Retry?
事の始まりは「羽生蛇村」と呼ばれる辺鄙な村にオカルト番組「ダークネス・ジャパン」の取材に来たことからだ。
ロケーション中に偶然知った秘祭に潜入取材をするという企画が急遽決まった。
正直な話、美浜奈保子はそのロケには乗る気ではなかった。むしろ、この「ダークネス・ジャパン」という番組自体に嫌悪していた。
(どうしてアタシがこんなヘボい番組でレポーターなんかしなくちゃいけないの?)
毎度毎度湿っぽい現場で汗水垂らしながら、意味のない取材を強制させられるというのに美浜奈保子 ーーかつてはグラビアアイドルとして華やかな扱いを受けていたことだってあるー。 の人気が上がる気配は一行にない。
むしろ、彼女は世間に忘れられつつある存在であった。
でも、TVに映るためにはこの番組にしがみつくしかない。崖っぷちのアイドル。それが美浜奈保子だった。
取材が始まってすぐに彼女は一人取り残された。しかも、赤い雨が降り、怪物の徘徊する薄気味悪いこの村に。
「どうして誰もいないのよ!」
どうしてこんなことになってしまったんだろう。一昔前まで「みーな」と呼ばれて、皆に愛されていたはずなのに。
「どうしてよ……なんでみんなアタシをみてくれないの…」
ふとした拍子で迷い込んだ学校校舎内。奈保子は喉の乾きを感じて蛇口をひねった。
出てくる水の色は薄めた血液のような淡い赤、とても口に含む気にはなれずにまた蛇口を閉じる。ため息を漏らしながらなにげなく鏡を見つめた。
鏡の中の彼女はお世辞にも美しいとは言えなかった。髪は乱れ、肌も唇も乾燥している。目の下にはクマができており、顔には皺ができていて…
「いや……!」
そこに映っていた自分自身は……『老けていた』
【 美浜奈保子 】 蛭ノ塚 水蛭子神社湧水 3時33分33秒
『あの女のようになりたいか?永遠に生きる女に』
村で初めて会った老人が呟いていた。
あの時は一体何を言っているのか理解できなかったし、理解しようとも考えなかった(気のおかしなじじいだと思っていた)が、今ならなんとなくわかる気がする。
この村にはそういった秘術があるのだ。
永遠に年の取らない、昔と一寸も違わない姿で生き続けることができる…そういった秘術が。
「永遠の若さ」
もう、奈保子の精神は限界に近づいていた。
今自分の目の前に赤い水で出来上がった泉がある。ここに身を委ねれば……
「永遠の若さ」
ある種の確信が彼女にはあった。きっと自分は不老の力を得ることができると。
アタシは
「永遠の若さ」
そう、「選ばれた」人間なのだから
【 美浜奈保子 】 雛城高校 保健室 17時05分55秒
奈保子が目を醒ましたのはベッドの上だった。柔らかい布団が身体を包み込み、奈保子は久々に心安らかな時を過ごしていた。
…ベッド?何故自分はこんな所で眠っているのだろう?
奈保子は身体を起こし辺りを見回す。
白く塗りつぶされた部屋に清潔なベッドが並んでいる。それぞれのベッドの回りにはカーテンがひかれ、一人でゆったりと眠ることができるように考慮されていた。
ベッドから起き上がり、カーテンを押し空けると薬品が詰まった棚がある。壁には『風邪に注意。手洗いうがいはしっかりと』と描かれた手書きのポスター。
奈保子には見覚えのある場所だった。ここは学校の保健室だ。
昔はよくサボりに来ていたっけ…と感傷に浸るも、違和感を感じてすぐに思考を止める。
霧が濃いのだ。つい先ほどまで自分がさまよっていた羽生田村と同じか…いや、もっと深い霧だ。
窓の外の景色は灰色で、見ていて寒々しい。窓の外に作られた花壇の色味も感じられない。
「なに…?どうなってんの……。あれ?」
辺りを見回すと、1枚のポスターに目が止まった。
赤文字で書きなぐられたような乱暴な字で描かれている張り紙。奈保子は引き寄せられるようにその張り紙に近づいた。
ル ー ル
1. 殺 せ
この街から生きて帰りたいのなら、皆殺して最後の一人になること。
2. サ イ レ ン で 世 界 は 裏 返 る
生き残りたいならサイレンを聞き逃さないこと。何が起きるかはお楽しみ。
3. 鬼 の 追 加
一定時間毎に鬼を追加します。
4. ご 褒 美
最後の一人にはご褒美が用意してあります。頑張って殺してください。
(褒美…?)
奈保子の目を惹いた言葉…褒美。この甘美な響きに奈保子の目に輝きが戻ってきた。
(そうだわ…。これは与えられたチャンスなのよ。…永遠の若さを手に入れるためのね。そのためだったら何だってしてみせる。もうアタシには後がないんだから…)
まずは状況の把握だ。
どういった経緯でここに来たのかはわからない。ここは羽生田村ではない。それだけはなんとなくだが奈保子は感じていた。
(でも、アタシはまだこの力を使える…)
目を閉じて意識を集中させる。砂嵐の映像からぼんやりと景色が浮かんでゆく…。さらに意識を研ぎすませるとその映像のピントがぴったりとあった。
ハァハァハァと荒い息を吐きながら、その映像の主は全速力で道を駆けていた。
『な、なんだよありゃあ!冗談じゃねえよお!!!ホントついてねえってオレったらぁ!!誰か助けてぇ~!!!』
そんな彼の視界に「雛城高校」と描かれた看板と校門が飛び込んできた。
【 ジム・チャップマン 】 サイレントヒル ? 16時56分56秒
「おーい!ケビーン!どこいっちまったんだよー!
…つうかここどこ?あり得ないよなーケビン? …そっか、ケビンいないんだっけ……」
帽子の上からボリボリと頭を掻きながらジムは大きな独り言を漏らしていた。
ジムはラクーン・シティに暮らすごく一般的な鉄道会社社員だった。だが、そんな彼の平穏は前触れもなく崩れ去った。
「生物災害(バイオハザード)」により街は一瞬にして地獄へと豹変した。
彼は仕事帰りに立ち寄っていたBarでこの異変と遭遇する。ついさっきまで同じ人間だったはずの人々がゾンビとして甦りまた仲間を求めて襲いかかってくる。街は火の海に飲み込まれ、人は次々と怪物にへと姿を変えてゆく。
ジムはケビンという名の警察官と共にラクーン・シティの脱出を試み、そして脱出のできる「直前」まで来たのだった。
ジムの身体は確実に蝕まれていた。人をゾンビへと、怪物へと姿を変えてしまう現況、T-ウイルスに。それはまたケビンにも言える。
それを他の人間にバラまくわけにはいかない。
彼らはラクーン・シティを離れていくヘリコプターを黙って見送ることしかできなかった。
すごく辛い。あのヘリコプターに乗って元の平穏な生活に戻りたかった。
酒場で酒を飲みながらここで起きた地獄のような逃走劇も笑いの種にしてやりたかった。
(あーあ!ツイてないよ。
せっかくならむさくるしい男より、美人と一緒のほうがよかったよ!ケビン、アンタならわかるだろ?)
いつも通り軽口でも叩いてやろうかと思った。そうでもしないと心が折れてしまいそうだったからだ。
しかし、ジムが口を開こうとした瞬間、空がビカリッ、と光って、そして…
この霧に包まれた街にジムは倒れていた。
一面霧に覆われ、景色の見通しは非常に悪い。ジムは芝生に囲まれた道の真ん中で寝転んでいたらしい。
先ほどまで地獄のような体験をしたラクーン・シティとは違う景色。
「まさかオレ、ひとりで助かった…なーんてワケないよな。だってあの時…」
ラクーン・シティを覆った光。あれは大量のミサイルだ。
怪物まみれになったあの街は存在を抹消された。自分もあの時一緒に消滅した…はずだった。
「ケビン…。大丈夫かなぁ。いや、アイツなら大丈夫だろ、殺しても死なないような奴だしな。うん、そうだ、きっとそうだよな!」
口ではそう言っているが、正直不安は拭いきれなかった。
まずここはどこなのか、無事ラクーン・シティを脱出できたのか?疑問は尽きない。
ここで寝そべっていても仕方がないと立ち上がり、ジムは辺りをキョロキョロと見回した。
「おっ、こいつは」
丁度ジムが倒れていた辺りに彼がずっと握りしめていた鉄パイプが落ちている。彼はそれを拾い上げてブンと一振りしてみせた。
「ホームラン!なんちゃって!…おっと、あいつも持ってるかな」
ズボンのポケットに手を突っ込んでみると、なんとなく持ち歩いていたコインが一枚。
「やっぱこれがないとな!ひょいっと!」
なんとなくコイントスをして遊んでみる。『表』だ。
もう一度やってみようかとコインを握りしめた時、霧の向こうに小刻みに揺れる影をみた。
カサカサカサ、と足音をたてながら布を纏った巨大なボールが地面を「滑っている」…とでも表現すればいいのだろうか。
それ球体と共に女の笑い声が聞こえてきた。
クスクス、クスクス。
その球体の正体は巨大な顔だった。
汗ばんだ髪が蒼白な顔面に張り付いており、充血した目が不気味なほどに見開かれ、その目から涙のように滴る血。
顔には首から下がない。代わりに鳥のような細い棒のような足がついている。それをよちよちと動かしてこちらへ走りよってくる。
口元をぐにゃりと歪ませて、その東洋人の女の顔は笑っていた。
「ねーえ、遊びましょう」
「ヒ…ヒィィィィィィィィ!!!!!!!」
ジムは走り出していた、勿論その怪物から反対の方向へ。
後ろからヒタヒタヒタと足音が聞こえてくる。この怪物、見た目より動きが早い。がむしゃらに走るジムの後ろをぴったりついてきているようだ。
「な、なんだよありゃあ!冗談じゃねえよお!!!ホントついてねえってオレったらぁ!!誰か助けてぇ~!!!」
声が掠れて、涙まで出てくる。我ながら情けない。
そんなジムの視界に『雛城高校』と書かれた看板と辺鄙な校門が飛び込んできた。
ジムは仄か希望を持って、さっと後ろを振り返った。
「もっと楽しいことをして遊びましょうよ」
希望は通じなかった。
止まらない涙を拭って鼻水もすすりながら、ジムは校門をくぐり抜けて雛城高校のグラウンドを全速力で走っていった。
「な…なんなのよあれ…!」
ジムの目を通してみた事のないおぞましい妖怪の姿を見てしまった奈保子。
「あの男、余計なものを連れてきやがって…!」
手には共に修羅場を切り抜けてきた武器の拳銃がある。しかし、弾の残りはあと僅かとなっている。
他には道中拾ったあのじじいの免許証と…なんとなく拾ってきてしまったトライアングル。
(なんとしても生き残らなければ…)
何か使えるもの…劇薬などないか?奈保子はまず薬品棚に手をのばした…。
【A-3雛城高校/一日目夕刻】
【美浜奈保子@SIREN】
[状態]:心身共に強い疲労
[装備]:26年式拳銃(装弾数6/6 予備弾6) 懐中電灯
[道具]:志村晃の狩猟免許証 羽生田トライアングル
[思考・状況]
基本行動方針:どんな手段を使っても最後の一人となり、褒美を手に入れる
1:保健室内に武器になるようなものがないか探す。
2:視覚ジャックを駆使し、可能であれば闇人乙式を倒す。難しそうであれば逃げ切る。
3:ジムを利用できそうであれば利用する。
*屍人化の進行が進んでいます。死亡すると屍人化します。また時間経過で屍人に近づいていきます。
【ジム・チャップマン@バイオハザードアウトブレイク】
[状態]:強い疲労
[装備]:鉄パイプ コイン
[道具]:グリーンハーブ×1
[思考・状況]
基本行動方針:誰か助けてぇ!
1:闇人乙式から逃げる。
2:誰か助けて!
3:死にたくねえよ!
*コインで「表」を出しました。クリティカル率が15%アップしています。
*T-ウィルス感染者です。時間経過、死亡でゾンビ化する可能性があります。
【キャラクター基本情報】
美浜奈保子
出典:『SIREN』
年齢/性別:28歳/女性
外見:キツネのようなきつい釣り目が特徴。髪をアップにして束ねている。 細身の日本人女性。
羽生蛇村異変後からの出場なので服に赤い斑点のシミがあり、服装も乱れている。
環境:2004年のオカルト番組「ダークネス・ジャパン」のTVレポーター。元グラビアアイドル。
現在はTVレポーターとしてなんとか芸能界で食いつないでいる状態。グラビアアイドル時代は雑誌の表紙を飾ったり、テレフォンカードの柄にされることもあった。
性格:自己顕示欲が強く、短気でワガママ。腹が立つとヒステリーに叫びだしたりする。
能力:幻視能力。須田恭也が使えるものと同じものです。
銃は一応扱うことができます。ただ、扱いには慣れていないので、遠距離の相手や素早い相手には銃弾を当てるのは難しいと思われます。
強気で行動力がある。
口調:一人称「アタシ」 二人称「あんた」
高飛車な感じで文句や愚痴も多い。知らない人相手には猫を被ったりするようだ。
交友:羽生田村では志村晃以外とはまったく接触していない。ただ、グラビアアイドル時代の彼女を知っている人間やそんな彼女のファンはいるかもしれない。
備考:SIREN第二日(ゲーム上では屍人化)から参加。ゲーム中の異変を体験しています。
志村晃について
猟銃を持った老人。70歳。彼を操作できるステージは序盤だというのに非常に難しく多くのSIRENプレイヤーを苦しませた。
美浜が羽生田村で唯一会った人間であるが、謎の言葉を残して去ってしまう。
羽生田村の異変の黒幕の正体を知る数少ない人間であった。
ジム・チャップマン
出典:『バイオハザードアウトブレイク』
年齢/性別:24歳/男性
外見:黒人男性。地下鉄職員の制服、帽子を身につけている。髪は短く刈り上げているが帽子に隠れている。
環境:ラクーン・シティで地下鉄職員として働いていたが、生物災害に巻き込まれている。
性格:気さくで陽気だが、臆病さや度量の狭さを見せることも。悪気はないのについ一言多く、よく周囲の顰蹙を買う。
能力:死んだふり:死んだふりをしている間は敵に気づかれなくなる。少なくともバイオハザードに登場するクリーチャーには有効。
死んだふりをしている間はウィルスの進行が加速してしまう。
アイテムサーチ:初めて来た場所でもアイテムがどこにあるかわかる。アイテムの種類は識別できない。
コイントス:コイントスをする。「表」が出るとクリティカル率が15%ずつ上がり、最大4回まで有効。
パズルが得意。
口調:一人称「オレ/オレ様」 二人称「アンタ」
誰に対しても親しげに話す。
交友:バイオハザードアウトブレイクのメインキャラクター全員と面識があります。
マークとは仲がよく、ヨーコに気がある様子(ヨーコには快く思われていなかった)アリッサを恐れているらしく非協力的。
備考:アウトブレイクFILE1「決意」のペアED後から参加。デイライトは接種していません。
【クリーチャー基本情報】
闇人乙式
出典:『SIREN2』
形態:単体の時もあれば、複数現れる時もある。
外見:頭巾を纏った巨大な顔で鳥のような足がついている。顔面蒼白で目から涙のような血を出している。
なお、女性しか乙式になれない。
武器:打撃、かみつき
能力:正面からの攻撃をいっさい受け付けないため、背後からしかダメージを与えられない。ただし、気がつかれていない場合は例外で正面からダメージを与えられる。
扉も開けることのできる他、内鍵も壊すことができる(時間はかかる)
攻撃力:★★★☆☆
生命力:★★★★★
敏捷性:★★☆☆☆
行動パターン:決まった場所を巡回している。人を見つけると襲いかかってくる。
備考:倒しても1分前後で復活する。消滅させるには滅爻樹という聖なる木の枝が必要。今は枯れてしまっている。
光に弱く、光によってダメージを受ける。正面からではダメージはないが、ひるませることは可能。