戦国BASARA/エロパロ保管庫

続・オクラ様は赤面性3

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bsr_e

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話は半日ほど前に遡る。

日はまだ天の中央にあり、秋の高い空に鰯雲が浮かんでいた。
ぴいひゃらという祭り囃子が聞こえてくる。
今日は加賀の、秋の祭りの日だった。
雪深い冬を迎える前の、盛大な祭りである。
元就は珍しく女物の衣を着ていた。
目にも鮮やかな紅梅色の小袖は、まつから借りたものだ。
…否、着せられた、と、いうべきなのか。
元就はまつのことを思った。
きゃいきゃいと嬉しそうに声を弾ませながら、
あれも、これも、と、嬉しそうに元就を着せ替えていた。

―――――女というものは、やはりめかしこむことに興味を覚えるものなのだろうか。

よく分からぬ、と、元就は思う。
元就にとって衣装というものは
軽く、夏は涼しく冬は暖かく、そこそこ丈夫で、
なおかつ肌が隠れていれば良いものだった。
確かに服の好みはあるが、このような浮かれた色合いは落ち着かない。
足がすうすうするのも落ち着かないし、なにより歩きづらい。やはり慣れた袴が良い。
元就は女の振る舞いを思い浮かべようとして、殆ど何も浮かんでこないことに気が付いた。
そこで、まつを思い浮かべることにする。
まつはいつも楽しそうに笑う。
怒る時もふくれて可愛い(前田の男衆は脅えているようだったが)。
悲しいときは儚げで、表情がころころとよく変わる。
心許ない、という感じは全く受けない。むしろ強ささえ感じることもある。
そもそも女というものはああいうものなのであろうか、と、元就は思案した。
気分が沈んでいくのを感じた。
慶次の隣には、ああいう、ころころと笑う者のほうが似合っているのではないか、と、思う。
元就は今、慶次に祭りの案内をしてもらっていた。
京の祭りよりも小さい、と、慶次は言っていたが、想像していたものよりもかなり華やかだった。
めかしこんだ女達と幾度もすれ違う。
皆、楽しそうに笑っている。
そう、女というものはきっとこういうものなのだ。
元就には、よく理解できなかった。理解出来ないことに憂鬱になる。
隣を歩いている慶次はとても嬉しそうで、元就の気分はさらに沈んだ。
あの日以来、慶次は元就に触れてこない。
笑っていても、どことはなしに表情が硬いのが元就にも分かる。
そのくらいは察することは出来た。
あれからの慶次の表情は、元就が今までに見たことのないものだった。
困ったように、残念なように、笑う慶次が何を考えているのか分からない。
けれど今はとても楽しそうに笑っていて、それが何故なのかも元就には分からない。
「あんたと、祭りに来たかったんだ」と、慶次ははにかみながら、元就に手を伸ばした。
手をとることは、出来なかった。
何故なら今、慶次はとても楽しそうで、しかし自分が下手なことをしてしまうことで
その楽しそうな表情があの困ったような笑みに変わってしまうことを、元就は恐れる。
だから手をとることは出来なかった。
慶次は困ったように笑って、「ごめん」と謝った。
手をとった方がよかったのだろうか。


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