金属が擦れるような音が耳に障る。
「う、う……」
かすがは低く声を漏らしながら、ゆっくり目を開けた。
焦点が定まらない。手のひらを顔の近くまで持ってこようと思ったが腕はかすがの意思どおり
には動かずに、ただ痛みだけを訴えてきた。
頭を振ったかすがの耳に男の声が入ってきた。
「目が覚めたようだな」
その声がかすがの意識を覚醒させた。
「お前は……!」
叫んだかすがの眼下で、黄金の甲冑に身を包んだ男が不敵に笑っている。
徳川家康だった。
彼の身の丈よりも長い槍を軽々と持ち、かすがの方へと向けている。その切っ先には糸の
ように細い光が、絡まるようにして這っていた。
かすがの体に電撃を放ったのは家康に違いない。
反射的に身構えようとしたものの、かすがの体は彼女の自由に動かせられなかった。
「くっ」
両手を高く掲げさせられ、手首には鉄の縛めが施されている。
手首から伸びる頑丈そうな鎖は天井付近の梁に繋がれており、かすがは両手を広げたまま
宙吊りの格好になっていた。
かすがは視線を家康の方に戻す。
それを待っていたかのように彼は口を開いた。
「上杉殿の忍がワシの城になんの用だ」
「私はなにも吐かないぞ」
ぴしゃりと跳ね除けるように言うと、家康は笑った。
「ふっふっふ。なんの用か、想像はついておる。わざわざ探りにくるとはご苦労だったな。
ははっ、そう構えるな、殺す気はない。用が済んだら帰してやろう。約束してやる」
少年のような明るい笑顔だった。それが薄気味悪くて、かすがは身じろぎした。
鎖が耳障りな音を立てる。
「用、とはなんだ」
「お前には特別に見せてやる。――いや、むしろ見せたいのだ! 進化した本多忠勝の
その雄姿をなっ!」
声とともに部屋の照明がカッと明るさを増し、かすがの目を眩ませた。
「さぁ起きろ、忠勝ッ! お前の力を見せてやれ!!」
「……!?」
叫んでかすがの背後を指差した家康の視線を追う。
そこには、かすがが気を失う前に見た、あの巨大な人影があった。
家康の声に応じるように、人影は軋みながら腕を動かした。
兜の下で一瞬光った目は、まるで炎のように赤い。
鉄の装甲が彼の動きに合わせて鈍く輝き、ガシャガシャと恐ろしい音を立てる。
「…………」
かすがはこのとき、身内から湧き上がってくる抑えがたい恐怖に赤子のように怯えること
しかできなかった。
――戦国最強、本多忠勝。敵兵に、同じ人間とは思えないとまで言わしめるほどの武将……。
確かにそうだ。この男は人間の範疇を超えている。
恐怖から逃れるように、かすがは本多忠勝から目を背けた。
「忠勝っ! 起きるんだッ」
家康が声を張り上げた。
「……!……!……!!」
「う、う……」
かすがは低く声を漏らしながら、ゆっくり目を開けた。
焦点が定まらない。手のひらを顔の近くまで持ってこようと思ったが腕はかすがの意思どおり
には動かずに、ただ痛みだけを訴えてきた。
頭を振ったかすがの耳に男の声が入ってきた。
「目が覚めたようだな」
その声がかすがの意識を覚醒させた。
「お前は……!」
叫んだかすがの眼下で、黄金の甲冑に身を包んだ男が不敵に笑っている。
徳川家康だった。
彼の身の丈よりも長い槍を軽々と持ち、かすがの方へと向けている。その切っ先には糸の
ように細い光が、絡まるようにして這っていた。
かすがの体に電撃を放ったのは家康に違いない。
反射的に身構えようとしたものの、かすがの体は彼女の自由に動かせられなかった。
「くっ」
両手を高く掲げさせられ、手首には鉄の縛めが施されている。
手首から伸びる頑丈そうな鎖は天井付近の梁に繋がれており、かすがは両手を広げたまま
宙吊りの格好になっていた。
かすがは視線を家康の方に戻す。
それを待っていたかのように彼は口を開いた。
「上杉殿の忍がワシの城になんの用だ」
「私はなにも吐かないぞ」
ぴしゃりと跳ね除けるように言うと、家康は笑った。
「ふっふっふ。なんの用か、想像はついておる。わざわざ探りにくるとはご苦労だったな。
ははっ、そう構えるな、殺す気はない。用が済んだら帰してやろう。約束してやる」
少年のような明るい笑顔だった。それが薄気味悪くて、かすがは身じろぎした。
鎖が耳障りな音を立てる。
「用、とはなんだ」
「お前には特別に見せてやる。――いや、むしろ見せたいのだ! 進化した本多忠勝の
その雄姿をなっ!」
声とともに部屋の照明がカッと明るさを増し、かすがの目を眩ませた。
「さぁ起きろ、忠勝ッ! お前の力を見せてやれ!!」
「……!?」
叫んでかすがの背後を指差した家康の視線を追う。
そこには、かすがが気を失う前に見た、あの巨大な人影があった。
家康の声に応じるように、人影は軋みながら腕を動かした。
兜の下で一瞬光った目は、まるで炎のように赤い。
鉄の装甲が彼の動きに合わせて鈍く輝き、ガシャガシャと恐ろしい音を立てる。
「…………」
かすがはこのとき、身内から湧き上がってくる抑えがたい恐怖に赤子のように怯えること
しかできなかった。
――戦国最強、本多忠勝。敵兵に、同じ人間とは思えないとまで言わしめるほどの武将……。
確かにそうだ。この男は人間の範疇を超えている。
恐怖から逃れるように、かすがは本多忠勝から目を背けた。
「忠勝っ! 起きるんだッ」
家康が声を張り上げた。
「……!……!……!!」




