SSまとめ
スレでお出しされたSSをまとめるページです。
出された概念はあくまでも人それぞれであり、あなたの概念を否定するわけではありません!
出された概念はあくまでも人それぞれであり、あなたの概念を否定するわけではありません!
100冠目
+ | 100冠のお祝い |
100冠目 4
zooooom───
「なんで飛行機が飛んでるの?」
「コンちゃん、一体何が始まるプボ?」 「えへへ。ま、見ておいて」
≪This is Charlie, This is Charlie. Bravo Lead, do you read?>≫
≪Loud and clear!≫ ≪Perfect!それじゃあお願いします!≫ ≪アイコピー! レッツゴー!≫
「あ、白い雲ができて…」
「円を描いてる…」 「そして最後に直線を描けば──」
≪ワン、スモーク!≫
「あぁ、そういうことね!」
「100スレおめでとう!“コン”グラッチュレーションズ!みんなに感謝!」 「競バもよろしくプボ〜」 |
+ | コントレイルくん……よ |
100冠目 9
「コントレイルくん……よ」
ボクは彼の背から声をかける。 「100スレ目だけど、気楽に行こうぜ。クリス(マッキャロン)じゃないけど、テイク・イット・イージーだぜ。君の頭なら、この程度の英語はわかるだろう………そうだ、気楽にだ。そうだ、そうだ、グランアレグリアくんには2000m走ってもらうから黙っておいてくれ」 |
+ | 飼われる冬毛モコモコのクロノ |
100冠目 67
えっ!冬毛モコモコのクロノ姉貴を飼うコンちゃん!?
同 80
コントレイル「どうしてこんなことに…」
癒しの空間であるはずの寮の部屋で、私は同室のディープボンドから「自業自得だ」と言わんばかりのきつ~い目線を向けられて針のむしろとなっていた。 問題の根源はソファーに寝そべり、次の私の"命令"を待っている。 クロノジェネシス「ご主人様、クロノは次は何をすればいいわん?」 コントレイル「まだ寝そべってて下さい!いまスマホにかけてますので!お願いですから!」 クロノジェネシス「はいわん。ご主人様のため、頑張ってごろごろするわん!」 私は上目遣いにクロノ先輩の顔をみやる。手でわんこのポーズをしながら寝そべる姿は男たちが見たら卒倒するようなかわいさであるが、目の中の光が彼女が正気も正気であることを示している。つまり、全然私は許されていないのだ。 コントレイル「あっ!繋がった!トレーナーさん!ごめんなさい、私のミスで!すぐにクロノ先輩のトレーナーさんと一緒にもどって下さい!彼には大事な約束が…………えっ、もう出発した……あっ、そうですか……はい、はい………すみません…」ブチッツーツー 私が恐る恐る後ろを振り向くと、満面の笑みのクロノジェネシス先輩が「わんわんクロノが何でも言うこと聞く券」を裏返す。そこには「1日有効」の文字がデカデカと記されていた。 クロノジェネシス「…さあ、現 在 のご主人様?次はいかがしますかワン?」 私は観念し、今日1日の己の運命を悟った。 コントレイル「じゃあ…学食に3人で朝ごはん食べに行きましょうか…」 クロノジェネシス「わかったわん。今リード着けるから待っててわん」 コントレイル「あっあっあっそんなことしたらみんなに勘違いされてしまいます…」 プボ「大丈夫。」 コントレイル「?」 プボ「私も共犯になってあげるプボ」 コントレイル「なあ~」グニャア~
誰が続き下さい
|
+ | プイプイと女の子 |
追記:恐らく前のクロノのお話の続きです。
100冠目 86
「コンちゃん…かくかくしかじかまるまるうまぴょいで大体の事情はわかったプイ」
「ディープさん!?事情がわかったなら助けてくださいよぉ…」
「こればっかりは慣れるしか無いんだプイ。
…私も『ディープ!新しい魔法の探求に出かけるわよ!』って山向こうまで連れ出されたり、 『ディープインパクト。貴様には将来の生徒会を担ってもらわねばならん』ってマンツーマンでしごかれたり、 『マリアライトへの指導のお礼デース!!』って超激辛料理食べる羽目になったなぁ…」
「鋼メンタルで有名なディープさんが遠い目してるプボ…」
「(私もこれから尻に敷かれるんだな…)」 |
+ | 昔の貴婦人 |
100冠目 87
あのプイがスカウトしてきたという話が話題になって、ルドンナさんの現役時代のプレッシャーは大変なものだったのです。勝ちへの執着に囚われたルドンナさんには、自由奔放なゴルシはそれはそれはコンプレックスを刺激される存在でした。向こうが相手にしてないという態度をとるのも、ルドンナにとって余計に腹立たしいものでした。まあそれは意外と気配りのできるゴルシが嫌われてる相手にわざわざ絡みにいかなかっただけなのですが。
結局現役を終えるまで良好とは言い難い関係だったのですが、寮長をやったり自分以外の世話をしたりしているうちに自分の視野が狭かったことにルドンナは気付いたのでした。ゴルシを見るとイライラするのは単に自由なゴルシに嫉妬していただけだったということです。 ルドンナの頑なな態度が無くなったので、今ではゴルシたちとも仲良くやれています、という話。 |
+ | ハッピーバースデー レーベン編 |
100冠目 130
ハッピーバースデーレーベン編
ゴルシ「ほらよユー坊。ゴルシちゃんからケーキのプレゼントだ」 ユーバーレーベン「おおー。すごいぞー。ありがとうゴルシの人。でもユー、困ったことがあってな…」 (大量のケーキの山の図) ユーバーレーベン「ユーの体は一つだから、こんなに食べきれないぞ…」 ゴルシ「…さてはみんな相談もせずバラバラにケーキ買ってきたな。仕方ない奴らだぜ。こうなったら…援軍を呼ぶ!」 ユーバーレーベン「えん…ぐん…?」 ゴルシ「ああ。アタシの知り合いには甘い物に目がない奴が何人もいるからな。ついでになんかプレゼント持ってきてもらうとするか。こいつはデカイ宴になりそうだぜ」 ユーバーレーベン「さすがゴルシの人…ユーは展開の速さに驚きを隠せない…」 |
101冠目
+ | 生き残れ! ユーバーレーベン |
101冠目 130
生き残れ!ユーバーレーベン
ユーバーレーベン「コンの人ーコンの人ー、髪がぐしゃぐしゃになってしまったぞ…」
コンちゃん「わわっ!今日は一体何をしたの?」 ユーバーレーベン「白い子を追って植木の隙間をくぐり抜けているうちに気付くとこうなってた。なおして、くれますか?」 コンちゃん「だから葉っぱもたくさんついてたんだね。いいよ。こっちにきて」 ユーバーレーベン「ありがとう。たすかった」 コンちゃん「ところでどうしてソダシちゃんを追いかけてたの?」シュッシュッ ダダダダ イタゾー ファインルージュ「注射が怖いとか顔に似合わないこと言いやがって!」ダッ アカイトリノムスメ「白毛のカツラまで用意して、替え玉のやり方が手慣れてますわね!」ダッ ダダダ コンちゃん「あー予防接種」 |
102冠目
+ | BTTFコンちゃん1986 パリのアパルトマンにて |
102冠目 49
BTTFコンちゃん1986
パリのアパルトマンにて
シリウスシンボリ「じゃあ聞くがな、未来ウマ娘。2020年のトレセン学園の生徒会長は誰だ?」
コン「シンボリルドルフさんですね、今はディープインパクト先輩ですけど」
シリウス「ルドルフ!?あいつが!?じゃあ、副会長はスズマッハとビゼンニシキか」
シリウス「栗東の寮長はさしずめカツラギエースってとこだ」
プボ(今はジェンティルドンナ寮長なんだよなあ…)
シリウス「それで美浦はギャロップダイナだろ」
コン「お願いだから聞いてくださいよシリウスさん!」
シリウス「お前たちの冗談に付き合ってる暇はない。お休み、未来ウマ娘くんたち」
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+ | BTTFコンちゃん1986 プボくん作のフレンチすきやきを囲みながら |
102冠目 68
BTTFコンちゃん1986
プボくん作のフレンチすきやきを囲みながら
シリウス「ほー、ウマ娘たちの強いウマソウルとお前らが共鳴すると三女神の力で未来に帰れると」
コン「はい、今まで何回かこんなことがありましたが、それで帰れましたので…」
プボ「でもそんな都合のいいタイミングあるプボ?」
シリウス「はあ…未来には私の偉業は伝わってねーんだな」
コン「?」
シリウス「私の次走予定表だ、ほら」
コン「……が、凱旋門賞!そうか!そうだった!」
シリウス「強いウマ娘が集まる場としては十分じゃねーか?」
コン「というかベーリング…トリプティク…アカテナンゴ…」
プボ「頭がクラクラするような戦績のレジェンドばかりプボ…」
シリウス「おいおい私も入れろよ、ダービーウマ娘だぞ」
コン「あれ、どうしたのプボちゃん」
プボ「……『ダンシングブレーヴ』」
シリウス「ああ、そいつがやっぱり人気は一番だろうな」
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+ | BTTFコンちゃん1986 完結編 |
102冠目 129
BTTFコンちゃん1986
練習用コース
シリウス「…やっぱり未来のトレーニングはすげぇな、シンボリの奴らの併せウマより効果あったぜ」
コン「この上がり3ハロンのタイム、去年の展開なら捲れそうですね」
プボ「さあ、あとはクールダウンしてストレッチするプボ〜」
シリウス「はいはい、じゃあ行ってくるか」
プボ「…ねぇコンちゃん」
コン「何?」
プボ「こんなにシリウスさんに肩入れして大丈夫なのかなあ…帰るためとはいえ」
コン「うーん…でも今までの経験上、強いウマソウルを発動させるには会ったウマ娘を鍛えるしかなかったじゃない?」
プボ「今のところ何も起きてないよ?スマホの写真データも消えてないし」
コン「シリウスさんに凱旋門制覇してもらうまでかなあ…?」
同 130
⏰
凱旋門賞当日 ロンシャン競バ場
シリウス「よし、準備完了だな!」
コン「レースが終わったら私達は帰っているかもしれないので、ここでお別れですね」
プボ「頑張ってくださいプボ〜」
シリウス「けっ、未来のフォワ賞ウマ娘に言われたら勝つしかねーよな」
コン「では、行ってらっしゃい」グータッチ
シリウス「おう!お前ら未来でちゃんと見とけよ!私は今日伝説になるからな!」グータッチ
単勝人気
1 ダンシングブレーヴ 3.25倍 1 トリプティク 3.25倍 3 シリウスシンボリ 7.00倍
コン「うわぁ、シリウスさんとんでもない事になってるなあ」
プボ「事前インタビューでかなりのビッグマウスが発動してたプボ〜」
同 131
コン「さあ、スタンドに行こうプボちゃん、プボちゃん…?」
プボ「………あ、コンちゃん、なんか…寒い…」
コン「……!プボちゃん、体が透け…!?」
プボ「コンちゃん……あのウマ娘、なんとなくキングさんに似た雰囲気…緑にピンクたすき柄の勝負服…間違いないよね…?」
ダンシングブレーヴ(私が一番…私が一番なんだ…負けられない、負けた姿を見せたくない…)
コン「まさかダンシングブレーヴさん…掛かってるの…?」
同 132
⏰
実況「さあ先頭はダラーラ、続いてベビーターク、シャルダリ、アカテナンゴ」
実況「ダンシングブレーヴは5番手からレースを進めます」
解説「日本のシリウスシンボリがすぐ後方ですね」
実況「インタビューでは『私は未来のトレーニングを積んだ』と話していたシリウスシンボリですが…」
解説「何なんでしょう、ジャパニーズニンジャのワザでも取り入れたんですかね」
コン「…大丈夫?スタンドに来たけども…これじゃ医務室行ったほうが…」
プボ「はあっ、はあ、大丈夫、私は…このレース、を…」
コン「?」
プボ「運命的な感じがするこのレースを、直に見なきゃいけない気がするから…」
実況「さあ、マージー、サンテステフ、ベーリング…抑えめのペースで進んでいきます」
同 133
ダンブレ(はあ、はあっ…!どうしたんだろう、いつもの体の動きじゃない…)
ダンブレ「もう…無…」
シリウス「よう、インディアン人形さん」
ダンブレ「…レース中に話しかけるなんて余裕ね」
シリウス「ああ、もうすぐ極東のシリウスが世界で一番輝く時が来るからな!」
シリウス「お前は指咥えてみてろ…ん?」
ダンブレ「…るな」
シリウス「何だよ、聞こえねーなあ」
ダンブレ「…世界を無礼るな、ファッ○ンイエ○ーウマ娘!」
シリウス「うっわ汚ぇ言葉遣い!」
ダンブレ「思い出したよ、私が世界一のウマ娘だってこと!ついてこれるもんなら来てみろ!」
シリウス「おおっ、やってやるよ!」
同 134
⏰
実況「ダンシングブレーヴが一つ順位を上げる!すぐ後方に付けていたシリウスシンボリが食い下がる!」
コン「きたっ!もうフォルスストレートだよ!」
プボ「ダンシングブレーヴさんは…?」
コン「外いっぱいから4コーナーに向かってる!」
プボ「あぁ…それじゃ駄目だよ、コンちゃん…ロンシャンは…外ラチが荒れてるから…ふんばりが効かないんだ…プボ…」
コン「何言ってんのプボちゃん!これは『史実通り』なんだよっ!」
⏰
ダンブレ「うぉおおおっ!」
シリウス「へっ、今の私なら…このペースについて」
シリウス(…うっ!?予想より早く筋肉に限界が…!?何故だ、あいつらと未来の高速トレーニングをみっちり…)
シリウス(…違う、これは『今年のロンシャンのレース』だ、『未来の高速バ場のレース』じゃない!)
シリウス(しくじった!つい良さげなタイムが出て楽しかったから調子に乗って!)
実況「ダンシングブレーヴが外から来る!ベーリングが上がってくる!シリウスシンボリはバ群に沈んでいくーっ!」
シリウス(女神は…イカサマは許しちゃくれないって事か…)
実況「ダンシングブレーヴ!ダンシングブレーヴが一着でゴールイン!続いてベーリング、トリプティク、シャーラスタニ…」
同 135
⏰
2022年 トレセン学園 三女神の像の前
コン「あんなにシリウスさんとトレーニングしたのに、歴史の修整力が働いたって感じだね」
プボ「冗談じゃないプボ!ダンシングブレーヴさんが一着じゃなかったら多分私消えてたプボ!」
コン「ごめんなさい、過去への介入はやっぱり無茶だね…もう過去になんか飛ばされたくないよ」
プボ「同感!」
コン「しかし見事にシリウスさん覚えてなかったね、私達の事」
プボ「せっかく元会長にセッティング頼んだのに無駄足だったプボ〜」
コン「まあ、それでいいんだよね…」
プボ「…でも、あのレースは見れて良かった。私の記憶の中のダンシングブレーヴさんは、マリー病に苦しんでる姿だけだったから」
プボ「あんなに生き生きした、キレキレの走り…私も目指したくなったよ」
コン「じゃあ、今から一本ダッシュいっとく?」
プボ「プボッ!?はちみー飲みに行くって約束だったはずプボ〜!」
???「…次どうする?ラムタラいっとく?」
To Be Continued…?
|
+ | 秋天後の三冠馬 |
102冠目 145
誰も居なさそうなので前に書いたSSを修正したのを投下します
負けてはいけない戦いだった。追い越さなければいけない背中だった。私は、私たちは、決して弱い世代ではないと証明するために。
「グランアレグリア!自信をもってグランアレグリア!」 「外からコントレイル!こちらも負けられない去年の三冠ウマ娘!」 「やはり三強!やはり三強!」 「エフフォーリアだ!エフフォーリアが抜け出す!」 脚が上がらない。そこはもうゴール板だった。非情なターフビジョンは、私が2着という現実だけを伝えてきている。 「若きウマ娘が天皇賞を制しました!」 「「「ワアアァァァーーーーッ!!!」」」 府中に大歓声が響き渡る。1年前は聞こえなかった大歓声が。 また負けてしまった。1度目は「皇帝」を超えた「女王」に、2度目は無敗の快速ウマ娘に、そして3度目は――――クラシック級の後輩に。 「ありがとうございました」 後輩が握手を求めてきた。握手を交わす。悔しいけれど、ここは握手を交わそう。この子の勝利を精一杯、称えよう。だって彼女は、私より強いのだから。 「おめでとう。手も足も出なかった」 そう言った後、地下バ道に降りていく。控室に戻るなり、生ぬるい水が頬を伝ってきた。もう府中の雨は止んでいるはずなのに、私の心は、いつまでも…そう、あの「世紀の一戦」からずっと、雨模様のままだ。 …これではっきりした。私は最弱の三冠ウマ娘だと。後輩にも勝てずに、ただ三冠の価値を下げていく存在なのだと。 だったら、もう――――負け続けて、自分だけではなく、トレーナーさん、同期のみんなの評価を下げてしまうなら、もう――― 次はウイニングライブがある。涙を拭って、涙腺をきつく縛った。お客さんの前で泣いてしまったら、それこそ本当に嫌われる気がして。「ライブもまともにできない」と言われる気がして。 「力の限り、先へ―――」そんな歌詞も、今の私には何も響いてこなかった。 ウイニングライブが終わり、再び控室に戻ってきた。全身の力を抜いて、ライブの時はきつく絞っていた涙腺の力も抜いて、何もない天井を仰ぎながら、消え入るような声で呟く。 「…ごめんね、タクトちゃん。私もう、頑張れないや」
同 146
天皇賞から1週間が経とうとしている。その間のトレーニングには全く身が入らなかった。トレーナーさんがそんな私の事を心配したのか、今日のトレーニングは無しにしてくれた。
今日の天気も、やっぱり雨だった。 何もする気が起きず、でも何かしないとという使命感に駆られ、無気力のまま街へと歩き出す。クレーンゲーム、買い物、いや、何でもいいからとにかく何かをして、少しでも気分を楽にしたかった。トレーナーさんもきっと、私の精神面の回復が目的で今日を休みにしたのだろう。 「やだ!!エフフォーリアがいい!!」 エフフォーリア。その名が聞こえて足を止めた。声のした方向を向いてみる。ぱかプチが置いてある店の前で、駄々をこねているウマ娘の子供がいた。その母親だろうか、大人のウマ娘がその子に何かを言い聞かせていた。 その場に立ち止まり、耳を澄ます。その子はエフフォーリアのぱかプチが欲しいようだった。 「エフフォーリアは売り切れなんですって。それに前はコントレイルが欲しいって言ってたじゃない」 母親がそういうと、その子はしばらく黙り込んだ後、私がかすかに聞き取れるぐらい小さな声で話し始めた。 「だって…コントレイルずっと負けてるんだもん。周りのみんなはエフフォーリアとかシャフリヤールとか持ってて…「コントレイルはダサいー」とか「後輩に負けるなんてかっこ悪いー」とか言ってて…」 「…ッ!!!」 すぐにその場を走り去った。これ以上は聞きたくなかった。私が、ファンのみんなの期待を裏切っているばかりではなく、小さな子供たちの憧れにもなれていないことを、信じたくなかった。認めたくなかった。 「ハァ…ハァ…ハァ…」 一心不乱に走った。気が付くと街を抜け、学園の近くを流れる川の河川敷に来ていた。よく自主トレでも使っている河川敷だ。そこから見える川はいつもと違って黒く濁り、流れは激しくなっている。 「…………」 小さな子供たちの憧れにもなれなかった。幼かった私が三冠を獲りたいと思うような、ディープさんのような、圧倒的な走りも、勝利もできなかった。
同 147
…もう、疲れたな。ジャパンカップには、エフフォーリアちゃんを下したシャフリヤールちゃんが来る。「幻のダービーウマ娘」と言われているオーソリティちゃんも。そんな相手に勝てる訳ないよ。どんなに頑張っても結果を残せないのなら、最弱の三冠ウマ娘の、私の存在している理由なんてないんじゃないのかな。いっそのこと、あのかわに「ふじちゃくすい」してみようかな。「すいぼつ」してみようかな。さいしょはぶくぶくして、ごぼごぼして、くるしいだろうけど、くるしいだろうけど、それだけで、なんにもしなくてよくなるなら――――――――
「いたー!!コンちゃーん!!」 「……..ぼんどちゃん?」 足は川の方へ一歩踏み出そうとしていた。そこに駆けてきたのは、フランス遠征をしていた親友でルームメイトのディープボンドだった。 「探したよー!!コンちゃん、空港にも寮にもいなくてさ!ルドンナ寮長に聞いたら街に行ったっていうから、ずーーーーーっと探してたんだ!」 そこには息を切らしながら、楽しそうに話す親友の姿があった。 「…帰国、今日だったっけ…?」 最低だ。ルームメイトの、親友の帰国する日を忘れるなんて。 「うん!フランスの料理すっっごくおいしかったよ!!…凱旋門賞は残念だったけど、また次があるから!次はね、有マ記念にしようと思ってるんだ!…大丈夫だよ!次は1着とって、コンちゃんを笑顔にしてあげるから!そうだ!コンちゃんも有マ記念出ようよ!またコンちゃんと一緒に走りたいな!」 やっぱり。私はこの子に無理をさせている。この子は私を笑顔にせんと、自分の本当にやりたいことを押し殺している。 「もうほっといてよ…有マ記念には出ないし…ジャパンカップで…走るのやめるから…」 「えっ…」 親友の顔が困惑の表情に変わる。でも、すぐに彼女の顔は笑顔に戻った。さっきとは違う、どこか無理をした笑顔に。 「…天皇賞は負けちゃったけど、ジャパンカップはきっと勝てるよ!コンちゃんは強いんだもん!三冠ウマ娘なんだもん!それで勝ったら、また走りたくなって、そしたら有マ記念に———」 「もういいよ!!!!無理に私に優しくしないで!!」 「…!!」
同 148
言ってしまった。心の中に閉じ込めていた、最低の言葉を。ボンドちゃんは、何も悪くないのに。私を励まそうとしてくれただけなのに。ますます自分が嫌になる。今すぐにでも、あの川に飛び込んで消えてしまいたくなる。
「…ごめんねボンドちゃん。でも、私なんかのために無理なんかしなくていいんだよ?私はボンドちゃんの本当の走りが見たいな。私の事なんか考えてない、本当の「ディープボンド」の走りが。」 次から次へと言葉が出てくる。いままで押し殺していた本心が言葉になって、喉から、口から溢れ出てくる。 「もういいの…ジャパンカップもどうせ勝てない。同じ条件でエフフォーリアちゃんに勝ったシャフリヤールちゃんも、東京レース場が得意なオーソリティちゃんもが来るから。それで私が負けたら、トレーナーさんもダメな指導者って言われるだろうし、ボンドちゃんやサリィちゃん、アリストテレスちゃん、ヴェルトライゼンデちゃん……みんなみんな、私に負ける弱い子って思われちゃう。私が苦しむだけならいい。でも周りのみんなも傷ついちゃうなら、もう…何もしないほうがいいんじゃないかなって…なんならジャパンカップも...出なくていいんじゃないかなって…」 溜まりに溜まっていたすべてを言葉と涙にして吐き出した。ボンドちゃんは何も言ってこない。かける言葉が見つからないのだろう。 最後に残った、思いの残りかすを言葉にして、全てを外の世界へ吐き出す。 「…三冠なんか、獲るんじゃなかった…….三冠ウマ娘になんか…なるんじゃなかった…!」 「……なんですって…ッ!?もう一度言ってみなさい…今の言葉!!!もう一度言ってみなさいッ!!」 背中から叫び声が聞こえた。 「…タクトちゃん…?」 後ろを振り向くとそこには、雨に濡れ、険しい顔をした、共に「ダブル・トリプル」を作り上げた、史上初の無敗のトリプルティアラウマ娘の、私のもう一人の親友であり、最高のライバルの――――――――デアリングタクトがいた。
同 149
「た、タクトちゃん待って…違うの、コンちゃんは―――」
タクトはボンドちゃんの静止も聞かず、私にまっすぐ歩み寄って、私の胸倉をを思いっきり掴んだ。 「…何が「三冠なんか獲るんじゃなかった」よ!あなたは三冠を目指して散っていった、幾千の屍の上に立つ者としての自覚を持ちなさい!」 「…私にそんな自覚も資格も無いよ…全部運だったんだから…ダービーにオーソリティちゃんが来なかったのも…菊花賞でアリストテレスちゃんに抜かされなかったのも…全部全部…運だったんだよ…」 「いいえ!1年前、ジャパンカップで戦ったあなたは、そんな運に頼ったような顔はしていなかった!!正々堂々、実力で三冠を獲った顔をしていた!…約束したじゃない!アーモンドさんに負けた後、2人であの先頭争いの続きをするって!!」 ああ。思い出した。あの「世紀の一戦」が終わった後の地下馬道での話だ。 「絶対女王」に負け、私は暗い顔をしていたんだと思う。そんな私にタクトちゃんが歩みよってきて、こういった。 「コントレイルさん。来年、この先頭争いの続きをしましょう。」 そうか、来年はアーモンドさんがいない。だから、2人で思いっきり走れると思った。お客さんが望んでいた、最高の景色を、2人で作り上げることが出来ると思った。 「…うん。約束だよ。」 …でも、1年前とは自分も周囲の環境も、何もかもが違いすぎていた。 「…1年前とは、もう何もかも違うんだよ…無敗でもなければ、最強でもない、今の私には、なんっっっにも…!!何も残ってないんだよ!!!」 「…ッ!!!」 タクトちゃんは一歩も引かない。しかし次出た声の声色は、さっきまでと違い暗く沈んでいた。
同 150
「…いいえ…今のあなたには…まだ脚が残ってるわ…元気に動いてくれる脚がね…」
「本当に何も残ってないのは…私の方よ…」 「…タクトちゃん…?」 彼女は海外での敗戦以降、「故障」とだけ報道されていた。しかし、私が何度も故障の名前を聞いても、タクトちゃんは何も教えてくれなかった。 「教えてあげる。私の脚はね…繋靱帯炎なの…」 そういうと彼女は、私を掴んでいた両腕を力なく下に垂らした。 息を吞んだ。繋靱帯炎。それは一度発症したら最後、本来の走りには戻れないというウマ娘にとって最悪の故障だ。過去に様々なウマ娘がこれに苦しめられたと聞く。それを、ライバルが、親友が、タクトちゃんが。 「タクトちゃん…」 「だからっ…もし復帰できたとしても、以前のような走りはできない!!二度とあなたと先頭争いをすることも!!あなたと一緒に走ることも叶わない!!!あの約束をもう!!二度と!!果たすことはできないッ…!!」 だんだん彼女の顔がぐちゃぐちゃになっていく。それに合わせて、声に嗚咽が混じりだした。そしてついに―― 「ぐすっ…えぐ…うぅ…うわあああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!ああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁああぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁ!!!!!!」 目から大粒の涙を流し、その場に泣き崩れるタクトちゃん。さっきまで鬼の形相で私に説教していた姿が嘘のようだ。 「…」 「…コンちゃん?なにしてるの…?」 「ごめんボンドちゃん。少し、静かにしてて」 自分自身に問いかけた。何ができる?今の私に何が。目の前で泣いているライバルに、いつも私を支えてくれた親友に、いったい何が―――そんな時、1つの記憶が私の頭の中をよぎる。
同 151
「―――あなたから貰う、最後の夢。あなたから貰う、最後の勇気。そして、あなたに送る、最後の祈り。」
「そして、あなたは、”伝説”になる。」 「間違いなく飛んだ!間違いなく飛んだ!」 「最後の衝撃だ!!これが最後の、ディープインパクトォォッ!!!!」 ―――思い出した。ディープさんが勝って、トゥインクルシリーズを締めくくった有マ記念。そのとき脚部不安を抱えていた私は、1回だけ三冠の夢をあきらめようとしたんだっけ。でも、その走りを見て、もう一度、三冠へ向けて頑張ろうと思えた。 私なら三冠を獲れる。いや、獲ってみせる。そんな勇気が湧いてきたのを思い出した。 ――――――そうだ。勇気だ。今の私なら、三冠ウマ娘の私なら、”あの人”の後継者の私なら、タクトちゃんに、ボンドちゃんに、みんなに、勇気を与えることが出来るはずだ。繋靱帯炎を乗り越える勇気を。もう一度、世界の頂点に挑む勇気を。この困難な時代を乗り越える勇気を。ジャパンカップというあの舞台で、最高の走りをすることが出来たなら。”英雄”にはなれなくても、”衝撃”を残すことは来なくても、私だけの”軌跡”を、残すことが出来るなら――――――――― まだ脚は残っている。タクトちゃんの言った通り、まだ私にはターフの上を走ることが出来る脚がある。やっと分かった。この脚は、三冠を獲るためだけの脚じゃない。みんなに勇気を与えるために神様がくれた脚なのだと。 自分の手を見つめた。手を握る、手を開く、握って、開いて、また握って、また開いて、また握って―――
同 152
「…よし」
もう下は見ない。まっすぐな瞳で、泣いている彼女を見つめた。 「タクトちゃん」 精一杯。自分が作ることの出来る精一杯優しい声で話しかける。 「…コントレイルさん?」 彼女に歩み寄って、膝を落とす。そして、だらんと垂れ下がっていた親友の腕を、優しく握った。 「今のあなたに、勇気をあげたい。あなたの困難を越える勇気を。今の私は、それぐらいしかあなたにあげられないけど——ジャパンカップで、1着を取るよ。タクトちゃんの分まで走ってくる。だから待ってて」 「…!!」 それだけ言うと立ち上がり、ボンドちゃんの方を向く。ちょっと無茶なお願いだけど、少し申し訳ないけど、でも私の親友だから、きっと笑顔で許してくれるよね。 「ボンドちゃん。帰国早々悪いけど、並走。付き合ってくれる?」 ボンドちゃんの笑顔が、いつもより輝いて見えた。 「…うん!分かった!!!!!じゃあまずトレセンまで競争だね!!まっけないぞー!!!」 「よーし!こっちだって!!」 先に走りだしたボンドちゃん。後を追って私も駆け出す。 後ろを振り向くと、タクトちゃんが一人で立ち上がるのが見えた。 それだけ見て、あとは前だけを向いて走った。 ―――――――――――――――雨は、いつの間にか止んでいた。
同 153
終わりです。色々修正してみましたが良くなりましたかね?
SS見た後はJCをどうぞ |
+ | えっちゃんとタイホのバレンタイン |
102冠目 158
〜バレンタイン当日の夕方のこと〜
「俺さぁ、担当からチョコ貰っちゃったよwまあ勿論義理だけどさ」 「いいなぁ…俺の担当はなんか、そういうの気にするタイプじゃないからなあ…」 「あー…走るの優先主義のタイプか」 「そうそう。どうにか日常会話とかしてみようとしてもなーんかレースとかの話になっちゃうんだよねー…」 「ま、ウマ娘ってのは走るためにここに入ってきたんだから走るのが最優先なのが普通なんじゃねーの?」 「それは…そうだけどさぁ、しばらく大きなレースがなく今くらいゆっくりして欲しいじゃん」 「まあな?……まさかお前、チョコ欲しいのか?」 「ばっ…お前!そもそも俺の担当からチョコ貰ったところで文字通り義理以外のなんでもないだろ!」 「エフフォーリアとタイトルホルダーだっけ?お前の担当って…あー…たしかに、偏見かもだけどエフフォーリアはバレンタインとか興味なさそうだし、タイトルホルダーもその辺はちゃんと線引きしてそうだしなー」 「って辞めだ辞め!こんな話してても俺が虚しくなるだけだ!俺は帰るからな、お前も一通り仕事終わったら日が沈む前には帰っとけよ」 「はいはい、全く…」
バレンタイン…か。考えてみればバレンタインにチョコを貰ったことなんてほとんど無かった。そういうのを気にするような歳になった頃にはもうトレーナーを目指していて、まともに女子と関わってなかったからだ。
(チョコ…なあ) いや、何を考えてるんだ俺。別に気にしてないし。チョコ貰ったことないのは理由があるし。うん、どうせただのチョコレート、普通に自分で買う物となんら変わりはないチョコレート。だから別に気になってなんかいない。 (担当からチョコレート…か。たしかにクラシック期の始め頃のバレンタインはお互い忙しかったし出会って一年も経ってなかったからな……) いやいやますます何を考えているんだ。担当達はこれからますます忙しくなるシニア期に入る。俺自身もバレンタインなんて気にしている暇は…
「あ、あの…トレーナーさん!」
同 159
15報告
〜一方その頃エフフォーリア〜 「どっっどどどどうしよう……結局一日中チョコ渡せてないよぉ………」 「せっかく昨日2人で作ったんじゃん?渡さないと手作りなんだから賞味期限切れちゃうよ?」 「そ、それはそうなんだけど…わかってるんだけど…」 「私はえっちゃんが渡す時に一緒に渡すからさ、えっちゃんが渡さないと2個のチョコレートが無駄になっちゃうよ?」 「うぅ……でも、いざ話しかけるとなると…」 「それにほら、もうとっくに日が暮れそうだよ?早く渡しに行かないとトレーナー帰っちゃうかもね〜…もしくはもう、帰ってたりして」 「も、もうこんな時間?!」 「えっちゃんがぐずぐずしてるからだよ?」 「い、行けばいいんでしょ行けば!それで居なかったら…わ、渡すのは諦めるから!」 「まだトレーナー帰ってないといいね〜」
「あ、あの!トレーナーさん!」
「ど、どうしたんだエフフォーリア?」 「え、あ、…えっと…え、その………ちょ、チョコです………て、手作りですから…」 「えっ……あ、いや、嬉しいよ!ありがとう!」 「そ、それでは!!!!また明日!!!!!」 「あっ、おい…行っちゃった……」 「ありゃりゃ、えっちゃん逃げちゃいましたね〜、じゃあ私からもこれを。私だって一応、手作りなんですからね?」 「え、あ、ありがとう…じゃあまた明日な…」
同 161
「うわあああん、タイホおおぉぉ……チョコ渡しちゃったよ…どうしよ、どうしよう……」
「いやいや渡してもどうにもなんないよ多分、喜んでくれてると思うよ?」 「うぅ…ぐすっ…でもぉ…ば、バレンタインにチョコ渡すなんて初めてだもん…」 「まったく、チョコ渡すだけで泣くなんてえっちゃんは泣き虫さんですね〜」 「そ、それ言ったらタイホだって昨日チョコ作ってる時にだってチョコになるはずの物が炭になって泣いてたじゃんか!」 「そ、それは…!しょうがないじゃん!て、手作りなんて私も初めてだったんだもん!」 「お菓子なんて分量通りに時間通りにやればできるじゃん!」 「できないよ!できなかったもん!」 「ふふっ……あははっ……あー、可笑しいね」 「もう、ふふっ、笑わないでよ!」
(ほ、本当にチョコを貰ってしまった…しかも手作りとか言ってなかったか?………まあ最近の女の子は義理チョコでも手作りするらしいし、多分それだろう、きっとそうだ。)
以上です。コンちゃんのバレンタイン絵は描き途中だから待っててください
追記:本スレ159には可愛いえっちゃんの絵があります。
|
+ | ユーちゃんとシャフのバレンタイン |
102冠目 171
ユーバーレーベン「バレン…タイン…?」ピコピコ
ゴルシ「ああ、組によくいる連中は色恋とは無縁の奴らだからな。ユー坊も後学のために街のバレンタインのコーナーを見物してみるのもいいと思うぜ」 ※色恋とは無縁の奴ら↓ ソーヴァリアント「…」ズズ… メロディーレーン「こたつでみかん…そして緑茶…やっぱり冬はこれよこれ」 マルシュロレーヌ「一月もあっという間だった気がするねー」 … ユーバーレーベン「ゴルシの人が言う通りに街に来ても…おいしそうなチョコが売ってたこと以外よくわからないぞ…ん?おお…シャフの子」 シャフリヤール「こんにちはユーバーレーベン。たくさんチョコを買ったのですね。配る予定があるのですか?」 ユーバーレーベン「配る?」 シャフリヤール「バレンタインと言えば女性が愛の告白をするイメージですが、お世話になった人たちに配ったり友人同士で送りあったりすることも珍しくありませんからね」 ユーバーレーベン「なんと…!そうか…そうだったのか…それじゃ………はい、これ」 シャフリヤール「これを私に?」 ユーバーレーベン「シャフの子はユーたちとたくさん遊んでくれたからな。すごく楽しかったし、そのお礼だぞ」 シャフリヤール「………その、ありがとうございます。嬉しいです。バレンタインデーには少し早いですが」 ユーバーレーベン「なぬっ。難しいなーバレンタイン。でも分かったぞ。ユー、お世話になった人たくさんいるからな。みんなにありがとうってしたいぞ。コンの人にもな」 シャフリヤール「コントレイル先輩ですか。そうですね。では、先輩に渡すチョコを一緒に作りませんか?」 ユーバーレーベン「おおー。なんか上級者みたいでカッコいいな。ユー、初めてだけど頑張るぞ」
みんなから愛されるコンちゃんの元に過去最大の量の友チョコが届いたこと、正月太りを地獄の特訓で解消したコンちゃんが若干青ざめていたことはまた別の話。
プイ「全部自分で食べるのは不可能プイ。人気者の宿命プイ」 |
103冠目
+ | コーヒー党プボ |
103冠目 14
うーん、この香り最高プボ~
ミルクもお砂糖もたっぷり入れるプボ~
同 15
サリオス「もうそれコーヒー苦手なんじゃないのか?」
プボ「なっ。違うよ。ブラックで飲むのは世界的に見ても一般的ではないんだよ」 サリオス「(ボンドが世界的に見てもとか言い出す時は大抵誤魔化してる時なんだよなあ)」 グラン「ふむ…与党内での選挙協力が難航…」ゴクゴク サリオス「(あっちはブラックっぽいけど味わってる様子がない…)」
同 34
「…あ〜。ちょっと小腹が空いちゃったプボ…コンちゃんは近所のマッドな栗毛さんの家に行ってるし、ビアンはレース前だし…トレセンのカフェテリアも新鮮味がないし…ん?」
「クイーンズカフェ?こんなとこに喫茶店なんかあったかな?」
「いらっしゃいませ…お好きな席に…」
「あ、はい」 (青鹿毛のウマ娘さんプボ…どっかで見たことあるような、ないような…)
「メニューは席にございます。ごゆっくり…」
(何があるんだろう。デザート、軽食、そして…コーヒーがやたら沢山ある…紅茶がないというのは珍しいプボ。コンちゃんの影響で紅茶しか飲まなかったからな〜。全然知らないし、苦いのあんまり好きじゃないんだ)
〜
📞「そんなこんなでコーヒー党に転身したって」 🐂「ボンドつながりかと思ったよ」 |
+ | バレンタイン2週間前のえっちゃん |
103冠目 40
前々回のスレにも出たが、もう一度出す。
バレンタイン2週間前、厳しい顔をしながら何かと睨めっこしているえっちゃん。 遠くからそっと見やれば右手にはヘラ、左手には温度計。 _____そう、彼女はチョコをテンパリングしていた。
「ム……1℃ずれましたね……」
「えっちゃんここのところ毎日キッチンに立ってるけど、お店でも出すの?」 「1日のカロリー許容量までしか試作しないと決めているので心配はないですよ、タイトルホルダー。」 「いやそういう問題じゃないんだよなぁ…」 |
104冠目
+ | ギャルゲー概念 三女神さまがみてる修羅場 |
104冠目 50
三女神さまがみてる修羅場
クロノ「コントレイルが一番頼りにしてるのは私なんだけど」 グラン「コントレイルはわたしのかぞくになってくれるっていったんですけど」 ラヴズ「約束したわよね?世界中どこでも一緒についてくるって」 ソダシ「先輩は私が貰う。先輩が私が走る理由になってくれたから」 ユーバーレーベン「コントレイル、さん…もっとユーと一緒にいて…」 アカイトリノムスメ「あなたには、わたくしとの見えない繋がりを感じますの。誰にも譲りませんわ」 デアリングタクト「ちょっと!コントレイルの隣に一番ふさわしいのは私なんだから!」
コンちゃん「\(^o^)/」
同 124
三女神さまがみてる修羅場2
エフフォーリア「生意気ですよ先輩。勝手に誰かの一番になるなんて。少し、躾が必要なようね」 コンちゃん「あわわわわ…」 レイパパレ「ちょっと君、コントレイルが恐がってるでしょ。よしよし、もう大丈夫だからね。コントレイルは私が守ってあげるからね」 コンちゃん「あの、ちょっと恥ずかしいんだけど…」 モズベッロ「行くぞコントレイル。付き合う必要はない」 コンちゃん「あぅ…も、モズベッロさん…」 エフフォーリア「ちょっと、誰の許可を得て先輩を連れていくんですか?」 レイパパレ「そんなに強く手を掴んじゃって…独り占めしたい気持ちがだだ漏れだよ」 モズベッロ「なっ!私はっ…お前らとは、違う…」 コンちゃん「(どうしてこうなった…)」
同 165
三女神さまがみてる修羅場3
タイトルホルダー「お姉ちゃんにはファンのみんながいるじゃない!レースもアイドルも何でも欲しがって、その上先輩まで取らないでよ…!」 メロディーレーン「ずっとお姉ちゃんを見てきたあなたなら分かるよね。私は欲しいものを諦めたりはしないって。コンちゃんを私のものにするために、私は全力で奪いにいくよ。たとえ相手があなたでも」 タイトルホルダー「私だって…本気で好きな人を譲ったりしない!コントレイル先輩は私のだっ!」
コンちゃん「(ひぃっ!仲良し姉妹と毎日楽しく過ごしてたらとんでもない事態にぃぃぃ!)」
|
105冠目
+ | 曇った白 |
105冠目 110
チャンピオンズCの後に 闘志は砂塵と消えて
「___勝ったのはテーオーケインズ!!ダート界の帝王に名乗りを上げたッ!!これは強い!!ソダシは二桁着順かーっ!?」
チャンピオンズカップ。「二刀流」の夢は______砂塵となって消えた。
ウイニングライブが終わり、ソダシが戻ってくる。
「トレーナー…」
【がんばったな】
「…」
やはりいきなりのダートG1は厳しいものがあったのだろうか。いや、自分はこれを無謀な挑戦だとは思いたくなかったし、ソダシ自身もそうだろうと思っていた。しかし、次にソダシの口から出た言葉は________
「もう、いいよね。トレーナー」
同 111
【!?】
「G1勝ったし、クラシック勝ったし、二刀流も挑んだ。白毛の後輩ちゃんたちに道は作れたわけだし。だからもう…走んなくても、いいよね」 耳を疑った。同時に自分自身の技量の小ささを呪った。 オークスの敗北以来ずっと、彼女の心の中には言葉にできない感情があったはずだ。今まで一回でも、彼女のそんな気持ちに気づいてあげられていただろうか?その気持ちに、寄り添ったことがあっただろうか?
【札幌記念で巻き返そう】
【二刀流に挑戦して、皆をあっと言わせてやろう】
今思えば、オークスの時も、秋華賞の時もそうだ。彼女にかけた言葉はそれだけだった。自分は彼女の気持ちに気付けないまま、彼女のメンタルケアも行わずに、ただ次のレースで巻き返そうというだけで。そんな自分の言動が、彼女にマイナスな感情を溜め込ませて、彼女の心を壊してしまったのかもしれない。
顔を上げたソダシ。その顔は「重圧」から解き放たれたかのような、諦めがついたかのような、どこか乾いた笑顔をこちらに向けていた。
「だって、トリプルティアラも二刀流も無理だったもの。いまのわたし、なんにものこってない。こんなしろげでごめんね。トレーナー」
【ソダシ…】
同 112
「__この白毛のソダシ様が、トリプルティアラを取ってやるんだから!!」
「トレーナー…私…勝てた!!あの桜花賞に!!クラシックに!!白毛のウマ娘として初めて!!次はオークスね。距離なんてこのソダシ様には関係ないんだから!!!」
「____負けられないの、私にとって、白毛の誇りにかけて、この秋華賞だけは。ダブルティアラだけは、獲って見せる」
「___二刀流?…分かったわ。白毛はダートで活躍してなんぼだものね!!やってやろうじゃない!!」
__ハナ差で制した桜花賞が今となっては懐かしい。彼女が今まで見せていた闘志は、砂となって空に消えていったのだった。
スピードが3上がった
スタミナが3上がった パワーが3上がった 根性が3上がった 賢さが3上がった スキルポイントが37上がった 【中京レース場×】になってしまった
育成目標達成!!
【チャンピオンズCに出走】 |
+ | サトノレイナス/孤独な女王たちの独白 |
105冠目 148
サトノレイナス/孤独な女王たちの独白
いつからだろう。
走ることが、とても辛くなったのは。
いつからだろう。
走れないことに、心が慣れ始めているのは。
白いあの子は私より強かった。
でも、今の彼女は何かを見失っている。
黒いあの子は私と同じ。
怪我に苦しんで…だけど、ジャパンカップで航跡をなぞった。
赤いあの子は重圧をはね除けた。
最後の冠を力で掴み取った。
…私は、私には何が出来るだろうか?
元気なあの子の力強い走り?
海の向こうの、雪を纏ったあの子の圧倒的な走り?
わからない。わからない。
わたしにはなにも、わからない。
──いまはまだ、なにも。
同 149
うーん、意味が無さげでありげ。これが今のレイナスのイメージです。
レイナスの一ファンとして、もっと精度を高めたいところですね。
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106冠目
+ | ユーイチ会の一幕 |
106冠目 139
ちょうどいいのでユーイチ会の一幕貼る
「コンちゃん!空気が入らないように気を付けて!そうそう、丁寧に丁寧に!」「こらこらピクちゃん!テンパリングはスプリントじゃないよ!ゆっくり、ゆっくり!」「シャフちゃんはどうかな?…うん、もう少し!だまが取れるまで混ぜようね!」
2月、それは乙女達にとって決戦の季節。バレンタインデーを明日に控えた私達は手作りチョコを作っている。 周りでサポートしてくれるのは、いずれもターフに名の通った先輩ウマ娘達だ。 「気を引き締めてやりなさい!テンパリングでチョコの艶、舌触りが決まるんですからね!」 キングヘイロー先生が3人に激を飛ばす。トレセンに伝わるクッキングヘイロー伝説とは裏腹に、そのエプロン姿は頼もしさ満点だ。 「そうそう、かかり気味だとレースもチョコも台無しにしちゃうわよ~!しーちゃんみたいにね♪」 「お゛?良く覚えてらしたわね~あなた…もしかして喧嘩売ってる?」ラインクラフト先生とシーザリオ先生が睨みあう。 「ちょっとザリ姉様やめてくれよ…あたしとキズナじゃあるまいし。ラインクラフト先生も!」 慌ててエピファネイア先輩が仲裁に入る。 賑やかな厨房で、次々にチョコが出来上がっていく。私も無事に飛行機の形をした美味しい特製チョコを作り上げることができた。頼れる先輩達がいて良かったなあ… 「うーん、ちょっとパンチが足りなくないかな?体と腕を付けて筒状にして、私みたいな目を付けて…」 …色んな意味で先輩達に負けないようにしないと… |
+ | オークス後のタケシ×マリリン |
106冠目 186
春のクラシックが終わった。金髪の彼女は変わらずトレーナー室の前に居る。
「帰るから挨拶に来たわ。2着よ」 「おめでとう」 なんと答えればいいのだろうか。自分が彼女にかけられる言葉などあるのだろうか。 「後ろから黒鹿毛の娘に差しきられたわ」 「惜しかった」 7番人気で2着。大外枠から内にスルスルと入り直線では仕掛けを一歩遅らせる好レース。でも彼女を導いたのは自分ではない。 「父親に売り飛ばすなんて酷い話よ」 「本当に面目ない」 トレーナー資格の停止処分を受けたのはオークスの少し前だった。危険なレースの指導。少しのミスの代償は大きいものだった。 「私、お父さんのウマ娘になってしまおうかしら」 父は偉大だ。GIだって何回も勝っている名トレーナーだ。でも
同 187
「チャンスをくれないか、マリリン」
なんて情けないのだろう。初めて絞り出した言葉が相手に縋るだけとは。 「………それは私が強いから」 「違う。君に惚れているから」 風に揺れる金の髪にどうしようもないほど惚れている。 「頑張りますって言って本番をすっぽかしたくせに」 「謝ることしか出来ない」 言い訳なんて出来はしない。間違いなく最低なトレーナーだ。 「お父さんはふざけながら言ったわ。貴方の言う通り指導しただけだって。だから、私はチャンスをあげる」 「どんなことでも」 君を手放さいで済むのなら。 「帰ると言ったでしょ。私と一緒に来なさい」 「一緒に………分かった。土下座でも何でもする」 頭だって丸めよう。 「………? はっ? 馬鹿じゃないの………実家じゃないわよ」 「じゃあ、何をすれば」 彼女は顔を真っ赤にして言う。 「貴方はトレーナーでしょ。夏の函館であなたの実力を証明しなさい。そしたら最後の一冠考えてあげる」 「分かった。リーディングだって取ってみせる」 リーディングなんて取ったことはない。でも彼女の為ならそれはとても簡単な事のように思えた。 「じゃあ、次は空港で。あと、坊主じゃない方が私は好きよ」 「坊主はやめておくよ」 彼女が去っていく。勝負の夏が始まる。
オークス後のタケシ×マリリンです。独自解釈を含みます。
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107冠目
+ | トルケスタニカ/要注意:武史→←えっちゃんの武史←マリリン失恋話 |
107冠目 29
いいと言われたので勢いのまま書き殴ったものを
武史→←えっちゃんの武史←マリリン失恋話なので要注意
トルケスタニカ
いつから恋焦がれていたかなんて覚えているはずもない。
ただ、そう。いつの日かもう手遅れになっていた、それだけ。
「…武史」
不器用で感情表現が苦手でも可愛らしい一面のあるあの鹿毛の子の姿があの人の瞳に焼き付いている事実に気が付いた時私は何をしていたっけな。
「どっちつかずの男は願い下げよ」
彼から背を向け歩き出す。私を呼ぶ声だなんて聞こえやしない。目頭が不意に熱くなって何かが零れ落ちそうだなんて知りたくもない。
せめて最後は笑顔で飾らせてね。
私は無意識のうちにどこか人のいない場所に走って向かっていた。途中同期の三冠馬のあの子達とすれ違い話しかけられたような気がするが、申し訳ないけどそれに応える余裕など今の私にはなくて。
夕陽に照らされる綺麗な水平線の景色は美しい。数ヶ月前に彼とこんな綺麗な景色を一緒に見たことを思い出した。
"マリリンの髪は本当に綺麗だね"
なんて言われていたような気がする。そう、その時も私は嬉しくて仕方がなかった。
夕陽を見ながら彼との出会いを思い出す。武史は余程私の髪が気に入っていたのかよく褒めてくれていた。脚の調子が整わない時もずっと彼は私と共に歩んでくれていた。彼の屈託のない笑みは誰が見ても幸せになれる。そんな笑顔がなによりも大好きだった。 何もかもが私にとってはかけがえのない大事な記憶。
107冠目 30
続き
「……ぅ……ぁ……」
もうここまで来たのなら耐える必要もないだろう、と目からは大量の涙が零れる。
誰にも悟られないようにしていた甘ったるい恋心が涙と共に溢れ出す。
「っ……たけし……ひ、ぐっ……」
好きになりたくなかった、好きになってしまった。恋心というものは厄介なもので、彼のことを知れば知るほど日毎に増していく。苦しくてたまらなかった、それでも諦めようとは思わなかった。
「……すき、よ……好きだったわよ……」
私にしか聞こえない声で誰にも打ち明けることのなかった想いを吐き出す。立っては居られなくなり地面にしゃがみ込む。私の涙がポツポツと地面の色を濃く染める。
「ごめん……たけし………っ……」
止めどない涙を必死に拭い立ち上がる。
叶わない恋だった。報われない恋だった。それでも彼に恋をしたことを後悔したくなくて。
「……愛していたわ、武史」
そう呟き、夢のような初恋を今度こそ終わらせた。
|
108冠目
+ | お姉さんの胸に飛び込むコンちゃん |
108冠目 41
コンちゃん「はぁ…」ストーン
メロディーレーン「どうしたんだいコンちゃん!お姉さんの胸に飛び込んでみるかい?」ウェーイ コンちゃん「レーンさんの胸…胸…?」ギュッ ……… コンちゃん「そんな…レーンさんは味方だと思ってたのに…しっかりあった…」ガーン メロディーレーン「レーンちゃんまさかの元気づけ失敗!?敗因はワッカリマセーン!」 シロニイ「恋する乙女は繊細なんだよ。チタン合金みたいなメンタルしてるレーンには分からないだろうけど」 メロディーレーン「シロニイさま、私を滅茶苦茶図太い女みたいに言わないでおくれよ!私だって乙女だよ!」 タイトルホルダー「でもお姉ちゃん、この前もうやだ世界の終わりだよー!って泣き叫んでたと思ってたらホクホク顔でプリン食べてたし…」 |
+ | ステイフーリッシュ×エントシャイディンwithマルシュの矢作組SS |
108冠目 81
「ステフ先輩、ファーストクラスってすごいです」
目を覚ますとブラインドをのそのそと開ける。まだ朝日が少し見えるくらいだ。 「マルシュ、朝早くだぞ」 「ステフ、もう時計は10時です」 「シャイデンさんもおはようございます」 成程、針は半分なんかとっくに過ぎている。 「変な感覚ですよね。香港とかと違って時間が巻きもどるから」 「私はラブズとアメリカで経験済みです」 ふふんと鼻を鳴らす後輩を追い払って顔を洗いに行くとする。 「ディクタスアイをするんじゃない」 白目剥き返して追い払った。 ※ 席に戻ると朝食が運ばれていた。 「運がいいですね、ステフ。貸切じゃなかったら朝食抜きでしたよ」 「シャイデンがパリに行った時はどうだったんだ」 「ラブズはショウガの出てた番組ずっと観てました」 「プボ君のいびきが少しうるさかったですね」 「マルシュは自分の席に帰らないのか」 「ケインズ君と何話せばいいか分からない」 堂々と隣に居座る後輩。 「パンちゃんがアマゾン君たちを惑わさないか心配です」 「みんな居ないもんな」 年上はみんな遠征なり休養なりだ。 「先輩達も私に着いてこなくても良かったのに」 「お前ダートだからたまたまだけどな」 「お見送りですよ。ラストレースですから」 「シャイデン先輩。私、先輩に勝利を捧げますよ」 「俺は?」 「レースに出ててください」
同 82
満足したのか帰っていくマルシュを見送った。
「みんな居なくなってしまいますね」 「まぁ、そうだな」 ラブズにコンちゃん。マルシュももうレースを去ってしまう。 「リスグラシュー先輩超えちゃったな」 「そうですね、いつの間にかそんな歳です」 「またセンターで踊りたいな」 「ええ、私も」 「まだ覚えてますか? センターの振り付け」 「本番になったら忘れてるかもな」 アナウンスが鳴った。もう少しで着陸らしい。 「綺麗な飛行機雲が欲しいな」 「じゃあ、また覚えないといけませんね」
2022サウジ遠征組です
パンちゃん⇒パンサラッサ アマゾン⇒ホウオウアマゾン |
+ | 宇宙人ジョーンズ トレセン学園編 |
108冠目 150
──この惑星の夜明けは美しい。
「最近外国人トレーナーが増えたでしょ」
「そうプボね〜」 「その中にさ。俳優そっくりの宇宙人がいて地球を調査中らしいよ」 「まさか〜」
──この惑星の住人は、どこか抜けている。
──だが、この惑星の夕焼けもまた。
『空の彼方に最後の軌跡ーーーッ!!!』
美しい。
■本日の報告
この惑星の夕焼けは美しい■
同 142
モ寮長の点てるお茶は───美味い。
同 143
宇宙人ジョーンズ
トレセン学園編
同 144
宇宙人ならモ寮長が見えるのも納得
同 145
プイの知り合いの宇宙人さんじゃないですか
同 146
件の茶室に行くとたまーに30そこそこの男の人がいるんだ……寮長とふたりでお茶しばいているのが妙に絵になるからそのときだけは誰も手を出さずに帰ってくるんだ……
同 148
「宇宙人ジョーンズ - 牧場篇(ディープインパクト)」
実はあれ代役だったとは言えんプイ
|
+ | 茶室 |
108冠目 161
ディープボンド「すみません、こういう席は初めてで…」
ゴールドシップ「あん?作法なんてどーでもいいよ。好きに寛いでくれればいーぜ。あぐらかくなり、寝ころがるなりよ」 言葉とは裏腹に、ゴールドシップの動作は実に厳かだ。ふくさをさばく手付きには威厳すら感じられ、柄杓から湯を汲み、茶碗に注ぎ、温めて湯を捨てる、全ての動きが淀みない。 茶碗を拭う時はこの傍若無人なウマ娘が器を美しく水平に保ち、丹念に丹念に拭いていく。 茶筅の音が小気味よく響く。 ディープボンド(…これが"結構なお手前で"ってやつなんだ…
同 162
最初にゴールドシップ先輩からお茶会に誘われた時、ディープボンドは怪しんだものだ。
プボ「ドッキリでお茶のプールに飛び込む羽目になったりとか…」
それに対して、ジェンティルドンナ寮長はころころと笑ったものだ。
ジェンティルドンナ「安心なさい。白いアレはアレな奴だけど、腐ってもメジロの関係者なのよ。」
その言葉は本当だった。ディープボンドは次第に手に汗を握りはじめる。名バと人から賞されるようなウマ娘ともなれば、その能力を見せるも隠すも自由自在という訳だ。なら、何故私に今それを見せる気になったのか…?
暮れゆく日差しと茶室の静けさの中で、湯の沸く音が心地よく響いてくる。ディープボンドはそれを聴きながら心をレース前にするように落ち着かせて、点てられた茶をゆっくりと喫した。茶碗越しにゴールドシップ先輩と目が合う。
途端に、全身にビリビリと痺れるような電撃が走る。ゴールドシップ先輩の瞳の中に見えたものは…
同 163
ディープボンド「…結構なお手前で…」
ゴールドシップ「おう」
茶碗を置いて呟くと、今までの動作が嘘のように、ガチャガチャと乱雑に茶道具を片付け始めた。用はもう済んだ、と言わんばかりに。
そう、もう用は済んだ。きっと先輩は、ユーバーレーベンあたりから私のプボプボした噂を聞いて、私のことを見てみたくなったに違いない。そしてこの茶室という小宇宙の中で、私達はお互いを完全に理解したのだ。
私が先輩の瞳の中に見たもの…みなを煙に巻く図太さの中に隠された、燃え盛る闘志、神経質な怒り、長距離戦に対する自負、殺気すら感じるレースへの願い…
そこには、"私"がいた。
「阪神大賞典、連覇目指せよ」
立ち上がったゴールドシップ先輩がポツリと言う。
「はい、4連覇くらいしちゃいましょうかプボ」
私が容赦なく斬り返す。
夕暮れの中で、先輩が大輪の花のような満面の笑みを浮かべるのが見えた。
同 164
以上、ゴールドシップとディープボンドが似ているという話でした
🐴「アレに似てるとか失礼ですよ!」 👹「そうよそうよ!」 |
109冠目
+ | 親友 |
109冠目 118
ゴルシ「ようユー坊、ちょっと聞きたいんだけど、ディープボンドってどんなやつなんだ?」
ユーバーレーベン「プボの人?あんまり話したことないから詳しくはわからないなー。でも優しくて、いつもニッコリしてて、大きい声も出したことないぞ。あとはなー………」 ゴルシ「後は?」 ユーバーレーベン「コンの人が、親友だって言ってたぞ」 ゴルシ「………あはははは!親友か!そーかそーかそりゃあいい!」 ユーバーレーベン「ど、どうしたゴルシの人…?」 ゴルシ「いやなに。親友ってのはいい響きだって思っただけさ。じゃあなユー坊!」 ユーバーレーベン「んー。ゴルシの人、親友が好きなのか…親友…ユーにもできるかな。できたら、いいな…」 … 🐴「呼んだかい」 ゴルシ「うわあ!お前今のは出ない流れだっただろうが!」 |
110冠目
+ | お酒入りチョコを食べてしまうコンちゃん |
110冠目 39
ある夜のこと、きぁあきゃあと黄色い声がかしましく響き渡るどんちゃん騒ぎのパーティーをかき分けて、フラフラとコントレイルはターフにまろび出てきた。
コントレイルの頭の中には、さっき「うっかり」たらふく食べてしまったチョコ達 ―ラム酒やブランデーがたっぷり入っていた― のせいで深い深い霧が渦巻いていた。そのもやもやした頭の中で、彼女はしきりと反省を繰り返していた。今日はバレンタインデー、来月になればメイクデビューの季節。こんな醜態では一体誰が私と契約をしてくれるというのだろうか。 すると、フラフラ千鳥足で歩くコントレイルのそばに、1人の男が歩いてきてそばに立った。お酒で気が大きくなったコントレイルは彼に大声で怒鳴った。 「そこの人!私は速いですよ!どうですか!!私とトレーナー契約してみませんか!!!」 するとその男は目を丸くしたが、ややあって「それは難しいなあ。」と呟いた。 たちまちコントレイルの目がつり上がる。「ほうほうほう、それでは私の走りを見てもそう言えますかね!!」 コントレイルは芝の中に躍りこむと、ハイヒールを脱ぎ捨てて裸足になり、ドレスをはためかせて力強くターフを駆け始めた。
同 40
心地よい風がコントレイルの体を包むと、酒の霧が頭から遠くへ遠くへと吹き飛ばされて、理性の光が戻ってきた。
その様子を見ていた男からは、コントレイルの走り方がしっかりしていくにつれて、顔が信号機のように青くなったり赤くなったりとコロコロ変わっていく様子が伺えた。
2400Mを走りきり、今やうなじまで真っ赤にしたコントレイルがそばに来ると、男はハイヒールを彼女に渡しながら言った。
「ごめんね、もう3年も君と契約していたものだから、新しく契約するのは…」
会場からプボの叫び声が響いてくる。
「コンちゃーん!引退スピーチの時間だから満足したなら早く来てよー!ラウズ先輩が怒ってるよー!」
「ほら、行ってあげたら?」トレーナーの声に小声ではい、と答えると、コントレイルはパーティー会場に戻り始めた。と、思い出したようにくるっと振り返った。
「私の走り、どうでしたか?」
トレーナーはため息をついて言った。
「とても素晴らしかったよ。俺の方が酔ってしまいそうだった。」
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+ | ジェラルディーナ |
110冠目 97
珍しくディープインパクト会長に呼び出された。
執務室に行くとこれまた珍しくモーリスもいた。 ディープインパクト会長はいつもちゃらんぽらんなテンションなのに 今日はなんだかおかしい。
「ジェンティルドンナ、モーリス、今日呼び出したのは…他でもない」
語尾のプイすら付けずに神妙な面持ちで私達に書類を渡す。
「…このウマ娘がどうしたんですか?会長」
モーリスは気づいていないかもしれないが、
私は気づいてしまった。 この顔は見覚えがある。
「彼女の扱いを間違えるととんでもない事になる、と理事長から言われてね」
書類を捲ると、この娘のサポート計画らしきものが見えた。
私とモーリス、スクリーンヒーロー先輩、会長、グラスさん…? おまけにメジロの施設も使い放題!? いつの間にこんなビッグプロジェクトになったんだ…
大丈夫なのか…ジェラルディーナ。
110冠目 91
ジェラルディーナちゃんは
サンデーサイレンスの4×3 リファールの5×5×5 ダンジグの5×4 ノーザンダンサーの5×5で血統マニアじゅるりなんだ
同 94
そして
父モーリス 父父スクリーンヒーロー 父父父グラスワンダー メジロの血も入ってるよ!
アカン確実に箱入りお嬢様だ
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+ | バレンタイン:マリリン&えっちゃんwithシュネル |
110冠目 106
「シュネルはタケシにはあげないの?」
「タケシにもあげますよ。でもルメールのを先に作ります」 バレンタインまで後少し。 「ルメール辞めてタケシのところに来ればいいのに。あの人取っかえ引っ変えよ?」 「でもマイルCS終わったあと君とドバイに行きたいんだって口説いてくれましたよ」 夕暮れの廊下を並んで歩いていく。 「そのマイルCS、誰と出たの?」 「タケシです」 手提げ鞄にはチョコレート。 「ルメールは?」 「グランさんと優勝してましたよ」 ニコニコ答える後輩は大きなリュックを背負っている。 「そのリュック何が入っているの?」 「よくぞ聞いてくれました、マリリン先輩。骨付肉が入っています」 いつの間にか家庭科室は目の前だ。 「骨付肉の煮込みを作ります」 「だから、家庭科室なのか」 寮にはチョコレートを溶かせる鍋はあっても骨付肉を茹でられる鍋はない。 「お、誰かいるみたいですね」 「この時期だし他にも誰かがチョコを作っているのよ」 家庭科室の扉をシュネルが開ける。そこでは1人のウマ娘がチョコを作っていた。鹿毛の髪に自分よりすこし大きい背丈。 「えっちゃん、授業ぶり〜」 愛しのあの人の1番になったウマ娘。
同 107
シュネルはチョコに匂いが移りますよといって部屋の奥に行ってしまった。だから手前の方で2人きりだ。
「それ、全部タケシにあげるの?」 ヘラとボウルは使われていない奥のものを。 「………マリリンさん」 「そう、ウインマリリン」 鍋で湯煎のためのお湯を沸かす。 「いえ、それは失敗作なので」 「結構作ったわね」 エフフォーリアの隣にはチョコレートが小さく山を作っている。 「失敗作なら少し貰ってもいい?」 「あまり美味しくないと思いますよ」 成程、摘んでみるとボソボソしていてあまり美味しくない。 「不器用なんです。レース以外のことは上手くできない」 「レースが上手いならいいじゃない。私はその上手さが欲しいわよ」 暫し沈黙が流れる。意を決したように相手が先に口を開いた。 「マリリンさんは私の事嫌いですか?」 「………なんで?」 「同じチームなのに話したこと無いなって。避けられてるのかなって」 「別に避けてないわよ」 分からない。 「私、ずっと思っていたんです。マリリンさんと話したいなって」 私はこの娘をどう思っているのだろうか? 「ごめんなさい。終わったら直ぐに帰るわ」 「残念です」 「ところで、チョコを溶かすボウルとヘラだけど………」 「………idiot!!」 突然、頭を何かで叩かれた。 「シュネルちゃん!?」 「何してるんですかあなた達は!!」 シュネルがひどく怒っていた。
同 108
「シュネルちゃん、先輩は体が弱いんだよ」
「知っています。そんなことよりなんですか? 何か話していると思ったら鍋から煙が上がっているのに何もしないし………何回も叫んだんですよ」 シュネルマイスターの手にした鍋は底が黒くなっている。 「マリリン先輩。しっかり者のあなたが何をしてるんですか」 「ごめんなさい、シュネル」 「えっちゃん。あなたも目の前で煙が上がっているのなら気づいてください」 「ごめん、シュネルちゃん」 やれやれとシュネルは両手を下ろす。 「ルメールにあげる分はもうタイマーが鳴るのを待つだけなので私がお2人の面倒を見てあげましょう。まずはえっちゃん、この山は一体」 「本通りにやっているのに上手く出来なくて」 「確かにこれは分離してますね。えっちゃん、そのボウルどこの使いました?」 「干してあったものを使いました」 「それが原因ですね。おそらく水分が残っていたのでしょう。マリリンさんは?」 「湯煎のお湯を鍋で沸かしていただけです」 「沸かせてないですね。Doubtです」 「えっちゃん、まだチョコはありますか?」 「………もう無いかも」 「迷惑かけたから私の使っていいわよ」 「でもそしたらマリリンさんの分が」 「良いのよ、まだ日にちはあるんだから」 「ふむ、どうせお2人ともタケシにしか渡さないのでしょう。私もタケシに渡す分を作らなければいけません。それなら名案がございます」
同 109
「あの子ってあんな風に笑うのね」
「そりゃあ、マシンじゃないんですから」 「拘りようはマシーンみたいだったけどね」 1g、1秒もズレを許さないその姿はマシーンそのものだった。 「でも可愛い女の子なんだなって。そうも思った」 タケシの話を聞きたがったり、それで顔を綻ばせたり。卵を割るのが下手だったり薄力粉を混ぜすぎて真っ白になったり。 「私はいつの間にかあの子のことを怖い子だと思ってた」 「先輩方ってえっちゃんのこと怖がってる人多いですよね」 「秋にGI2つも取られたからね」 春はクラシックとシニアだから特に話すこともなかった。春が終わってタケシが変わって私はまた怪我をした。その間にタケシと一緒にどこまでも行ってしまう年下のあの娘に何時しか恐れを抱いていた。 「今更、私と仲良くなってくれるかしら」 「タケシに一緒に渡しに行くんでしょう。きっとなれますよ」 今、私の手には小ぶりなパウンドケーキが1つある。 「マリリン先輩、えっちゃんwith私、タケシは幸せ者ですね」 「どちらかというと本体はあなただけどね」 「生地は私ですが中身はマリリン先輩のタケシの好物とえっちゃんの失敗チョコなので愛情はお2人が本体なんです」 パウンドケーキ、それは家族のケーキだ。家族が分け合って食べるケーキ。これを分け合って食べられるのならきっととても素晴らしいのだろう。
同 110
以上です。長文失礼しました。
マリリンとシュネルは手塚先生繋がりです。手塚先生はチョコが貰えなくて泣いておるぞ。 シュネルがルメールに作っているのはオッソ・ブーコ。骨付子牛の煮込み料理なんだとか。 |
+ | 陽が暮れるまではふたりの世界。/バレンタイン:武史→←えっちゃん |
110冠目 125
武史→←えっちゃんと言い張る
二人のバレンタインデー小話です。えっちゃん目線
陽が暮れるまではふたりの世界。
夕暮れ時。いつもより少し賑やかな校舎内を通り過ぎ向かったのはトレーナー室。本日のトレーニングは休みではあるのだが向かった理由はなんと言っても今日が2月14日すなわち、バレンタインデーであるから。
手に持っているのは小さな紙袋。その中身は当然の如くチョコレートである。トレーナー室へ向かう道を歩きながら"彼"に渡すチョコレートを作ったあの日のことをぼんやりと思い出す。きっかけはなんだっただろうか。もうすぐバレンタインデーだということで同室のタイトルホルダーから話を振られあれよあれよと気が付いたら両手に調理器具を持っていたのは薄く覚えている。如何せん私は酷く不器用なようで、ちゃんとした物にするまで大苦戦してえらく時間がかかってしまった。タイトルホルダーやシュネルちゃん、マリリン先輩コントレイル先輩、果てはシャフリヤールまでもが私の手伝いをしてくれた。正直シャフリヤールが手伝いに来てくれた時は中々に複雑ではあったのだがそれはさておき。そんなこんなでやっと完成できた手作りチョコレートは中々に良い出来なのではないかと思わせる程である。
しかし作るだけが問題ではなく、ここから先が私にとっては最難関といえる壁であった。
"トレーナーにチョコレートを渡す" これこそが1番の難所であり今日という日まで私の頭を悩ませるものだ。それは渡す直前である今も変わらず。 どうやって渡そう、上手く渡せるかな、味が気に入らなかったらどうしよう、エトセトラエトセトラ。生まれてこの方、好きな人にバレンタインデーにチョコを渡すことが今まで一度もあったことなどなかったのだ。そも私にとっては好きな人という存在は彼が初めてであって。頭の中はぐるぐるぐるぐる、あの人のことでいっぱい。私はよく"マシーン"などと喩えられることがあるが今日の私は傍から見たらポンコツも度が過ぎるへっぽこマシーンなのかもしれない。
と、心臓をバクバクさせながら歩いていると目線の先には見知った顔のウマ娘がいた。向こうも此方に気が付いたのか大きく手を振って向かってくる。
110冠目 126
「エフフォーリアちゃん!」
「…コントレイル先輩、この前は本当にありがとうございました」 「ううん、いいのいいの!私もチョコ作りたかったし、エフフォーリアちゃんもよく頑張ってたし!」 陽気な笑みを浮かべて話してくれる彼女の姿は少しだけ緊張を和らげてくれた。安堵のため息を1つ付くと先輩は私の手元と顔を見比べた。 「…もしかして、今から渡しに行くの?」 「……っ、そう、です。今から…渡しに行きます」 「そっか〜…ふ〜ん…」 「な、なんですか」 思いのほか小声になり若干顔を俯けて返事をすれば先輩は面白そうに軽く微笑んだ。そう、なぜだかわからないが彼女にも私が"彼"のことを好きなのはバレてしまっているのだ。 「ん〜?なんでもないよ〜?」 「……先輩」 「ふふっ、ごめんごめん…エフフォーリアちゃんちょっと耳貸して?」 そう言われ彼女に合わせて身体を少し屈める。 「大好きって想いを込めて作ったんだから大丈夫だよっ!後はほんの少し勇気を出して!」 「……っ!」 それだけ言い私の耳元から離れ、愛らしい笑顔を向ける先輩。彼女の言葉で顔に熱が集まり身体が硬直しそうになるが背中を数回軽く叩かれたのでそれは阻止された。 「実はね、私も今から渡しに行くんだ…だからお互い頑張ろうね!応援してるよ」 こちらから視線を外し少々照れた表情でそう告げた先輩の姿を見て徐々に勇気が湧いてきた。 「…はい、ありがとうございます。先輩も頑張って」 互いに軽く笑い合った後、彼女と別れ再度トレーナー室へ向かう。どんな風に渡そうかプランを練っていたがそんなものはもうどうでも良くなっていた。
ただ、"彼"に日頃の感謝と私のこの想いが少しでも伝わればそれでいいのだから。
110冠目 127
深呼吸を1つしてトレーナー室の扉を慎重に開ける。確かにそこに彼は存在するはずなのにやけに静かなような気がする。静寂と夕暮れの光はやけに私の心に突き刺さるようだったが覚悟を決めた私には逃げるという選択肢は存在しない。高鳴る鼓動と共に一歩ずつ部屋の中を進むとトレーナー室の机で突っ伏して寝ている人間が一人。
「……トレーナー」 書類整理をしていたのか散らばる書類の中で眠る彼は日頃の疲れが余程溜まっているのだろう。 「こんな所で寝てたら風邪引くよ」 傍にあったタオルケットを彼の肩にかけ寝顔を見つめる。私より歳上と言えど数々のトレーナーの中では新人同然な彼の寝顔は何処と無くあどけないものだった。心臓が小さく飛び跳ねたのには気が付かないフリをして持ってきたチョコレートを寝顔の傍に置く。彼が寝ている以上、ここに長居する訳でもないから置き手紙でも書いておこうとささっと紙とペンを取り、紙袋の近くにその置き手紙を置いた。面と向かって渡すことはできなかったのは良かったのか悪かったのか。なんだか複雑な気持ちになりながらもトレーナー室を出ようとしたその瞬間。
「……えふ…ふぉーりあ…」
心臓が大きく飛び跳ねたのは言うまでもないだろう。寝言なことには気付いたものの、その寝言が私の名なのだから非常にタチが悪い。 ずるい、ひどい、なんでそんな声で私を呼ぶの。 そんな悪態を付きながら眠る彼の手と私の手を重ねる。窓の外から見える夕陽は私の背中を押してくれているようだ。 今日ぐらい、今日ぐらいはいいだろうと軽く触れ、私は口を開いた。
「……トレーナー……いえ、…武史」
滅多に口にすることの無い彼の名を呼べば愛しさがあっという間に心に広がる。 貴方は私と出会った日のことを覚えているだろうか。 貴方は私が初めて勝利した日を、G1を獲ったあの日を覚えているだろうか。 私の貴方への想いに気が付いているだろうか。
「いつも…ありがとう」
今の私には貴方にちゃんと伝えることはできないけども。どうか少しでもこのチョコレートに込めた想いが届きますように。
「私、武史のことが───────。」
貴方に釣り合う存在になれたと自信を持って言える日が来るまでもう少し待っててくれないだろうか。
起きる気配のない寝顔を一瞥し、トレーナー室を後にした。寮に帰るや否やタイトルホルダーにからかわれたのは言うまでもなかった。
110冠目 128
これは蛇足なような気もしますがたけし目線です
いつの間にか意識を落としていたのか、瞼を開け外を見れば陽は傾いている。上体を起こすと肩にタオルケットが誰かによってかけられていたことに気が付いた。誰かが、と言っても心当たりは背の高い鹿毛のあの子しかいないのだが。いつここに来たのかはわからないが、来てくれた彼女の姿を思い浮かべながらそこそこに散らかった机の上を見渡せばそこには見慣れない紙袋と置き手紙が。
「……?エフフォーリア?」 どうやら彼女がここに置いていたようだった。置き手紙の内容と紙袋を交互に見つめ、今日がバレンタインデーだったことに気が付いた。彼女に気を遣わせてしまって申し訳ないなと思いつつもこれが喜ばしく思っているのはきっと。 紙袋を開け中身を取り出せば美味しそうなチョコレート。一口放り込み味わう。ああ、美味しい。 ただ美味しいだけではなくこれは、と思案したところで頭を横に振る。 そうだ、まだ気付かないでおかなければいけないのだ。たとえ、その想いが自分と同じ想いを持っていようが。 チョコレートを一口、また一口含むごとに彼女との今までの思い出を振り返る。どれも俺にとって何よりも大事なもの。嬉しかったことも悲しかったことも。何年経とうが色褪せない大事な思い出。 「…エフフォーリア」 全てを食べ終えたところで彼女の名を小さく呟く。いつか彼女のその名の通り強い幸福感で満たすその日までは少なくとも彼女と共に歩ませてほしいと夕陽に願った。
口の中に広がる手作りチョコレートの甘い味は俺の心に強く刻まれた。
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+ | I've Got a Crush on You/ファイアーフラワー |
110冠目 99
トレーナーさんとワープレとブーケちゃんの三角関係を書いていたら7000字を突破してしまったことをお前に教える
1万字行くまでにケリつけばいいやの精神でいきます
110冠目 142
I've Got a Crush on You/ファイアーフラワー
[1] 夏祭り。その言葉の響きに魅力を感じられるのは、この国で生まれ育ったものの特権だ。 大通りに並ぶ屋台の騒がしさ、夜闇を照らす多くの明かり、そして何より浮かれ騒ぐ人々の喧騒。りんご飴を舐め、当たらないくじ引きに憤慨し、金魚掬いに四苦八苦する光景の美しさは、どれだけ歳を重ねようと心にクるものがある。 おお、かくも素晴らしきは浴衣美女! クラスメイトの見慣れない姿にココロ踊らせ、決して実らない恋を追い求めた、遥か遠き青春時代の再演! 非日常と高揚感がブレンドされ、今宵オレらは“子供(ガキ)”に還る……!!
「ごめんお待たせ……って、何してんの? 夏祭り見て泣くような歳じゃないでしょ、トレーナー」
「いや……ちょっと“黄金時代(あのころ)”を思い出してな……」
「うわキッツ……」
拝啓、同期の皆様へ。一瞬でもおじさん臭い言動を取ると、このように担当からは軽蔑の眼差しを向けられてしまいます。昔を懐かしむのは程々にしておきましょう。
「ま、なんでもいいんだけどさ。それより見てよこれ、ブーケとお揃いの浴衣! いやー、我ながら美人すぎて困っちゃうなー! ナンパとかされたらどうしよっかなー!」
「そん時はしっかり守ってやるから安心しろ。で、そのブーケは? 一緒に着付けしてたはずだろ」
「え? あー……ちょっと待って、引き摺り出してくるから」
こちらのコメントでようやく気付いたのか、彼女は周囲を見回してため息ひとつ。そのままのっしのっしと離れていったかと思えば、物陰に身を潜めていた同期の首根っこを引っ掴んで戻ってくる。
「へい、ブーケドール一丁おまち。なんでアンタあんなとこにいたの?」
「いえ、その。盛り上がっているところに水を指すのも悪いかな、と……」
「チームメイトに対してそんな遠慮するもんじゃないの。ほら、アンタはトレーナーの隣!」
「えっ!? いえ、あの──!」
110冠目 143
どん、と背中を押され、つんのめるようにしてこちらに倒れてくる彼女。咄嗟にその身体を受け止めれば、やけに高くなった体温がこの手に伝わってくる。
藤色の浴衣に包まれた白い肌と、珍しくアップになった髪。襟元から覗く首筋が、みるみる朱色に染め上げられて──
「ひゅー、いいじゃんいいじゃん! そのままくっついちゃえよぅお二方!」
「お前なあ……やっていいことと悪いことがあるぞ、プレミア」
もちろん。そんなラブコメを、指導者の立場にある人間が演じられるわけもなく。
腕の中で固まっている彼女を、慎重に慎重を重ねて引き剥がす。再び間違いが起こらないよう、下手人にも細心の注意を払いつつ、だ。
「ごめん、怪我とかないか? ヘンなとこに当たってたらすまんかった」
「いえ……私の方こそ、すみません。重かった、ですよね……?」
不安げな眼で見つめられ、ぐらつきそうになる心を押さえつける。大丈夫、俺は名誉ある中央のトレーナー、教え子相手に間違いなどあってはならない……ステイクール、ステイクールです……。
「えーもう、つまんなーい! わたし先行くから、二人はもっといちゃいちゃしながら来るといいと思います!」
動揺する俺たち二人をよそに、当の下手人はしたり顔で駆け出していく。止めようとする間も無く、気づけばその姿は人波の向こう側に消えてしまっていた。
「……なんで下駄なのにあんだけすばしっこいんだろうな、あいつ」
「『勝負服でもっとヤバい靴履いてるから慣れてる』、んだそうです。それはそれとして元気すぎるとは思いますけど……でも、元気になってよかった」
渋い顔で口を開く俺を他所に、隣の彼女はすっかり笑顔に戻っている。まあ、当人が気にしてないのならいいけどね? いちゃいちゃしろだの何だの、少しはこちらの気持ちも汲んで欲しいわけですよ。人の気も知らないでまあ……。
「トレーナーさん。……その、」
「ん、どした?」 「──いえ、なんでも。行きましょうか、見失ってしまいそうですし」
言いかけたことを否定するかのように、小さくかぶりを振った彼女。その視線に促され、祭の中へ一歩を踏み出す。
ほんの少し伸ばされた、所在なさげに空を彷徨う掌。その行為の意味なんて、考えるまでもなく明らかなのに。
110冠目 144
[2]
彼女たちの担当になってから、早いもので数年が過ぎた。 かたや菊の冠を獲ったプレミア、かたや勝ちきれないものの世代トップクラスの実力を持つブーケ。そんな彼女たちを同時に担当できるなど、トレセン学園広しといえどそうはない幸運に違いない。同期から時折やっかみが届く程度には、俺は充実したトレーナーライフを送っている。 そして。今日こうして夏祭りに足を運んでいるのも、元を辿ればそのトレーナー活動あってのことだ。 長い冬の季節を超え、見事春の盾を掴み取ったプレミア。その彼女が“ご褒美”として要求したのが、こうして浴衣で夏祭りに参加することだった。生来身体が弱い彼女にとっては何よりも叶えたい願いだったのか、ここ一週間は練習も微妙に上の空だったレベルである。 病院と学園を往復する生活の中でも、彼女の笑顔が絶えたことは一度としてなかった。本来なら導く立場であらなければならないにも関わらず、その笑顔に何度救われてきたかわからない。 苦しんで、苦しんで、苦しみ続けて。それでも気丈に振る舞う彼女の姿が、いつの頃からか心から離れなくなった。担当である以上、生徒である以上、そんなことを考えてはいけないはずなのに、どうしてもその心を捨てることができなかった。 そうして、今も。眩しいほどの輝きを放つ彼女に、俺の心は奪われ続けている。
「あ〜〜〜〜〜〜、美味い! 大将、もう一杯!」
「甘酒だろそれ……」
まあ、それはそれとして。彼女のぶっ飛んだ振る舞いには、現在進行形で手を焼かされているわけだが。
暴走列車さながらに走り去った彼女を、屋台を物色しながら探し回ることしばし。ようやく合流したその時には、当の本人はすっかり出来上がった後だった。ただ甘酒を飲んでいるだけのはずだが、どうやら完全に場酔いしているらしい。
110冠目 145
姉ちゃんいい飲みっぷりだねぇ、そりゃもう華のウマ娘ですから、そりゃめでてえやわっはっは、などと言葉を交わしている様子だけ見れば、とても薄幸で病弱な美少女とは思えない。見てくれは完全に酔っ払いのおっさんというか、場末の酒場でクダを巻いているダメ人間である。これが春天勝ったんだからなあ……世界って驚きに満ちてんなあ……。
「ていうかトレーナー、ブーケは? なーんで一緒にいないかなあもう……わたしが気を利かせてあげてるんだから、四六時中一緒にいるべきでしょうが、えーっ」
「お手洗いに行ってんだよ。あとな、本人前にして言うのは気を利かせてるとは言わん」
「うるさーい、わたしがやれと言ったらやるのです! 抱き合え!」
ええ……将軍様みたいなこと言うじゃんこいつ……。甘酒で別人レベルになるまで酔うなど聞いたこともないが、彼女にとってはそれだけ祭の空気が新鮮だということなのか。
やけに勢いのいい酔っ払い(偽)に流されたのか、周りのおっさんたちもすっかり出来上がっている。何も知らない相手にひゅーひゅーやっちまえ、などと声をかけられる体験は、人生が長かろうとそう体験できるものでもないだろう。
「……わかった、なら外にいるからな。いいか、くれぐれもひとりで飛び出すんじゃないぞ?」
「はいはい、どうせわたしは単独行動も許されない子供ですよーだ。ほら、とっとと行った行った!」
拗ねたカオにしっしっ、というモーションまで付けられれば、こちらとしては退散する他にない。やたら一仕事終えたふうなそぶりに辟易しつつ、椅子と机が並んだ仮設テントを後にする。
……まあ、うん。いくら甘酒といえど、飲みすぎるようなら周りのおっちゃんたちが止めてくれるだろう。見た感じ酒も入っていないようだったし、きちんと信頼していい相手……の、はずだ。多分そう、きっとそう。
110冠目 146
「あ、トレーナーさん。お茶、飲みます?」
「ああ、ありがとう。悪いな、なんか」
「いえ、ついでに買ってきただけですから。はい、どうぞ」
出口のすぐ側に立っていたあたり、当のブーケ本人はとっくの前にお手洗いを済ませていたのか。それでいてテントの中には入って来ず、あまつさえ俺のぶんのお茶まで調達しているのだから、まったくもって彼女には頭が上がらない。
見てるかプレミア、これが気を利かせるってことだぞ。誰が呼んだか“ブーケドール感”、学園の内外問わず多くのファンを獲得している大和撫子の立ち振る舞いだ。お前はこの子の爪の垢でも煎じて飲め。
「……その。トレーナーさん。何か食べたいものとかあります? 私、買ってきましょうか」
「や、これ買って来てくれただけで十分だよ。それに、黙って二人だけで食べたら、プレミアの奴に何を言われるかわかったもんじゃない」
「ふふ、確かに。なんでわたしのぶんまで買っておかなかったんだー、って怒り出しそうです。それもすごいカオで」
緑茶の缶を傾けながら返事をすれば、彼女は口元に手をやってくすくすと笑う。ファンをあれだけ大量生産している理由も、その仕草の上品さひとつで容易に分かろうというものだ。
器量も良ければ気立ても良い、何処に出しても恥ずかしくない完璧美少女。限りなくお門違いとは分かっていても、その人気が出るたびに鼻が高くなる。もしこの子を引っ掛けようとする悪い男がいたら、俺は躊躇なくそいつを地獄へ落としにかかるだろう。
「……あの。私、ここに居ていいんでしょうか」
ああ、だから。
「今日ここに来ているのは、プレミアちゃんが頑張ったご褒美で。辛い思いをしたのも、レースに勝ったのも、ぜんぶあの子が頑張ったからなんです。何もしてない私が浴衣を着て、トレーナーさんの時間を奪っているなんて、そんなことあっていいはずがないんです」
だから──この子にこんなことを言わせてしまうほど、悪い男である俺は。
今すぐに、地獄に落ちて然るべきだ。
110冠目 147
「三人で行きたい、って言ってたんだ。三人で夏祭りに行けなかったら、この先ずっと化けて出るぞって。君がいなかったら、そもそもあの子はここに来てなかったと思う」
その言葉そのものは、紛れもない真実で。そしてそれがお為ごかしでしかないことも、嫌というほどに承知の上だ。
遠ざける勇気もなく、否定する覚悟もなく、ただ一定の距離を保って揺蕩うだけ。これ以上踏み込んだら壊れてしまうから、そうならないように逃げ続けているだけ。 俺と彼女の間に横たわる、わずか数センチにも満たない距離。ポケットから手を出すだけで埋められるはずのそれが、けして交わることのない無限遠の彼方にある。
「優しいんですね、トレーナーさん」
「やめてくれ。そうやって甘やかされたら、いよいよもって救いようのないダメ人間になる」
「ふふ、本当ですか? トレーナーさんがダメな人になるところなんて、ちょっと想像できません」
なんでもないような振りをして、彼女は可憐な笑顔を浮かべる。その笑みに俺が何を思うのか、それすらも完全に理解した上で。
彼女は、強いヒトだ。卑怯な俺の手口を知って、なおも美しく咲き続ける。そんな彼女に報いるものが何もないなんて、そんなことは絶対に間違っている。
「……もし、私が。私がダメな人になったら、トレーナーさんは怒りますか?」
「……っ」
そして。俺は、弱い人間だ。
どうしようもないくらいに浅ましくて、この上なく卑怯で。今の今になるまで、彼女の顔を正視することすらもできなかった、救いようのない愚か者だ。
「俺は──、」
そんな愚か者が許されるなんて話は、どこを探してもあるはずがなくて。
「──おい、あんた! あの子のトレーナーなんだろ!? 早く来てくれ、あの子が倒れた……!!」
だから、当然。本当に大事なものを、取りこぼすことになる。
110冠目 148
[3]
「──や、おはよ。月が綺麗だねぇ、トレーナー」
「……ああ、そうだな」
祭の会場からほど近い、川沿いに建てられた病院の一室。彼女が体調を崩したとき大抵運び込まれるここは、当人曰く川べりの道を見下ろすことができる「VIPルーム」らしい。
「わたし、何時間くらい寝てた?」
「三時間と少し。大事はないけど、ハメを外してはしゃぎすぎたのが原因だそうだ。これに懲りたらもう少し節度ある振る舞いを心がけろ、って怒られたよ」
「先生も大袈裟だよねぇ、立ちくらみの強化版みたいなもんなのにさ。そんなので救急搬送されて、浴衣脱がされるこっちの身にもなってほしいよ、ほんと」
簡素な病衣を見に纏う彼女は、不当な扱いを受けていると言わんばかりにぶーたれる。病人には似つかわしくない気勢の強さに、そんな場合ではないとわかっていても苦笑が溢れてしまう。
あの後。彼女が──プレミアが倒れてから今に至るまでの話は、概ね今語った通りだ。 救急搬送され、「いつもの部屋」に通され、その原因と結果を教えられる。不幸中の幸いと言うべきか、これまで何度か同じことを繰り返してきたおかげで、一連の流れに手間取ることもない。その瞬間に席を外していたのは不手際以外の何物でもないが、周囲に頼れる大人たちが居たのは紛れもない僥倖だった。
「お祭り、まだギリギリやってるんじゃない? 今から戻れば、店じまいの手前くらいに滑り込むことはできるでしょ。花火もあるし、ポテト半額で買えるし、行く価値あるって絶対」
「行きたいって言った人間が寝込んでるのに、俺たちだけで楽しんでも仕方ないだろ。何より、病人残して祭なんて寝覚めが悪い」
「そういうの気にすんなって話なんだけどなぁ……ほら、ブーケと二人っきりで浴衣デートとか、人生でそう何度もないレベルの幸運だよ? こんな権利みすみす捨てるとか、ウマ娘に蹴られてくたばっても文句は言えないね、トレーナーは」
よっこいせ、という年寄りじみた掛け声とともに、ベッドから腰を上げるプレミア。ただ見ていることしかできない俺に構うことなく、彼女は窓際に歩み寄る。
110冠目 149
「いろいろあったねぇ、ほんと。倒れて、走って、また倒れて……菊を獲ってからのほうがしんどいなんて、あのときは思いもしなかった。走ることが好きじゃなかったら、とっくの昔にやめてたよ、こんなこと」
開け放たれた窓から流れてくるのは、爽快感とは無縁の湿った微風。祭の熱気と喧騒を閉じ込めた夏の寝息に、知らず首元に汗が滲む。
「春天に勝った時、ぜんぶが報われたって思った。走ることが好きで、諦めずに走ってきてよかったって、心の底から思えた。トレーナーが居なかったら、間違いなく途中で折れてたよ、わたし」
やめて欲しい。そんな顔をしないで欲しい。見惚れるくらいの笑顔で、何もかもが終わったみたいに、過去形の話をしないで欲しい。
喉奥まで出かかった言葉は、しかし決して形になることはない。無様な俺を置き去りにするかのように、彼女の言葉が遠くなっていく。
「でも、さ。春天のあとのごたごたがあって、なんとなく分かったんだよね。ああ、わたしが走ることは求められてなかったんだな、って──そうしたらなんか、色んなものが切れちゃった」
「……色んな、ものって」
「んー、何だろ。ここにいる意味とか、いなきゃならない意義とか、そういう感じのヤツ? 無くしちゃダメなエネルギーみたいなものが、こう、ぷつっと。それで倒れてるんだから正直だよね、本当にさ」
冗談めかしたその口調は、どこまでも他人事のように穏やかで。だからこそより鮮明に、その事実が理解できる。できてしまう。
「綺麗な浴衣で、大好きな人と夏祭りに行けたらいいなって、小さい頃からずっと思ってた。それが叶ったってことは、たぶん丁度いい区切りを貰えたってことなんだよ。お前は今までそれなりに頑張った、ってさ」
110冠目 150
もう、いいのだと。銀の光を浴びて輝く彼女が、そんなことを口にする。
未練も、後悔も、そこにはひとつたりともありはしない。目を離したその瞬間、軽やかに飛び立ってしまいそうなほどに、重みというものを失っている。
「──なんでだよ」
それを。どうにかして繋ぎ止めたいと、そんなことを思ったから。
ただ必死に、その手を掴んでしまっていた。
「エネルギーが切れたとか、丁度いい区切りだとか──そんな理由だけで、行っていいわけがないだろ! そんな簡単に、今まであったものを、捨てていいわけがないだろうが……!」
舌がもつれる。自分の現在地がどこで、どこに向かおうとしているのか、何ひとつとして言葉にできなくなる。
言いたいことがあった。言わなければならないことがあった。その全部が頭から吹っ飛んで、気の利いたことなんて何ひとつ言えなくなってしまった。
「おまえがどこに行こうと、必ず見つけ出してやる。だから──だから、頼む。頼むよ」
抱きしめることなんて出来なかった。そんなことをしたら粉々に砕け散って、二度と元に戻らなくなってしまいそうだから、ただ手を握ることしかできなかった。
「──きちんと、生きようと、してくれよ」
鈍い光に照らされたその腕が、ほのかな温かみを伝えてくる。
白い肌も、やわらかい掌も、何もかも。彼女が生きてここに在ることを、これでもかというくらいに訴える。
「もう。……トレーナー、痛いよ」
「……痛く、してるんだよ」
ああ、そうだ。
俺はただ、彼女に。ここに居ていいのだと、そう思って欲しかったのだ。
110冠目 151
[4]
「……帰ってろ、って言ったはずなんだがな」
「何言ってるんですか、もう。この一大事に側に居ないなんて、チームメイト失格です」
階段を降りてくるなり、予想外だと言わんばかりの顔をするトレーナーさんと目が合って。それがあまりに心外だったものだから、つい頬を膨らませてしまった。
確かに最悪徹夜とは言われたし、帰って休んでいろとも言われた。でも、それでハイそうですかと引き下がれるほど、素直な性格はしていない。 受付の人に断って、ロビーで待たせてもらうことはや三時間。トレーナーさんにも言わずに残っていた手前、病室に顔を出すのも憚っていたけれど……どうやら、チームメイトに大事はなかったようで。
「とりあえず一日は静養、それ以降は経過を見て判断するそうだ。ま、そうは言っても貧血みたいなものだから、恐らくはそのまま退院ってことになるだろうが」
「……よかった。よかったです、本当に」
自分を落ち着かせるように、一度大きく息を吐き出して。それが気を緩める合図になったのか、止めることもできずにぺたんと座り込んでしまう。
彼女が倒れた瞬間、トレーナーさんがそばに居られなかったのは、元はと言えば私の責任で。それがずっと大きな塊となって胸につかえていたことに、今更ながら気がつく自分がどれほど愚かか、という話だ。
「とりあえず今日は帰れ、って先生にも言われたよ。……立てるか?」
「──っ、はい。大丈夫です」
指先に走る痛みを堪えて立ち上がるのに数秒、つんのめりそうな姿勢を制御するのにまた数秒。浴衣なんて慣れないものを着ているおかげで、日常的な動作すらも一苦労だ。
歩き出すトレーナーさんの背中を追うように、ロビーを抜けて病院の外へ。途端に遠い喧騒と火薬の匂いが、生ぬるい風に乗ってここまで届く。
110冠目 152
そういえばこの夏祭り、クライマックスには花火が打ち上がるのだとか。10時にもなって花火が上がるあたり、祭りとしての規模は全国でもそうそう見ないレベルだろう。もうあと数分もしないうちにそれが始まるとなれば、誰しもそちらに目を向けたくなるものだ。
「──ほら、やっぱり。下駄で擦れてるだろ、足」
だっていうのに、どうして。
どうしてトレーナーさんは、私の異常に気付いてしまうのか。
「いえ、これくらい。全然大丈夫で……っ」
「バカ言うな、ウマ娘で足のケガは洒落になんないだろ。──ほら」
「ほら」と。躊躇いなどどこにもなく、ただそうすることが当たり前のような口ぶりで、トレーナーさんは私に背中を差し出す。
それはつまり。いいから大人しくおんぶされていろ、という話なわけで。
「……すみません。……重い、ですよね」
「いや、全然。こっちこそ、今まで気付けなくてごめんな」
なんともないような調子で私を背負って、トレーナーさんは歩き始めてしまう。その歩様も、歩くペースも、私がまるで重荷になっていないことを言外に告げている。
三歩後ろを歩いているだけでよかった。触れることは決して叶わなくても、ただその背中が目の前にあるだけで、私はずっと救われてきた。 それなのに。私は今、そんな背中の熱をこの身で感じている。 憧れていた背中は、想像よりもずっと広かった。見かけよりも力があって、筋肉があって、私を難なく背負えてしまうほどに頼りがいがあった。
「……っ」
重くはないのですか。苦しくはないのですか。
私では、あなたの重荷になれないのですか。あなたの足を、心を縛って留めおくことは、私には不可能なのですか。 蓋をしても、鍵をかけても、思いは次から次に溢れだしてくる。存在してはいけないはずの想いが、胸中を一色に染め上げていく。
110冠目 153
息遣いも、体のぬくもりも。何もかもを感じられる場所にいるはずなのに、彼が振り向いてくれることはどうしたって有り得ない。どれほど背中に顔を埋めたところで、同じ世界を見ることは叶わない。
「……トレーナーさん。好きです」
──ああ、駄目だ。
そんなことを言ってはいけない。彼を困らせてはいけない。彼の心の隙間につけ込むなんて、そんなこと許されていいはずがない。
「好きです。好き、なんです」
「……うん」
言葉にしてはいけないものが、口の端からこぼれ落ちていく。もっと言うべきことはあるはずなのに、何ひとつとして形にできないまま、たったひとつの色に上書きされていく。
「好きです……大好きです……!」
「うん。……うん」
言ってしまえば、楽になれると思っていた。どんな結果が待っていようと、どれだけこっぴどく振られようと、それが自分の選択の結果だと思っていた。
なのに。なのに、ああ、どうして。 どうして、こんなに苦しいのでしょうか。今ここにあるあなたの背中が、どうしてこんなにも遠いのでしょうか。
「大好きです、トレーナーさん……!」
無数の光が、大輪となって宙に咲く。音も、匂いも、何もかもが、幻想のように光り輝いている。
ユメのような世界だった。ユメになればいいと思った。持ってはいけない苦しみが、感じていいはずのない辛さがあるのなら、ぜんぶ夢になって消えて欲しかった。
「うん。──ありがとう」
……ああ、本当に。
私は、ほんとうに、ダメなヒトだ。
110冠目 154
以上! ちょっとした息抜きのつもりがこんな文量になって驚いてるのは俺なんだよね
お察しの通り元ネタはハチクロだよ! 名作だからみんな読んでね! |
+ | コントレイルのすごさ |
110冠目 161
甘々なSSとは全然違うけど、コントレイルのスゴさについて小ネタを1つ
プボ「何みてるのー?」プニプニ
コントレイル「わっ!プボちゃん!びっくりした~」 ユーバーレーベン「ん~?それは写真ですか?」 コントレイル「そう、先月末にパリでワールドベストホースランキングの表彰があって行ったんだ!私は前回10位だったんだけど、今回は5位だったの!これは掲示板内だったみんなと撮った写真なんだよ~!この人はニックスゴー先輩でしょ、こっちはアダイヤーちゃん、ミシュリフちゃん、セントマークスバシリカちゃん!」 ユーバーレーベン「はえ~…………百鬼夜行か何かですかこれは………。ディープボンド先輩がぷにぷにしてるその人、地味にヤバくないですか?」 プボ「派手にヤバいプボ~」プニプニ ジャスタウェイ「私のこと呼んだ?」プニプニ プボ「ドバイ星人はお呼びじゃないですプボ~」プニプニ エピファネイア「あたしも呼ばれた気がするぞ」プニプニ ユーバーレーベン「わあ、世界1位2位が揃いぶみ~」プニプニ コントレイル「ぷにぷにしなひへ~💦やめへ~💦」 |
+ | キズナとエピファ |
110冠目 169
ある昼下がり。
エピファネイアが暇つぶしにぶらぶらしていると、エフフォーリアがキズナの出演している講習ビデオを見ているところに出くわした。
エピファネイア「キズナの印象は?はい、えっちゃん!」
突然話しかけられたエフフォーリアは、不意を突かれてあたふたした。
エフフォーリア「あっ、えっと…すごく頼りになって、異性のことに堅くて、ちょっと格好は地味な人、ですかね」
エピファネイア「ふーん…後輩から見たら真面目の権化みたいなもんか~」
腕組みしてにやつくエピファネイアに、エフフォーリアが腑に落ちない表情を浮かべる。
エフフォーリア「違うんですか?」
エピファネイア「…あいつはいつも"君はダービーを単勝1倍台で勝って無敗の三冠バになるよ!"とか、"ディープインパクトみたいだ!"とか、まるでブーケちゃんみたく歩くだけでちやほやされる魔性の青鹿毛でよ…それが練習が終わる度に前のトレーナーの病室に行くんだ。そこから帰ってきた後の顔つきときたら…。ロゴタイプが"桜が咲いたようなってあんな感じなのね"って言ってたよなあ…昔は儚げだったんだよ、あいつ」
エピファネイアは遠くを見るような目をする。
エピファネイア「ただ、前のトレーナーの復帰が絶望的だって分かりはじめてから、あいつも変わっていったよ。新しいトレーナーに向かって"大丈夫です。私となら毎日杯は絶対勝てます。不幸なんて吹き飛ばして見せます。信じて下さい!"とか青臭いこと言っちゃったりしてさ…。そういうとこはもうお前らの知ってるズナ姉さんだな。」
エピファネイアはため息をつく。
エピファネイア「それが先輩や同期から見たあいつの印象よ。恋してた時のあいつも、恋を捨てて変わってしまった今のあいつも、あたしは大嫌いだね」
そう吐き捨てたエピファネイアを見ながら、エフフォーリアは頷く。
「良くわかりました。嫌よ嫌よも好きのうちって訳ですね」
エフフォーリアの頭にタンコブの雪だるまができた。
同 158
め い さ く
ズナ姉さんは叶わぬ恋と引きかえに他のウマ娘も担当することができないように脳を破壊したのでセーフ(重バ場)
同 162
それに対してタップさん達はどう思ってるんだろうね…
同 169
162から着想を得ました
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