二人して帰路を辿る頃には、月はすっかり中空に差し掛かっていた。
政宗が小十郎の馬に乗り、小十郎は馬の横に立ち、その綱を引く。
そんな事をしなくとも、小十郎の馬は駿馬の産地として名高い奥州の中に有っても、
屈強さと疾さで名高い名馬だ。二人乗りして帰った方が早いのに、という政宗の言葉も
「なりませぬ。危険です。」と一蹴された。
政宗が小十郎の馬に乗り、小十郎は馬の横に立ち、その綱を引く。
そんな事をしなくとも、小十郎の馬は駿馬の産地として名高い奥州の中に有っても、
屈強さと疾さで名高い名馬だ。二人乗りして帰った方が早いのに、という政宗の言葉も
「なりませぬ。危険です。」と一蹴された。
「あーあ、今日はなんか疲れたぜ。」
「それはこちらの台詞です。」
「明日は、あの森を片付けねぇとな。忙しくなりそうだぜ。」
「そうですな。それに、生け花の先生にも日を改めて来て戴かなくては。」
「それはこちらの台詞です。」
「明日は、あの森を片付けねぇとな。忙しくなりそうだぜ。」
「そうですな。それに、生け花の先生にも日を改めて来て戴かなくては。」
小十郎の言葉に、馬上の政宗はずり落ちそうになった。
「…お前なぁ。まだそんな事言ってんのかよ。」
「無論の事。」
「いい加減無駄だろ。俺がそんな事するなんて…」
「何故、そう思われるのです。」
「何故って…」
「無論の事。」
「いい加減無駄だろ。俺がそんな事するなんて…」
「何故、そう思われるのです。」
「何故って…」
政宗は5歳の頃天然痘で片目を失い、10歳になるやならずの時に父を失い、
当時まだ生まれたての赤子だった弟、小次郎がせめて元服するまでの間だけでもと、
家督を継がざるを得なくなった。
虎視眈々と領土を狙う近隣諸国に弱みを見せぬ為、伊達家存続の為の苦肉の策だった。
言うならば、政宗は十歳にして政敵に命を狙われ続ける事になり、
それよりももっと早くに、女としての幸せなど諦めずには居られなかったのだ。
当時まだ生まれたての赤子だった弟、小次郎がせめて元服するまでの間だけでもと、
家督を継がざるを得なくなった。
虎視眈々と領土を狙う近隣諸国に弱みを見せぬ為、伊達家存続の為の苦肉の策だった。
言うならば、政宗は十歳にして政敵に命を狙われ続ける事になり、
それよりももっと早くに、女としての幸せなど諦めずには居られなかったのだ。
だが、その事情を余さず知りながら、
幼い政宗に誰よりも厳しく己を守る術を叩き込みながらも、
小十郎は姫としての教養を身に付けるのを放棄する事を、政宗に許さなかった。
幼い政宗に誰よりも厳しく己を守る術を叩き込みながらも、
小十郎は姫としての教養を身に付けるのを放棄する事を、政宗に許さなかった。
「俺を娶っても伊達領が手に入る訳じゃねえ。
なのに戦場で6本刀で暴れまくってた片目の女を嫁にしたがる男なんて、居る訳ねえ。
…無駄じゃねえか。」
「無駄では有りませぬ。」
「なんでそう言い切れる。」
「伊達領が無くとも独眼でも、政宗様が戦狂いの手に負えないじゃじゃ馬であろうとも、
それを全く気にせずあなたを愛する男が、必ず現れるからです。」
「…なっ」
なのに戦場で6本刀で暴れまくってた片目の女を嫁にしたがる男なんて、居る訳ねえ。
…無駄じゃねえか。」
「無駄では有りませぬ。」
「なんでそう言い切れる。」
「伊達領が無くとも独眼でも、政宗様が戦狂いの手に負えないじゃじゃ馬であろうとも、
それを全く気にせずあなたを愛する男が、必ず現れるからです。」
「…なっ」
さらりととんでも無い事を言ってのけられ、政宗は思わず言葉を失う。
小十郎はそんな政宗の様子に少しだけ困った笑みを浮かべ、
すぐにまた真剣な表情に戻る。
小十郎はそんな政宗の様子に少しだけ困った笑みを浮かべ、
すぐにまた真剣な表情に戻る。
「先代…輝宗様は最期まで政宗様を案じておられました。
そして俺を含め、その場に居た家臣すべてに仰せられたのです。
そして俺を含め、その場に居た家臣すべてに仰せられたのです。
『あの憐れな姫をいつか血塗られた戦の道から救い出し、
女としての幸せに生きられるよう、力を尽くしてくれ』
女としての幸せに生きられるよう、力を尽くしてくれ』
と…」
「………」




