるようになった。
時折ぶんぶん振り回される尻尾がついている気がする。