(――……、貴方の生命はこの母が奪います)
夢と現の狭間で聞いたのは、幼いころの母の声だった。
母は、たおやかで美しい容姿とは裏腹に、世間で言われるような厳しい気性の持ち主だった。
しかし、同じだけの優しさを持った人でもあった。
しかし、同じだけの優しさを持った人でもあった。
伊達家の一の姫として生まれた彼女は、両親の才覚をよく受け継いで育った。
「女にしておくには惜しい」と称賛されるのは、鬼姫と呼ばれた母譲りだった。
「女にしておくには惜しい」と称賛されるのは、鬼姫と呼ばれた母譲りだった。
しかし、病に倒れ片目を失ったとき、姫は今までになく沈みこんだ。
蝶よ花よと愛されてきた彼女にとっては過酷な運命だった。
ふさぎこんだまま立ち直る気配を見せぬ娘に、母は告げた。貴方の生命はこの母が奪います、と。
蝶よ花よと愛されてきた彼女にとっては過酷な運命だった。
ふさぎこんだまま立ち直る気配を見せぬ娘に、母は告げた。貴方の生命はこの母が奪います、と。
「そして貴方は、今日からこの家の嫡男として生まれ変わりました」
彼女には弟がいた。しかし、貴方はそれを越える器なのだと母は語った。
伊達家の姫はその日そのとき死んだ。そのころの名は記す必要もない。
両親と、ほんのわずかな重臣のみが知る事実であった。
そして、傅役の片倉小十郎をはじめとする側近に、今もその密事はもっとも重要な機密として守られていた。
両親と、ほんのわずかな重臣のみが知る事実であった。
そして、傅役の片倉小十郎をはじめとする側近に、今もその密事はもっとも重要な機密として守られていた。
かし、政宗は母に、父に、感謝していた。二度も生を与えてくれたのはまぎれない両親である。
「貴方にとって、奥州さえも狭すぎる。きっとすぐさまこの地を平らげて、天下さえも伊達家のものとしてくれるでしょう」
――そう語った母も今はない。父も弟も彼岸の人だ。
この時代、不思議なことではなかったが、政宗は人の縁というものから遠いのかもしれなかった。
この時代、不思議なことではなかったが、政宗は人の縁というものから遠いのかもしれなかった。




