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少年は見た!



視界は、常に白く、濃い霧に覆われていた。
何処を歩いても、それが晴れる事は無い。
いや、むしろ足を進める程、それはさらに濃くなっている様にさえ感じられる。

「困ったねぇ……。」

少年――風間望が、呟いた。
どんな場所を歩いても、霧は身体中に纏わり付いてくる。
それは彼にとって、堪らなく不愉快な事だった。

「全くどうなってるのか………」

自分はいつも通り、仲間――殺人クラブのメンバー――と共に「ゲーム」を楽しんでいた筈。
なのに、何故自分はこの様な霧の世界を彷徨っているのだろうか。
……手に握られたチラシに目を移す。
歩いている途中で、偶然見つけた物だ。
チラシには、赤く、下手糞な字で「殺せ」や「生き残る」だの、随分と物騒な事が書かれている。

「………殺し合い……」

殺人。
快楽殺人者集団「殺人クラブ」のメンバーである風間にとっては、身近な言葉である。
自分の為に人を殺めた事は、数え切れない程存在していた。

「……………………………」

―――公の場で人を殺める事が出来る。
もしそれを所謂“快楽殺人鬼”が知ったら、どんな反応をするのか。
恐らく、殺人鬼は唇を歪ませながら、意気揚々と獲物を探しに行くだろう。
「殺人クラブ」のメンバーである風間も、快楽殺人鬼の一種と言える。
では、彼も上記のように、殺人を楽しめると笑っているのだろうか……?

「…ハァ………………冗談じゃないよ。ホント…………」

―――いや、違う。
なんと、彼は殺し合いに否定的だったのである。
しかも、舌なめずりをするどころか、「チッ」と、舌うちを打っているではないか。

「こういう事には新堂君辺りを呼んでほしいんだけどねぇ……」

殺し合いに乗らないのには当然理由がある。
風間はあくまで命を奪う事に快楽を覚える訳であって、
決して命のやり取りをする事が好きな訳ではないのである。
そもそも、風間は自分の力をあまり過信していない。
………窮地に陥ると、泣いて謝ってしまう自信だって彼にはあった。
そんな自分が殺し合いで一人になろうとする事は難しい…いや、不可能だろう。
それに、あくまで殺し合い云々はチラシに書いてある話だ。 
信憑性はあまり無い。 鵜呑みには出来なかった。
故に彼は、殺し合いをするよりも、ここからの脱出を優先した方が良いと考えたのである。

「それにしても…………」

見たところ、ここは遊園地らしい。
その証拠に、彼の近くには寂れたメリーゴーランドが存在している。

(とりあえずはここから出る事が最優先だな…………)

まず、この街の、何処に、何があるのかを知っておく必要がある。
……ここに留まっている理由は何処にも無かった。
周りを警戒しつつ、風間は深い霧の中に足を踏み入れようと―――――



「――――――――――!!」



―――――踏み入れようとした、その時だった。


何者かの、気配を感じた。


生物特有の、強い気配を。


近くのメリーゴーランドの影に身を隠す。
自分がここに居る事がばれないように、迅速かつ、慎重に。

(………誰だ………?)

風間はメリーゴーランドの台車から、ゆっくりと頭を覗かせる。
人影の正体を確かめる為である。
恐らく、あの影の正体は自分と同じくここに連れてこられた者だろう。
脱出を優先している者だったら自らの脱出の為に利用する。
逆に、殺し合いに乗っていそうな者だった場合には、気づかれないように、ゆっくりとやり過ごす。
……その場で殺すという選択肢もあるのだが、あえて風間はそれを選択しなかった。
まだ実力の分からない者を襲う行為はあまりにも危険。
それこそ愚の骨頂だ―――そう、考えた。

影が段々とはっきりしていき、やがて、風間の目にその姿をはっきりと映し出した。



彼は、その姿を見て――――――絶句した。



風間が見たのは、一般人でも、狂人でもない。




――――兎だ。




人影の正体はピンク色の兎の着ぐるみだったのである。
一体だけではない。 二体、三体……いや、もっと居るだろう。
それらが、重い足取りで道を歩いていたのだ。
まるでそれは、ゾンビの行進の様。
………しかし、風間が恐怖したのは着ぐるみの「姿」でも、「数」でもない。


その手に握られている「武器」だ。


ライフル、チェーンソー、斧……ファンシーなウサギの着ぐるみとはあまりにもミスマッチなそれを、
ほぼ全員が、当たり前の様に所持していたのである。

(何なんだアイツら………!)

不気味すぎる。
さながらその姿は、「御伽の国の妖精」と、「狂った凶悪殺人犯」が融合したかのようだ。



ピンクの体毛。



大きな眼。



薄笑いを浮かべた表情。



青いオーバーオール。



それら全てが奴らの狂気を増幅させていた。
いやむしろ、奴らそのものが狂気。
狂気が形と意志を持ったら、あんな感じになってしまうのだろう。

(そういえば………)

メリーゴーランドの影に頭を引っ込める。
そして、手に握ったチラシを広げ、それに目を向けた。
……そこには、はっきりとこう書かれていた。





―――――――――――――――――――――――

3. 鬼 の 追 加
  一定時間毎に鬼を追加します。

――――――――――――――――――――――





「鬼」。
初めてチラシを見た時から、ずっと引っかかっていた言葉だ。
最初は何の意味だか解からないので、記憶の片隅に放置していたが………。

………もしや、あれが「鬼」なのか? 
だとしたら―――。

(まずい………………!)

……運動もしていないのに、頭から汗がじわりと流れた。
肌を触ると、鳥肌が立っているのが解かる。
それは、直前に見た光景に只ならぬ恐怖を抱いている証拠だった。

(逃げないと………………)

あれが「鬼」だとするのなら、見つけ次第、奴らは集団で襲いかかってくるだろう。
あんな大人数、一人で対処できるわけがない。
襲われたら、間違いなく殺される。

……ウサギの群れに存在を悟られないように、メリーゴーランドから身を離す。



―――逃げよう。 今は逃げるんだ。
―――奴らの居ない、安全な場所まで。



恐怖に打ち震えながらも、風間は自ら進んで霧に飲み込まれていった。


足を進める毎に、彼の姿は段々とぼんやりとしていき――――――。


――――――やがて、完全に消え去った。






彼は気づいていない。



目線の先に、ぼんやりとした光が灯っていた事を。



その光の正体は、教会の明かりである事を。



そこには彼と同様に、ここ――サイレント・ヒル――に呼ばれた者が居る事を。




彼は知らない。




彼の行く先にある物は、出口ではなく、さらなる恐怖であるという事を。







【A-4遊園地・メリーゴーランド周辺/1日目・夕刻】

【風間望@学校であった怖い話】
 [状態]:健康 強い恐怖
 [装備]:制服 
 [道具]:ルールの書かれたチラシ
 [思考・状況]
 基本行動方針:脱出方法を模索する。
0:あのウサギ(ロビー)から逃げる。
1:他の人間を脱出に利用する。
2:邪魔者は殺す。
3:チラシに書いてある事が真実か確かめたい。


風間望
出典:「学校であった怖い話」
年齢/性別:17歳/男性
外見:茶髪のワカメヘアー。 美形らしい。
環境:私立鳴神学園高等学校3年H組。  「殺人クラブ」のメンバー。
性格:非常に胡散臭く、ナルシストでもある。 窮地に陥ると急激にひ弱になる。
能力:一般人とほぼ同じ程度。 だが、殺人を躊躇しない面がある。
口調:一人称は「僕」、二人称は「君」。 
交友:殺人クラブのメンバー。
参考:このロワに登場する学怖勢の外見は全員アパシー版なので、
   彼の外見もアパシー版にしておきます。


ロビー
出典:「サイレントヒル アーケード」
形態:複数体存在
外見:青いオーバーオールを着たピンク色のウサギの着ぐるみ。
武器:斧、チェーンソー、ライフルのどれか一つを持っている。
能力:これといって特殊な能力は持っていない。
攻撃力:★★★☆☆
生命力:★★★☆☆
敏捷性:★★☆☆☆
行動パターン:敵を見つけると金切り声を上げながら襲いかかってくる。
又、斧を持っているタイプは遠距離から斧を投げつけてくる事がある。
備考:初出はサイレントヒル3。
    トルーカ湖畔にある遊園地「レイクサイド・アミューズメント・パーク」のマスコットキャラクターとして登場した。
    ちなみに、「3」では口元や手に血液が付着していたが、「アーケード」では血液は付着していない。


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最終更新:2012年06月20日 20:58