オープニング ◆CFbjQX2oDg
「うわあぁ、寝ちゃってたよ! たっくん!どうして起こしてくれなかったのさ!
今日は洗濯物の配達やお手伝いが山の様にあるんだよ!……ってあれ?」
今日は洗濯物の配達やお手伝いが山の様にあるんだよ!……ってあれ?」
菊地啓太郎が目を覚ますといつもの風景はそこには無く、暗闇に包まれていた。
周囲にはぼんやりと灯りが存在し、この建築物全体の巨大さが伺える大きな柱や豪華な装飾の付いた照明器具が見えた。
それら周囲の情報は“お城の大広間”。そんな印象を啓太郎に与えた。
自分以外にも何人かの人影が見えるが、照明の具合が調整されているのだろうか顔まではわからない。
ただ、どう考えても普段のクリーニング屋では無いことだけは確かだ。
啓太郎にはそれ以上の答えは出せそうに無かった。
周囲にはぼんやりと灯りが存在し、この建築物全体の巨大さが伺える大きな柱や豪華な装飾の付いた照明器具が見えた。
それら周囲の情報は“お城の大広間”。そんな印象を啓太郎に与えた。
自分以外にも何人かの人影が見えるが、照明の具合が調整されているのだろうか顔まではわからない。
ただ、どう考えても普段のクリーニング屋では無いことだけは確かだ。
啓太郎にはそれ以上の答えは出せそうに無かった。
『みんな目が覚めたみたいだね。はい、注目ー』
壇上と表現するのが正しいだろう。
広間の中で一段高くなっている部分にそいつは現れた。
マジシャンが登場する時の様にスポットライトのような何かが周囲をランダムに照らしながら壇上へと光を集めていく。
広間の中で一段高くなっている部分にそいつは現れた。
マジシャンが登場する時の様にスポットライトのような何かが周囲をランダムに照らしながら壇上へと光を集めていく。
(あっ、たっくん? けど……)
一瞬見知った人間の顔が見えた気がして近くに寄ろうとしたけれど、
頭の奥底の自分が意識を壇上から逸らしてはいけないと言っている気がしてその場から動けなかった。
頭の奥底の自分が意識を壇上から逸らしてはいけないと言っている気がしてその場から動けなかった。
ライトに照らされたそいつは子供のような体格にワンピースのようなローブを身に纏い、トンガリ帽子を被っている。
まるで幼稚園か小学校のお遊戯会から抜け出してきた格好だ。
まるで幼稚園か小学校のお遊戯会から抜け出してきた格好だ。
――大きな一つ目であることを除けば。
オルフェノクとも違うが決して人間では無い風貌の少年?の登場に背筋に冷たいものを感じた。
啓太郎自身も何度かオルフェノクに襲われたことがあるが、どの経験にも属さない得体のしれない感覚に襲われた。
啓太郎自身も何度かオルフェノクに襲われたことがあるが、どの経験にも属さない得体のしれない感覚に襲われた。
「今からお前ら同士で殺し合ってもらうよー」
軽い。
あまりに軽く言われた発言に何人が気づいただろうか。
自分達が巻き込まれた残酷でな運命に。
あまりに軽く言われた発言に何人が気づいただろうか。
自分達が巻き込まれた残酷でな運命に。
「一人で先に始めちゃ駄目じゃないか、ピロロ」
別の声が広間に響く。
いつの間にか、顔の全てを覆う仮面を付け、身の丈ほどもある大きな鎌を携えた長身の男が壇上にいた。
いつの間にか、顔の全てを覆う仮面を付け、身の丈ほどもある大きな鎌を携えた長身の男が壇上にいた。
「ごめんよ、キルバーン」
「まったく。これは大事な大事な計画(プラン)なんだからね? 手順はしっかりと守らないと」
日常で親が子供に指導するかのような和やかな会話をする二人。
その風貌の怪しささえ無ければ微笑ましい気持ちさえ抱きそうになる。
だが、当然のことながら現状はというと非日常に分類される。彼らの会話が周囲に与える感情はその真逆だ。
広間に集まっている大勢が彼らの口から紡がれる情報に飢えている。
そのような状態になっていることに気づいているのか死神は振り返りながら話を本筋に戻す。
その風貌の怪しささえ無ければ微笑ましい気持ちさえ抱きそうになる。
だが、当然のことながら現状はというと非日常に分類される。彼らの会話が周囲に与える感情はその真逆だ。
広間に集まっている大勢が彼らの口から紡がれる情報に飢えている。
そのような状態になっていることに気づいているのか死神は振り返りながら話を本筋に戻す。
「あぁ、放置していてすまない。改めて自己紹介するよ。僕は司会進行役を担う死神キルバーン。こっちは相棒のピロロ。よろしくね。
そして、改めて僕の方から宣言させてもらおう」
そして、改めて僕の方から宣言させてもらおう」
「君たちには殺し合いをしてもらう」
殺し合い?
言葉の意味は至極単純なのに啓太郎にはまったく理解出来ない。
ただ生唾を飲み込んで何故か震える足を必死に地面に縫いつけることに必死になっている。
言葉の意味は至極単純なのに啓太郎にはまったく理解出来ない。
ただ生唾を飲み込んで何故か震える足を必死に地面に縫いつけることに必死になっている。
「簡単に説明するからよく聞いておいてね。ルールは単純明快。『最後の一人になるまで殺し合え』
それぞれに食料などを含めたサバイバルグッズ一式とランダムに割り振られた武器となるものを支給してあげるから頑張ってね」
それぞれに食料などを含めたサバイバルグッズ一式とランダムに割り振られた武器となるものを支給してあげるから頑張ってね」
予め用意された文章を読み上げるような口調で淡々と言い放つ死神。
「その他にも禁止エリアやら放送やらの殺し合いを円滑に進めるために用意したお約束を記した本を入れておくから各自読んでおくように」
「おくように!」
(とっとにかく大変だ! たったた、たっくんの所に行かなくちゃ……! あれ…?身体が…動かない?)
心の内では街中でオルフェノクに遭遇した時のように慌てている啓太郎だが身体の方がいつもと違う。
見ることも聞くことも考えること出来るのに手足が固まった様に動かない。
見ることも聞くことも考えること出来るのに手足が固まった様に動かない。
「大体わかったかな? 何か質問はあるかな?」
死神は話を一旦区切ると周囲を見渡すように見渡した。
「ミスラ。薄々感ずいていたが、やはりお前もそこにいるんだな」
広間の隅の柱にもたれ、腕を組んで佇む赤髪の男が発言する。
男の発言と同時に照明も男の元に集まり、ミスラと呼ばれた女もその言葉に呼応するかのように照明の元に現れた。
男の発言と同時に照明も男の元に集まり、ミスラと呼ばれた女もその言葉に呼応するかのように照明の元に現れた。
「そうさ、僕たちは元々仲間じゃない。弥勒、僕と君とはここまで同じ道だっただけに過ぎない。
ここから未来(さき)は道が別れていた。ただそれだけの話さ」
ここから未来(さき)は道が別れていた。ただそれだけの話さ」
「そこの死神と組んだのも“星を喰う”ためか?」
「答える必要は無いね。天を気取っていた君も、所詮は他の者同様に地を這い蹲っていたんだよ」
舌打ちをしながら赤毛の男が押し黙る。
女の言葉を最後に二人に当てられていた照明が再び死神の元に集う。
女の言葉を最後に二人に当てられていた照明が再び死神の元に集う。
「二人だけの世界はここまでにしてね。奇術師の仕事は皆を楽しませることだからね」
どこからともなく取り出したトランプの束を空中でシャッフルしていた。
一流の奇術師のジャグリングを壇上で披露する死神に対して場違いにも
一流の奇術師のジャグリングを壇上で披露する死神に対して場違いにも
「いいぞーもっとやれ。尻に剣を挟む剣士よりすげえぞ!」
や
「勇者殿ーワシの踊りの方がすごいですぞ。こっちも見てくださ…何故動けんのだー
勇者殿が動けないだけなら踊りを見せるチャンスだと言うのに!」
勇者殿が動けないだけなら踊りを見せるチャンスだと言うのに!」
と声がしたが誰も相手にはしなかった。
勿論死神も無視している。
そして、壇上の死神の手には一枚のカードがあった。
勿論死神も無視している。
そして、壇上の死神の手には一枚のカードがあった。
「“ハートの8”。ハートは僕からの愛だよ。死にゆく君たちへの餞さ。
気づいたかい?たった今君たちの首にはリングを巻かせて貰ったよ。今回のは僕の自信作なんだ」
気づいたかい?たった今君たちの首にはリングを巻かせて貰ったよ。今回のは僕の自信作なんだ」
「なんたってとある都市や企業の技術を教えてもらったからね!」
「しーっ。駄目じゃないかピロロ。それは内緒にする約束だっただろ?」
「あはは、ごめんよ」
「まぁ良いか。この罠(トラップ)はある一定条件で起動するんだ
・禁止エリアに侵入した場合
・会場から逃げ出そうとした場合
・無理やり外そうとした場合
てな具合にね。他にも細かな仕様はあるけれど、大体はそんな感じだ」
・禁止エリアに侵入した場合
・会場から逃げ出そうとした場合
・無理やり外そうとした場合
てな具合にね。他にも細かな仕様はあるけれど、大体はそんな感じだ」
「ねぇねぇ、キルバーン。禁止エリアってどういう意味?」
「あぁ僕としたことが忘れていたよ。後で地図を見ればわかると思うけれど会場はマス目になっているんだ」
「へーそれで?」
「君たちが殺しあえば、人数が減るだろ? そうなれば出会いにくくなる。そのために時間経過と共に進入禁止エリアを設ける。
そこに入ると首輪が起動するってわけさ」
そこに入ると首輪が起動するってわけさ」
「起動するとどうなるのー?」
「起動についてはやっぱり実例を見せた方がいいよね」
「やっと私の出番ですね、とミサカはデートに遅れてきた彼氏に対する態度のように溜息混じりに呟きます」
現れたのは中学生くらいの少女だった。
灰色のプリーツスカート、白いワイシャツの上にベージュのサマーセーターを来て、頭には不釣合いな暗視ゴーグルを付けている少女が現れた。
灰色のプリーツスカート、白いワイシャツの上にベージュのサマーセーターを来て、頭には不釣合いな暗視ゴーグルを付けている少女が現れた。
「彼女には実験台になってもらうからね。一度しかしないから良く見てね」
と言葉を続ける死神。
笑顔が張り付いた仮面がさらに微笑んだように感じた。
笑顔が張り付いた仮面がさらに微笑んだように感じた。
ボンッ
「ん~~最ッ高! やっぱ“ハートの8”の一番の魅力は綺麗な花火があがる瞬間だよね」
飛んだ。
花火と喩えられた少女の頭は火花と共に弾け飛び、そして地に落ちた。
頭に付けていた不釣合いなゴーグルが外れて床に転がっていった。
花火と喩えられた少女の頭は火花と共に弾け飛び、そして地に落ちた。
頭に付けていた不釣合いなゴーグルが外れて床に転がっていった。
静まり返った広間の中で大きな歯ぎしりと人体を無理やり曲げた様な不快な音が聞こえた気がしたけれど
結局誰も動くことは無くそれが誰の発した音なのかまではわからなかった。
結局誰も動くことは無くそれが誰の発した音なのかまではわからなかった。
「さてと、僕らからの催しはこの辺で。それでは登場していただきましょう。我らが主にして、今回の催しの偉大なる主催者。一同ご刮目あれ」
それまで死神たちを照らしていたスポットライトが壇上の一点に集まる。
「大魔王バーン様の登場だ~」
豪華な作りの椅子に腰掛けた老人が姿を見せる。
見た目はただの老人。風貌の異様さだけを見れば死神の方が数段上だ。
だが、周囲にいたほとんどの人間が頭ではなく心で理解した。
老人の内に秘められた圧倒的な何かを。
広間の空気が数段階重くなった。
見た目はただの老人。風貌の異様さだけを見れば死神の方が数段上だ。
だが、周囲にいたほとんどの人間が頭ではなく心で理解した。
老人の内に秘められた圧倒的な何かを。
広間の空気が数段階重くなった。
「余が大魔王バーンだ。この度は余のために集まって貰って感謝しておる。
催しのゲストであり主役でもある君たちには是非とも楽しんでいってもらいたい」
催しのゲストであり主役でもある君たちには是非とも楽しんでいってもらいたい」
「この催しを優勝した者には余から褒美をさずける。
富、名声だけでなく、死者の蘇生と何でも叶えることを大魔王の名に懸けて約束しよう」
富、名声だけでなく、死者の蘇生と何でも叶えることを大魔王の名に懸けて約束しよう」
「ふざけるな! バーン!! お前の言うとおり仲間同士殺し合うわけないじゃないか!」
大きな剣を背負う少年が叫ぶ。
少女を爆殺したものと同じ首輪を嵌められているにも関わらず少年は勇敢にも立ち向かう。
少女を爆殺したものと同じ首輪を嵌められているにも関わらず少年は勇敢にも立ち向かう。
「落ち着くのだ。竜の騎士……いや、勇者ダイと呼んだ方が良いか?」
しかし大魔王と呼ばれる老人はまったく揺るがない。
川を流れる一枚の木ノ葉の様に、勇者と呼ばれる少年の感情を込めた叫びを受け流す。
川を流れる一枚の木ノ葉の様に、勇者と呼ばれる少年の感情を込めた叫びを受け流す。
「この場でお前を倒す! さっきの女の子の敵は討つ! そうすれば人々は平和な世界で暮らせるんだ!」
少年が背負った剣の宝玉が輝きだす。
少年は剣を逆手に構えて何やら力を溜めているようだ。
その構えから繰り出される技は今までのどの強敵も切り裂いてきた。
その技は大地を斬り、海を斬り、空を斬り――
少年は剣を逆手に構えて何やら力を溜めているようだ。
その構えから繰り出される技は今までのどの強敵も切り裂いてきた。
その技は大地を斬り、海を斬り、空を斬り――
――そして、全てを切り裂く究極の奥義
「アバンストラッシュ!!!」
バーンを名乗る老人と大分距離が離れたところで少年は叫びと共に剣を振り切る。
だが、少年と老人の問答を注視している周囲の者達のなかに、それを愚行と思う者はいない。
なぜなら当然のように少年の剣の切っ先からエネルギーの塊のような光が老人に向かっていったから。
だが、少年と老人の問答を注視している周囲の者達のなかに、それを愚行と思う者はいない。
なぜなら当然のように少年の剣の切っ先からエネルギーの塊のような光が老人に向かっていったから。
トン……
少年の放った閃光は切り裂いた。
ピンクのジャージを纏った少女を。
少女はジャージに隠された豊かな胸部と腹部を境に、二つになった。
上半身だけとなった少女の口が何かを伝えようと微かに動くが音を発することは無かった。
上半身だけとなった少女の口が何かを伝えようと微かに動くが音を発することは無かった。
「滝壺おおおおおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ」
また別の少年の叫び声をBGMにしながら大魔王バーンは午後のティータイムの様に動じずに言う。
「勇者ダイよ。まだ開幕の合図はしていないぞ? まぁお前が殺る気になってくれるのなら多少のフライングは見逃してやろう」
「では、これより殺し合いの儀を開幕する!!」
老人のその言葉が紡がれると同時に、その場にいた者たちにスポットライトが一瞬当てられて
そして忽然と姿を消した。
そして忽然と姿を消した。
【滝壷理后@とある魔術の禁書目録 死亡確認】
【CFロワイアル開幕】
【残り 83名】
【残り 83名】
◇ ◆ ◇
「お疲れ様です。バーン様」
ワイングラスを片手に微笑む老人の背後から声がする
「キルバーンか。どうだ、首尾の方は?」
「大体完了ってところですかね。随所に僕の独断でやらせてもらった部分もありますが構いませんね?」
「よい、貴様に頼んだということはそういう部分も含めてということだ。それを知ったうえで余に聞いているのだろう?」
「おやおや、流石はバーン様。懐が広い」
「ねぇねぇキルバーン。『押し屋』は僕らにとっての『ジョーカー』なの?」
「フフッ。彼は違うよピロロ。彼はあくまでビジネスライクな付き合いさ。言わば僕と同業者だね。
彼には一度依頼しただけだよ。何人かの写真を渡してね」
彼には一度依頼しただけだよ。何人かの写真を渡してね」
「ハハッ。じゃああのタイミングで動いたのは予想外だったわけだね!」
「まぁ良いんじゃないかな。結果としてバーン様も見逃してくれたわけだし」
「ミスト。余の友に今回の殺し合いの『計画(プラン)』の経過を伝える任を頼むぞ」
「…………承知致しました。全ては大魔王様のために」
「ミスラ。お主も自由にするが良い」
「もとよりそのつもりさ。弥勒と同様に貴方達とは今のところ道が同じなだけだからね」
「余にもこの参加者たちの行く末が読めん。まずはゆっくりと経過を楽しむとするかな」
| 投下順 | ベスト・プレイスを求めて |
| 時系列順 | ベスト・プレイスを求めて |
| GAME START | 菊池啓太郎 | [[]] |
| GAME START | 天戯弥勒 | [[]] |
| GAME START | ダイ | [[]] |
| GAME START | 浜面仕上 | [[]] |
| GAME START | ニケ | [[]] |
| GAME START | アドバーグ・エルドル | [[]] |
| GAME START | 滝壷理后 | GAME OVER |
| GAME START | キルバーン | [[]] |
| GAME START | ピロロ | [[]] |
| GAME START | ミスラ | [[]] |
| GAME START | ミストバーン | [[]] |
| GAME START | バーン | [[]] |
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