(あの背の高さは、織田の妹どころか、父君の国親様にも届きそうではないか)
(それに、銀の髪と左右異なる瞳の色。何と面妖な…)
(奥方が鬼と通じたという噂も、あながち嘘ではないのでは?)
(それに、銀の髪と左右異なる瞳の色。何と面妖な…)
(奥方が鬼と通じたという噂も、あながち嘘ではないのでは?)
普通の姫君とはかけ離れた成長を遂げてしまった元親は、世の娘達が華やぎだす頃
になっても、縁談のひとつも舞い込んでは来ず、そしてそれは元々気弱だった母親
を、更に心労で追い込む事になってしまった。
むしろこれ幸いと、自分の生きる場所を海に求め始めていた元親が、どんなに自分
の幸せを主張しても、「わたくしのせいです」と、頭を下げ続ける母親を見て、何
ともいたたまれない気持ちになっていった。
になっても、縁談のひとつも舞い込んでは来ず、そしてそれは元々気弱だった母親
を、更に心労で追い込む事になってしまった。
むしろこれ幸いと、自分の生きる場所を海に求め始めていた元親が、どんなに自分
の幸せを主張しても、「わたくしのせいです」と、頭を下げ続ける母親を見て、何
ともいたたまれない気持ちになっていった。
(所詮私は「姫」になんてなれない。だから、強くなろう。この西国を統べられる
ほどの「鬼」に)
ほどの「鬼」に)
以来、元親は女である事を隠し、海賊として各地を気ままに巡る生活を送っていた。
行く先々で出会った人や宝、海の向こうからの戦術や兵器は、長曾我部を強国のひ
とつへと導く結果となり、いつしか「西海の鬼 長曾我部元親」の名は、戦国の表
舞台に轟く事になったのだ。
女の自分を認め、慕ってくれた家臣や兵士たちを、元親は心の底から大切に思って
いる。
自分の為に船を操り、共に戦ってくれる仲間を信じられなくて、何が大将だという
のだ。
「……何か、言いたそうだな」
元就に言われ、膳を小脇へ下げた元親は、彼の顔を正面から見据えた。
明らかにそれまでの「姫」から「鬼」のそれに変わった元親の表情は、双眸(そう
ぼう)に湛えられた二色の光と共に、元就の関心を弥(いや)が上にも惹き付けて
くる。
「確かに、アンタは俺なんかとは比べ物にならないくらい、頭がいいよ。でも、ア
ンタは自分で思っているほど、自分の事を判ってはいない」
元親の凛とした声は、さして広くない元就の部屋に響き渡った。
瀬戸内のカイとゲルダ16
行く先々で出会った人や宝、海の向こうからの戦術や兵器は、長曾我部を強国のひ
とつへと導く結果となり、いつしか「西海の鬼 長曾我部元親」の名は、戦国の表
舞台に轟く事になったのだ。
女の自分を認め、慕ってくれた家臣や兵士たちを、元親は心の底から大切に思って
いる。
自分の為に船を操り、共に戦ってくれる仲間を信じられなくて、何が大将だという
のだ。
「……何か、言いたそうだな」
元就に言われ、膳を小脇へ下げた元親は、彼の顔を正面から見据えた。
明らかにそれまでの「姫」から「鬼」のそれに変わった元親の表情は、双眸(そう
ぼう)に湛えられた二色の光と共に、元就の関心を弥(いや)が上にも惹き付けて
くる。
「確かに、アンタは俺なんかとは比べ物にならないくらい、頭がいいよ。でも、ア
ンタは自分で思っているほど、自分の事を判ってはいない」
元親の凛とした声は、さして広くない元就の部屋に響き渡った。
瀬戸内のカイとゲルダ16




