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― Am 5:00・混沌世界 ―
それは世界の夜明け
今日はまた、昨日と同じように明日になっていく
そして…
キ ラ ン ――――― 🌟
小金色に明けゆく空の遥か上空に、彗星が流れていく
ヒ ュ ン ―――🌟 ヒ ュ ン ―――🌟 ヒ ュ ン ―――🌟
ひとつ、またひとつと彗星は眩い輝きを放ちながら、ゆっくりと飛んでゆく
その行く先は、誰も知らない
――――― フ ワ ァ … ッ … !
そして、明け方の空に描かれた12本の軌跡と共に、小さな、それはとても小さな光が真っすぐに自由落下する
世界へと落ちゆくそれは、一人の人間だった―――
まえがき
この本を手に取ってくれたあなたへ
いま、あなたは何かを求めてこの本に手を伸ばしたことでしょう
それは衝動的なものか、意図的なものか、偶然か、必然か…
理由なんてはっきりわからないかもしれない、けれど…
ほんのわずかな好奇心が、ときめきが、色褪せた日常を色づけるように
きっとこの出会いはあなたの人生を豊かなものにしてくれる
それってとても素晴らしいことだと思いませんか?
ヒ ュ ォ ォ ォ ォ … ッ … ―――
彗星たちが四方八方へと飛散する中、その人間は頭から真っ逆さまに、地上に向かっていく―――
これから、あなたの前に様々な出会いと別れのお話が広がっていく
例えば…
財宝が眠る島を探索したり
ゲームのように勇者になって魔王を倒したり
過ぎ去った青春をやり直したり
とても大きな桜の木の下で花見をしたり
手を伸ばしても届かなかった月に届いたり
空飛ぶ方舟に乗って歌を口ずさんだり
そんな、聞けば誰もがわくわくするような物語が
ページを開いた先に待っているとしたら?
そんな数々の楽しい冒険を歩みたくなることでしょう
でもこのお話は、まだ未完成なんです
あなたも、私も、誰も、どのような結末を迎えるのか知らない
その続きは、誰が描くのか
…もう、気づいたのではありませんか?
だってあなたは、この本を手に取った瞬間から、物語の主人公になったのですから
だから、いつか結末まで辿り着いたその時に聞かせてください
あなたが、あなた自身で描いてきた物語への"想い"を―――
あなた「―――――――(光は人となり、人は登場人物となり、物語の中へと落とし込まれていく―――)」
12の彗星はその「一人」を残して、やがて消え去った
そして、夜がおわり、はじまりの朝を迎える―――
さあ、はじまりますよ
『 僕 ら の 物 語 』
序章 "そして想い届くとき"
Song♪:『始まりは君の空』 / Liella!
DJサガラ「ハッロォ~!
カオスワールド!DJサガラのノーミュジック・ノーライフの番組へようこそッ!さあ、番組のはじまりにお送りしたのは!新進気鋭の超新星アイドルグループ「Liella!」による『始まりは君の空』だぜー!(
寄宿舎の大画面テレビにて放送されている) 」
DJサガラ「先日カオスシティのライブイベントで初披露された、彼女たちにとってはじまりの一曲!「初めてのこと・未知のことに挑戦する不安と、それを乗り越えるための仲間との結託」がテーマとなっているんだぜ!俺もライブを生で観たとき!フレッシュでエネルギッシュな輝きに目が眩んじまいそうだったぜー! 」
優木せつ菜「ほわわぁ~っ…!✨ また新しいアイドルメンバーの誕生ですね!すごいです!最高です!(テレビに映るLiella!のライブに感激している) 」
桐生戦兎「すごいでしょ!?最ッ高でしょ!?てぇんさぁいでしょ!?(過剰反応) 」
バンジョー龍我「オイセントォ!! オマエジャネェッ!! 」
ドルオタの猿渡カズーミン「は?アイドルはみーたん以外認めーねかんな俺?(みーたんグッズをフル装備してバンジョー龍我の後頭部にドリルくちばし) 」
バンジョー龍我「オレハダレモコロシテネェッ!!! ウワァーッ!!!! 」
飛電或人「新しいアイドルのライブがあったらしい!はいッ!アルトじゃ~~~~~~ないとおおおおおおーーーッ!!!!!m9( ゚Д゚ ) ……俺もライブ観たかった…orz 」
イズ「今のは、「新しい」と「あったらしい」をかけた、或人社長の久方ぶりのギャグでございます。 」
千夜「まあ♪ みなさん可愛いわね~♪ (ライブ映像を観てうふふと笑んでいる) 」
盛るペコ「そんなことより肉を盛るペコ!ついでに千夜の肉ももっと盛るペコ!手遅れになっても知らんぞォーッ!!!(迫真のシリアルフェイス) 」
ブロリー「 う゛ る゛ さ い゛ ッ゛ (盛るペコを両手で持ち上げて捻り潰す) 」
盛るペコ「 オ゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ァ゛ ッ゛ ! ! ! !(ジュースミキサーのように捻られる) 」
デデンネ「(モルペコから)肉汁が出デンネエエエエェェェ!!? 」
タブンネ「タブンネ゛エ゛エ゛エ゛エ゛エ゛ェ゛ェ゛ェ゛!!! 」
DJミミッキュ「僕はピカCHUじゃないYO、ミミッQだYO★ 」
はらぺこあおむし「(長期休暇が終わったのでハロウィンのアルバイトをしている) 」
ダイサトシ「うるせーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!(ポケカス共にダイナックルの鉄槌を下す) 」
ちゃちゃまる「うおー!歌って踊れるなんてアイドルってスゲーなー!オイラもアイドルになって自慢の筋肉を見せつけたいぞー!ふんふんー! 」
圧倒的問題児男子高校生「もう歌うしかねえぜええええええええええええええええ!!!!ほわっ、ほわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(音大合格不可避の美声で歌う) 」
ユージ「どおおおおおして俺の判定は30点なんだああああああああああああああああああああ!?!?!?!?!?!?!?(自前のカラオケボックスを蹴り飛ばす)俺の実力はこんなもんじゃねだるおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?!?!?!?!? 」
ソック・リー「おおおおおおおおおおおおおおおおれは天才ッ!!!!!!!!なんでもできるんだああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!アイドルだって受かってやるんだよおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!! 」
秀才「男どもにぃ~wwwwラブライブ出場なんてないと思うんですよ~wwwwwう☆んwwwwえ?wwwあるんすか?wwwwwいやないないないないwwwwwwwwwwwwwww 」
バル艦長「いやー、あんときのライブ会場で食った焼き鳥の味は今でも忘れられん。あれだけでご飯10杯はいけるで。 」
水兵ワドルディ「環跳(※誤字)!思い出の入れ様が別ベクトルなんですが!!!あ、限定イノリ三枚抜きしたラッキー(スマホ片手にポッキーを頬張っている) 」
アックスナイト「前から思ってたこと言っていいか?たぶんこいつ月々の通信量より携帯代金で飛んでる気がするぞ。 」
メイスナイト「もうやめるダス!ワドルディとスマホのライフはとっくに0ダス!!それ以上は地獄ダス!!! 」
メタナイト卿「部下の携帯代によって返済を催促されるのは上司である私の責任だ。だが私は謝らない。 」
Dr.マリオ「新しいアイドルグループ「Liella!」が初ライブを披露→誰もがこぞってラブライブへの出場を夢見る→予選で大勢のグループによる血も涙もない熾烈な争いが繰り広げられる→どこの業界も体は闘争を求めている→大乱闘スマッシュブラザーズの新作が発表される。しかし… 」
うまぴょい伝説の英雄ニコリン「俺以外うまぴょいするな(うまぴょい♪うまぴょい♪) 」
デージー「P・I・Z・Z・A ピッツァ! P・I・Z・Z・A ピッツァ! ピーザ屋wwwピザ屋ピーザ屋www(囚人!)ピーザ屋wwwピザ屋ww高!殺!意ーーーーー(デスボ)!!!! ピーザ屋wwwピザ屋ピーザ屋www(終身!)ピーザ屋wwwピザ屋でアル!バイ!トォーーーーー(裏声)!!!!(ピザ屋の
トラックで寄宿舎へ突撃する) 」
ヒロ「す、すっげえ…(画面に見とれている)また新しい期待のアイドルが現れたな…! 」
トランクス「最高過ぎるんです!やっぱり最高過ぎるんですよラブライブは!ヒロさーん!良かったら今度一緒にライブ行きませんかー!? 」
天王寺璃奈「新しいアイドル…『Liella!』…!すごく、可愛くて…輝いてる。応援したい。璃奈ちゃんボード〖*≧▽≦*〗わくわく! 」
天啓猫「推しがいると人生楽しくなれるよ。(説明しよう!ドルオタグッズをフル装備したこの猫の名は「天啓猫」!人々に、天啓を与えるのだ!) 」
鳴滝「おのれディケイドォーッ!!ラブライブってのはなんて素晴らしいんだ!ちなみに私は桜内梨子派だ!(聞いてない)(セブイレで買ってきたであろうタマゴサンドを頬張る) 」
飛電或人「お、ヒロにせつ菜に璃奈まで!みんな新しいアイドルに釘付けだな!(うんうんと頷く)よ~し…こうなったら俺も、アイドルヒューマギアってのを作ってみようかな~? 」
優木せつ菜「観ましたかみなさん!?『Liella!』は、結ヶ丘女子高等学校に通う五人の生徒が結成した全く新しいスクールアイドルグループなんですよ!上海出身の唐可可ちゃん、ダンスとまんまるとしたものが好きな嵐千砂都ちゃん、ギャラクシーなカリスマ巫女である平安名すみれちゃん、様々な習い事をして多様なスキルを持つ葉月恋ちゃん、そして!センターを飾る澁谷かのんちゃん!このメンバーが織りなす音楽が今後どのように皆さんの心にインパクトを与えていくのかとっても気になりますね! 」
天王寺璃奈「せ、せつ菜さん…すごい気迫…〖 ; '∀' 〗(相変わらずのマシンガントークに圧倒されてる) 」
ヒロ「く、詳しいなせつ菜ちゃん…もうそこまで調べてるのか…(璃奈と同じく驚いた顔で)お、或人も張り合う気か!俺はー…張り合わないや。彼女たちを応援する側でいたいからな(肩を竦めながら) 」
DJサガラ「…さて!そんじゃあ今日も張り切っていってみようぜ!まずは最新のホットなニュースからだぃー!5月10日の朝5時!なんと…このカオスワールドに彗星が流れたって話だ! 」
優木せつ菜「くぅ~~~~っ!やっぱりスクールアイドルって良いですよねー!✨私も「Liella!」のみなさんを応援したくなります!それに、私たち虹ヶ咲学園も負けていられません!新メンバーの栞子さんを加えた新生虹ヶ咲はまだまだ始まったばかりですからね!(ふんすっ)……彗星?わあ!ロマンチックですねえ~!✨ 」
DJサガラ「おっと?そこの画面の前の君!「なーんだぁ…」と思っただろう?チッチッチッ…ただの彗星じゃないぜ?流星群!…というほどじゃねえが、12個の彗星が次々と、それも…とびきりゆっくりと飛んでいく姿が確認されたようだぜ!あまりにもゆっくりすぎて、多くの目撃情報が後を絶たないんだぜ!視聴者から寄せられた映像を見てみよう! 」
放送画面の8割に開かれた別ウィンドウに、12の彗星が緩やかな速度で軌跡を描きながら飛んでいく光景が映し出される
DJサガラ「おおっ!本当にゆっくりだ!ゆっくりし過ぎて、思わず欠伸が出ちまいそうだぜ!ま!朝の五時ともなりゃあみんなまだまだ布団で寝ていたいよなー!?それはそうと!こいつは何かの前触れだろうか?なんだかとってもカオスなことが起こりそうな気がするぜ!」
ヒロ「…………お、おう。あぁ、そういや新しい子が加わったんだったな。これからが楽しみだね…(うんうんといった顔で)彗星か…夜に見たら最高だろうなぁ…ゆっくり?普通彗星ってこう、バァーッて輝いて飛んでくような…(ぉ 」
飛電或人「へぇ~…彗星かぁ~…!ちなみにこの腕時計は防"水性"!はいっ!アルトじゃないとーーーー!!m9( ・`ω・´) 」
宮下愛「蛇口を捻ったらちゃんと締めないとねー!節"水せい"!なんてね!(或人のギャグに便乗するように現れる) 」
ヒロ「……ダジャレコンビが現れた!?(愛を見て) 」
イズ「はい。普通、観測される彗星の中でも時速2万~10万越えですが、今の速度を目視すると圧倒的にそれ以下の早さとなりますね(ヒロに) 」
飛電或人「どわっ!?で、出やがったな…!(愛に驚き飛び退く)へぇー…でもそうだよなぁ。あんなに遅い彗星って俺見たことも聞いたこともねえぞ。もしかしたら、まだ反対側の世界を呑気に飛んでいたり…するかもなぁ~!(はははと陽気に笑いながら) 」
ちゃちゃまる「なんだってー!?(或人の言葉を聞きつけ)よーし、じゃあオイラと彗星、どっちが早いか競争してやるぞー!ふんふんー! 」
ペニーワイズ「よく言った!(大量、一つはラジコンのアンテナ付きの風船をちゃちゃまるにくくりつける)最初の軌道しか指定できないけど、極力彗星に向けるから頑張れよー 」
ヒロ「………………下手したら俺たちが走っても追いつけたりしてなー…なんつって(イズに) 」
ちゃちゃまる「 ぴ え ん (大量の風船によって飛んでいく。風船の中に「ちゃちゃまる君の空飛ぶお家」近日公開!の宣伝メッセージが描かれている) 」
優木せつ菜「あっ、じゃあ今から練習も兼ねて走ります?彗星に向かって走れ~!なんて…あはは!(* ^ᗜ^ *) ペカー✨ 」
「――――――」
宮下愛「おっ、ジョギングかい?愛さんに追いつけるかなー? 」
「―――――――――」
何処からともなく声が聞こえる。
天王寺璃奈「うぅ…今からランニングはちょっと………?(ふと、誰もいない方角へ振り返る) 」
誰の声かは分からない。それでも、確かに「誰か」の声がする。
ヒロ「うおっ、アクティブ組の火をつけちゃったかな?(せつ菜と愛を見て)…どうしたの?(璃奈に 」
飛電或人「…ん……?(璃奈と同様に、こちらも違う方角へ振り返る)……なあ、誰か俺を呼ばなかった? 」
聴いたことなどないはず…なのに、どこか記憶の奥底に眠るような懐かしい声が、彼らの耳に届く。
天王寺璃奈「………聞こえる…(思わずボードを外し、声のした方角を指しながらヒロにそう応える) 」
イズ「或人社長……? 」
飛電或人「ん…あ、いや…てっきりせつ菜の(でかい)声が耳に響いたのかなって思ったけど…これは彼女の声じゃない。なんだ…誰だ…?(四方八方を見渡す) 」
優木せつ菜「えっ!!?私の声がどうかしましたか!!?(※キンキンに鳴り響くクソデカボイス)…でも、確かに私も聞こえました!外で誰かが呼んでいるのでしょうか…? 」
ヒロ「聴こえる…?(璃奈の指差した方向を見て)そっから、聴こえるんだね?(璃奈に)…助けを呼んでるのかな…? 」
宮下愛「実は愛さんもさっきから聞こえてたのよね。幻聴かな?と思ったけど…みんながそう言うなら間違いないね! 」
天王寺璃奈「……………!(そして、まるでその声に誘われるかのように寄宿舎を飛び出した) 」
宮下愛「あっ、りなりー!?待ってよ~!(突然飛び出した璃奈を追いかけるように、自分も寄宿舎を飛び出した) 」
優木せつ菜「むむっ!?璃奈さんが何かの反応をキャッチしたようです!これは冒険のにおいがします!ヒロさん、或人さん!私たちも行きましょう! 」
飛電或人「あ、ちょ…!?……しょーがねえなぁ~…!(後頭部を掻きながら虹ヶ咲の面々を追いかける) 」
ヒロ「…………璃奈ちゃん!?(飛び出した璃奈、追いかけていく愛を見て)…よし、行こう!(みんなを追いかける) 」
― 色泉 ―
あなた「……………(湖の端にしがみつく様に、一人の人間がそこで気を失っていた) 」
カ ッ ! (真っ暗な空間にスポットライトの閃光が迸る。光の先に、一人の少女。少女は、舞台の上で両手を胸元に重ねて立っていた)
ある小さな町に、ひとりの少女がいました。
少女は貧しい家で生まれ、育ちました。
学校や町の子供たちの手には、たくさんのもので溢れていました。
お金、食べ物、玩具、本…望めばなんでも大人から与えられる。でも、少女は何も与えられませんでした。
お金も、食べ物も、楽しいモノもない。あるのはただの空虚。空っぽで、虚しい、なにもない。
でも、そんな少女には毎日の楽しみがありました。夜になり、少女は布団の中へ潜り込んで息を深く吸って眠りにつきました。
やがて、少女が待ち焦がれていた「夢」が現れます。
「夢」は少女にとって唯一の楽しみであり、希望でした。自分の望むものがすべて手に入る。自由で、幸福で、何ひとつ不自由のない世界。
夢の中で少女は歌います。青白い空の下で色とりどりの花が揺れている園の中心で。
でも、楽しいひと時はあっという間に過ぎていきます。
目が覚めたら何もかもが消えて失っていく。それでも少女は、悲観することはありませんでした。
だって、また夜が来れば「夢」を見られるのだから。
なにもないけれど、なにもないから、なにもかもを受け入れてくれる。
そんな「空白の箱庭」こそが少女のすべてでした。
『空白の箱庭』 / 第一幕
― 色泉 ―
天王寺璃奈「はっ…はっ…はっ……!(寄宿舎の近くにある林を潜り、木漏れ日の差す小道を無我夢中に駆け抜けていく) 」
宮下愛「おーい…!りなりー、待ってよー!はっ、はっ……!(あのりなりーが、あんなに早く走っていくなんて…どうしたんだろう…?)(メンバーの中でもとりわけ運動神経に優れそれなりに自信こそあった。ましてや、今まで後輩に遅れを取ることなどもなく。いつもの練習の日々の中では見せなかった、必死に駆け抜けていく璃奈の背後をただただ追いかけるだけで息が上がっていた) 」
ヒロ「は、はええな…追いつけるか…!?(息を切らしつつ、みんなを追いかけている) 」
イズ「テコテコテコテコテコ(早歩きなのに時速37k超の速さで移動している)或人社長、しっかりなさってkづあさい。 」
飛電或人「ひぃー、ひぃ~~~っ…!朝にナンとカツカレー食べたから、何か疲れた…。はい…アルトじゃ~~~~~~~~~ないと~~~~~~………m9 (゚ρ゚ )(最後尾でぐだぐだ走っている) 」
優木せつ菜「はっ、はっ…!すごいですね…璃奈さん、あんなに早く走れるなんて…今まで見たことありませんよ…!?…一体何が璃奈さんをあそこまで駆り立てているのでしょう…?(ヒロと並走しながら彼に語り掛ける) 」
鬼コーチ鱗滝左近次「遅い!もう10周!(或人のケツに理不尽なビンタ) 」
飛電或人「ぎゃーーー!!!ひでぇ判決(ケツ)はやめてくれーーー!!!(´;ω;`)ブワッ 」
彼女たちが林道を抜けると、眩い朝の日差しと共に広大な泉が出迎える。
小鳥の囀り、そよ風のさざめきの心地よい自然の音色が泉の波紋と重なって過ぎてゆく。
天王寺璃奈「はぁ…はぁ…はぁ…っ……(誰よりも早く林を抜け、その先にある広大な泉へと到達。両膝に手を突きながら肩で息をし、乱れた呼吸を整えていく)はーっ……はーっ……(それでも、何かを必死に追い求めているかのようにその頭(こうべ)を上げて辺りを隈なく見渡していく) 」
あなた「…………(泉の端(は)から上半身を伸ばし、ぐったりと倒れ込んでいる姿があった) 」
ヒロ「さ、さぁ…!呼ばれたって言ってたから…なんとかしなきゃって思ったかもしれない…!(並走しているせつ菜に) 」
天王寺璃奈「……!(いた…――――)(泉の中に人影を見つけるとそこへ向かってまた一目散に駆け出していく)………!(そして、目の前に倒れ込んだその人物を琥珀色の瞳の中に捉えると…)んっ……!!(だぼだぼの袖から素手を伸ばし、冷たい
「あなた」の手をその両手で掴み、引き上げようとする)んん~~っ……!>< (小柄な少女故か、それとも先程の走行で力が入らないのか、何度も何度も引っ張ろうと試みる) 」
宮下愛「はっ、はっ……やっと、追いついた……!りなり――――!ちょ、やば…!人が溺れてる…!?助けないと!!(誰かを引き上げようとしている璃奈の腰に両手を回し、彼女と一緒に引っ張ろうとする) 」
イズ「……!あれは……(璃奈たちに引き上げられようとしている人間を確認する) 」
ヒロ「…!(愛に続いて追いつき)溺れてる…いかん!意識を失っている!(璃奈達と反対方向の手を掴み、引っ張る) 」
優木せつ菜「(璃奈さん……)(ヒロの言葉に再び璃奈の背に視線を送る)……!二人とも何して………!?た、大変です!ヒロさん!!(遅れて璃奈と愛へ続くように駆け出し、自分は愛の腰に手を回して引っ張る) 」
天王寺璃奈「んんっ……!!もう、ちょっと……!>< 」
あなた「 ザ パ ァ ッ … ! (そして、ようやく彼女たちによって泉から引き上げられる) 」
宮下愛&優木せつ菜『うわわぁっ!?(思いっきり引き上げた反動で背後へ転倒する)』
飛電或人「人命救助か!?っし…!俺に任せr―――ほぎゃあああぁ!!?(ようやく現場へ着いて引き揚げ作業に手を貸そうとしたところ、転倒してきた愛とせつ菜の下敷きとなってしまう) 」
ヒロ「お、おああ!?(同じく引き上がった反動で転倒する) 」
天王寺璃奈「はー……はー……っ……(泉から引き上げたその人物を真上から恐る恐る覗き込む)…………(仰向けに倒れているその者を、ただただじっと見つめる。何度もその小さな瞳をぱちくりさせながら、不思議そうに、興味津々に。)………ぺた……(何を思ったのか、濡れたその頬を右手でそっと触れる。最初に感じたのは水の冷たさ。その次に人肌の柔らかさ。そして……初めて会ったのに、どこか感じる"懐かしさ"を…) 」
あなた「…………(泉から引き上げられたその人物は、少年とも少女とも取れる中性的な顔立ちをしていた。至って普通の服装、装飾品もなく、何一つ際立った特徴のない、ただの人だった) 」
イズ「ス…―――― ピコピコピコ…♪ (「あなた」の手首へすぐに指を添え、脈拍を測定する)…かなり衰弱している様子です。急いでお医者様に診ていただかなければ。 」
飛電或人「いっつつ………!よ、よしわかった…!ひとまず、寄宿舎の永琳さんに診てもらおう!ヒロ、頼む!(そう言うとヒロと一緒に「あなた」の肩に手を回し、来た道を引き返そうと歩き出す) 」
ヒロ「ガッテン! 」
― 寄宿舎・医務室 ―
彼女たちが「あなた」を見つけ出してから既に1時間と15分ほどが経過した。
凄腕薬師にして医療業務に秀でた八意永琳の手により、「あなた」は一命をとりとめる。
そして、未だ目覚めない「あなた」を、発見者たちは囲んでただ心配そうに見守っていた…
天王寺璃奈「…………(「あなた」の眠るベッドの傍、パイプ椅子に腰かけいつもの無表情でその表情を見つめていた)…………(傍から見れば、特に天王寺璃奈という人物を知らない人からすれば、その無表情ぶりには違和感を感じるだろう。だが、彼女の瞳はわずかだが小刻みに揺れている。眠りから覚めない「あなた」への懸念の色を表しながら…) 」
優木せつ菜「……大分時間が経っていますが、まだ目覚める様子はありませんね…(同じく医務室にて、「あなた」と璃奈の二人を遠目に見ていた) 」
カワサキ「しんだんじゃないのー? 」
飛電或人「……よっし!ここはひとつ、俺のとっておきのギャグで!目覚めさせてやるぜ~?笑いはどんな病気も治すっていうからな!見てろよ~……(渾身のギャグを言おうと懸命に頭を捻り出す) 」
イズ「(カワサキの首筋に激烈チョップ) 或人社長……?(理解しがたいように小首をかしげる) 」
ヒロ「………(璃奈の様子を見て)…溺れてからだいぶ経っていたかもしれないな。おそらく…身体的な影響は大きいと思う(せつ菜の横に立ち) 」
飛電或人「しまった!いつもの外科が定休日!仕方ないから内科行こう………はぁいッ!アルトじゃ~~~~~~ないとーーーーーー!!!m9 ( ・`ω・´) 」
宮下愛「あは、あははは!!!仕方"ないか"らって、内科…あ、ははは…!!(笑い転げる) 」
イズ「…或人社長。外科と内科とでは診察が全く異なりますよ。 」
飛電或人「うわあああああああああああ!!お願いだからそこにつっこまないでええええええ!! 」
巽幸太郎「定休(てーきゅー)べりーまあああああああああああっち!!!(突然入ってくる謎の男) 」
イズ「お帰り下さい( ピシャーンッ ) (巽幸太郎が開けたドアを容赦なく閉める) 」
巽幸太郎「……………………(ドアを閉められ暫く無言で立ち尽くす) 」
ISONO-NAMIHEY「お前は廊下に立っとれ!!!(巽幸太郎に怒鳴る) 」
あなた「………ピク……――――― 」
天王寺璃奈「……ぁ………!(かすかに動き出した「あなた」に、大きく見開いた) 」
飛電或人「………………マジで……?????(自分のギャグで目覚めたものだと勘違いし、唖然としている) 」
あなた「…… …… ……(重たそうな瞼がプルプルと動き出し、ようやくその瞳がうっすらと開かれていく。窓から差し込む光を眩しそうに何度も目を開閉させる)…………?(そして、逆光に包まれた璃奈の顔が視界に入り込み、お互いに見つめ合う様になる) 」
宮下愛「うそっ…!?まさかひょっとして…アルトンのギャグで目覚めちゃったりとか…?これはミラクルだよー!(手鏡(ミラー)をクルクルさせながら感動している) 」
イズ「いえ、ただの偶然かと。 」
優木せつ菜「わあ!!目が覚めたんですね!!!おはようございます!!!!!(クソデカボイス)ヒロさん!見てください!目が覚めたみたいですよ!!! 」
天王寺璃奈「ぁ……(目が合うとついしゃちこ張ってしまう)………ぁ…あの……えと………だ、だいじょうぶ……?(長い袖で口元を覆いながら、やや恥ずかし気に「あなた」へ問いかける) 」
ヒロ「(こ、声がでかい……!)お、おう…!ほんとによかったよ…!(せつ菜のクソデカボイスに圧倒される) 」
あなた「…… …… ………!(璃奈の言葉へ何か答えを返そうと口を開く。唇を動かしながら言の葉を紡ごうとする。だが……)…………??(何度口を動かそうとしても、言葉が、声が、出ない。自分のその違和感に真っ先に気が付き、喉元に手を添えて必死にまた声を出そうと試みる)…………(だけども、口からは何も出せなかった) 」
天王寺璃奈「………?(「どうしたの?」と遠目にその顔を覗き込んでみる)………!………ひょっとして……出ない、の…?「声」……(顔こそは無表情だが驚いたような声音で再び問いかける) 」
あなた「…… …… ……(璃奈の問いかけに頷いて黙答する) 」
優木せつ菜「……???いったいどうしたのでしょう…?(その様子を見て「あなた」と璃奈の傍へ近寄っていく) 目が覚めたみたいですね。この娘は、天王寺璃奈さん。泉で倒れていたあなたを真っ先に見つけてくれたんですよ。あ、ちなみに私は優木せつ菜と申します!あなたのお名前、お伺いしてもよろしいですか? 」
飛電或人「自己紹介か?俺は飛電インテリジェンス社長の飛電或人。こっちは、俺の秘書であるイズ。よろしくなっ! なあ…泉で溺れていたみたいだけど…何かあったの? 」
宮下愛「宮下愛だよー!愛を込めて「愛」って呼んでね!愛だけに! ねねっ?この辺じゃ見かけないよね?どこから来たの~? 」
天王寺璃奈「ぁ…待って、みんな……(質問を投げる一同を制そうと慌てて手をかざすが…) 」
あなた「……!……!……!(全員の質問に何とか答えようと必死に口を動かすが、やはり肝心の声は出ない) 」
優木せつ菜&宮下愛『……??(どうしたのだろう?と互いに目を合わせて傾げる)』
ヒロ「俺はヒロだ。どうやら無事………ではないようだな(「あなた」の様子を見て)……声が、出ない…のか? 」
八意永琳「……なるほどね…(その様子をずっと机から伺っていたがついに見かねて歩いてくる)なんとかお目覚めのようね。 」
飛電或人「声が…?あ、永琳さん…!(永琳に会釈)なあ、永琳さん。いったいなにが……? 」
八意永琳「…断定はできないけれど…おそらく、高次脳機能障害ね。 」
優木せつ菜「それって、いったい…? 」
八意永琳「何らかの衝撃を受けたことで脳にダメージが入り、精密な情報処理が上手くできなくなる障害のことよ。それはまさしく記憶や言動、感情などの様々な機能に障害を残すのよ。今のこの子のようにね…(「あなた」に視線を向けながら) 」
あなた「………?(永琳の説明を、璃奈と同じような無表情の顔で聴いている。むろん、その表情は本心ではない。本当は驚きを表現したいはずなのに、強張ったように筋肉が硬直して思うように感情表現することができなくなっていたのだ) 」
天王寺璃奈「…記憶、言動、感情……(そのすべてに何らかの問題が起きているのであろう「あなた」の横顔を、そっと見つめる) 」
宮下愛「記憶って……もしかして、泉で溺れていたことも、それに自分のことも覚えていないの…?(「あなた」へ問いかける) 」
あなた「……(愛への問いかけに、静かに頷く) 」
優木せつ菜「声が出ないのも本当なんですか…っ…!? 」
あなた「……(せつ菜の問いかけにも頷く) 」
ヒロ「何らかの衝撃…?…溺れた時のショックとかじゃ、ないのか? 」
イズ「……そういうことでしたか。この方は、あそこで気を失っていた時点で既に以前の記憶のすべてを失っていた。そして、記憶喪失の果てに言葉…さらには感情さえもその機能を…… 」
八意永琳「表面的に見ても外傷はないのは勿論なんだけど、レントゲンから内面的な損傷も見当たらなかったわ。脳そのものに損傷がなかったのは幸いだけど…その記憶障害が一体どういう原因で起こったのかはまるで見当もつかないわね。本人が記憶を失っているのならなおさら、事情を聴きだすことだってできやしないし。 」
八意永琳「…この世界に誘われたほとんどの人間が、何らかの記憶障害を引き起こしている事例は数多くあるわ。でも同時に、僅か数ヶ月でその記憶を取り戻しているのも事実。きっと時間が解決してくれるわ。まずは安静にしておくことが先決ね。 」
飛電或人「そういえば、そういう話もちらほら聞いたことがあるな… もしそういった事例と紐づくのなら、原因はともかく…その内失った記憶が戻る可能性もゼロじゃないってことだな。(うんうんと) 」
優木せつ菜「…そうですか…… ですが、言葉や感情に記憶と…いろんなものを失ってしまうのは、酷な話ですね…私たちにできることがあればいいのですが……(難しそうに顔を歪めながら) 」
宮下愛「愛さんもほっとけないよ… お話したいことだって、たくさんあるのに… 」
あなた「…………(無感情を表した顔で項垂れている) 」
アーロン「……見ていたところ、自ら〝発信〟することはできないが、少なくとも〝受信〟はできているようだ。(通りすがり、呟く) 」
天王寺璃奈「………(項垂れる「あなた」の手にゆっくりと少しずつ手を伸ばし、ついにその手に触れた)……きっと、大丈夫。今は、怖いかもしれない……けれど、私が…私たちが、ついてる…。…いつか……いつか、あなたの失ったもの、ぜんぶ、取り戻せる日まで。ずっと、ずっと…… 」
飛電或人「そうみたいだな……って、どっひゃあああぁ!?いいいいいっいつの間にぃぃッ!?(通りすがった
アーロンに飛び退く) 璃奈………ああ、そうだな…!そう信じるしかないさ。どう足掻いたってすぐに取り戻せるものでもないしな。だからそれまで……俺様のとっておきのギャグネタを叩き込んでやるから、覚悟しとけよ~~~!?m9 ( ・`ω・´)キリッ 」
宮下愛「りなりー…アルトン…!……うんっ!愛さんもいっぱい世話しちゃうからねー!忙しくなるぞ~?世話だけに!ねっ☆ 」
アーロン「つまり…お前達が投げかけていた言葉も、無駄にはならん…ということだ。 」
ヒロ「…………!(永琳の言葉を聞き)…もし、大切なものを取り戻すため…立ち止まらず突き進むつもりなら…俺が…俺たちが…(周囲を見ながら)君の力になろう。決して一人ではない。(「あなた」に近づき) 」
優木せつ菜「ええっ!たとえ何であろうと、困った人を見捨てないのが正義のヒーローですからね!私も微力ながらいろいろとお手伝いいたします!お腹がすいたらご飯も作ってあげますよー!(* ^ᗜ^ *) ペカー✨ 」
ヒロ「!(せつ菜の言葉を聞き) 」
天王寺璃奈「あぅぅ……そ、それだけはやめた方がいいかも……(ぼそっとせつ菜に)………(無意識に「あなた」の手を両手でぎゅうと掴んでいた) 」
飛電或人「……そっか……そうだよな…(アーロンの言葉に、どこか救われたようにはにかんだ笑みをこぼした)ん?どうしたヒロ?この世の終わりみたいな顔をして…(※未だに地獄(せつ菜の料理)を味わったことがないが故の疑問) 」
優木せつ菜「(* ^ᗜ^ *) ペカー? 」
あなた「…………(周囲の人間たちの温かい言葉に項垂れた顔を上げ、口を開ける。また、何か言葉を紡ごうとする。やはり声は出ないが、それは……彼・彼女たちへの感謝を述べているかのような、そんな気がした…) 」
ヒロ「…………お前も食べてみればわかる(糸目で或人に) 」
飛電或人「はーん…??(* ̄- ̄) 」
ヒロ「…………(寄宿舎のロビーで座り込みながら考え事をしている) 」
ヒロ「(記憶は、決して良いものだけではない。中には辛い記憶、苦しい記憶もある…) 」
ヒロ「…(彼…いや、彼女…か?…まぁいい。記憶が戻った事で良い方向へと導かれることを…願う。ただ、願う…)(そのまま目を閉じる) 」
カー、カー…!(数羽のカラスが飛んでいく夕暮れ時。また明日「あなた」に会うことを約束した一同は、寄宿舎を離れて各々の帰路に就く)
天王寺璃奈「………(お手製の璃奈ちゃんボードを胸に抱えながら、愛と一緒に帰路を歩いていた) 」
宮下愛「ねえ、りなりー?(両手を後ろに回しながら並び歩く中、ひょこっと彼女の顔を下から覗き込む) 」
天王寺璃奈「…… …… ………ぁ……!…愛さん、どうしたの…?(考え事をしていたのかぼーっとしながら歩いていたが、愛の視線を感じて振り返る) 」
宮下愛「今日のりなりー、いつにも増して真剣だったね。……「あの子」のこと、気になるの? 」
天王寺璃奈「……(「うん…」と静かに頷いて応える) ………「声」… 」
宮下愛「……? 」
天王寺璃奈「……あの時、「声」、聞こえた…。私も、愛さんも、みんなそうだって言ってた。あれがどんな声で、誰のものか、わからないけれど… ……でも、でも……なんとなく、だけど…… 似ている、気がした… 「あの子」と、同じ、「声」を…… 」
宮下愛「……確かに愛さんも、誰かに呼ばれたような「声」は感じたよ?でも…「あの子」は声を失ったって言ってたじゃん。りなりーは、「あの子」のその「声」が、聞こえたの…? 」
天王寺璃奈「……それも、なんとなく… 耳には、聞こえないかもしれない…でも、"ここ"に…届いた気がする……(自らの胸に視線を落とし込む) 」
天王寺璃奈「……それにね…わかるんだ。(言葉を更に紡ぐ)私、感情を…顔に出すのが苦手で…だから、いろんな人に、へんな誤解を与えてしまう。嬉しいのに悲しそうって…楽しいのに怒ってそうって…… 自分のことだからわかっているつもりでも…やっぱり、どうすることもできなくて…だから、同好会のみんなにも、一時期迷惑を掛けちゃった… 」
宮下愛「……うん、知ってる。(目を瞑り、優しい声音で応える) 」
天王寺璃奈「言葉や声にも感情が宿るものだっていう…でも、私のそれにも、感情はない。本当はあるんだよ?上手く込めるのが苦手で… 不愛想で、ロボットみたいだって、言われたこともある。愛さんのギャグも、本当は面白い。それでも、声に出して笑うことができないのは、感情を込めることが、できないから… 」
宮下愛「…うん、それも知ってる。(ふふっと笑う) 」
天王寺璃奈「……そんな自分だから、わかるんだ。「あの子」のように、感情を失った気持ちが。そこに記憶や声も消えてしまったら…助けてほしいはずなのに、助けを呼ぶこともできない。誰にも気づいてもらえなくて、独りでずっと、泣いてしまうかもしれない。……あの時聞いた「声」から、私は、そう感じた。だから、放っておけなかった。助けたかった。私以上に苦しい思いをしている人を。 」
宮下愛「 ぎ ゅ っ (刹那、背後から璃奈を優しく抱きしめる)……りなりーって、本当に優しいよね。でも、愛さんはそんなりなりーのことも知っているし、大好きだよ。…「あの子」のこと、そんなに強く想っていたんだね。 」
天王寺璃奈「……!(背後から包まれる温もりに目を大きく見開いた)………うん…っ……(少女の瞳が潤む) 」
宮下愛「…大丈夫。りなりーのその"想い"は、きっと届くよ。だって…そういうものなんでしょ?この世界って。 」
――― " 世界のどこかで誰かが想えば、巡り巡ってその想いが叶うようになっているのです、この世界は " ―――
天王寺璃奈「……うん……うんっ……(ぽたぽたと小粒の涙が、夕焼けに照らされた影の中へ溶け込んでいく) 」
あなた「…… …… ……(寄宿舎の医務室。開かれた窓から流れ込む風にミルク色のカーテンが靡く中、その者は朱く染まる空をただ見上げ続けていた) 」
時が経ち、少女は大人になりました。
今では彼女の両手にたくさんのモノがあふれていました。
今度は大人になった少女が、誰かに何かを与えることになったのだから。
少女だった女性は何かを与え続ける。
持たざる者に何かを与えること、それは優越感となって彼女の心を満たしていく。
ですが、与えても与えても、昔のように何かを与えられることはありません。
あるのはただの空虚。空っぽで、虚しい、なにもない。
ただただ与え続けることで、いつしか彼女は大事なものまで与えるようになりました。物も、お金も、食べ物も、体も、そして…時間さえも。
そんな忙しない日々を淡々と過ごしていました。
疲弊したある日の夜、女性はいつものように眠りにつきます。
ですが、その日は「夢」を見ることができませんでした。
こんなこともあるだろう。明日になればきっと、またいつものように「夢」が現れるだろうと目を瞑る。
しかし、明日になっても、明後日になっても…求めていたものは現れませんでした。
それからはずっと、女性は「夢」を見ることができなくなってしまいました。
女性は、何故だろうと不思議に思います。日が暮れるまで長い時間考えていましたが、結局その答えは見つかりませんでした。
今はもうなにもないけれど、なにもないのだから、なにもかもを受け入れてくれるはずだった。
そんな「空白の箱庭」だけが少女のすべてだったのに。
―― 『空白の箱庭』 / 第二幕 ――
彼・彼女たちが「あなた」と出会い一週間が経過した。
記憶を失い、感情を失い、言葉も失った「あなた」に、それでも彼らは優しく接してきた。
「あなた」もまた、そんな彼らの優しさに触れることで…一緒にいる時間がどんどん多くなっていった。
「あなた」の為に服を選ぼうと街へ出かけたり、
マックリアで美味しいものを食べたり、
星空凛かと思いきやミラーリンの野外ゲリラライブを面白おかしそうに観たり、
急な雨が降った時は
ちゃちゃまる宅で雨宿りをして、
そこでやんちゃな住人たちとルール無用のカードバトルをして遊んだり…
そんなちょっとしたカオスな日常を、「あなた」は彼らと共に過ごしてきた。そして…
― 寄宿舎・外 ―
あなた「………(住人たちに新しく用意してもらった新品の服を着込み、心なしか真新しさを醸し出していた「あなた」は、寄宿舎の外のベンチに腰かけて、何処まで青く透き通る空を仰いでいた) 」
ヒロ「………(ベンチの近くで、一本足で藁束を刀で斬っている) 」
天王寺璃奈「 サク……サク……サク……(青い芝生道を踏み鳴らしながら、寄宿舎へと向かう。その背には、猫型のリュックサックが背負われていた) 」
時は、昨日へと遡る…
― PM17:50 寄宿舎・外 ―
天王寺璃奈「……サク……サク……(夕焼けが赤く照らす芝生道を、「あなた」と隣り合わせに歩いていた)……今日も、楽しかった…ね。 ……また、明日も、いっぱい、遊ぼう…(これから寄宿舎へ帰ろうとする「あなた」へ別れを告げようとする) 」
あなた「……(今日の別れを切り出した璃奈に振り返る)…… …… ……(この一週間…璃奈をはじめとする同好会のメンバーやヒロ、或人たちと楽しいひと時を過ごしてきた。言葉や感情を出せない自分に、ここまで接してきてくれた彼女たちと別れる度に、どこか少しだけ、物寂しい目を浮かべていたが…)…………――――― ス … (その憂う眼差しを捨てるように意を決し、璃奈へ、開いたメモ帳を突きつけた) 」
メモ帳にはただ、こう書かれていた…―――――「 記憶を取り戻しに行きたい 」 と。
天王寺璃奈「……!(そこに記された「あなた」の意思を始めて目の当たりにした瞬間、はっと息を呑んだ) 」
あなた「……………(メモ帳を突きつけたまま微動だにせず、目の前の璃奈の瞳にそう訴えかける) 」
天王寺璃奈「…… (しばらく黙り込み、やがて俯きだす)――――― ギ ュ ッ(そして、その意思に応えるように…「あなた」の手にそっと自分の手を伸ばし、ぎゅっと掴んだ) 」
天王寺璃奈「………私も、行く…一緒に。「あなた」の失ったすべて、取り戻してあげたい。 」
あなた「………! 」
天王寺璃奈「……――――(少女の目は、決意に満ちていた―――) 」
♪~ ♪~(時は戻り、今日――― 突然、ヒロの携帯から着信音が鳴り響いた)
ヒロ「………?(刀を持った手を止め、携帯を手に取る)…はい、もしもし? 」
宮下愛「あっ、もっしも~し♪ ヒロローン? 愛さんだよ~♪ (電話の向こうで、陽気にヒロへ喋り出す)……ねえ、ヒロロン。愛さんからね…改まってお願いがあるんだけどさ~…(いつもの調子で、だけども、僅かにぎこちなさも感じられる声音だった) 」
ヒロ「…おぉ、愛ちゃんか!……ん、どうした?(彼女らしくない僅かなぎこちない声音を聞いて) 」
宮下愛「……実はね………―――――― 」
~愛の回想~
― PM18:45 スクールアイドル同好会・部室 ―
天王寺璃奈「……愛さん、相談、あるの… 」
宮下愛「……?(スマホを片手にトッポを頬張りながらきょとんと眼をぱちくりさせる)……どったの?(そして、にこりと微笑む) 」
天王寺璃奈「……えっと……その……(言いづらそうに身体をもじもじさせていたが…) 」
天王寺璃奈「………―――― 私、ちょっとの間だけ、"旅"に出たい…… 「あの子」と、一緒に……! 」
宮下愛「……!!(初めは驚きを隠せなかったが、やがて彼女の真意を汲み取ってふふっと朗らかに笑う)……それが、りなりーがやりたいことだって言うなら、愛さんは良いと思うな♪いいじゃん!行っておいでよ! 」
天王寺璃奈「……! 」
宮下愛「りなりーが「あの子」のことを大事に想っていることは…もうわかっている。だから…ちょっとの間と言わず、りなりーがこれでヨシ!(※ここで
現場猫のポーズ)と思えるまで、旅を続けたらいいよ。だいじょーぶっ!同好会のみんなには私からちゃんと言っておくからさ♪ 」
天王寺璃奈「…愛さん……(無表情の中で、瞳が僅かに潤む) 」
宮下愛「…でもその前に…!最後に愛さんから大事な質問をするよ?もし、この質問に適した答えを言えなかったら…今のは無しにするからね?言っておくけど、愛さんは本気だよ??覚悟はいい?行くよ、りなりー?(にやり、と不敵な笑みを浮かべながら) 」
天王寺璃奈「えっ……?あ、うん……!(大事な質問…どんなことだろう…?)(息を飲み、愛からの質問を待ち構える) 」
宮下愛「――― "りなりーたちは、その旅で目的を果たすことができる。イエスかノーで答えて。" 」
天王寺璃奈「…… …… ……―――――― ぁ……!(答えは決まっていた。けれど、それが「宮下愛からの質問」だと再認識した時、いま一度考え直す。そして、彼女の言う「適した答え」に辿り着く―――) 」
天王寺璃奈「――― イエス、可能(かノー)だよ ――― 」
宮下愛「(……!!)~~~~~~~~~~っ……!!! 大ッッッッッッッッッ 正 解 ♪ ♪ (喜びの余り璃奈に思いっきり抱き着く) 」
天王寺璃奈「 わっ (急に抱き着かれハトが豆鉄砲喰らったような顔になる)……愛さん言った…「イエスかノー」"で"答えてって。愛さんのことだから、きっと答えはこれしかないって。それに、愛さんはいつだって私に優しくしてくれた。だから、意地悪なことなんてしない。この質問への答えだって、初めからネタを明かしてくれたから…(抱き着かれて無表情で「あぅあぅ」と長袖をばたばたさせる) 」
宮下愛「うん…うん…っ…♪(嬉しすぎるのか、閉じた瞳からきらりと雫が滲みだしている) ……ねぇ、りなりー?この世に不可能なことなんてないんだよ♪ りなりーが一人で立派にステージへ立てたように…「あの子」の記憶だって、きっと取り戻せる。愛さんは、そう信じてる。 」
宮下愛「りなりー…!(抱き着いた身体を離して至近距離で見つめ合う)―――― 愛してるよ、"愛"だけにっ♪(そして、これから旅立つ彼女へ、これ以上とない激励の笑みを送った) 」
天王寺璃奈「( !! )……ありがとう…愛さん…っ………―――――――― 」
宮下愛「―――……りなりーね…感情を表に出すのが苦手な子で…それで昔からとってもつらい思いをしてきたんだ。ずっと部屋にこもりっきりで、いつも一人で…本当は誰かと一緒にいたいのに、勇気を振り絞って自分から声をかけていくのに、誰からも理解されるはずがないって、弱気になって…いつだって、自分自身を閉じ込めていたんだ… 」
宮下愛「でも、愛さんと一緒にスクールアイドル同好会に入って、同好会のみんなと一緒に楽しい日々を過ごす中で…りなりーは、変わった。相変わらず、顔に出すのは難しそうだけど…自分の"想い"を相手にちゃんと伝えようとりなりーなりに努力している。だから、一人でステージに立った。繋がりたかった大勢の人たちの前で、堂々と、笑ってさ。 」
宮下愛「…愛さんも…ほんとはとっても嬉しかった…ずっと気にかけていたからさ… りなりーは…うん、きっともう、大丈夫。絶対「あの子」の力になってくれる。…でも、りなりーだけにそんな重い責任を一人で背負ってほしくない。 」
宮下愛「だから…りなりーと「あの子」のこと、頼んだよ?(電話越しに、笑いながら涙声でヒロにそう願う) 」
ヒロ「…………!(愛の璃奈への思い、そして彼女から自分に込められた願いを受け………)………君の願い、しかと受け止めた。任せておいてくれ!俺も「あの子」の力になるため…彼女に力を貸そう。だから…安心していてくれ。(ニコッ 」
宮下愛「………それとね… もし、もしも…りなりーが旅の途中で挫けそうになった時、愛さんからのメッセージを伝えてあげて。 」
宮下愛「……―――――――――「 」って。……それじゃあ、ね…(そして、静かに通話を切った) 」
天王寺璃奈「……サク…サク……―――― …お待たせ。(「あなた」、そしてヒロのもとへ歩いてくる。無表情であれど、その丸々とした瞳は、旅路への決意に満ちていた) 」
ヒロ「……またな。(通話が切れた携帯をしまう)……来たな。…準備はOKなようだな?(璃奈に) 」
あなた「………!(やってきた璃奈にベンチから立ち上がる)……(そしてヒロとも合流し、三人で向かい合う) 」
天王寺璃奈「…うん、ばっちぐー。…みんなには、迷惑を掛けちゃうかもしれない。でも…(「あなた」に一瞥を与えながら)…これは、自分で決めたこと。だから、最後まで、やり遂げる。璃奈ちゃんボード…〖`・ω・´〗キリリッ! 」
♪~(その時、璃奈のスマホに一件のメールが届いた)
ヒロ「……おう(「あなた」を見て手をさっと上げる)…俺も、力になれる事があれば力になる。…大丈夫、きっとやり遂げられるさ(璃奈に) 」
あなた「……!(ヒロに手を上げ挨拶を返す。璃奈は勿論、もうすっかりヒロとも打ち解け合っているようだ) 」
アーロン「…………。(いつからか、陰ながら見ていた) 」
天王寺璃奈「うん、ありがとう…よろしくね、二人とも。……?…あ、メール……或人さんからだ……(スマホの着信メールを確認) ……「すぐに来てほしい、見せたいものがある」って。…もしかして……(「見せたいもの」に心当たりがあるのか、視線を泳がせる)……行ってみよう。 」
― 飛電インテリジェンス本社・ラボルーム ―
或人からのメールにより、彼が勤める会社のラボへと訪れた一行。
そこには、或人とイズの二人が彼らを待っていたのだった。
飛電或人「よー!璃奈、ヒロ!おっ…それに君も!(入ってきた璃奈、ヒロ、そして「あなた」に片手をあげて歓迎する) 」
あなた「~~!(ラボルームに入るや否や最新技術が詰まったその空間を興味津々に見渡していた) 」
イズ「ようこそ、飛電インテリジェンス社へ。お待ちしておりました。(深々とお辞儀する) 」
天王寺璃奈「…或人さん、来たよ。……ひょっとして、「例」のが…… 」
飛電或人「…ああ!ちょうど今朝最終チェックが完了したんだ。今から起動しようと思う。 イズ、「彼女」を頼む。 」
イズ「かしこまりました。(或人のコンタクトを受け取ると、大きなカプセル状のケースの前へ移動する。それは、人ひとり分入れるほどの大きさだった) 」
プ シ ュ ゥ ゥ … ッ … ! (カプセルのハッチが開くとともに内部から白い煙が零れていく。青白いハイライトの逆光に照らされた一つの人影が、やがて色づくように彼らの前にその姿を現す―――)
少女型ヒューマギア「―――――(カプセルの中から現れたのは、少女…否、その両耳に装備された「ヒューマギアモジュール」を見る限り、女性型のヒューマギアであることがわかる。黒く艶のある髪にクラシカルなメイド服を着込んだ少女のヒューマギア。身長は璃奈よりもわずかに低く、とても可憐な相貌をしていた) 」
天王寺璃奈「わぁ……!!(対面を果たしたその少女型ヒューマギアに目をキラキラと輝かせる) 」
あなた「……!(カプセルの中から現れた少女型ヒューマギアに驚いたのか、唖然と口を開いていた) 」
飛電或人「これを、こうしてっと……(手にしたヒューマギアプログライズキーを、少女型ヒューマギアの首裏に刻まれたバーコード部分にかざす) 」
ヒロ「…………よぉ、或人。……それは…!?(少女型ヒューマギアを見て)…君が頼んだの?(璃奈に) 」
少女型ヒューマギア「ピロピロピロ…♪ \ Take off toward a dream.(飛び立とう、夢に向かって) / (ゆっくりとその瞳が開かれ、まるで人間のように息を吹き込まれた少女が起き上がっていく)………個体番号H078853、起動。 ピロリ、ピロリ…♪(少女が喋り出した後、周囲の人物を一人ひとり確認しながら目視で認識を行い始める)…或人社長、イズ様、ヒロ様、主様(「あなた」のこと)、そして…… 」
少女型ヒューマギア「――― 璃奈様。(まるで、自分の親を見上げる子どものような幼い瞳で、最後に璃奈を見つめた)今後の交流を図るため、私の設計を担当してくださった璃奈様へお願いがございます。是非とも私に、名前を付けてください。 」
天王寺璃奈「…実は、前から或人さんと一緒に、みんなには秘密で造っていたものがあるの。それが…この子………!(自分の名前を言われ、緊張でドキドキしてしまう)…えっと……うん…ほんとは、最初から決めてる。…君は…… 」
天王寺璃奈「――― 『メディ』。君の名前は、今日から、『メディ』だよ。(少女型ヒューマギアへ、優しい声音でそう名付ける) 」
少女型ヒューマギア→メディ「ピロリ、ピロリ…♪ (ヒューマギアモジュールが青く発光し、データ更新を行う)……承知いたしました。それでは、改めまして。私(わたくし)は『 メディ 』。本日より、あなた方の医療支援を主にサポートいたします。よろしくお願いいたします。(人間らしい柔らかな笑みを浮かべると、礼儀正しく深くお辞儀する)」
イズ「
メディは、我々飛電インテリジェンスが開発した看護師型女性ヒューマギアに、天王寺璃奈様ご自身の理念を基に共同開発して造られた、医療支援に特化したヒューマギアでございます。きっと、璃奈様がたのサポートを、その使命を全うしてくださることでしょう。 」
飛電或人「うんうん…「メディ」かぁ~!いい名前だなー!俺も社長として、新しい仲間が増えてくれて嬉しいぜ!人間とヒューマギアの懸け橋となる…メディには、その使命を背負ってもらって、今後は璃奈たちのお世話を頼んだよ? 」
天王寺璃奈「うん…よろしくね、メディ……♪(人間だが無表情な自分の理想である、感情豊かなメディに喜びの声音で歓迎する) 」
あなた「パチパチパチ…♪👏(感激のあまり拍手している) 」
ヒロ「……もしかして、あの時の…?(かつて、一人で或人の方へ向かって行った時のことを思い出す)……君の理想ってわけか(メディの表情を見て)…これからよろしく頼むぜ、メディ!(ニコッ 」
飛電或人「…おおっと、そうだ。愛から話は聞いているよ。「君」の記憶を取り戻す旅に出るんだってな!(「あなた」に視線を向けながら)どんな旅になるのかわからないけど、何かあったら大変だからな。このメディも一緒に連れていくといいよ。それにメディも…これからヒューマギアとして生きていくからには、人間のこと、この世界のこと…とにかくいろんなものを見て学んできてほしいからね。 」
メディ「はい、宜しくお願い致します。(「あなた」やヒロにも深々とお辞儀)承知いたしました、或人社長。…そういうことですので、今後は璃奈様たちの旅路に同行させていただきます。(そう言うと璃奈の重そうなリュックサックをそっと脱がせ、自分が背負うと彼女にニコリと微笑む) 」
天王寺璃奈「うん…みんなには、びっくりさせたかったから。(ヒロに)……(愛さん…)(ふと、宮下愛の笑顔が脳裏を過る)うん、頼りにしてる……わっ…(リュックサックを代わりに背負うメディに「ありがとう」と会釈する) 」
ヒロ「…………本当に、びっくりしたな。他のみんなもきっと驚くだろうね。(璃奈に) 」
イズ「しかし、一概に「記憶を取り戻す」とはいえ、ただ闇雲に宛てもなく彷徨うのは非効率的です。そのため、或人社長と私の方で何か手掛かりになるものがないかと検索した結果…「こちら」に向かわれるのがよろしいかと思われます。(そう言うと、璃奈たちの目の前に地図を示すホログラムウィンドウを開く) 」
飛電或人「俺たちが調べたところ、実はあの永琳さんから気になる話を聞いてね。今から13年前になるのかな…どうやら、この世界の何処かにあると言われている伝説の秘所『願いの谷』と呼ばれる場所があってな…永琳さんによって命を落としたある人を生き返らせるため、実際にそこへ辿り着いて…そして願いが叶ったって話があるんだ。永琳さん自身が言ってたんだ、きっと間違いない。 」
飛電或人「それに…記憶が戻るには時間がかかると言っていたけれど…待っているよりも、他に方法があるのなら、試した方がいいに決まってるじゃんか!(にかっと笑う)メディに地図と目的地のマーキングをインプットしてあるから、彼女の案内で君たちはそこへ向かうといい。ここからだとかなり遠い場所だ…くれぐれも気を付けてな。それと…これは俺からな!(ヒロに船のチケット人数分を手渡した) 」
メディ「目的地へのご案内は私(わたくし)にお任せください。 」
あなた「………!(或人とイズに感謝の意を込め頭を下げる) 」
天王寺璃奈「うん…この旅はいつ終わるのかわからないけれど…いつか帰って来た時、みんなに会わせたいな…(ヒロに)…『願いの谷』…そんな場所が、あるんだ… うん、ありがとう。ヒロさんと、メディ…そして…(「あなた」を見つめる)…みんながいれば、きっと、大丈夫。どんなことだって、乗り越えられるはず。 」
ヒロ「
願いの谷…そこへ向かえば、いいんだな? …おう、頼んだぜ!(メディに)…船?船で行くところなのか?…ありがとう。お二人さん。絶対、成し遂げてくるよ(或人から船のチケットを受け取り、二人に礼を言う) 」
イズ「我々は会社の業務が山積みのため、今回はご同行できませんが…皆様の旅のご無事をお祈り申し上げます。(会釈する) 」
飛電或人「いいっていいって!(お礼を述べる三人へ照れくさそうに手を振る)…本当は、みんなと旅をしたいけど……今回は、俺はお預けだ。(へへへと苦笑する) 」
ヒロ「…そうだな。「あの子」の記憶を取り戻して…絶対帰ってこような。みんなのために…そして、愛ちゃんのために、な!(璃奈に)」
飛電或人「……よぉ~しッ…!(ぱぁんと手を叩く) じゃあここはひとつ!みんなの旅路を祈って…社長じきじきに激励のギャグをかましてやるぜーッ!(張り切ってその辺の台の上へ跳び上がる) 」
飛電或人「……度重なる旅には、マタタビと足袋を持たないとォ!!はぁいッ!!アルトじゃ~~~~~~~~ないとおおおおおおおおおおおおーーーッ!!! m9( ゚Д゚ ) 」
メディ「今のは、「旅」をテーマに、「度」重なるや、マタ「タビ」や「足袋」を重ね合わせた、或人社長ご自慢(笑)のくどい激励のギャグでございます。(にっこり) 」
飛電或人「うわああああああああああああお願いだからギャグを説明しないでえええええええええええ!!!あとくどいとか言わないでえええええええええええええ(´;ω;`)ブワッ 」
こうして、新たな仲間「メディ」を加えた一行は、或人の手配で港へ向かった―――
― 港・シーギャロップ号 ―
あなた「……!(豪華客船に乗り込んだ後、甲板へ飛び出して手すりにつかまり、これから旅立つ土地を見収めようとする) 」
メディ「手筈通り、まずはこちらのシーギャロップ号に乗って次の目的地へと向かいましょう。(同じく甲板へと赴きながら) 」
ヒロ「あんまり身を乗り出しすぎるなよー?(光景を見ている「あなた」を見て、冗談っぽく)………(「あなた」を見つめ、そこから何かを考えているような顔で、手すりに腕を乗せ、光景を見る) 」
天王寺璃奈「うん…(メディにそう応えると、甲板から見渡す景色をその目に収める)……ここから、旅に出るんだね。(胸元に添えた手をぎゅうと握りしめる。不安こそあれど、ふと目にした「あなた」の背にどことなく勇気づけられ…)……♪ (目の曇りが晴れた、そんな気がした) 」
ボ ォ ォ ォ ー ー ー ッ … ! ! ! (晴天の下、船が汽笛を鳴らして出港する)
飛電或人「――――― ブォン、ブォン、ブオオオオォォォンッ!!! (船が出港した後、バイク「ライズホッパー」を走らせ港へと着く)…………カシャ…!(ヘルメットを脱ぎ捨てて、そくざにスマホを取り出してその船をカメラに収めた)…ト、ト、ト……(その後文字をタップで埋め込み、誰かにその写真を添付してメールを送信した) 」
宮下愛「……?(部室でいつものようにストレッチしていたところ、メールの着信音に反応してスマホに手を伸ばす)…… …… ……!(そのメールが、或人から送られたもの…そして璃奈たちが旅立った旨のものだと知ると、一瞬驚きの顔を浮かべるが…) 」
飛電或人 / 宮下愛『――― 行ってらっしゃい! ―――(それぞれが、それぞれの"想い"と共に彼らを見送ったのだった)』
あなた「……………(潮風に吹かれながら、太陽の光を浴びながら、「あなた」は記憶を取り戻すための冒険へ――――)」
そして彼らは旅立つ。誰も見たことのない場所へ。
各々の"想い"を胸にして―――――
…やがて、女性は年老いてお婆さんになってしまいます。
今ではもう、何も与えることができなくなってしまったお婆さん。
お金も底をつき、食べ物も腐り、物は錆び、体も壊れ、心にも穴が開いてしまいました。
そして、お婆さんはついに最期の日を迎えることとなりました。
時間、命、人生…今まさに全てを失おうとしている。
夜を迎え、最後の晩餐である一欠片の胡桃を口に放り込み、眠りにつくお婆さん。
もう何も思いだせない、だから思うこともない。あるのはただの空虚。空っぽで、虚しい、なにもない。
瞳は閉ざされ宵闇に包まれる。そんな時、真っ暗な果てから幼い歌声が聞こえてきました。
その歌声は、お婆さんにとって聞き覚えのあるものでした。
ああ、そうだ…と、色褪せていく記憶の中で、微かに、確かに思いだした、ただ一つのもの。
そう、これは「夢」だ。あの日からずっと待ち焦がれていた、大好きな「夢」だったと。
大人になって見えなくなってしまったものが、どうしてまた現れたのだろう。
そして、彼女はその答えにようやく気が付きました。
「私はただ、満たされたかったんだ。空っぽだったこの心を。」
お婆さんは幼い笑顔を浮かべながら、「夢」の世界へと歩いていく。どこまでも、どこまで遠く、果てのない向こうへ。
きっとなにもないけれど、なにもないのなら、なにもかもを受け入れてくれるのかもしれない。
そんな「空白の箱庭」だから少女のすべてだったのでしょう。
―― 『空白の箱庭』 / 第三幕 ――
桜坂しずく「…… …… …… …… …… 」
パチ パチ パチ … (オーディエンスのいない劇場に、一人の拍手音が会場内に響き渡った)
金髪の青年「 パチ パチ パチ … (青年はただひとり、無数に並ぶ空席の一つに腰かけ、舞台上の少女が演じる劇をずっと観ていたのだった) 」
金髪の青年「……それでも、まだこの世界のことを、あなたは躊躇っているのですか? 」
桜坂しずく「…………はじまりとおわりは背合わせにある…だからすべてのものごとには、必ずおわりが来ます。物語が起承転結に則っているように、その運命は変えられないものなのです。 」
桜坂しずく「…私は、その中でただ演じ続けるだけです。私ではない「誰か」を。私のものではない、「誰かの世界」で。 」
金髪の青年「…たとえそれが、「あなた自身」を蝕むことになったとしても…ですか? 」
桜坂しずく「…私に「私」などありません。この世界(ぶたい)にいる限り。もう決して降りることのできない。そうして何度も、ここで、結末を繰り返すんです。それだけが救いなのですから。(何かを諦めたような落胆した表情を浮かべながら) 」
金髪の青年「…そうですか。(やれやれと首を振り、席から立ち上がる)……では私は行きます。忘れかけていた、あの日の続きを探しに…―――(青年を照らしていたスポットライトが消えると同時に、その姿もまた消失する) 」
桜坂しずく「…… …… ……(そして、今度こそ劇場には彼女独りだけが残される) 」
――― ここは『箱庭』 今は何もないただの空白 やがて空想によって満たされていく ―――
桜坂しずく「スゥ……ハァ……――――― 」
桜坂しずく「 『箱庭』の劇場 開幕いたします 」
バサ バサ バサ バサ ァ ッ ! ! カ ァ ー ッ ! ! (刹那、暗転する劇場に烏の羽搏きと鳴き声が響き渡ったのだった…)
最終更新:2024年03月26日 01:07