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文房具第7話

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datui

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彼女に真実を ◆wKXHcFOzbI


突然響いたのは誰かの叫び声。
静かだった部屋に色々な音が響いているのを聞いて、わたしは思わず涙を流しました。
どうやら他の方達は、あの感電の神の言うとおりに殺し合いを始めたようです。
全ては大好きなケンちゃんを蘇らせるため。
皆、その想いを胸に自分に出来ることを始めたに違いありません。
けれども。けれどもわたしは、まだ動くことが出来ずに居ました。
何が正しくて、何が間違っているのか。わたしに何が出来るのか。
何もわからないままに、武器とはいえない物を持たされ放り出されて。
どうしていいかもわからずに、わたしはゴミ箱の影で泣き続けていました。

「君は、何をしているんだ?」
不意にかけられた女の人の声に、わたしの動きは停止しました。
どうやら、誰かに見つかってしまったようです。
「我々が互いに争いあい、殺しあう事によって主が蘇る。
 道具である我らにとって、それは至上の幸福のはずだ。
 だが、君は何もせず泣いて震えているだけ・・・・・・」
「わたしには、何もできませんから・・・・・・
 だからせめて、わたしの命を礎にしてケンちゃんが蘇ってくれたら、それでいいんです」
そう言って身体を大きく震わせた後、わたしは覚悟を決めて目を閉じました。
背後の方が呆れたように息を吐いたのがわかります。おそらく、それは当然の事でしょう。
ケンちゃんのために殺す努力をするわけでもなく、だからと言ってこの殺し合いを止めようとするわけでもなく。
わたしは流されるままに生きているのですから、不真面目だと取られても仕方が無いのです。
「お願いします。ケンちゃんを生き返らせてあげてください」
瞼を閉ざし、震えながらそう頼むわたしに、心底呆れたような口調で彼女は答えました。
「君は本当に、死んだ生物が復活すると思っているのか?」
「へ?」
予想外のその言葉に慌てて振り返ると、そこにはわたしよりも上背の高い女の方がいらっしゃいました。
片手に四角い物体を持ったその方には大きく『理科』の文字が書かれています。
「部屋に篭ってばかりの君は知らないのかもしれないが・・・・・・
 アサガオは枯れたら元には戻れない。腹を割かれた蛙も、二度と動くことは無い。
 死んだモノは蘇らない。
 植物であろうと、動物であろうと、我々道具であろうと。
 そして、我らを使う立場にある人間ですらも・・・・・・同じことだ」
あまりの事に、わたしは絶句してしまいました。
だって、ケンちゃんを蘇らせるという前提そのものを、彼女は否定してしまったのです。
「それじゃあ、それじゃあこの殺し合いは・・・・・・」
「単なる茶番だな」
わたしの浮かべた絶望を無表情で眺めながら、彼女は無感情に呟きました。

これからどうすればいいのか、わたしにはわかりません。
けど、もし彼女の言葉が本当なら。この戦いが無意味だというのなら。
「もし、本当に無意味だって言うんなら・・・・・・証拠を見せてください」
わたしの言葉にしばらく沈黙した後、彼女はわたしに手を差し伸べました。
「それなら、私と一緒に来るかね?
 これからちょうど、主の元へ行ってみようと考えていてね・・・・・・
 君は一度、本当の死というものを実感したほうがいい」
彼女の言葉にわたしは躊躇します。
だってそれは、ケンちゃんの死体の側に行くという事です。
けれど、わたしの心はもう決まっていて・・・・・・
力強く頷いて、わたしは彼女の手をとりました。



「あ、あの・・・・・・どうして、ケンちゃんの所に?」
私の後ろを歩く画鋲の少女が、小さな声でそう尋ねる。
「事象の観察と真実の記録。それが私に与えられた仕事だからだ」
「はぁ、そうなんですか」
理解したような、していないような返事を返す画鋲を尻目に、私は誇らしげに胸を張った。
そう、それが私の職務であり誇り。
あらゆる事象と真実を記録し、改めて別のアプローチをかけ、その結果を再び記録。
それこそが、理科のノートある私のライフワークであり存在理由なのだ。
断じて、殺し合いをするために生み出されたわけではない。
だからこそ、この殺し合いの中で私は私の職務を全うする。

陽光に晒されたアサガオが飢えと渇きに悲鳴をあげ、死に絶えるのを記録し続けたように。
解剖台に止められた蛙が腹部を裂かれ、内臓を露出させながら弱り行くのを観察し続けたように。
ありとあらゆる可能性を試し、その結果を記録する。
『さて・・・・・・彼女が死というものを知って、どう判断し、どう結論を下すのか』
実験の結果に胸を高鳴らせつつ、私は主だった物へと向けて歩みを速めた。



【現在位置:ゴミ箱付近(D-4)】

【画鋲】
 [状態]:健康、真実を知る事に恐怖
 [道具]:支給品一式、不明支給品(武器ではない)
 [行動方針]
  1.真実を知るために、ケンちゃんの死体の近くまで行く
  基本.殺し合いに乗るかどうかは決めていない

【ノート(理科)】
 [状態]:健康、実験の結果に期待
 [道具]:参加者探知機、支給品一式
 [行動方針]
  1.画鋲に死を実感させるため、ケンちゃんの死体の近くに移動する
  2.余裕があればケンちゃんの死体を観察する
  基本.あらゆるアプローチをかけ、結果を記録する
     (他参加者を煽るなどしてロワを進行、その全てを記録する)

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