戦国BASARA/エロパロ保管庫

君に捧ぐ花2

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nozomi

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あまり褒められるものではなかったが、それでも帰蝶は良いと思った。
この戦乱の世。政略結婚など珍しいものではない。
不安や寂しいと思う気持ちが全くないわけでもない。
しかしそれ以上に、諦めに似た感情が胸を支配していた。
せめて父の役に立てればと、半ば無理矢理自分を納得させて家を出てきた。
もう、心残りなどない。
ふと、最後に見た父の顔を思い出した。
自分から輿入れをしろと言ったにも関わらず、見送りに来た父は何処か寂しげな表情だった。
そんな顔をするくらいなら最初から言わなければ良かったのに、と帰蝶は思う。
いまさら思っても、仕方のないことだが。
と、輿が一度大きく揺れその場に止まった。
あぁ、漸く織田の屋敷へ着いたのかと酷く落ち着いた頭の片隅で思う。
さっと輿の入り口が開かれた。
輿から降り立とうとする帰蝶だったが、何かの視線を感じ上を見上げる。
視線のその先、薄汚い着物を纏い酷く冷たい目をした男が自分を見下ろしていた。
直感で感じた。
あぁ、この男が織田信長なのだと。
「信長…様?」
気付いた瞬間、思わずビクリと身体が震えた。
恐怖に似た感覚、しかし恐怖とは何かが違う感覚。
暫く見詰め合っていると、「ふん」と信長のほうから視線を外した。
そのまま帰蝶を振り返ることなく屋敷の奥へと消えていく。
そんな信長の後姿を、帰蝶は何処か呆気にとられたような表情で見送った。

それから信長は、ちらりとも帰蝶に視線を寄越さなかった。
式のときも、初めて共にする夜も、屋敷の中でも。
声をかけるどころか同じ布団を共にしようとさえしない。
「の、信長様…美濃の家から贈り物が来たのですが、宜しければ…」
そう声をかけても、信長は何も言わずスッと横を通り過ぎるだけだった。
まるで自分がそこには存在しないとでも言うような扱いに、帰蝶は不安と寂しさで泣きそうになった。
自分は何か気に障るようなことをしたのだろうか。
だから信長は自分を見てくれないのだろうか。
自分は、何のために織田(この家)に嫁いできたのだろうか。
「父上…。帰蝶は……何の為に此処まで来たのでしょう…」
織田に嫁いで14日目の晩。
帰蝶は独りぼっちの部屋で、声もなく泣いた。


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