「佐助ぇ!佐助はおらぬか!!」
ほぼ毎日のように繰り返される、幸村の佐助呼びは、今や一種の名物となっていた。
兵士に今日も精が出ますねなどと言われ、おう。と実に男らしい返事をするのも、定番の一つである。
兵士に今日も精が出ますねなどと言われ、おう。と実に男らしい返事をするのも、定番の一つである。
「はいはーい、姫様呼びましたー?」
そして呼べば必ず、佐助がどこからともなく現れるのも然りであった。
「む、姫様はよせと申したはずだ」
「でもあんた姫様でしょうが」
「お館様まより戴いた、幸村という名がある!」
「なんだって大将も、大事な姫様に男名をわざわざあげるかなあ」
「佐助!お館様の命名を愚弄するか!」
「してないしてない。してないからちょっと槍振り回さないでよ危ないから!」
「でもあんた姫様でしょうが」
「お館様まより戴いた、幸村という名がある!」
「なんだって大将も、大事な姫様に男名をわざわざあげるかなあ」
「佐助!お館様の命名を愚弄するか!」
「してないしてない。してないからちょっと槍振り回さないでよ危ないから!」
二槍を軽々と振り回す、恐るべき姫様の攻撃をかいくぐり、どうにか弁解をしてみる。
ならばよいのだが、と意外とあっさり矛先を引っ込めてくれたのに、ほっと安堵の息を吐く。
正直、幸村の攻撃を食らって、五体満足でいられる自信はない。
ならばよいのだが、と意外とあっさり矛先を引っ込めてくれたのに、ほっと安堵の息を吐く。
正直、幸村の攻撃を食らって、五体満足でいられる自信はない。
「まあ、呼び方はまた追々考えるとして、用件はなんです?」
呼ばれたからには、何かしら用があるのだろう。
でなければ給金を貰っている意味がない。たとえそれが雀の涙ほどであったとしてもだ。
呼ばれたからには、何かしら用があるのだろう。
でなければ給金を貰っている意味がない。たとえそれが雀の涙ほどであったとしてもだ。
「ああ。いや、文を戴いたのだがな、書いてある意味が難解で分からんのだ」
そのくらいのことで、屋敷中に響き渡る声で呼ばんでくださいとは思ったが、
懸命にも思うだけにとどめて、その文を受け取った。
そのくらいのことで、屋敷中に響き渡る声で呼ばんでくださいとは思ったが、
懸命にも思うだけにとどめて、その文を受け取った。
簡単に読み飛ばしていた佐助の表情がどんどんと険しくなるのを見て、幸村は思わず首を傾げる。
「どうした佐助。それほどまでに悪いことが書いてあるのか?」
「……あんた、本当に意味が分からないの……?」
地を這うような低音に不安を覚えつつ、ああ。と一つ返事をした。
「どうした佐助。それほどまでに悪いことが書いてあるのか?」
「……あんた、本当に意味が分からないの……?」
地を這うような低音に不安を覚えつつ、ああ。と一つ返事をした。
何かがぷちりと切れたような音がした。
「これ、求婚の文でしょうが!あんたなんで分からないのーっ!!」
先刻、幸村が佐助を呼んだよりも、遥かに大きな怒号が屋敷にこだました。
求婚、という単語を聞いた幸村は、たっぷり数十秒固まってから、
破廉恥ぃいい!と叫びながらどこかへ行ってしまった。
破廉恥ぃいい!と叫びながらどこかへ行ってしまった。
「……求婚の文で破廉恥って言ってるようじゃまだまだかなあ」
適齢期に差し掛かって久しい主を思わず見送ってしまい、ため息を吐きながら文を焚き火にくべた。
芋が焼きあがったら、逃げた幸村と共に食べよう。
そんなことを思いながら、火の番を任せて、逃亡した主を探しに向かった。
適齢期に差し掛かって久しい主を思わず見送ってしまい、ため息を吐きながら文を焚き火にくべた。
芋が焼きあがったら、逃げた幸村と共に食べよう。
そんなことを思いながら、火の番を任せて、逃亡した主を探しに向かった。
文は、幸村と同じくらいの「姫君」がいるという旧家からであった。




