怪物と縄の巫女さまの童話。
霧絵はここ、氷室邸の暗い井戸の底で目覚め異変に気付いた。
もう随分と永いこと離れていた自分の肉体があるのだ。
何故?どうして?「自分は確かにあの人と共に黄泉の門を封じたはずなのに。」そう思い振り向いた。
「…!」
自分が元いた場所には門の瘴気が箱に詰まったかのような不気味な怪物がぶるぶると首を震わせていた。
それだけではない。
周囲を取り囲むように何かの儀式に使うような赤い印が描かれているではないか。
この異常な光景には、幽霊怨霊の類を数多く見ている霧絵も言葉を失うしかなかった。
「これは…いったいどういう事なの…?」
ふと、化け物の足元を見ると数枚の紙が散らばっていた。
おそるおそる近寄り読んでみると。
名前の書いてあるもの、見たことのない場所の地図、そして何かの絵本の三種類であることがわかった。
絵本を読んでみると、これもまたどこか狂っているように思えた。
それは自分の生涯にとてもよく似た物語だったのだ。
◆ ◇
むかしむかし、ある所に大きな門がありました。
その門の向こうからとてもこわく、とても悪い怪物がおりてきて。
人をつかまえては、自分達の仲間にしてしまうのです。
まわりの村に住んでいる人は怪物がこわくて、だれも外には出られません。
それを聞いた主さまはとても困りました。
こまってこまって、うーん。うーん。と
うなり声をあげるけど
どうしたらいいかなんてわかりません。
そこへ神さまに仕える巫女さまがやってきました。
とてもやさしく、とても良い人です。
主さまは巫女さまに門を閉じてくれるようにたのみました。
巫女さまは主さまの願いを聞いて、門へとむかいます。
やさしい巫女さまは自分のからだを縄にかえて扉を抑えつけてみようと思いました。
だけども門は巫女さま一人ぶんの力では閉まりません。
それでも巫女さまは門を抑えつけるのをやめませんでした。
主さまも村人もやさしい巫女さまを助けるために、次々と新しい巫女さまをつれてきました。
巫女さまたちはなんども、なんども、門のところへ行きました。
しかし、最後の巫女さまは好きな人がいたので嫌がりました。
でもそうしているうちに村人たちは悪い怪物になってしまいます
主さまも村人もこれまでに縄になった巫女さまたちも怪物になってしまいました。
やさしいやさしい巫女さまにとってそれはとてもかなしいことです。
仕方なくからだを縄にかえ、扉を完全に閉じ、村人たちを元に戻しました。
ある時、いなくなったはずの怪物たちよりもさらに大きな怪物がやってきました。
その怪物はとおい所から、別の道を通ってやってきたのです。
大きな怪物はいいました。
『おれにはけんもやりもやくたたずだった。
ゆみやもてっぽうもはねかえしたんだ』
なのにどうしたことだと、怪物は泣き出しました。
『たったのひとことでおれはしんでしまった、もうあいつにはあいたくない。』
『だから、もんをまもるからかわりにおれをかくまってくれ。』
巫女さまは大喜びでいいました。
『わかりました、それじゃあもしあなたが嘘を吐いたときのために、あなたを殺したじゅもんを教えてくれたらかわってあげましょう。』
大きな怪物は口に出さないよう、じゅもんを地面に書きましたーーーー
◆ ◇
そこから先は破られている。
否、たった今破りとったのだ。
この童話はきっと今の話、ここに書いてある呪文を言ったら、この化け物は死に、門は開き、禍刻が起こるに違い無い。
ならば縄の巫女としてこの呪文を守り通さなければならないだろう。
それに……。
「あの方は何処に…。」
そう、まずは自分と共にあの場に留まってくれたはずの彼を探さねばいけない。
化け物のおかげで外れた裂き縄を護身のために持ち、外へと駆け出した。
【C-3/氷室邸井戸内部/一日目夜】
【霧絵@零~zero~】
[状態]:健康
[装備]:浴衣、裂き縄@零~zero~
[道具]:童話の切れ端@オリジナル
[思考・状況]
基本方針:雛崎真冬を探す。
1:まずはここから出る。
※雛崎真冬が来ているかはわかりません。
『アイテム解説』
【裂き縄@零~zero~】
縄の巫女とよばれる選ばれた人間を特殊な機具を使い五体を引き裂く事で強大な霊力を蓄えた縄。
本来これによってしか
黄泉の門を閉じることはできない。
【童話の切れ端@オリジナル】
童話の続きが書いてある、怪物が
『トゥ・フィ・エゴ・エリス』
という呪文を教えたあとの話が載っている。
『設定解説』
【黄泉の門@零~zero~】
氷室邸内部の井戸の奥にある瘴気の溢れだす門。
この門を完全に封印する事は縄の巫女の使命である。
裂き縄でしか封印することができないはずだが
現在は
グラトンによって封印されているようだ