先程の雨は、ただの通り雨だったのだろうか。晴天の足下には水溜りがいくつも出
来ていた。上杉の本陣だった場所は静寂に包まれている。
遠くで勝ち鬨が上がる。自軍の狼煙も見えた。長かった戦が終わったのだ。佐助は
重荷が降りたように、心がほっとしていたが、同時に大きな喪失感と虚脱感が体を襲
う。力が抜けて、手にしていた手裏剣が手を離れてぱしゃりと水溜りの中に落ちた。そ
のすぐ横にかすが倒れている。顔の半分が泥水につかっており、体からはおびただしい
量の血がぬかるんだ泥に染みだしていた。敵になってから常々覚悟はしていたが、やは
り辛い。こんな事はしたくなかったと、強く佐助は思う。しかし避けられなかった。ふらつ
きそうになる体を何とか支え、気持ちを抑えるために大きく深呼吸をした。こんな時にさ
え涙ひとつ出ない自分が恨めしかった。
晴れ渡った空を見上げ、佐助は大きく伸びをしてから視線を足下に戻した。そしてか
すがの亡骸を見る。情に厚い大将のことだ、好敵手であった軍神は盛大に弔われる
だろう。墓も立派なものを作るはずだろう。だが、目の前に倒れている哀れなくのいちは、
どんなに軍神から寵愛を受けようと、結局最後は傍によることは許されないのだ。な
らばせめてどこか見晴らしの良い場所に埋めてやろうと、佐助はかすがに向かって屈
んだ。
抱き上げようとしたとき、かすがが泥水を吐いて咳き込んだ。とても弱いが、呼吸もし
ている。かすがは死んでいなかった。佐助の動きが止まる。まだ温かい体からは、血が
どんどんと出ており、その生温かさが佐助の腕に衣を通して間接的に伝わってくる。か
すがはまだ生きているのだ。佐助はかすがを抱いたまま、思わず辺りを見回した。
佐助×かすが(死にネタ)2
来ていた。上杉の本陣だった場所は静寂に包まれている。
遠くで勝ち鬨が上がる。自軍の狼煙も見えた。長かった戦が終わったのだ。佐助は
重荷が降りたように、心がほっとしていたが、同時に大きな喪失感と虚脱感が体を襲
う。力が抜けて、手にしていた手裏剣が手を離れてぱしゃりと水溜りの中に落ちた。そ
のすぐ横にかすが倒れている。顔の半分が泥水につかっており、体からはおびただしい
量の血がぬかるんだ泥に染みだしていた。敵になってから常々覚悟はしていたが、やは
り辛い。こんな事はしたくなかったと、強く佐助は思う。しかし避けられなかった。ふらつ
きそうになる体を何とか支え、気持ちを抑えるために大きく深呼吸をした。こんな時にさ
え涙ひとつ出ない自分が恨めしかった。
晴れ渡った空を見上げ、佐助は大きく伸びをしてから視線を足下に戻した。そしてか
すがの亡骸を見る。情に厚い大将のことだ、好敵手であった軍神は盛大に弔われる
だろう。墓も立派なものを作るはずだろう。だが、目の前に倒れている哀れなくのいちは、
どんなに軍神から寵愛を受けようと、結局最後は傍によることは許されないのだ。な
らばせめてどこか見晴らしの良い場所に埋めてやろうと、佐助はかすがに向かって屈
んだ。
抱き上げようとしたとき、かすがが泥水を吐いて咳き込んだ。とても弱いが、呼吸もし
ている。かすがは死んでいなかった。佐助の動きが止まる。まだ温かい体からは、血が
どんどんと出ており、その生温かさが佐助の腕に衣を通して間接的に伝わってくる。か
すがはまだ生きているのだ。佐助はかすがを抱いたまま、思わず辺りを見回した。
佐助×かすが(死にネタ)2