慶次は震える声で訪ねた。
「なんであんたがそんなことをしなくちゃいけないんだ」
元就の表情は変わらない。
「駒共が居れば他の策も考えたかもしれぬ。
否、仮に駒がいたとしてもこの策が一番合理的であろう。
我が十日前に館から逃げ出したという噂はそれなりに広まっておる。
二月前の戦で、毛利は前田に負けたのだ。
毛利への人質である我が、他軍に助力を求めて駆け込んだとしても
不自然ではあるまい」
否、仮に駒がいたとしてもこの策が一番合理的であろう。
我が十日前に館から逃げ出したという噂はそれなりに広まっておる。
二月前の戦で、毛利は前田に負けたのだ。
毛利への人質である我が、他軍に助力を求めて駆け込んだとしても
不自然ではあるまい」
慶次は眉をひそめる。
「人質?」
訝しげな呟きに、淡々と元就は答えた。
「我は残された毛利の者が反抗せぬようにとの人質だったのであろう」
「違う、あんたは客人だ」
「ふん、呑気な頭であることよ」
「違う、あんたは客人だ」
「ふん、呑気な頭であることよ」
元就は、肩にかけられた慶次の手に右手を添えた。
「そのようにゆるい頭では、この戦乱の世では生き残れまい」
慶次の手をはずすと、頬の傷に手を伸ばして、軽く触れる。
「今回は、運が良かったと思え」
一瞬、元就がかすかに辛そうな目をしたように慶次には感じられたが、
すぐに感情のこもらない目へと戻ってしまった。
目の錯覚かと思ってしまったことが、無性に苛立たしい。
元就は、慶次の傷に触れたまま止めていた手を静かに離した。
冷たい瞳で慶次を見ている。
それが本来の元就であるように思え、
慶次はそんな考えを振り払うように、同じ問いを口にした。
すぐに感情のこもらない目へと戻ってしまった。
目の錯覚かと思ってしまったことが、無性に苛立たしい。
元就は、慶次の傷に触れたまま止めていた手を静かに離した。
冷たい瞳で慶次を見ている。
それが本来の元就であるように思え、
慶次はそんな考えを振り払うように、同じ問いを口にした。
「なんであんたじゃなくちゃいけないんだ」
声が、震える。
「答えたではないか」
返答は、やはり冷たい。
慶次は声を荒げた。
慶次は声を荒げた。
「他にいくらだってやりようはあるだろ!
駄目だ、行かせない。絶対駄目だ!
利やまつ姉ちゃんには俺が断ってくる、
なんで一人で勝手に決めるんだ、
どうして先に俺の所に来ないんだよ!」
駄目だ、行かせない。絶対駄目だ!
利やまつ姉ちゃんには俺が断ってくる、
なんで一人で勝手に決めるんだ、
どうして先に俺の所に来ないんだよ!」
そうだ。
もし、先に自分の所に来ていたなら。
こんな顔をしていたなら、無理にでも閉じこめて、外になんて出さない。
もし、先に自分の所に来ていたなら。
こんな顔をしていたなら、無理にでも閉じこめて、外になんて出さない。
元就は鼻で笑う。
「そうやって煩いことを言うのが分かっておるからだ」
「これは前田の問題なんだからあんたには関係ないだろ」
「これは前田の問題なんだからあんたには関係ないだろ」
元就は、ぎり、と、慶次を睨みつけた。
「………………貴様が」
鼻の頭に皺を寄せ、憎々しげに言葉を続けようとしたが
元就は押し黙り、うつむいた。
元就は押し黙り、うつむいた。
「………否、
…………
………………我か」
…………
………………我か」




