恐怖と心配とが鬩ぎ合って、結局想いが勝った。警鐘を鳴らす本能を
押し殺して、覚束ない手で腰帯を解く。羽織を脱ぎ棄てて、切られて既に
機能を果たしていない内着も袖から抜けば、遅れて背中に纏わりついていた
サラシの白布が地面へ落ちる。少し躊躇いを挟んで具足ごと袴を脱ぎ下ろすと、
後に残るのは下帯一枚きりである。着込む物が多い分、あまり日に焼けず
白い肌に外気の冷たさと火の起こすムラのある熱風とが噴きかかる。
男のように褌を締めている女の身体を見下ろして松永は小さく鼻を鳴らした。
押し殺して、覚束ない手で腰帯を解く。羽織を脱ぎ棄てて、切られて既に
機能を果たしていない内着も袖から抜けば、遅れて背中に纏わりついていた
サラシの白布が地面へ落ちる。少し躊躇いを挟んで具足ごと袴を脱ぎ下ろすと、
後に残るのは下帯一枚きりである。着込む物が多い分、あまり日に焼けず
白い肌に外気の冷たさと火の起こすムラのある熱風とが噴きかかる。
男のように褌を締めている女の身体を見下ろして松永は小さく鼻を鳴らした。
「口を開けろ」
幾ら肝が据わっているとはいえ、服を剥けば慶次とてただの女子である。
全裸を他人に晒している事の羞恥に唇の内を噛んで視線を伏せ、膝を立て
気味の胡坐の内に両手をついて背を丸め、視線を伏せていた。声を掛けられて
僅かに目を上げれば着物の腰留めだけを僅かに緩めた松永の黒々とした雄が
眼前に晒されていた。まともに見せつけられる事などそうそう無いグロテスクな
性器の形に慶次が固まるのも構わず、松永は片手で乱暴に足元の結い髪を掴んだ。
飾られていた鳥の羽と朱塗りの簪がずれ落ちるのも構わずぐいと頭を引き
寄せて、柔らかい唇を割って強引にまだ芯の無い性器を口内に押し込む。
隙間から呻きの漏れる閉じられた歯列に亀頭先が当たって動きを鈍らせると、
それまでの乱暴さが嘘のように優しい手付きで松永は慶次の頭を撫でた。
全裸を他人に晒している事の羞恥に唇の内を噛んで視線を伏せ、膝を立て
気味の胡坐の内に両手をついて背を丸め、視線を伏せていた。声を掛けられて
僅かに目を上げれば着物の腰留めだけを僅かに緩めた松永の黒々とした雄が
眼前に晒されていた。まともに見せつけられる事などそうそう無いグロテスクな
性器の形に慶次が固まるのも構わず、松永は片手で乱暴に足元の結い髪を掴んだ。
飾られていた鳥の羽と朱塗りの簪がずれ落ちるのも構わずぐいと頭を引き
寄せて、柔らかい唇を割って強引にまだ芯の無い性器を口内に押し込む。
隙間から呻きの漏れる閉じられた歯列に亀頭先が当たって動きを鈍らせると、
それまでの乱暴さが嘘のように優しい手付きで松永は慶次の頭を撫でた。
「私を満足させたら、卿もお友達も、解放してやろう」
「……ッ、本当、だな……」
「ああ、約束しよう」
「……ッ、本当、だな……」
「ああ、約束しよう」
まるで子供に言い聞かすような柔らかい語調に慶次は戸惑った。男の意図と
本性が読めずに胸中をざわつかせ、それから必死に秀吉の為、と頭で言い
聞かせて松永の前に膝立ちの恰好で足を揃え、おずおずと口を開く。
たどたどしく柔らかい肉に舌を這わせると口内に男の匂いが広がって、奇妙な
塩気が舌を攣れさせる。聞いた話でしかない口淫に眉を寄せ、込み上げる
嘔吐感を堪えながら裏筋を丁寧に舐め上げて口腔で陰茎を包みこむ。
本性が読めずに胸中をざわつかせ、それから必死に秀吉の為、と頭で言い
聞かせて松永の前に膝立ちの恰好で足を揃え、おずおずと口を開く。
たどたどしく柔らかい肉に舌を這わせると口内に男の匂いが広がって、奇妙な
塩気が舌を攣れさせる。聞いた話でしかない口淫に眉を寄せ、込み上げる
嘔吐感を堪えながら裏筋を丁寧に舐め上げて口腔で陰茎を包みこむ。
「手も」
短く言い付けられてその存在を思い出したように相手の腿から両手を竿の付け根
まで上らせ、唇が届かぬ位置を矢張り恐々と撫で擦って見る。
まで上らせ、唇が届かぬ位置を矢張り恐々と撫で擦って見る。
「もう少し、強く……ああ、それでいい」
初めて男根に触れる慶次の慎重さはお世辞にも上手いとは言えなかったが、
己の言葉に従って必死になって荒い息すら零す娘を愛らしいとは思えた。
元より顔立ちは悪くない。茶器の一つを値踏みする様な繊細な手付きで
滑らかな髪を撫でながら細めた視線を落とす。その松永の顔に僅かでも
何処かしら柔らかい、優しげなものを拾い取って慶次はますます困惑した。
結い紐を辿る様に緩やかに頭裏を撫でる爪付きの掌は今にも慶次の頭蓋を
掴んで強引に喉を突いてきそうな気配もするのに、松永は決してそうしない。
己の言葉に従って必死になって荒い息すら零す娘を愛らしいとは思えた。
元より顔立ちは悪くない。茶器の一つを値踏みする様な繊細な手付きで
滑らかな髪を撫でながら細めた視線を落とす。その松永の顔に僅かでも
何処かしら柔らかい、優しげなものを拾い取って慶次はますます困惑した。
結い紐を辿る様に緩やかに頭裏を撫でる爪付きの掌は今にも慶次の頭蓋を
掴んで強引に喉を突いてきそうな気配もするのに、松永は決してそうしない。