初春と呼ぶにはまだ少し早いが、それを差し引いても四国の日差しは暖かい。
元親の部屋の縁側に出来た陽だまりを占拠するように寝そべりながら、
土佐の地酒で満たした盃をあおると、慶次は陽気な笑い声を上げる。
元親の部屋の縁側に出来た陽だまりを占拠するように寝そべりながら、
土佐の地酒で満たした盃をあおると、慶次は陽気な笑い声を上げる。
「…それであの動画の続き見たさに、自分の本名や住んでる場所を書き込んだって?
ははっ…元親も大概にしてちゃれんじゃーだよな」
ははっ…元親も大概にしてちゃれんじゃーだよな」
「…ちゃれんじゃー?」
「『挑戦者』って意味さ。
政宗から聞いた事あるだろ?」
政宗から聞いた事あるだろ?」
「挑戦者…ねぇ」
「そうそう。でもああいうのって、のめり込まない程度に楽しまないと大変な事になるんじゃないのか?
大体…」
大体…」
紡ぎかけた言葉をそのままに、慶次はすぐ隣を見上げる。
そこには猫背気味に胡坐をかき、庭に咲いた紅白の梅の花をぼんやり眺めながら、
盃に口を付ける元親の姿があった。
いつもの元親らしからぬ雰囲気に、慶次は一つ息をつく。
そこには猫背気味に胡坐をかき、庭に咲いた紅白の梅の花をぼんやり眺めながら、
盃に口を付ける元親の姿があった。
いつもの元親らしからぬ雰囲気に、慶次は一つ息をつく。
「まぁサンデーちゃんって元親が好きな誰かさんにそっくりだし、
気持ちは分からなくも無いけどさ」
気持ちは分からなくも無いけどさ」
「…っ!??」
ブハァっと、元親が盛大に酒を噴き出す。
慌てて飛び起きると、慶次はそのままゲホゲホと咳き込み続ける元親の背中をさすった。
慌てて飛び起きると、慶次はそのままゲホゲホと咳き込み続ける元親の背中をさすった。
「おいおい…大丈夫かい?」
「つか…テメェ今なんて言った」
「え?」
「誰が誰を好きだって…?」
声を凄ませた元親がその隻眼でギロリと慶次をねめつける。
だがそんな元親に一切構うことなく、慶次は二の句を継いだ。
だがそんな元親に一切構うことなく、慶次は二の句を継いだ。
「いやだから、元親が毛利のお姫様をだよ」
「んな訳ねぇだろがっ!! 今すぐ訂正しやがれ!!!」
「あれ…違うのかい?
じゃ聞くけど、俺もサンデーちゃんエロ動画のお試し版を見てるって言った時、
なんで元親すっげー怖い顔して睨んだんだ?」
じゃ聞くけど、俺もサンデーちゃんエロ動画のお試し版を見てるって言った時、
なんで元親すっげー怖い顔して睨んだんだ?」
「べっ、別に睨んでなんかねぇだろ!!」
元親は分が悪そうに口ごもるが、酒で滑りの良くなった慶次の口撃は留まる事を知らない。
「それに武将達の集まりの時だって。
俺等と話してる時も、元親はずーっと毛利のお姫様がどこに居るのか気にしてさ。」
俺等と話してる時も、元親はずーっと毛利のお姫様がどこに居るのか気にしてさ。」
「そっ…そんな事ねぇよ」
「でもってお姫様が松永や今川に絡まれそうになったら、速攻でそっち飛んでって横槍入れるクセに、
…そこまでしといて、何で当のお姫様の方と大喧嘩してこっちに戻ってくるかなぁ」
…そこまでしといて、何で当のお姫様の方と大喧嘩してこっちに戻ってくるかなぁ」
「んっ……んな事言ったって…。」
慶次の声…最後はかなり哀れみ混じりだ。
にも関わらず、こうまで図星を突かれるとかなり耳痛ぇ。
しかも松永のオッサンは半ば恒例行事になりつつある俺と毛利の喧嘩を見て、
「いやはや、苛烈苛烈…」
と、面白がってるフシが有るし。
にも関わらず、こうまで図星を突かれるとかなり耳痛ぇ。
しかも松永のオッサンは半ば恒例行事になりつつある俺と毛利の喧嘩を見て、
「いやはや、苛烈苛烈…」
と、面白がってるフシが有るし。
何よりも、デカイ扇で口元を隠した今川から、
「クク…全く、煮え切らない奴でおじゃ」
と、小馬鹿にしたようにほくそ笑まれたあかつきには心底堪える。
「クク…全く、煮え切らない奴でおじゃ」
と、小馬鹿にしたようにほくそ笑まれたあかつきには心底堪える。
「っ仕方ねぇだろ、そもそもアイツがいちいち俺に喧嘩ふっかけて来るのが悪ぃんだ!」
「言うと思った。
だって毛利のお姫様も、前に似たような事言ってたからさ」
だって毛利のお姫様も、前に似たような事言ってたからさ」
「…………」
だんまりを決め込んだまま乱暴に盃に酒を注ぎ、一気に飲み干した元親を見て、
慶次は苦笑いしながら盃に視線を落とす。
赤い盃の中には、散るにはまだ少し早い白梅の花びらが浮かんでいた。
慶次は苦笑いしながら盃に視線を落とす。
赤い盃の中には、散るにはまだ少し早い白梅の花びらが浮かんでいた。
「もういい加減お互い意地張るの止めて、さっさとくっついちまいなよ。
そしたら四国と中国は太平安泰、オマケに恋の花も乱れ咲くってもんだ」
そしたら四国と中国は太平安泰、オマケに恋の花も乱れ咲くってもんだ」
「お前なぁ…命が惜しけりゃ、そんな馬鹿げた事絶対アイツの前で言うんじゃねぇぞ。
…斬り殺されても知らねぇからな」
…斬り殺されても知らねぇからな」
「そうかい? 俺は意外と、お姫様の方も脈有りだと思うけどねぇ」
…おい。
そうやって以前テメェにけしかけられたウチの野郎共の中の一人が、
意中の女に告って大玉砕したって聞いたぞ。
…とにかく色恋沙汰に対するコイツの直感だけは、絶っ対真に受けちゃならねぇ。
そうやって以前テメェにけしかけられたウチの野郎共の中の一人が、
意中の女に告って大玉砕したって聞いたぞ。
…とにかく色恋沙汰に対するコイツの直感だけは、絶っ対真に受けちゃならねぇ。




