更に先、独眼竜の姿は馬上にある。
そこまでは予想通り、だが政宗は赤い侍を腕に抱き留めていた。
「おお!長曾我部殿にござるな!先日は失礼いたした!」
赤い侍独眼竜の腕の中からがはつらつと叫び、
軽く地上に降り立ってこちらに駆け寄り、きちりと膝をつく。
「最北端の村人、皆長曾我部の方々に感謝しており申した。
こちらからも、改めてお礼申し上げる!お預かりした旗も繕いが済みました故、
すぐにお返し致そう」
真っ直ぐな物言いに、元親はにやりと笑った。
イキがいいヤツは好きだ。
海風で傷みが出始めた応援団旗を修繕してくれたというのだ、
気性も良いヤツに違いない。
そしていくらか遅れて片倉を初めとする、
独眼竜の子分が出迎えに到着しはじめる。
数歩控えた場所にいるのは礼儀か、見物気分か。
「こっちも世話になるしな、いいってことよ。あんた、名は?」
「む?」
赤い侍は不思議そうに眉根を寄せた。
「すぐ気絶しちまったからな。忘れてんだろ」
独眼竜がかるく馬を寄せてくる。
その言葉を聞けば、この男はあの雪に埋もれた村に来ていたらしい。
そして先行して戻った、と言うことか。
きっと、修繕のために先行してくれたのだろう。
応援団旗を物質に取られた恨みはあっさり消えた。
「了解いたした。某は真田幸村、先の年にこちらへ輿入れした侍にござる。
政宗殿のご友人の来訪とあらば全力で歓迎いたす!」
なるほど、それで以前ここに来た時には見なかったのか。元親は一人納得する。
さすが奥州筆頭、イイ子分を手に入れた。
「……いや、輿入れだぁ?」
「左様にござる!」
赤い侍――真田幸村は歯切れよく応えた。
「馬鹿にされてんのかぁ?……おい、あんた男だろが」
すごむと幸村はきょとんと目を見張り、政宗はげらげら笑い倒した。
「来な、honey」
ハニィ?
元親は海を行き来する男、日常的な南蛮語なら聞き取りに不自由はしない。
「は!」
幸村は政宗の指し示した馬にまたがり、政宗の元へ戻る。
その、手慣れた一連の動作。
「どう見ても立派な若武者だろが!」
「日頃の修練のたまものにござるが、そう言われると照れまする」
幸村は面はゆげに髪をかく。その額に巻かれた長い鉢巻きを、
政宗は気障な仕草で手に取った。
「節穴だな、元親。そのオシャレ眼帯外した方がいいぜぇ?
幸村はwildでcuteなオレの正室。そしてアンタを蹴り一発で沈めた、
日本一の兵だ」
気が遠くなりそうな元親に向け、政宗殿も言うまで気づかなかったのでござるよー、
似たもの同士にござるな、と慰めとも感想ともつかないことを言っていた。
「いや、いやいやいやいやあのな、野性的の一言で済まされンのかコレが!?」
「幸村はあの甲斐の虎の魂を受け継ぐ虎の若子、とまで呼ばれたんだぜ。何も間違っちゃいねえだろ?」
にやりと笑い、政宗は手にした鉢巻きを離した。
ふわりと風に乗って赤く長くたなびく。
「いや、某は御館様の足元にも遠く及ばぬ未熟者にござるよ」
政宗は傍らの幸村に愛しげな一瞥をくれてからこちらに向き直った。
「なあ、元痴漢?」
「ちか……は、はれんちなっ」
冗談そのものの口調に赤い武者が凄まじく反応する。
「誰が元痴漢だふざけてんじゃねぇ!」
元親は思いきり見得を切る。
そこまでは予想通り、だが政宗は赤い侍を腕に抱き留めていた。
「おお!長曾我部殿にござるな!先日は失礼いたした!」
赤い侍独眼竜の腕の中からがはつらつと叫び、
軽く地上に降り立ってこちらに駆け寄り、きちりと膝をつく。
「最北端の村人、皆長曾我部の方々に感謝しており申した。
こちらからも、改めてお礼申し上げる!お預かりした旗も繕いが済みました故、
すぐにお返し致そう」
真っ直ぐな物言いに、元親はにやりと笑った。
イキがいいヤツは好きだ。
海風で傷みが出始めた応援団旗を修繕してくれたというのだ、
気性も良いヤツに違いない。
そしていくらか遅れて片倉を初めとする、
独眼竜の子分が出迎えに到着しはじめる。
数歩控えた場所にいるのは礼儀か、見物気分か。
「こっちも世話になるしな、いいってことよ。あんた、名は?」
「む?」
赤い侍は不思議そうに眉根を寄せた。
「すぐ気絶しちまったからな。忘れてんだろ」
独眼竜がかるく馬を寄せてくる。
その言葉を聞けば、この男はあの雪に埋もれた村に来ていたらしい。
そして先行して戻った、と言うことか。
きっと、修繕のために先行してくれたのだろう。
応援団旗を物質に取られた恨みはあっさり消えた。
「了解いたした。某は真田幸村、先の年にこちらへ輿入れした侍にござる。
政宗殿のご友人の来訪とあらば全力で歓迎いたす!」
なるほど、それで以前ここに来た時には見なかったのか。元親は一人納得する。
さすが奥州筆頭、イイ子分を手に入れた。
「……いや、輿入れだぁ?」
「左様にござる!」
赤い侍――真田幸村は歯切れよく応えた。
「馬鹿にされてんのかぁ?……おい、あんた男だろが」
すごむと幸村はきょとんと目を見張り、政宗はげらげら笑い倒した。
「来な、honey」
ハニィ?
元親は海を行き来する男、日常的な南蛮語なら聞き取りに不自由はしない。
「は!」
幸村は政宗の指し示した馬にまたがり、政宗の元へ戻る。
その、手慣れた一連の動作。
「どう見ても立派な若武者だろが!」
「日頃の修練のたまものにござるが、そう言われると照れまする」
幸村は面はゆげに髪をかく。その額に巻かれた長い鉢巻きを、
政宗は気障な仕草で手に取った。
「節穴だな、元親。そのオシャレ眼帯外した方がいいぜぇ?
幸村はwildでcuteなオレの正室。そしてアンタを蹴り一発で沈めた、
日本一の兵だ」
気が遠くなりそうな元親に向け、政宗殿も言うまで気づかなかったのでござるよー、
似たもの同士にござるな、と慰めとも感想ともつかないことを言っていた。
「いや、いやいやいやいやあのな、野性的の一言で済まされンのかコレが!?」
「幸村はあの甲斐の虎の魂を受け継ぐ虎の若子、とまで呼ばれたんだぜ。何も間違っちゃいねえだろ?」
にやりと笑い、政宗は手にした鉢巻きを離した。
ふわりと風に乗って赤く長くたなびく。
「いや、某は御館様の足元にも遠く及ばぬ未熟者にござるよ」
政宗は傍らの幸村に愛しげな一瞥をくれてからこちらに向き直った。
「なあ、元痴漢?」
「ちか……は、はれんちなっ」
冗談そのものの口調に赤い武者が凄まじく反応する。
「誰が元痴漢だふざけてんじゃねぇ!」
元親は思いきり見得を切る。
「鬼ヶ島の鬼、そして元・姫若子てぇのは俺様の事よ!長曾我部元親よ!」
冬風に乗り、かすかにアニキィィと声援が届く。
そこに姫も堪らなかったッスーとか、アニキはどんな格好でも俺たちのアニキだぜーとかいう
歓声もちらほら混じる。それでこそ西海の鬼の子分どもよ。
「アンタのとこの部下はそれで良いのか」
「なんと、姫君でござったか!とても女性には見えませぬな!」
暫し呆然とした後、素直な驚きを滲ませた幸村が言う。
南蛮の海賊じみたこの格好、田舎もんには男装か女装かも解らないのだろう。
「はっは!男だ男!俺は子供の頃、そりゃ信じられないくらい可愛かったからな。
姫生活を堪能していただけってことよ!
ま、言っちゃ何だが、そっちも到底女にゃ見えねぇな」
「左様にござるか」
さっぱり堪える様子もなく、幸村は頷いた。
「てめえ、人の女捕まえてさっきからなあ……」
代わりに政宗が切れた。刀に伸びる手を、背後の誰かが押さえる。家臣か。
そこに姫も堪らなかったッスーとか、アニキはどんな格好でも俺たちのアニキだぜーとかいう
歓声もちらほら混じる。それでこそ西海の鬼の子分どもよ。
「アンタのとこの部下はそれで良いのか」
「なんと、姫君でござったか!とても女性には見えませぬな!」
暫し呆然とした後、素直な驚きを滲ませた幸村が言う。
南蛮の海賊じみたこの格好、田舎もんには男装か女装かも解らないのだろう。
「はっは!男だ男!俺は子供の頃、そりゃ信じられないくらい可愛かったからな。
姫生活を堪能していただけってことよ!
ま、言っちゃ何だが、そっちも到底女にゃ見えねぇな」
「左様にござるか」
さっぱり堪える様子もなく、幸村は頷いた。
「てめえ、人の女捕まえてさっきからなあ……」
代わりに政宗が切れた。刀に伸びる手を、背後の誰かが押さえる。家臣か。




