太平洋戦争末期の1945年、フィリピン。連合軍はレイテ島での勝利を機にフィリピンの首都マニラ奪回に向けてルソン島に進軍したものの、戦車を運用する機甲師団を含む第14方面軍により陸上戦闘を主とした持久戦に持ち込まれる。洋上戦の多かった太平洋戦争には珍しく多くの戦車戦が発生し、両陣営合わせて22万人を超える死者を出した。後にルソン島の戦いと呼ばれる戦闘である。
志慶真少佐率いる特務中隊のチハ戦車は、その隠密戦術と優れた戦績からアメリカ軍兵士に「オニ(オウガ)」と呼ばれ恐れられていた。しかし連合軍の物量には敵わず戦局は徐々に悪化、次第に特務中隊のメンバーも苦戦を強いられ、使える戦車もたった4両と厳しい状況に追い込まれる。
そんな中、彼らに新しい任務が命じられる。それは、米軍の補給路を断つため、チハ戦車の砲撃で石橋を爆破するという一見簡単に思える作戦だった。
最寄の基地に到着したものの様子がおかしいことに気付いた特務中隊。志慶真が上官に事情を訊きだすと、既に任務は何度も実行されていたことが判明する。しかしどの戦車も橋に辿り着く前に何者かの待ち伏せに遭遇し、全て失敗に終わっていたのだった。無謀な作戦だと反発する志慶真だったが、上官命令には逆らえず、作戦の決行を余儀なくされてしまう。
神室の目の病状の悪化や被弾による燃料漏れによって作戦が困難になっていきつつも橋へと向かう特務中隊を、危惧した通り待ち伏せていたM4戦車が襲う。神室の射撃により辛くも破壊したものの、戦闘により中隊のチハ3両が撃破され、残存戦車は志慶真率いるチハただ1両のみとなってしまう。
急いで橋に向かう志慶真たちだったが、橋へと辿り着いた彼等が見たのは橋を渡り此方へ向かってくる歩兵大隊の姿だった。
田口と奥村は一度は任務遂行に反対し撤退を提案するが、撤退した場合隊長である志慶真は敵前逃亡容疑で軍法会議にかけられ死刑を免れないと気付いた神室はこれを断固として拒否。命令を遂行するためだけではなく基地や現地住民のためにもここで食い止めるべきだと二人を説得し、それを聴いて自分たちを率いて戦ってくれた志慶真への恩を思い出した二人は突入の決意を固める。
砲撃、機関銃、轢殺を駆使して米軍歩兵を蹴散らす志慶真たちだったが、米兵の持ち出したバズーカの直撃により奥村が爆死、弾切れで死体から銃を奪いに行った田口もあと一歩の所で背中に機銃掃射を食らい死亡。バズーカを取り出す米兵を発見した志慶真は神室に発射を指示するが、発射が間に合わず相討ちの形でチハに砲弾が命中してしまう。
息を吹き返し志慶真を助け出そうとする神室。片足を吹き飛ばされた志慶真を見て手当てを試みようとする神室だったが志慶真はそれを拒否し、志慶真は自分とかつて仲の良かったアメリカ人アルフレッド・ミラーとの戦場での再開の出来事を語り戦争とは何かを神室に伝え、彼や特務中隊のメンバーを裏切る結果となった事に対して神室に謝罪して拳銃で自殺を遂げる。
その後、謎の失踪を遂げた歩兵大隊を探し現地に訪れた米兵たちは森の中で何者かに刃物で襲撃される。青髪に眼帯をしたその男の風貌を見た仲間の米兵は絶望を露わにし、彼を「オウガ(鬼)」と呼んだ。
(エピローグ)
特務中隊でただ一人生き残った神室は、満身創痍の体で基地に帰還。恵多の看護の元回復するものの、寂しい日々を送っていた。そんな神室の元にある荷物が届けられる。神室が開封すると、そこには生前に志慶真が書いた手紙と銃が入っていた。銃は骨董品のネイビーリボルバー、かつてアメリカへの留学時、アルフレッドが志慶真へのプレゼントとして贈ったものだった。志慶真は英語が苦手な神室に「on your mark(位置につけ)」という文章を贈る。
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