黒翼の悪魔
「やれやれ、参ったねえ」
そう口にして強がってみたりもしたが、闇夜に吸い込まれていく自分の声にますます不安が大きくなるばかりだった。
深いため息をつく少年の名は小早川ゆたか。
どうみても小学生にしか見えないが、立派な男子高校生である。
(もしかして叔母さんや兄さんが仕込んだドッキリ……じゃあないよね。いくらなんでも)
いまだに現実を受け入れられない少年は、混乱のあまり纏まらない頭のまま夜道をあてどもなくさ迷っていた。
(あっ……やばっ……)
急な立ち眩み。咄嗟にその場に蹲る。
少年は生まれつき体が弱く、学校も休みがちだった。
ただでさえそうなのにこの異常事態。精神的な負荷も伴って彼の体は急激に変調をきたしていた。
(もう……このまま眠っちゃおうかな……目が覚めたら、きっとこんなのは全部夢で……)
この島で無防備に寝るということがどんな結末をもたらすかは容易に想像できたが、それはあまりに現実感と危機感を伴わない想像だった。
彼は愛する家族や友達のことを思い浮かべながら、そっと目を閉じ―――
そう口にして強がってみたりもしたが、闇夜に吸い込まれていく自分の声にますます不安が大きくなるばかりだった。
深いため息をつく少年の名は小早川ゆたか。
どうみても小学生にしか見えないが、立派な男子高校生である。
(もしかして叔母さんや兄さんが仕込んだドッキリ……じゃあないよね。いくらなんでも)
いまだに現実を受け入れられない少年は、混乱のあまり纏まらない頭のまま夜道をあてどもなくさ迷っていた。
(あっ……やばっ……)
急な立ち眩み。咄嗟にその場に蹲る。
少年は生まれつき体が弱く、学校も休みがちだった。
ただでさえそうなのにこの異常事態。精神的な負荷も伴って彼の体は急激に変調をきたしていた。
(もう……このまま眠っちゃおうかな……目が覚めたら、きっとこんなのは全部夢で……)
この島で無防備に寝るということがどんな結末をもたらすかは容易に想像できたが、それはあまりに現実感と危機感を伴わない想像だった。
彼は愛する家族や友達のことを思い浮かべながら、そっと目を閉じ―――
「……何をしているのかね、若いの」
頭上からの声に驚き仰ぎ見る。
木の枝に腰かけてこちらを見下ろしていたのは一人の小さな―――あまりにも小さな老人だった。
背中までのびた白髪に落ち窪んだ眼窩の中にある宝石のような目。
そして、黒を基調としたまるで悪魔のようなデザインの服。そして背中には大きな黒い翼。
全てにおいてまるで人形のような雰囲気を漂わせる老人だった。
「あ、あなたは一体……」
「儂かい? 儂は水銀燈と申すものだよ、若いの?」
その生気のない目に心を見透かされたような気がしてゆたかは息を飲む。
この男とこれ以上話してはいけない。
五感がそんな予感を告げるのだが、足が動いてくれない。
「フフフ、随分と腑抜けた顔をしているが、よもや早くもこの殺し合いから下りようというのかね、若いの」
「そんなことないけど……でも、僕体弱いし……とても生き残るだなんて……」
頭上からの声に驚き仰ぎ見る。
木の枝に腰かけてこちらを見下ろしていたのは一人の小さな―――あまりにも小さな老人だった。
背中までのびた白髪に落ち窪んだ眼窩の中にある宝石のような目。
そして、黒を基調としたまるで悪魔のようなデザインの服。そして背中には大きな黒い翼。
全てにおいてまるで人形のような雰囲気を漂わせる老人だった。
「あ、あなたは一体……」
「儂かい? 儂は水銀燈と申すものだよ、若いの?」
その生気のない目に心を見透かされたような気がしてゆたかは息を飲む。
この男とこれ以上話してはいけない。
五感がそんな予感を告げるのだが、足が動いてくれない。
「フフフ、随分と腑抜けた顔をしているが、よもや早くもこの殺し合いから下りようというのかね、若いの」
「そんなことないけど……でも、僕体弱いし……とても生き残るだなんて……」
「笑止!!」
ゆたかの声を老人の嗄れた、それでいてよく通る声が遮る。
「他人と比べ欠けた所があろうが、工夫次第で優位に立てるのが『戦い』というものよ。貴様も生きたいという意思があるのなら、いかなる手を使ってでも敵を圧倒すればよかろう」
「いかなる、手を?」戸惑うゆたかに老人は畳み掛ける。
「左様。ただ真正面からぶつかるだけが戦いではない。そんなのは猪武者のすることよ。
無害なもののふりをして集団に入り込み、内部から崩壊させる。
嘘の情報を流して他の者を惑わせる。
それだけでも勝ち残ることはできる」
「で、でもそんな簡単に言ったって僕一人じゃ無理だよ!!」
そこで老人は、勝機を得たりとばかりに微笑む。
「心配は無用。儂がその方法を指南してやろう」
「え?」
「どうじゃ、儂もこの通り、そなたと同じ力無きもの。ここは一つ手を組み、生きる道を模索しようではないか?」
ゆたかの声を老人の嗄れた、それでいてよく通る声が遮る。
「他人と比べ欠けた所があろうが、工夫次第で優位に立てるのが『戦い』というものよ。貴様も生きたいという意思があるのなら、いかなる手を使ってでも敵を圧倒すればよかろう」
「いかなる、手を?」戸惑うゆたかに老人は畳み掛ける。
「左様。ただ真正面からぶつかるだけが戦いではない。そんなのは猪武者のすることよ。
無害なもののふりをして集団に入り込み、内部から崩壊させる。
嘘の情報を流して他の者を惑わせる。
それだけでも勝ち残ることはできる」
「で、でもそんな簡単に言ったって僕一人じゃ無理だよ!!」
そこで老人は、勝機を得たりとばかりに微笑む。
「心配は無用。儂がその方法を指南してやろう」
「え?」
「どうじゃ、儂もこの通り、そなたと同じ力無きもの。ここは一つ手を組み、生きる道を模索しようではないか?」
(フフフ、なんとも愚かしい者と出会えたものよ)
ゆたかと同行することになった水銀燈は、彼に見えないようひっそりと笑みを浮かべていた。
(あまり役に立ちそうもない男だが、精々利用させてもらうかのう)
薔薇紳士が第一ドール、水銀燈。彼の目論見はただ一つ。
いかなる手を使ってでも自分だけが生き残り、父上の望んだ完璧なる紳士となって父上に再会すること。
(あるいは、もしこの場に我が兄弟たちがいるのなら、この場で決着をつけるのも悪くあるまい。
特に貴様とは是非とも相見えたいものよ、のう……真紅?)
今ゆたかは横になって休んでいる。自分はその間の見張りというわけだ。
(しかし、病弱とは我がマスター殿を思い出すのう……いや、まあいいか)
水銀燈はかぶりをふりながらも、ベッドの上に横たわる一人の男のことを思い浮かべた。
(左様、あやつのところにも、早く帰ってやらんとのう……)
ゆたかと同行することになった水銀燈は、彼に見えないようひっそりと笑みを浮かべていた。
(あまり役に立ちそうもない男だが、精々利用させてもらうかのう)
薔薇紳士が第一ドール、水銀燈。彼の目論見はただ一つ。
いかなる手を使ってでも自分だけが生き残り、父上の望んだ完璧なる紳士となって父上に再会すること。
(あるいは、もしこの場に我が兄弟たちがいるのなら、この場で決着をつけるのも悪くあるまい。
特に貴様とは是非とも相見えたいものよ、のう……真紅?)
今ゆたかは横になって休んでいる。自分はその間の見張りというわけだ。
(しかし、病弱とは我がマスター殿を思い出すのう……いや、まあいいか)
水銀燈はかぶりをふりながらも、ベッドの上に横たわる一人の男のことを思い浮かべた。
(左様、あやつのところにも、早く帰ってやらんとのう……)
【一日目深夜/C‐5】
【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:やや疲労、休憩中
[装備]:なし
[所持品]:支給品一色、不明支給品2~3
[思考]:
1:水銀燈に従う
2:知り合いがいないか不安
[状態]:やや疲労、休憩中
[装備]:なし
[所持品]:支給品一色、不明支給品2~3
[思考]:
1:水銀燈に従う
2:知り合いがいないか不安
【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一色、不明支給品2~3
[思考]:
1:ゆたかを利用し、参加者を減らしていく
[状態]:健康
[装備]:なし
[所持品]:支給品一色、不明支給品2~3
[思考]:
1:ゆたかを利用し、参加者を減らしていく