系譜
- 父はゼウス、母はマイア。
- 子はパン、アブデロス、ダプニス。
- 妻はアンティアネイラ。子はエウリュトス、エキオン。
- 妻はヘルセ。子はケパロス、ケリュクス。
- 愛人はアプロディテ。子はヘルマプロディトス。
- 妻はテオブラ。子はミュルティロス。
- 妻はニコストラテ。子はエウアンドロス。
- 妻はキオネ。子はアウトリュコス。
- 妻はソセ。子はアグレウス。
- 妻はペネロペ。子はノミオス。
- 妻はエウポレミア。子はアイタリデス。
- 妻はダエイラ。子はエレウシス。
- 妻はピュロダメイア。子はパリス。
- 妻はクトノピュレ。子はポリュボス。
- 妻はトロニエ。子はアラボス。
- 妻はイプティメ。子はペレスポンドス、リュコス、プロノモス。
解説
- 別名、ヘルメース。
- ヘルメスは旅人の神で、旅人の危険な道中を案内すると考えられた。彼の像が田舎の分かれ道や町の十字路に立てられた
- 競走や拳闘など多くのスポーツ競技の発明者である。ゆえにスポーツ競技者の守護神である
- 異性交渉における慎重さと技術の神である。
- 他に天文学、占星術、眠り、夢の神である。
- 死者の魂を冥界に導く神と考えられた。天界のヘルメスと分けてヘルメス・プシュコポムポスと言われることもある
- その賢さによって、ヘルメスは様々の発明をしたとされる。また、ティタンのプロメテウスと同じく、火の発明者とされる。
- 肖像。つば広の帽子か羽根付き帽子を被り、羽根付きサンダルを履き、手には伝令使の杖を持っている。杖はケリュケイオン(ギリシャ語)か、カドゥケウス(ラテン語)と呼ばれる。
- 彼のシンボルとして、おんどり、亀、ハンドバッグ、ポーチがある。
- ヘルメスは本来、多産や豊穣を司る男根神で、道路や境界の神でもあった。ヘルメスの名前の由来はヘルマで、複数形はヘルマイ、「道標の石の山」を意味する。ヘルマは四角い石柱で、天辺にはヘルメスの顔が置かれ、基部に男根がついていた。これが道路や境界の目印に使われた。アテナイでは、家々の玄関にこれが置かれ厄払いに使われていた。
- ローマ神話におけるメルクリウス(マーキュリー)に相当する
オデュッセイアでのエピソード
- アテナはいった。「ヘルメスをオギュギエへ遣わし、オデュッセウスを帰国させるよう、カリュプソに伝えましょう」(第1歌)
- ヘルメスはカリュプソのもとへ遣わされ、神々の会議でオデュッセウスを帰国させることが決まったと伝えた。(第5歌)
- デモドコスはアレスとアプロディテの恋物語を歌った。アプロディテとアレスは浮気している最中に網で捕らえられた。神々はおおいに笑い、ヘルメスも彼らを笑った。(第8歌)
- オデュッセウスは豚に変えられた仲間を救うためキルケの屋敷を目指したが、途中青年に扮したヘルメスが現れ、彼にキルケの魔法を破る薬草と助言を与えた。(第10歌)
- 冥府でヘラクレスはオデュッセウスに語った。「わしもかつてこの場所へ冥府の犬を連れ帰るべく差し向けられた。わしは見事にその犬を地上に連れて帰ったが、この時ヘルメスとアテナが付き添って下さった」(第11歌)
- 殺された求婚者たちの霊を冥界へと導いた。(第24歌)
エピソード
誕生してすぐ、アポロンの牝牛を盗む ヘルメスは、アルカディアのキュレネ山上の洞窟で生まれた。彼は生れ落ちるとマイアによって帯で巻かれてゆりかごに置かれたが、すぐにゆりかごから這い出すと、ピエリア山に登り、アポロンの飼っていた牝牛を運び出した。ピュロスまで行き、牛を洞窟に隠した。2頭の牛をそこで殺し、皮を岩に掛け、肉を煮て食べると、余りの肉を焼いて十二神に捧げた。それからキュレネに戻ると、洞窟の前で亀を見つけた。亀の甲に、牛から取ったガットを張って楽器を作り出した。こうしてヘルメスは竪琴を発明した。アポロンは牛がいないのに気づき、占いで盗人を知ると、ゼウスに訴えた。ゼウスは牝牛を返すようヘルメスに命じた。ヘルメスはアポロンに牛を返したが、竪琴を聴いたアポロンは、牛と竪琴を交換した。
バットスを岩に変える バットスという老人がぶどう園を耕していると、牛の群れを連れたヘルメスを見かけた。アポロンから盗んだ牛を運んでいる最中だった。ヘルメスは、「老人よ、お前は何も見なかったし、何も聞かなかった。収穫を得たいなら、そのことを忘れるな」といって去った。それから、アポロンがやってきていった。「老人よ、私はピエリアから牛を探してやって来た。牛を連れた者を見なかったか」老人は、「一人の子供が牛の群を連れていました。彼は牛たちを後ろ向きに進めていました」といった。アポロンはすぐにヘルメスのことだと分かった。アポロンはヘルメスをゼウスに訴えた。ヘルメスはバットスを岩に変えてしまった。それは「密告の岩」といわれた。
[[アルゴス]]を殺す ゼウスは恋人のイオをヘラから隠すため牛に変えた。しかし、ヘラはゼウスに彼女を要求し、アルゴスをその番人に命じた。アルゴスは牛をミュケナイの木立ちにあるオリーブの木につないだ。ゼウスはヘルメスに彼女をさらうよう命じた。百の目に気付かれずに盗むのは無理だったので、ヘルメスは石でアルゴスを殺した。このためヘルメスの添え名は『アルゴス殺し』となった。
[[ペルセウス]]を助ける ペルセウスは、ゴルゴンの首を取ってくるよう、ポリュデクテスから命じられた。ペルセウスはヘルメスとアテナに導かれて、ポルキュスの娘たち(グライアイ)の所へ行った。彼女らは彼にニンフたちの居場所を教えた。そのニンフたちは、翼のあるサンダルと、「キビシス」と、ハデスの帽子を持っていた。また彼はヘルメスからアダマント(比類なく堅い物質)の鎌を受け取った。それらの品を使って首尾よくゴルゴンを倒すと、ペルセウスはサンダルと、キビシスと、ヘルメットをヘルメスに返し、ゴルゴンの首をアテナに与えた。ヘルメスはそれらの品をニンフたちに返した。
キオネに恋する ダイダリオンの娘キオネは美しい娘で、14歳の適齢期になると、多くの求婚者が来た。その時、アポロンとヘルメスは彼女に恋した。ヘルメスはすぐに彼女の所へ行き、杖で彼女の唇に触れて眠らせ、彼女と交わった。その夜、アポロンは老婦人の姿をとって、彼女の所へ行って交わった。彼女とヘルメスとの間にはアウトリュコスが生まれ、アポロンとの間にはピラムモンが生まれた。ヘルメスは盗みの技術と、盗んだ物を好きな姿に変身させられる能力を、アウトリュコスに与えた。ピラムモンは有名な吟遊詩人になった。キオネは自分の美貌をアルテミスより上だと誇り、女神は激怒して彼女を矢で射殺した。ダイダリオンは深い悲しみのためパルナッソス山の崖から身投げをしたが、アポロンによって鷹に変身させられた。