「……………?」
「どうかしたか、長曾我部」
「………えっ? あっ…あぁ、いや…別になんでもねぇよ」
「…おかしな奴よ」
背後に従えた三人の家臣を部屋の隅に控えさせると、元就は元親と対峙するように腰を降ろした。
久々に元就の姿を目の当たりにしただけで元親は思わず感極まったが、同時に疑念も湧き上がる。
久々に元就の姿を目の当たりにしただけで元親は思わず感極まったが、同時に疑念も湧き上がる。
なっ、なんで毛利の奴…いつもの服着てるんだ………?
緑の狩衣の袖口に紅い飾り紐が施された礼服…。
そんな元就のいでたちは、武将達の集まりなどで元親も何度か見たことがある物だ。
そんな元就のいでたちは、武将達の集まりなどで元親も何度か見たことがある物だ。
「……………??」
元親はもう一度、穴が開くほど元就の姿を見つめた。
だがやはり、元就は元親が選んだ打掛も帯も髪飾りも扇も香も何一つ身に付けていない。
おまけに元就の顔は目元を除く全てが薄く黄色い布で覆われていて、その表情すら伺う事は
叶わなかった。
だがやはり、元就は元親が選んだ打掛も帯も髪飾りも扇も香も何一つ身に付けていない。
おまけに元就の顔は目元を除く全てが薄く黄色い布で覆われていて、その表情すら伺う事は
叶わなかった。
おい…俺が半日かけて選んだアレって、一体何だったんだ…?
ま…まぁ、急に毛利にお姫様みてぇな格好で来られても逆に調子狂うかもしれねぇしよ。
それにこの狩衣だって毛利に凄ぇ似合ってて十分綺麗だし…良いか、別に。
この際、細かい事は気にするもんじゃねぇぜ。
ま…まぁ、急に毛利にお姫様みてぇな格好で来られても逆に調子狂うかもしれねぇしよ。
それにこの狩衣だって毛利に凄ぇ似合ってて十分綺麗だし…良いか、別に。
この際、細かい事は気にするもんじゃねぇぜ。
もしや自身が選んだ物を、元就が身に纏って現れるのではないか…。
そんな淡い期待を抱いていた元親は、こうして己の心に折り合いを付けて落胆を飲み下した。
更に気持ちを切り替えようと、努めて明るく元就に声をかける。
そんな淡い期待を抱いていた元親は、こうして己の心に折り合いを付けて落胆を飲み下した。
更に気持ちを切り替えようと、努めて明るく元就に声をかける。
「それにしても随分久しぶりだなぁ、毛利!」
「…以前会った時より、三ヶ月ほどしか経っておらぬ筈だが」
「そっ、そうだけどよ…俺はずっとアンタに会いたかったんだ。
だからこんな風に招いて貰えるなんて、凄ぇ嬉しいぜ」
だからこんな風に招いて貰えるなんて、凄ぇ嬉しいぜ」
「世話になった者に謝辞を示すは、当然の事ぞ…」
元就が部屋の隅に視線を遣ったのを合図に、家臣の一人が立ち上がり部屋の襖を開ける。
すると廊下に控えていた二人の侍女が、静々と大きな御膳を運んで来た。
牡蠣の殻焼きやあなごの白焼き、真鯛の煮付け、山菜の天婦羅や松茸御飯に吸い物、
更には瀬戸海の魚介や海草そして野菜がふんだんに入った鍋。
銚子に入っているのはおそらく安芸の地酒だろう。
大小様々な漆器や磁器、そして鍋に盛られた豪勢な造りの食事を目の当たりにして、
元親は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
すると廊下に控えていた二人の侍女が、静々と大きな御膳を運んで来た。
牡蠣の殻焼きやあなごの白焼き、真鯛の煮付け、山菜の天婦羅や松茸御飯に吸い物、
更には瀬戸海の魚介や海草そして野菜がふんだんに入った鍋。
銚子に入っているのはおそらく安芸の地酒だろう。
大小様々な漆器や磁器、そして鍋に盛られた豪勢な造りの食事を目の当たりにして、
元親は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。
「なっ、なぁ…これ全部喰っていいのか…?」
「左様…思う存分食すが良い」
「後その…膝崩してもいいか?」
「好きに致せ」
了承を得て即座にあぐらをかいた元親に構わず、元就は食事の妨げとなる口元の薄布を外した。
そして膳に向かって両手を合わせ僅かに一礼すると、さっそく松茸御飯に箸をつける。
元親も瞳を輝かせながら、大きな貝殻の上に横たわっていた牡蠣の身を口に含んだ。
そして膳に向かって両手を合わせ僅かに一礼すると、さっそく松茸御飯に箸をつける。
元親も瞳を輝かせながら、大きな貝殻の上に横たわっていた牡蠣の身を口に含んだ。
「美味ぇ………」
「厳冬の牡蠣は、この数倍は美味ぞ」
「いや、これだって十分美味ぇよ!
…っと、ああ気遣いは無用だぜ? 俺は手酌で十分だ」
…っと、ああ気遣いは無用だぜ? 俺は手酌で十分だ」
「でっ…ですが…」
自分の傍らで盃に酒を注ごうとした侍女を制すと、元親はその手から銚子を拝借する。
すっかり恐縮し困ったように元就の顔をうかがった侍女に向かって、元就は静かに頷いた。
すっかり恐縮し困ったように元就の顔をうかがった侍女に向かって、元就は静かに頷いた。
「…長曾我部が構わぬと申すのであれば、従うがよい」
「では…」
元就の許可を得て、侍女はそっとこうべを垂れ僅かに後ずさる。
一方の元親は手にした安芸の地酒をさっそく盃にそそいだ。
そしてそれを一気にあおると、口元を緩ませて大きな息を吐く。
一方の元親は手にした安芸の地酒をさっそく盃にそそいだ。
そしてそれを一気にあおると、口元を緩ませて大きな息を吐く。
「ぷはぁーっ! 何っつーか安芸の地酒ってのは、こう…濃醇で旨みに富んでるのに、
凄ぇ口当たりが柔らかくて優しい味なんだな」
凄ぇ口当たりが柔らかくて優しい味なんだな」
「…我は酒を嗜まぬゆえ、味の是非についてはよく分からぬ」
「いや、これマジ美味いぜ…」
「……………」




