「いけませぬよ、片倉殿をそのように申されるなど。片倉殿は、政宗殿の事を何より
も大切に思っていらっしゃる方ではありませんか」
政宗の立腹の理由が判らない幸村は、困った表情は崩さずに、それでも彼女を嗜(た
しな)めるような物言いをした。
「…お前は何とも思わないのかよ」
「は?」
「アイツは、はるばる甲斐から来たお前を、理不尽に追い返そうとしたんだぞ!俺の
言い分も無視して、勝手に俺の代弁気取りやがるヤツなんざ、いらねぇ!」
「そうだとしても、きっとそれは、それがしが政宗殿か片倉殿に、何か至らぬ事をし
た所為でございます」
件の『小姑』が耳にしたら、良心の呵責を覚えそうな科白を、幸村はさも当然、とい
った風に口にする。
「違う!お前はなんにも悪くねぇ!悪いのは、みんなあの『小姑郎』だ!」
「──政宗殿」
口調は優しいが、仄かにきつくなった幸村の語尾に、政宗は「だって」と小さく口の
中で呟く。
しょんぼりと背を丸めてしまった政宗を見た幸村は、出来るだけ言葉を選びながら、
ゆっくりと語りかけた。
「……それがしは、本来ならば政宗殿のような雲の上のお方と、生涯相まみえる事
などございませんでした」
「幸村…?」
「ですから、こうしてお姿を見るだけでなく、それがしにとって天上人にも近い貴
方とお話が出来るだけでも、充分に幸せでございます」
も大切に思っていらっしゃる方ではありませんか」
政宗の立腹の理由が判らない幸村は、困った表情は崩さずに、それでも彼女を嗜(た
しな)めるような物言いをした。
「…お前は何とも思わないのかよ」
「は?」
「アイツは、はるばる甲斐から来たお前を、理不尽に追い返そうとしたんだぞ!俺の
言い分も無視して、勝手に俺の代弁気取りやがるヤツなんざ、いらねぇ!」
「そうだとしても、きっとそれは、それがしが政宗殿か片倉殿に、何か至らぬ事をし
た所為でございます」
件の『小姑』が耳にしたら、良心の呵責を覚えそうな科白を、幸村はさも当然、とい
った風に口にする。
「違う!お前はなんにも悪くねぇ!悪いのは、みんなあの『小姑郎』だ!」
「──政宗殿」
口調は優しいが、仄かにきつくなった幸村の語尾に、政宗は「だって」と小さく口の
中で呟く。
しょんぼりと背を丸めてしまった政宗を見た幸村は、出来るだけ言葉を選びながら、
ゆっくりと語りかけた。
「……それがしは、本来ならば政宗殿のような雲の上のお方と、生涯相まみえる事
などございませんでした」
「幸村…?」
「ですから、こうしてお姿を見るだけでなく、それがしにとって天上人にも近い貴
方とお話が出来るだけでも、充分に幸せでございます」
──だから、それ以上の事は望んではいけない。
(この世は戦国、下克上じゃゆきむるぁぁぁ!男なら、いかなる君主であろうが姫で
あろうが、ホレた女子をモノにせんで、どうするううぅぅ!?)
(この期に及んで、まーだウジウジやってんの?ったく、ダンナのニブさとバカさ加
減には、おかん情けなくて涙出てくるよ!竜の旦那だって、いつまでも待っててくれ
ると思ってたら大間違いだぜ?)
あろうが、ホレた女子をモノにせんで、どうするううぅぅ!?)
(この期に及んで、まーだウジウジやってんの?ったく、ダンナのニブさとバカさ加
減には、おかん情けなくて涙出てくるよ!竜の旦那だって、いつまでも待っててくれ
ると思ってたら大間違いだぜ?)
実は、今回の奥州遠征も、他の人間に行かせればすむ事をわざわざ信玄自ら、それも
ご丁寧に長期の滞在日数も加えて、幸村に押し付けてきたのである。
甲斐から発つ時も、信玄やお付きの忍にまで散々言われてきたが、幸村の信念は変わ
っていない。
政宗に会える事は、幸村も勿論嬉しい。
だが、顔を合わせてしまえば、欲張りな己が、それ以上の事を求めてしまうかも知れ
ない。
自分の身勝手な欲望で、この素敵な方を傷付けるような真似をしては……
政宗が聞いたら「スターマインの後でナイアガラ100連発」くらいの勢いで狂喜乱舞し
そうな話だが、元来口下手な幸村からは、何も言葉が出ないので、彼の想いは残念な
がら届きそうにない。
「俺は天上人なんかじゃねぇ。ちゃんと地に足つけて、お前の傍にいるってのに……」
「…政宗殿?」
「な、何でもねぇよ。…もういい。そうだな、俺は今、元親のヤツを接客中だ。だか
ら、これ以上お前の相手は出来ねぇ。……とっとといっちまえ!」
「…はい」
ご丁寧に長期の滞在日数も加えて、幸村に押し付けてきたのである。
甲斐から発つ時も、信玄やお付きの忍にまで散々言われてきたが、幸村の信念は変わ
っていない。
政宗に会える事は、幸村も勿論嬉しい。
だが、顔を合わせてしまえば、欲張りな己が、それ以上の事を求めてしまうかも知れ
ない。
自分の身勝手な欲望で、この素敵な方を傷付けるような真似をしては……
政宗が聞いたら「スターマインの後でナイアガラ100連発」くらいの勢いで狂喜乱舞し
そうな話だが、元来口下手な幸村からは、何も言葉が出ないので、彼の想いは残念な
がら届きそうにない。
「俺は天上人なんかじゃねぇ。ちゃんと地に足つけて、お前の傍にいるってのに……」
「…政宗殿?」
「な、何でもねぇよ。…もういい。そうだな、俺は今、元親のヤツを接客中だ。だか
ら、これ以上お前の相手は出来ねぇ。……とっとといっちまえ!」
「…はい」




