暗闇通り探検隊
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 17時59分55秒
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 17時59分56秒
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 17時59分57秒
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 17時59分58秒
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 17時59分59秒
【 太田ともえ 】 サイレントヒル 民家 18時00分00秒
「何……?」
渇いた喉を潤そうと、蛇口に手をかけた太田ともえは、奇妙な轟音にいぶかしむ。
まるでサイレンのようなそれは、猛獣の咆哮にも思えた。いったい何の合図だろう。
もちろん自分にはまったく覚えがない。
「トモエ、今のは?」
それは同行者であるジル・バレンタインも同じだったらしく、不思議そうな表情で、
壁に開いた大穴からこちらに疑問を投げかける。
「わからない。そっちはど」
それより先の言葉は、口から出てこなかった。瞬きをしている間に、周囲の景色が激変したからだ。
黒、錆、血……。日常から乖離した、荒廃的な色彩。そこから溢れる不穏な雰囲気に、ともえはしばし言葉を失う。
ジルもそのようで、周囲を緩慢な動作で見回している。
「……おかしいわね。ドラッグとは縁がないはずなんだけど」
先に立ち直ったジルが複雑な顔で肩を竦める。
「あなたも見える? “これ”」
ともえは黙って頷く。それに安心したらしく、小さな笑みを浮かべたジルは、今度は台所で流れる水を指差す。
「それじゃ、あれも見える?」
「え? あっ」
自身の持つコップに何が溜まっているのか気付き、和服の女性は反射的に手を開く。
透明な器がシンクの上を跳ねる。蛇口と同様に、そこから赤い水が流れ出す。
「オーケー。私達が見ているのは幻覚じゃない、現実。そういうことなんでしょう」
ため息混じりにジルは言い、額に手をやる。ともえはとりあえず蛇口を捻り、流血のような水流を止めた。
なぜこうなったのか。そんなこと、考えても切りがない。だったら、その現象を疑問にせず、そのまま受け止めた方が無難だ。
第一、次から次へと疑問を抱えては、いずれ処理しきれず頭がパンクしてしまうだろう。
この場合、部屋の内装が悪趣味になり、水道水が飲めなくなった。
それだけの話だ。
もっとも、一人でいてはそんな風に考えることはできず、パニックに陥っていただろう。
認識を共有する人間、それが安堵と冷静を与えてくれるのだ。
“余所者”という疎外感が完全に払拭できたわけではないが、少なくとも今の自分が孤独だとは思っていない。
「オイオイオイ! やべぇよ! ついに幻覚まで見えちまった!」
喚声と共に扉から入ってきたケビン・ライマンに二人は驚きもせず、黙々と民家の探索を再開する。
「あれ……?」
「ケビン、庭の方はどうだった?」
あまりの無関心に呆然としている警官に、元・同僚が声をかける。
西を目指して進んだものの、一向に人に会うこともなければ、“それ以外”に遭遇することもなかった。
これを幸運か不幸か判断するかは別にして、その後三人は辿り着いた民家を中心に声の主を捜すことにした。
生存者が家屋に避難している可能性、自分達の休憩や物色の対象……。理由はそんなところだ。
「あ、ああ。血痕はあったが、誰もいねえ。あるのはボロい傘と、お釈迦になった犬小屋くらいだ」
「そう。無駄足だったわね」
ともえはそばの壁、そこに出来た空間を見遣る。いくら老朽化しているとはいえ、民家の壁を突き破るとは、いったいどんな化け物なのだろう。
わずかに感じる悪寒に身震いする。
「それで、そっちの収穫は?」
「上々とは言えないけど、マシな方よ」
ジルが民家に残されていた物品をケビンに見せると、彼は歓声を上げた。
「ヒュー! サムライブレードじゃねえか、こいつはゴキゲンだぜ」
弾薬や薬品そっちのけで、アメリカの警官はその長物に興味津々である。
「あれって、そんなに人気なの?」
ともえが声を潜めてジルに問うと、彼女は冷めた笑みを浮かべる。
「そうね。工芸品としては結構な人気よ」
たしかにその日本刀は、ともえの見地からも相当な業物だと判断できた。
しかし、武器としての優位性・利便性はどう考えても銃の方が上だ。
同郷の人間が兵器としてでなく、美術品として愛でるのならまだしも、
異国の人間がどうしてここまで喜ぶのか、ともえにはよくわからなかった。
「おそらく私達がいるのはここ」
ジルの指が地図の上、B-1の辺りを叩く。そこにはたしかに今いる民家と、もう残骸でしかない犬小屋が記されていた。
「ここからさらに西に行けば、『駅』か、あるいは地図の外へ向かうことになる。
このまま捜索を続けるか、事態の究明のために動くかで行き先が変わってくるわね」
「駅、か」
抜刀して刀身を眺めていたケビンが、感慨深そうに呟く。
ジルはそれを聞き逃す気はないらしく、すぐに視線を地図からそちらへ滑らせる。
「何か心当たりでも?」
「いや。知り合いがそこで働いていてね。もっとも、ここはラクーンシティじゃねえから、関係はないんだが。ただな……」
「あなたの知り合いもここに来ていたら、関係性があると考えてそこへ向かうかもしれない。そういうことかしら」
口ごもる彼の言葉を引き継いだジルに、ケビンは微妙な顔つきで頷く。
二人の会話を聞いていたともえは、表面は泰然を装いつつも、内心では好奇心が主張を始めていた。
駅とは、あの『電車』とかいう乗り物が停まる、あの『駅』のことだろうか。自分の環境でいうところの、港のようなもの。
しかし駅とは陸地にあるという。電車というものは、船や車より速いらしい。
どんなものなのだろうか。
駅とは、電車とは。
見てみたい。
「そこへ行ってみない?」
若干声が上ずり、冷や汗と羞恥を感じつつも、ともえは平静な風で二人に提案する。
「そうね。警察署に寄ることを考えたら、その方が都合がいいわ」
まずジルが賛成し、指先をC-3の『駅』に滑らせる。「切符は必要なのかしら」
「ま、反対する理由はねえし、それでいこうや」
刃を鞘に納め、ケビンもそれに同意する。
ともえは胸中でガッツポーズをしつつ、二人と共に民家を出た。
【B-1/民家の前/1日目夜】
【ケビン・ライマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:身体的疲労(小) 、T-ウィルス感染中
[装備]:ケビン専用45オート(装弾数5/7)@バイオハザードシリーズ、日本刀
[道具]:法執行官証票
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。T-ウィルスに感染したままなら、最後ぐらい恰好つける。
1:駅へ向かう
2:警察署で街の情報を集める
*T-ウィルス感染者です。時間経過、もしくは死亡後にゾンビ化する可能性があります。
【ジル・バレンタイン@バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ】
[状態]:健康
[装備]:M92Fカスタム“サムライエッジ2”(装弾数12/15)@バイオハザードシリーズ
[道具]:キーピック、M92(装弾数15/15)、ナイフ、地図、ハンドガンの弾×2、携帯用救急キット、栄養ドリンク
[思考・状況]
基本行動方針:救難者は助けながら、脱出。
1:駅へ向かう
2:警察署で街の情報を集める
※ケビンがT-ウィルスに感染していることを知っています。
【太田ともえ@SIREN2】
[状態]:身体的・精神的疲労(小)
[装備]:髪飾り@SIRENシリーズ
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:夜見島に帰る。
1:ケビンたちに同行し、状況を調べる
2:事態が穢れによるものであるならば、総領の娘としての使命を全うする
*闇人の存在に対して、何かしら察知することができるかもしれません。
【アイテム情報】
日本刀@サイレントヒル
威力は全武器の中で最大だが、ヒットする場所によって威力が違うので、背の高い相手以外には長所が活かしにくい。