元親の太い腕に抱かれた時、元就は体を強張らせ、そして少し震えた。
「やめよ…。この手を、離せ」
元親の厚い胸板は、日向のにおいと潮のにおいがした。
「やめよ…。この手を、離せ」
元親の厚い胸板は、日向のにおいと潮のにおいがした。
「こんなに近くであんたを見るのは、初めてだ」
「我の嫌がることはしない、と言ったではないか」
「嫌なのか……」
「嫌だ」
にべもない言い方に、元親は苦笑した。
「我の嫌がることはしない、と言ったではないか」
「嫌なのか……」
「嫌だ」
にべもない言い方に、元親は苦笑した。
「あんたは、いつも白か黒。曖昧さがないな」
「…嫌味か、それは」
「いや、そういうところも……」
好きだ、という言葉は唇にじかに伝わった。
「…嫌味か、それは」
「いや、そういうところも……」
好きだ、という言葉は唇にじかに伝わった。
「………っ………」
固く閉ざした唇を割って、元親の舌が口腔に侵入する。
得物を手に打ち合い、組み合うのとはまったく違う相手がそこにいた。
「……ふっ…あ……っ…!」
湿った音とともに唇が離され、知らず知らずに絡み合っていた舌に甘いものが残った。
固く閉ざした唇を割って、元親の舌が口腔に侵入する。
得物を手に打ち合い、組み合うのとはまったく違う相手がそこにいた。
「……ふっ…あ……っ…!」
湿った音とともに唇が離され、知らず知らずに絡み合っていた舌に甘いものが残った。
殴られるか蹴られるかと覚悟をしていたらしい元親は、腕の中で震える元就の細い体を抱き
しめ、そして押し倒した。狩衣に焚き染められた香の香りを、胸一杯に吸い込む。
仰け反る首筋に唇を寄せると、何か固い物で頭を叩かれた。
しめ、そして押し倒した。狩衣に焚き染められた香の香りを、胸一杯に吸い込む。
仰け反る首筋に唇を寄せると、何か固い物で頭を叩かれた。
「何をする!これも、竹中の差し金かっ」
「違うぞ。…まあ、千載一遇の機会とは思うが」
「二人して、我を憐れむか!」
「違うって!!」
聞く耳持たなく抗う元就の手を軽く捻ると、握り締めていた扇が落ちた。
「違うぞ。…まあ、千載一遇の機会とは思うが」
「二人して、我を憐れむか!」
「違うって!!」
聞く耳持たなく抗う元就の手を軽く捻ると、握り締めていた扇が落ちた。
「…その扇は………」
元親がほんの戯れに戦いの後、元就の甲冑の袖に忍び込ませた異国渡りの美しい細工のもの
だった。
「そう。…そなたが、くれた物ぞ……。そなたには、他にもこうしたものを与える相手は多
かろうが…我には、初めてのことだった」
上から見つめる元親の目を、真っ向から見つめ元就は自嘲気味に笑った。
「馬鹿言え。…惚れた女以外にゃ、貢がねえよ」
「惚れた…女………?」
「あんた、鈍いから………。あのお節介な竹中にあんたの気持ちを聞いて、俺がどんな気分
になったか、わかるか?」
できるだけ甘く囁き、まだ震えがとまらない体を抱きしめる。
「そのようなこと……。我には、わからぬ」
小さな顔の顎を捉えて、元親は自分のほうに目を向けさせた。
元親がほんの戯れに戦いの後、元就の甲冑の袖に忍び込ませた異国渡りの美しい細工のもの
だった。
「そう。…そなたが、くれた物ぞ……。そなたには、他にもこうしたものを与える相手は多
かろうが…我には、初めてのことだった」
上から見つめる元親の目を、真っ向から見つめ元就は自嘲気味に笑った。
「馬鹿言え。…惚れた女以外にゃ、貢がねえよ」
「惚れた…女………?」
「あんた、鈍いから………。あのお節介な竹中にあんたの気持ちを聞いて、俺がどんな気分
になったか、わかるか?」
できるだけ甘く囁き、まだ震えがとまらない体を抱きしめる。
「そのようなこと……。我には、わからぬ」
小さな顔の顎を捉えて、元親は自分のほうに目を向けさせた。
「毛利……。何度も、俺の船であんたを掻っ攫おうと思った。蹴られても、踏まれても、殺
されかけても、あんたが好きだ」
互いの体には、本当にそうして戦いできた傷が多くあるはずだった。
「俺が、あんたに負わせた傷を、見てもいいか」
「…ならぬわ!!…この手を離せ。本当に、殺すぞ。長曾我部」
元就の怒りの声も、元親には甘い声音にしか聞えなかった。
されかけても、あんたが好きだ」
互いの体には、本当にそうして戦いできた傷が多くあるはずだった。
「俺が、あんたに負わせた傷を、見てもいいか」
「…ならぬわ!!…この手を離せ。本当に、殺すぞ。長曾我部」
元就の怒りの声も、元親には甘い声音にしか聞えなかった。




