『ユリシーズ』(ゆりしーず、原題:Ulysses)は、アイルランドの作家ジェイムズ・ジョイス(James Joyce、1882–1941)が1922年にパリで出版した長編小説で、20世紀モダニズム文学の頂点に位置づけられる。ホメロスの『オデュッセイア』を下敷きに、1904年6月16日(ブルームズデイ)のダブリンを舞台にしたわずか18時間の出来事を描く。日本語訳では集英社文庫ヘリテージシリーズの丸谷才一・永松定・高松雄一鼎訳(全4巻)が定番で、詳細な注釈付き。柳瀬尚紀訳(河出書房新社、『ユリシーズ1–12』まで完訳、遺稿試訳あり)も革新的だが未完。物語は3部18挿話(章)で構成され、各挿話が異なる文体・技法で語られる。
概要
第1部(テレマコス挿話):スティーヴン・ディーダラス(ジョイスの分身、若い知識人)が登場。塔での朝、海辺の思索、新聞社訪問。
第2部(オデュッセウス挿話):主人公レオポルド・ブルーム(中年広告取り、ユダヤ系)の1日。朝食作り、葬式、編集部、酒場、病院、売春宿など。妻モリーの不倫を察しながら街を彷徨う。
第3部(ペネロペイア挿話):モリーの独白で締めくくり、意識の流れが極限まで展開。
第2部(オデュッセウス挿話):主人公レオポルド・ブルーム(中年広告取り、ユダヤ系)の1日。朝食作り、葬式、編集部、酒場、病院、売春宿など。妻モリーの不倫を察しながら街を彷徨う。
第3部(ペネロペイア挿話):モリーの独白で締めくくり、意識の流れが極限まで展開。
最大の特徴は「意識の流れ」(stream of consciousness)技法の極致、各章の文体模倣(新聞、劇、音楽、俗語など)、神話的対応(ブルーム=オデュッセウス、スティーヴン=テレマコス、モリー=ペネロペイア)。猥褻描写で出版当時禁書扱いされたが、日常の平凡さを神話的に昇華させ、言語の可能性を極限まで広げた。両作品は20世紀文学の双璧としてしばしば並べられる。カフカの『変身』は不条理な個の疎外を一人の変身で凝縮し、ジョイスの『ユリシーズ』は日常の膨大な断片を神話的構造で総体化する。どちらも「なぜ?」を問うのではなく、「それでも生きる」人間の姿を、革新的な形式で描き出した不朽の傑作だ。