皆、死ぬな。オレに率いられ天下を取る道筋以外で倒れるな。
虫けらのように、制圧されるなよ。
そのためならこのオレの魂一つ、簡単に売り飛ばしてやる。
「オレの部下を、助けてやってくれ。オレの命は取って構わない。
だが、オレに従った者達だけは……大人しくするよう言い含める。だから、助けてやってくれ」
沈黙が下りた。
「まさか、誰一人生き残っちゃ、いないのか」
どれだけの間、拷問が続いていたかわからない。
だが、それほど長い時でもなかったと思う。
それでも、やはり首斬られていたのか。戦場に来ていた者は仕方がない。首を持って帰れば手柄だ。
だが、領に残った者、皆首斬られ見せしめに並べられているのか。
だから余計に皆が反抗しているのか、そうなのか?
「部下とは、誰のことだ」
ゆっくりと信玄が尋ねる。
「誰でも構わない、生き残っている者がいるなら、皆だ!誰も……いないなら、」
覚悟ならしていた。期待をすることは辛さを増すことだ、何も望まないで堪えていた。
だが突きつけられればこれほど重い。
「いや。生きておる者の数が多すぎる。例えばこの邸に捕らえておるは片倉小十郎、縁深い者の名だな?」
呼吸が止まった。吸い込めない息の代わりに吐き出すと音になった。
「……小十郎?」
一番望みをかけていない男の名だった。
「うむ。霧の中よく伊達軍を纏め、馬止めの柵の中に陣を下げていた。
ぬしが倒れた後には節度を保ったまま矛を収めた。
残党狩りをせずに済んだはその者の功績よ。……よき家臣と見たが」
重い、強い声が脳裏を滑る。生きていたのか。小十郎……
「生かしはするが、再び傍らに戻しはせぬ。知勇に優れた男と見た、ならば儂の直属となって貰う」
無意識に頷いた。生きているならいい。認めて貰え、この甲斐の虎に。
オレはもう何も残っちゃいないから、だからお前は、
虫けらのように、制圧されるなよ。
そのためならこのオレの魂一つ、簡単に売り飛ばしてやる。
「オレの部下を、助けてやってくれ。オレの命は取って構わない。
だが、オレに従った者達だけは……大人しくするよう言い含める。だから、助けてやってくれ」
沈黙が下りた。
「まさか、誰一人生き残っちゃ、いないのか」
どれだけの間、拷問が続いていたかわからない。
だが、それほど長い時でもなかったと思う。
それでも、やはり首斬られていたのか。戦場に来ていた者は仕方がない。首を持って帰れば手柄だ。
だが、領に残った者、皆首斬られ見せしめに並べられているのか。
だから余計に皆が反抗しているのか、そうなのか?
「部下とは、誰のことだ」
ゆっくりと信玄が尋ねる。
「誰でも構わない、生き残っている者がいるなら、皆だ!誰も……いないなら、」
覚悟ならしていた。期待をすることは辛さを増すことだ、何も望まないで堪えていた。
だが突きつけられればこれほど重い。
「いや。生きておる者の数が多すぎる。例えばこの邸に捕らえておるは片倉小十郎、縁深い者の名だな?」
呼吸が止まった。吸い込めない息の代わりに吐き出すと音になった。
「……小十郎?」
一番望みをかけていない男の名だった。
「うむ。霧の中よく伊達軍を纏め、馬止めの柵の中に陣を下げていた。
ぬしが倒れた後には節度を保ったまま矛を収めた。
残党狩りをせずに済んだはその者の功績よ。……よき家臣と見たが」
重い、強い声が脳裏を滑る。生きていたのか。小十郎……
「生かしはするが、再び傍らに戻しはせぬ。知勇に優れた男と見た、ならば儂の直属となって貰う」
無意識に頷いた。生きているならいい。認めて貰え、この甲斐の虎に。
オレはもう何も残っちゃいないから、だからお前は、
生きろ。小十郎。
「代わりに政宗よ、純潔を捨て、儂に仕えい!」
上田城の虜38
上田城の虜38




