琥珀がゆっくり開いて瞬いた。いつの間にか眠り込んでしまったらしい。
懐かしい夢を見ていた気がするが良く思い出せない。
起き上がろうとした時、肩から黒い長手拭が滑った。
その布と微かな寝息を立てる男の顔を見比べる。
「………」
布と寝顔を三往復した時、かすがは深い溜め息を吐いた。
自分の可愛げの無い性格は充分承知している。
素直に礼が言えれば良いのだろうが、言葉にすると照れてしまって言えた試しが無い。
せめてこれくらいは、と丁寧に長手拭を畳み終えた時佐助が目を覚ました。
かすがは先に立ち上がり、良く寝たなぁと首を回す男に向かって無言で布を差し出す。
遅れて立ち上がった男はかすがの様子を見て笑った。
その笑顔に何もかも見透かされている気がして目を逸らした。
「あっ」
突然手をグイと引っ張られ、そのままかすがは佐助の腕の中に倒れ込む。
つんのめったかすがを佐助はきつく抱き締めた。
男の腕、男の胸、男の息遣い――その一つ一つがかすがの頬を朱に染め、
鼓動が速くなり息苦しくなる。
(だめ)
自分が自分でなくなる感覚にかすがは怯えた。
抜け出さなければ、離れなければ、きっとこの男の日だまりの様な温かさに溶かされてしまう。
必死に作り上げた「かすが」が溶けて、元の自分が無防備に曝されてしまう。
金色の髪に顔を埋めながら佐助が囁いた。
「このまま俺と――」
懐かしい夢を見ていた気がするが良く思い出せない。
起き上がろうとした時、肩から黒い長手拭が滑った。
その布と微かな寝息を立てる男の顔を見比べる。
「………」
布と寝顔を三往復した時、かすがは深い溜め息を吐いた。
自分の可愛げの無い性格は充分承知している。
素直に礼が言えれば良いのだろうが、言葉にすると照れてしまって言えた試しが無い。
せめてこれくらいは、と丁寧に長手拭を畳み終えた時佐助が目を覚ました。
かすがは先に立ち上がり、良く寝たなぁと首を回す男に向かって無言で布を差し出す。
遅れて立ち上がった男はかすがの様子を見て笑った。
その笑顔に何もかも見透かされている気がして目を逸らした。
「あっ」
突然手をグイと引っ張られ、そのままかすがは佐助の腕の中に倒れ込む。
つんのめったかすがを佐助はきつく抱き締めた。
男の腕、男の胸、男の息遣い――その一つ一つがかすがの頬を朱に染め、
鼓動が速くなり息苦しくなる。
(だめ)
自分が自分でなくなる感覚にかすがは怯えた。
抜け出さなければ、離れなければ、きっとこの男の日だまりの様な温かさに溶かされてしまう。
必死に作り上げた「かすが」が溶けて、元の自分が無防備に曝されてしまう。
金色の髪に顔を埋めながら佐助が囁いた。
「このまま俺と――」