バタバタと廊下を駆けてくる大きな足音に浅い眠りを容赦なく蹴破られ、
元親は声にならない声を上げながら身を起こす。
そしてまだ覚醒しない意識のままで、勢いよく開け放たれた襖の向こうに声をかけた。
元親は声にならない声を上げながら身を起こす。
そしてまだ覚醒しない意識のままで、勢いよく開け放たれた襖の向こうに声をかけた。
「…どうした騒がしいな…ちったぁ寝かせろよ」
「大変だ! 敵襲ですぜ、アニキィ!」
「ちッ…! 野郎共、配置につけ!」
っつーか、頼むから今日だけは敵襲とかマジ勘弁してくれ。
なんせ昨日の夜は色々有りすぎて、一睡もしてねぇんだからよ…。
なんせ昨日の夜は色々有りすぎて、一睡もしてねぇんだからよ…。
と思いつつも、奇襲への反応は身体に染み付いている。
元親は飛び起きるなり手早く身なりを整えると、愛用の碇槍を手に部屋を飛び出す。
元親は飛び起きるなり手早く身なりを整えると、愛用の碇槍を手に部屋を飛び出す。
「こんな朝っぱらから攻め込んで来るたぁ、一体どこのどいつだ!?」
「アニキ…それが、何だか妙な連中で…」
「妙?」
「何か黒い服着た南蛮の坊さんみてぇのがどこからとも無くワラワラ湧いてきて、
三万両のお布施がどうとか…」
三万両のお布施がどうとか…」
「……………」
三万両。
多大に聞き覚えの有るその単語を耳にして、廊下を走る勢いはそのままに元親は内心頭を抱えた。
多大に聞き覚えの有るその単語を耳にして、廊下を走る勢いはそのままに元親は内心頭を抱えた。
おいおい、嘘だろ…?
まさかもう取り立てに来やがったのかよ!?
いや…どう考えてもマズイ。
だって俺今、三万両なんて大金持って無ぇし。
まさかもう取り立てに来やがったのかよ!?
いや…どう考えてもマズイ。
だって俺今、三万両なんて大金持って無ぇし。
「っ!」
早道とばかりに元親は縁側から外に飛び降り、庭を突っ切る。
そして十飛の要領で大木の枝に碇を引っ掛けてぶら下がると、
勢いを殺すことなくそのまま一気に城壁を飛び越えた。
そして十飛の要領で大木の枝に碇を引っ掛けてぶら下がると、
勢いを殺すことなくそのまま一気に城壁を飛び越えた。
「おいッ、テメェ等っ!!どこのどいつか知らねぇが、
朝っぱらからこの長曾我部元親様の居城に攻め込んでこようとは、良い度胸してんじゃねぇか!!」
朝っぱらからこの長曾我部元親様の居城に攻め込んでこようとは、良い度胸してんじゃねぇか!!」
元親が地面に着地すると大きな地響きが起こり、同時に周囲に居た黒服の面々が吹っ飛ばされる。
明らかに戦闘には不向きそうな河童頭の宣教師達は、それを見て一瞬ひるんだ。
だがすぐに不気味な笑みを顔に貼り付けると、碇槍を構え直した元親との距離をジリジリ詰める。
明らかに戦闘には不向きそうな河童頭の宣教師達は、それを見て一瞬ひるんだ。
だがすぐに不気味な笑みを顔に貼り付けると、碇槍を構え直した元親との距離をジリジリ詰める。
「おぉ、はじめまして我が法友!
今日は貴方から申し出の有った、三万両のお布施を回収しに来ましたよ?」
今日は貴方から申し出の有った、三万両のお布施を回収しに来ましたよ?」
「やっぱり、それか…。
悪ぃが今日は帰ってくれ、今すぐ三万両は用意出来ねぇ」
悪ぃが今日は帰ってくれ、今すぐ三万両は用意出来ねぇ」
「そうは行きません。お忘れですか?『ザビー教教義第九十七節:お布施は迅速丁寧に』」
「はぁ!? なんだそりゃ…」
「貴方!!こんなに有名な教義をまさかご存知無いのですか!? 」
「信じられません!この教義は今やザビー教信者達の間では超・常識ですよ??」
「あぁ…ザビー様、この無知で哀れな兄弟をどうかお許しください…」
「と言う訳で、お布施の三万両は何が何でも今此処でいただきましょう。
これはザビー様の御意思…言わば天命なのです!!」
これはザビー様の御意思…言わば天命なのです!!」
「そもそも仮にも一国の主である貴方が、たかが三万両ごとき用意出来ない筈無いでしょう!
本当は出し惜しみしているのではありませんか?」
本当は出し惜しみしているのではありませんか?」
「さぁ、早くお布施を!!」
「三・万・両! 三・万・両!!」