しかし、家臣としては早く世継ぎの誕生を、と望まずにはいられない。
悪いが、ちっと焚き付けさせていただきます。小十郎は心の中で詫びた。
この奥方を揺さぶれば、どういう方向であれ事態は変わるだろう。
「好みでござるか?」
幸村はそんな内心に気づきもせず、食事ではない好みとはなんでござろうと顔にかいてある。
「奥方さんも知っておいででしょうが、政宗様は血の縁に色々とありましてね」
幸村は真面目な面持ちで頷いた。伊達家の世継ぎ争いの話は有名だ。
「そのせいかどうか、マザコンでファザコンでブラコンの気があります」
「まざ…」
幸村は南蛮言葉を使うとは裏切られた気持ちにござる、という顔をした。
「詳しく言っては小十郎が政宗様に叱られますので勘弁を」
「そう言われても、南蛮言葉では解らぬのでござるが…」
予想以上にしょんぼりした様子に、小十郎の心はやや痛んだ。
「まあ、ああ見えて芯の所ではあったかい家族というものに少しばかり夢をみている嫌いがある、包容力のあるような人柄に好感を覚える、てことです。しかし政宗様はそれを感づかれるのは嫌な性質ですので」
幸村は理解できているのかいないのか、眉根を寄せてううぬと唸りながら頭を抱えた。
「…複雑でござるな」
「ま、政宗様も19、年頃ですんでね」
簡単に片付けると、唸りながらも返事が返る。律儀な方なのだと、ふわふわの頭を見下ろした。
「左様でござるか…ぬ!某、政宗殿より年下でござる!
そのうえ日々己の未熟を感じるばかり…お館様のようにはまだまだなれませぬぅぅっ」
そして、突如として幸村はほえた。ぬぅぅぬぅぅと山彦が返る。
目が燃えている。
「……信玄公がどうかしたので?」
「つまり、政宗殿もお館様のようなお方が好き、という事でござろう!ならば我が目標も同じ!いつか、いつかこの幸村、お館様のようにっ!うううぅおおおぉぉぉぉ我が魂、熱く燃え滾るぅぅぅっ」
「――どうも誤解があるようですがねェ」
「心配されずとも!政宗殿が知られたくないのであれば、
この件、胸の奥にしまっておくでござるッ!ただ某が邁進するのみ!」
ひっそりと小十郎は幸村の恐ろしさを噛み締めた。意図した方向にはどうも向かわない。
その上”も”ときた。
「とりあえず、政宗様と決着をつけてみてはいかがで。夫婦ですから命の取り合いは抜き、先に地に膝をついたほうが負け、ということでは?」
刃を交えた決着がつかなきゃ床どころじゃねえな、と呆れを押し隠して進言すると、幸村は力強く頷いて駆け出していった。
悪いが、ちっと焚き付けさせていただきます。小十郎は心の中で詫びた。
この奥方を揺さぶれば、どういう方向であれ事態は変わるだろう。
「好みでござるか?」
幸村はそんな内心に気づきもせず、食事ではない好みとはなんでござろうと顔にかいてある。
「奥方さんも知っておいででしょうが、政宗様は血の縁に色々とありましてね」
幸村は真面目な面持ちで頷いた。伊達家の世継ぎ争いの話は有名だ。
「そのせいかどうか、マザコンでファザコンでブラコンの気があります」
「まざ…」
幸村は南蛮言葉を使うとは裏切られた気持ちにござる、という顔をした。
「詳しく言っては小十郎が政宗様に叱られますので勘弁を」
「そう言われても、南蛮言葉では解らぬのでござるが…」
予想以上にしょんぼりした様子に、小十郎の心はやや痛んだ。
「まあ、ああ見えて芯の所ではあったかい家族というものに少しばかり夢をみている嫌いがある、包容力のあるような人柄に好感を覚える、てことです。しかし政宗様はそれを感づかれるのは嫌な性質ですので」
幸村は理解できているのかいないのか、眉根を寄せてううぬと唸りながら頭を抱えた。
「…複雑でござるな」
「ま、政宗様も19、年頃ですんでね」
簡単に片付けると、唸りながらも返事が返る。律儀な方なのだと、ふわふわの頭を見下ろした。
「左様でござるか…ぬ!某、政宗殿より年下でござる!
そのうえ日々己の未熟を感じるばかり…お館様のようにはまだまだなれませぬぅぅっ」
そして、突如として幸村はほえた。ぬぅぅぬぅぅと山彦が返る。
目が燃えている。
「……信玄公がどうかしたので?」
「つまり、政宗殿もお館様のようなお方が好き、という事でござろう!ならば我が目標も同じ!いつか、いつかこの幸村、お館様のようにっ!うううぅおおおぉぉぉぉ我が魂、熱く燃え滾るぅぅぅっ」
「――どうも誤解があるようですがねェ」
「心配されずとも!政宗殿が知られたくないのであれば、
この件、胸の奥にしまっておくでござるッ!ただ某が邁進するのみ!」
ひっそりと小十郎は幸村の恐ろしさを噛み締めた。意図した方向にはどうも向かわない。
その上”も”ときた。
「とりあえず、政宗様と決着をつけてみてはいかがで。夫婦ですから命の取り合いは抜き、先に地に膝をついたほうが負け、ということでは?」
刃を交えた決着がつかなきゃ床どころじゃねえな、と呆れを押し隠して進言すると、幸村は力強く頷いて駆け出していった。




