「──オメェら、そのへんにしとけ」
「こ、小十郎様…」
扉を開けて入ってきた小十郎に、部下達は恐れ戦く。
「確かにオメェらの言う事にも、一理ある。だがな…こき下ろしは、せ
めて本人のいねぇ所でしろ」
「え…?あっ!」
「や、ヤベェ…」
小十郎のやや後ろで、表情を曇らせている元親に気付いた彼らは、途端
にバツの悪そうな顔をした。
彼らの心情を理解した元親は、意識して笑顔を作ると、努めてあっけら
かんと返す。
「心配しなくても、告げ口なんてしねぇよ。それに…俺がデカくてみ
っともねぇのは、ホントの事だから」
しかし、ほんの僅かに強張った元親の口角に、小十郎だけは気付いていた。
すっかり萎縮してしまった彼らの前を通り過ぎる元親を、小十郎はそのま
ま追いかけたのである。
「こ、小十郎様…」
扉を開けて入ってきた小十郎に、部下達は恐れ戦く。
「確かにオメェらの言う事にも、一理ある。だがな…こき下ろしは、せ
めて本人のいねぇ所でしろ」
「え…?あっ!」
「や、ヤベェ…」
小十郎のやや後ろで、表情を曇らせている元親に気付いた彼らは、途端
にバツの悪そうな顔をした。
彼らの心情を理解した元親は、意識して笑顔を作ると、努めてあっけら
かんと返す。
「心配しなくても、告げ口なんてしねぇよ。それに…俺がデカくてみ
っともねぇのは、ホントの事だから」
しかし、ほんの僅かに強張った元親の口角に、小十郎だけは気付いていた。
すっかり萎縮してしまった彼らの前を通り過ぎる元親を、小十郎はそのま
ま追いかけたのである。
「何でついてくんだよ」
「…勘違いすんな、ブス。この先は俺の畑があるからだ」
「……そーだったな」
追いつかれまい、と足を急がせていた元親だったが、小十郎の返事を聞い
て、急速に歩調を緩めた。
いつもは、喧しいくらいに威勢の良い元親が、元気をなくしている様子
に、小十郎は、突如胸の内に沸き起こったモヤモヤを払うように、つっけ
んどんな態度を崩さず、揶揄を飛ばした。
「ブスの分際で、落ち込むな。ただでさえブスな顔が、益々ブスになる」
「な、何だとぉ!?」
「そうだ、そうやって喚いてろ。お前が静かだとかえって不気味だ」
口調は荒いが、彼の目が悪意に染まっていない事を確認した元親は、小
さく頷くと顔を背ける。
「俺…死なずにここに留まった事は、間違いだったのかな」
共に畑まで移動しながら、元親は力なく零す。
「それとも…ホントにあいつらの言うとおり……」
「──それ以上は、政宗様に対する侮辱と取るぞ。つまんねぇ寝言をほ
ざいてんじゃねぇ」
奇異な己の外見は、単に政宗の好奇心を満たす為だけにあるのだろうか。
そう言いかけた所で、小十郎の鋭い叱咤が、元親の舌を止めた。
「たとえ俺達全員がお前を殺せ、と言っても、政宗様は最後までお前を
庇い続ける。政宗様は、一度信じた人間は決して裏切らない。そういう
お方だ」
「だけど…俺のせいで、政宗にこれ以上迷惑が掛かるくらいなら……」
「逃げんのか?」
「なっ…」
嘲るような声を聞いて、元親は再度小十郎を振り返った。
「…勘違いすんな、ブス。この先は俺の畑があるからだ」
「……そーだったな」
追いつかれまい、と足を急がせていた元親だったが、小十郎の返事を聞い
て、急速に歩調を緩めた。
いつもは、喧しいくらいに威勢の良い元親が、元気をなくしている様子
に、小十郎は、突如胸の内に沸き起こったモヤモヤを払うように、つっけ
んどんな態度を崩さず、揶揄を飛ばした。
「ブスの分際で、落ち込むな。ただでさえブスな顔が、益々ブスになる」
「な、何だとぉ!?」
「そうだ、そうやって喚いてろ。お前が静かだとかえって不気味だ」
口調は荒いが、彼の目が悪意に染まっていない事を確認した元親は、小
さく頷くと顔を背ける。
「俺…死なずにここに留まった事は、間違いだったのかな」
共に畑まで移動しながら、元親は力なく零す。
「それとも…ホントにあいつらの言うとおり……」
「──それ以上は、政宗様に対する侮辱と取るぞ。つまんねぇ寝言をほ
ざいてんじゃねぇ」
奇異な己の外見は、単に政宗の好奇心を満たす為だけにあるのだろうか。
そう言いかけた所で、小十郎の鋭い叱咤が、元親の舌を止めた。
「たとえ俺達全員がお前を殺せ、と言っても、政宗様は最後までお前を
庇い続ける。政宗様は、一度信じた人間は決して裏切らない。そういう
お方だ」
「だけど…俺のせいで、政宗にこれ以上迷惑が掛かるくらいなら……」
「逃げんのか?」
「なっ…」
嘲るような声を聞いて、元親は再度小十郎を振り返った。