うなだれた、白い髪の女が部屋に戻ろうと廊下の角を曲がったその奥、
元就にあてがわれた部屋の前に何かがいる気配を感じ、元親は頭を上げた。
閉じられた板戸を、慶次が見つめている。
「どうしてあんたがここにいるんだ」、と、声をかければ、狼狽えた様子で、
「あれ、一緒に居るんじゃなかったの」、と、板戸を指さして小声で言われた。
「厠」と嘘をつけば、「ごめん」と、申し訳なさそうに言われて、面食らう。
元就にあてがわれた部屋の前に何かがいる気配を感じ、元親は頭を上げた。
閉じられた板戸を、慶次が見つめている。
「どうしてあんたがここにいるんだ」、と、声をかければ、狼狽えた様子で、
「あれ、一緒に居るんじゃなかったの」、と、板戸を指さして小声で言われた。
「厠」と嘘をつけば、「ごめん」と、申し訳なさそうに言われて、面食らう。
「元就に用か」
「ああ、そう」
「居ねえよ。なんだあんた、俺が居るってのに元就に夜這いでも仕掛けにきたのか?」
「いや、居ないならいいんだ。………明日にでも」
「ふうん。どけよ。俺は今機嫌が悪いんだ、寝かせてくれ」
「ああ、そう」
「居ねえよ。なんだあんた、俺が居るってのに元就に夜這いでも仕掛けにきたのか?」
「いや、居ないならいいんだ。………明日にでも」
「ふうん。どけよ。俺は今機嫌が悪いんだ、寝かせてくれ」
慶次の前に体を割り込ませ、板戸に手をかける。
「なあ、あんた。元就のこと好きなんだろ」
ぎょっとした雰囲気が伝わってくる。
元親は、にっと笑い、慶次の肩を軽く叩いた。
元親は、にっと笑い、慶次の肩を軽く叩いた。
「まあ、頑張んなよ」
板戸を開け、部屋の中に入り、戸を閉める。
行儀悪く足探りで蝋燭立てを探し当て、側にあった火口で灯を灯した。
丸い固まりが寝床の上に居る。
行儀悪く足探りで蝋燭立てを探し当て、側にあった火口で灯を灯した。
丸い固まりが寝床の上に居る。
「…………おい」
返事は無い。
元親はその固まりを蹴飛ばした。
頭から布団を被った元就はぴくりとも動かない。
力任せにそれを剥ぎ取り、胸ぐらを掴んで揺さぶった。
元親はその固まりを蹴飛ばした。
頭から布団を被った元就はぴくりとも動かない。
力任せにそれを剥ぎ取り、胸ぐらを掴んで揺さぶった。
「起きろ」
「……………」
「なんであんたがここにいんだよ」
「賭けはそなたの負けだ」
「……………」
「なんであんたがここにいんだよ」
「賭けはそなたの負けだ」
むにゃむにゃと元就は口の中で言葉を転がす。
くたりと元親にもたれかかって、弱々しくしがみつく。
くたりと元親にもたれかかって、弱々しくしがみつく。
「応援断旗をもらえるのか、我は」
「やるわけねえだろ」
「左様か」
「やるわけねえだろ」
「左様か」
元就は笑ったようだった。
「そなたの首尾は?」
「……………ひでえな、聞くなよ」
「そなたも断られたか」
「……………ひでえな、聞くなよ」
「そなたも断られたか」
元親は、部屋の入口をうかがう。
「あんた、断られたって、冗談だろ」
「やめろと言われた」
「やめろと言われた」
元親の肩口に顔を埋めて、元就はささやくように告げる。
元親の夜着を、ぎゅう、と、掴んだ拳が震えていた。
元親は再び入口をうかがった。
元就はそれに気づきもせず、ただ、体を震わせて、何かに耐えている。
元親の夜着を、ぎゅう、と、掴んだ拳が震えていた。
元親は再び入口をうかがった。
元就はそれに気づきもせず、ただ、体を震わせて、何かに耐えている。
元親はわざとらしい溜息を一つつき、元就の背中をあやすように叩く。
投げやり気味に張り上げた声で、喚いた。
投げやり気味に張り上げた声で、喚いた。
「あぁ、そりゃあ勿体ねえことしたな、あいつもよ。
食っちまえばよかったのに、勿体ねえ」
食っちまえばよかったのに、勿体ねえ」
大きな声に驚いて見上げてくる、切れ長の瞳の端に溜まった涙を舐めた。
ささやき声にしては大きすぎる声を、耳に吹き入れる。
ささやき声にしては大きすぎる声を、耳に吹き入れる。
「惚れた男に断られた寂しい女同士、慰め合わねえ?」
元就はしばらく考えて、くてん、と、額を元親の肩に乗せた。
「それも良いな。よかろう。付き合おう」
「そうか」
「そうか」
元親は、くく、と、喉を鳴らすと、
ならず者が浮かべるような、底意地の悪い下卑た笑みを浮かべてみせ、元就を寝床に押し倒した。
ならず者が浮かべるような、底意地の悪い下卑た笑みを浮かべてみせ、元就を寝床に押し倒した。




