佐助が小言とともに渡してきた書状には、政宗の花押が入っていた。
「ん? どしたの?」
決闘の申し込み? と佐助が小首を傾げて尋ねてくる。
道化のような仕草だが、瞳には忍びらしい抜け目のなさが光っている。
「奥州にて、蛍が光るようになったそうだ」
「ああもうそんな時期だねぇ。――で?」
「共に見ようではないか、と誘ってこられておる」
「……蛍、ねぇ。何かの隠語? それとも二人だけの暗号?」
蛍、と言われても幸村には風月を愛でる趣味はない。ならば何かを例えた言葉か。
儚げで移ろいやすく、死を喚起させる。また、恋に身を焦がす例えにも使われる。
「蛍を愛でる……死を、意味するような、そうでないような」
幸村の鼻が土の臭いを嗅いだ。貧しい土が湿ったような、あまりいい臭いではない。
政宗の書状は、やや派手な装いをすることが多い。焚き染められる香も高そうなものばかりだ。
例え香が手元になくても、土の臭いがつくような場所に紙を置くとは考えにくい。
「単なるお誘い?」
「……おそらく。俺はお館様に伺いを立ててから奥州に出向く。佐助、留守は任せたぞ」
「あいよ。がんばってねー」
政宗が、逢いたいと言って来たのだ。一目会えるというのなら、決闘でも、暗殺でも構わなかった。
馬を預け、井戸に向かう。水を汲んで頭から被った。ふ、と緑の光が目の前を横切った。
蛍か。辺りを見回すが、淡い光は見られない。
「幻か……」
井戸辺に蛍が出るはずがない。
気持ちはすでに奥州の夜に飛んでいるのだろうか。呆れたものだと苦笑しながら幸村は髪から落ちる雫を絞った。
「ん? どしたの?」
決闘の申し込み? と佐助が小首を傾げて尋ねてくる。
道化のような仕草だが、瞳には忍びらしい抜け目のなさが光っている。
「奥州にて、蛍が光るようになったそうだ」
「ああもうそんな時期だねぇ。――で?」
「共に見ようではないか、と誘ってこられておる」
「……蛍、ねぇ。何かの隠語? それとも二人だけの暗号?」
蛍、と言われても幸村には風月を愛でる趣味はない。ならば何かを例えた言葉か。
儚げで移ろいやすく、死を喚起させる。また、恋に身を焦がす例えにも使われる。
「蛍を愛でる……死を、意味するような、そうでないような」
幸村の鼻が土の臭いを嗅いだ。貧しい土が湿ったような、あまりいい臭いではない。
政宗の書状は、やや派手な装いをすることが多い。焚き染められる香も高そうなものばかりだ。
例え香が手元になくても、土の臭いがつくような場所に紙を置くとは考えにくい。
「単なるお誘い?」
「……おそらく。俺はお館様に伺いを立ててから奥州に出向く。佐助、留守は任せたぞ」
「あいよ。がんばってねー」
政宗が、逢いたいと言って来たのだ。一目会えるというのなら、決闘でも、暗殺でも構わなかった。
馬を預け、井戸に向かう。水を汲んで頭から被った。ふ、と緑の光が目の前を横切った。
蛍か。辺りを見回すが、淡い光は見られない。
「幻か……」
井戸辺に蛍が出るはずがない。
気持ちはすでに奥州の夜に飛んでいるのだろうか。呆れたものだと苦笑しながら幸村は髪から落ちる雫を絞った。




