era1以前
18世紀
1770年 太平洋にて新大陸を発見。『東オーストラリア大陸』と命名。
20世紀
1945年 冷戦到来。
1958年 資本主義、共産主義両陣営による宇宙開発が始まる。
1969年 月面に二つの基地が完成。
1989年 冷戦終結。
宇宙開発規模の縮小。
21世紀
2065年 世界人口100億人を突破。
2066年 先進国主導による宇宙開発が再始動。『火星テラフォーミング計画』、『宇宙コロニ―建造計画』、『高速宇宙船開発計画』の同時進行。
2069年 11次元を航行する技術が発見される。
次元の乱れが発生。世界中で惑星の虚像を観測。
2072年 11次元航行技術『
次元科学』の確立。
火星テラフォーミング、宇宙コロニー計画廃案。
国連、新たな国際紀年『次元世紀』を制定。翌年施行。
次元世紀(era1)
0001年
次元科学を持つ国々、異世界の開拓に乗り出す。『大開拓時代』の到来。
0003年 複数の資源惑星を発見。
0004年 大量消費経済の再来。
0007年 地球型惑星発見。『
ヴァンガード』と命名。
0008年
次元科学を持つ国と持たざる国の格差が拡大。『新南北問題』。
世界で未知の生命体、通称『悪魔』の目撃翌翌翌例が頻発。
悪魔教団、悪魔結社の活動が活発化。
超能力者の存在が証明される。
超能力者に対する排斥運動が頻発。
0009年
超能力者の施設への強制収容開始。
『
Creqrat Viorl』、超大国に接触し、協力者を得る。『神の選択(セレクトオーダー)』を与える。『
ジャッジメントデイ』計画始動。
『生物擬人化計画』始動。
0010年 北半球の某国、新兵器『次元弾』を秘密裏に南側の小国に投下。小国消滅。北側による情報統制が敷かれる。
0013年 北側による隠蔽が暴露される。
南半球の国々、北側諸国を糾弾、対抗すべく経済協力機構『南部連合』を組織。
0014年 国際緊張の緩和を企図した北側諸国、南部連合の主だった国に
次元科学を提供。
南部連合、異世界へ進出。
南部連合、反悪魔結社のテロ活動支援。
北側諸国、南部連合に対するプロパガンダ工作を激化。
北側諸国、強制収容した
超能力者を軍事運用。『超能力者狩り』開始。
両陣営の軍事力が拮抗する。
0015年 北側諸国、北半球条約機構(Northern Hemisphere Treaty Organization )『NTO』結成。
0016年 南部連合、新たに軍事同盟を締結。NTOに宣戦を布告、第三次世界大戦勃発。
『赤道上宙域決戦』開戦。
ジャッジメントデイ発動。多数の戦術・戦略核、ミサイル兵器、人工衛星が落下。
人工神『カオス』顕現。
文明崩壊。
次元世紀、帝暦、上天暦、オルケイン暦(era2)
0017年 地球環境、地軸のずれを引き起こし急激に変化。地球温度上昇に伴い、南極の氷が融解。地表海没。
セレクトオーダーに感染した生物の内、抗体の無い多数の生物が死滅。
世界人口2千万人以下に減少。
世界中で植物が急速に繁茂する。小人、高次元エネルギー『霊力』の消失と新物質の発生を観測。
生き残った生命体、地球環境への適応を果たす。
残存人類、文明の残滓を利用し、生き延びる。
0018年 一部の人類、自然から発生する新物質を知覚。
残存人類、小人と邂逅。新物質を『魔力(マナ)』と呼称。小人の伝えた霊力を操る技術を魔力を操る『魔術』として伝承。
文明崩壊直前に拡大した森林地帯『
オールグリーン』と命名。
都市跡地郊外、凶暴化した生物が跋扈する。人型を成す個体を『魔人』、それ以外を『魔物』と呼称。
0020年 北米大陸南東部、『ソルグレイユ』建国。旧文明の再興と残存人類の統合を掲げる。
0021年 西欧に
超能力者の一団が誕生。
通常種への弾圧を開始。
超能力者の一団、国家『
I Regulars』建国。
0022年 世界各地で旧文明の遺産を巡る争いが起こる。
オールグリーンに生きる人々、旧文明を捨て、魔力を用いた新たな文明を育む。
0025年
I Regulars、欧州大陸の西側を制圧。東進開始。
0028年 『扶桑皇国』建国。
0030年 ソルグレイユ、各地に勢力を拡大。
0047年
I Regulars、領土拡張から国内政策へ転換。
0051年 扶桑皇国、中国亜大陸へ進出。現地勢力と武力衝突。
0063年 東欧の
通常種組織、旧文明技術のサルベージ、技術復興を開始。
扶桑皇国、逆侵攻を受ける。停戦条約締結。
『上天帝国』建国。周辺地域へ勢力拡大。
0069年 オーストラリア大陸への航路が確定。植民開始。
0078年 上天帝国、オーストラリア大陸の魔人国家『獣牙王国』と戦争状態に突入。
0079年 獣牙王国滅亡。散発的ゲリラ戦闘に移行。
0082年 上天帝国、南方平定。
0088年 上天帝国、扶桑皇国に侵攻を開始。
0094年 上天帝国、『
扶桑城の戦い』に勝利。扶桑皇国を併合、皇国の技術を吸収。
0095年 上天帝国、好景気に沸く。『光宗景気』。
0099年 ソルグレイユ、北米大陸の大部分を統合。
0116年 天人、コールドスリープから覚醒。
0119年 天人、浮遊機関『魔力塔』を建造。浮遊大地『
ウラノス群』に移住。地上人類と隔絶される。
0170年 ソルグレイユ、海峡を渡りユーラシア大陸北東に到達。
0183年 『
ユグドラシル自治王国』建国。
ユグドラシル、『神政アースガルズ首長国』と同盟締結。
0193年 東欧人類、対
I Regulars反抗同盟『東欧戦線』組織。
I Regularsに宣戦布告。
I Regulars、東欧への再侵攻開始。
0194年
I Regulars、東欧の大部分を制圧。
0195年 ソルグレイユ、シベリア地域のほぼ一帯を統合。
0196年 テオゴニア大陸東部の
エルフ国家『アスガルド』にソルグレイユが侵攻開始。
ソルグレイユ、アスガルドとの停戦協定を受理。
ユグドラシル、アスガルドを併合。
0197年 ソルグレイユ、国内の派閥闘争が激化。
0198年 ソルグレイユ上層部追放、国家を解体。『
ソレグレイユ連邦共和国』として再構成。
0199年 上天帝国、政治腐敗による反乱勃発。
0200年 上天帝国、反乱終結。国家解体の後、『上天民主共和国』として再構成。
上天民主共和国、大国に対抗すべく、独立した嘗ての構成国との間に、永世中立を謳う軍事・経済協力協定『久平連合独立同盟』を締結。
0300年
0430年 久平領・扶桑皇国の旧世界遺跡と同国領である永世中立国永世中立国『
オルケイン市国』から、
ジャッジメントデイの資料が発見される。
ソレグレイユ、文明崩壊の真相として、資料の内容を世界に公開。
0431年
オルケインの仲介で、ソレグレイユ・ユグドラシルの二国間で平和条約、不可侵条約、悪魔・魔物対策協調条項が締結される。『四百年条約』。
永久の平和の証として、国際共通紀元『
オルケイン暦(A.O.)』を制定。翌年施行。
久平、独立承認されず。
era1
先進国後進国ともども大量の物資を入手し、大量の物品を作る時代。
↓
ジャッジメント・デイ(大絶滅)
↓
era2
生き残った人が少しずつ戻ってくる。旧先進国の廃墟、旧後進国の遺跡の発見。民族の緩やかな分裂。情報のゆったりとした伝達。
断片的に残った高性能の遺物とそれを使いこなせない人類。
↓
時間経過
↓
era3
完全に民族が分かれる。地理もはっきりする。技術的にもかなり破壊前に戻る。
しかし、思想の対立は破壊前より深まっている。
悪魔の絶え間ない襲来におびえる各地域と、思想の対立から小競り合いを繰り返す人類。
そして、技術主義国である
ソレグレイユの隆盛により、地域のパワーバランスに変化が生じる。
↓
”文明戦争”
era2:
ゴッヘルザッホと言う人物が世界各国を旅し、それの見聞録をつけていた。
彼は多国語が話せ、交渉も上手い。よく偽名を使っていたとされる。
era3:当時の
ソレグレイユの少女、エラミーはこの頃に故国を脱走、ユグドラシルに逃げ込み、現地で潜伏と
ソレグレイユの滅亡を狙う。
era1
2070年代~2080年代
次元科学の誕生を機に暦を『西暦』から『次元世紀』に置き換える。
多くの次元世界が発見・開拓されてゆき、資源問題を克服した人類は繁栄を極めていった。
その後、約10年ほどで
ジャッジメントデイが起こりera1終了。
era3
追悼式が終わり、世界平和条約が締結されたのを機に『
オルケイン暦』を各国共通の年号とした。
それから約60年間、
ソレグレイユは国内の遺跡調査を続けるも成果は上がらず、次第に多くの遺跡群を有する久平への疑念が高まってゆく。
その後、
ソレグレイユは戦争準備の末、対久平侵略戦争を引き起こした。
これに対し
ユグドラシルが介入、
第一次文明戦争が勃発する。
侵略戦争から半年が経過した戦争末期、悪魔の大規模な襲撃により、参戦国は一時共闘。両戦力の消耗から停戦協定が結ばれ、
以降約20年にわたる停戦期間『
黄金の20年』が続く。
西暦207X年。
光速へと至る技術の研究中、偶然にも、折り畳まれた十一次元を解析・制御する力
『
次元科学』を手にした人類は、一大転換期を迎えた。
上位次元の展開・格納と其処を航行する技術を組み合わせることで、
擬似的なワープ航法を実現した人類は、次々に地球を飛び立ち、宇宙へと進出していった。
果てしなく遠い惑星へ辿り着き、それらへ植民し、資源を採掘する。
正しく、彼らは現代の開拓民そのものであった。
彼らの中には、この宇宙の最果てさえも越え、ビッグバンによる創造と同時に分かたれた他の世界
……所謂別の宇宙島へと辿り着くものさえあった。
これらは総称して《次元世界》と呼ばれ、新たなフロンティアとして、世界の注目の的となった。
これらの地から齎されたあらゆるものは、地球文明圏に多大な影響を与えた。
新資源や移住可能な惑星の発見、そしてその開拓。
特に、完全な枯渇が目先に迫り始めた石油資源が、一部の惑星から採掘されたという報は、世界を沸かせた。
限界まで衰退していた石油市場は息を吹き返し、再び経済は動き始めた。
この新たな時代を讃えるべく、国連は独自に次元世紀(Dimension.Era)なる暦を制定したが、
それは、正に世情を映した鏡であった。
しかし、これに反発を抱くものも多かった。
南北問題……即ち、北半球の先進諸国と南半球の発展途上諸国の間にある経済格差は未だに解決されておらず、
貧困な南側は、ろくに次元世界へ進出することも出来ずに、更に格差を拡大させていた。
為に、
次元科学を独占していた北側に対し、悪感情が積もっていった。
また、中東を始めとする産油国もこれに同調した。国家の根幹をモノカルチャー経済に頼っていた副作用として、
彼らが莫大な権益を貪った地下資源は枯れかけ、最早国際的地位は失われていた。
その上に、自分達以外の国が石油を大量に輸出し得る様になったこの現状を快く思わないのは、当然のことだった。
また、同じ頃、世界中で未知の生命体が出現し、人々を襲い脅かす様になっていた。
それらは、醜悪な風貌と恐ろしい力を持つことから、俗に《
悪魔》と呼ばれるようになる。
《悪魔》の存在は人々を不安に陥れ、一部の人間の策動によって、
『悪魔は次元世界へ辿り着いたことで現れたのだ』という噂がまことしやかに囁かれることとなった。
実際、悪魔が確認され始めたのが次元世界への進出以来であったことから、
一部の民衆が、北側の次元世界政策を批判し始めた。
これに加えて、
超能力者の実在が証明されたことも、社会不安を増す要因となっていた。
次元科学によって、幾つかの超常現象の要因が解明される中、所謂超能力や
魔法といったものに対しても、
その見地から再度の研究が行われた。
その結果、
超能力は確かに実在し、それを扱う人間が多数いることも確認された。
しかし、集団から異質なものを排除したがるのは、人間の本能に根付くものである。
この事実が発表されてから、特に北側において、
超能力者を排除・区別すべきであるというものが台頭する様になった。
これに反対する、或いは賛同しない者も大勢いたが、己が異能の為に、
超能力者達は、新たな社会的マイノリティとして疎まれる様になっていった。
これらの条件が重なり、世界の社会情勢は混迷を極めた。
南側が反北側を旗印として堅く結束する一方、北側でも南側を暗に疎み、 これを封じ込めようとした。
互いが互いを潰そうとして、良好な関係を保てるはずもなく、両者は、対立を更に深めていった。
その背後には、《悪魔》の噂に傾倒した人間が作った反悪魔結社と南側の結託や、
排斥運動からの保護を名目にした北側の
超能力者の強制収容などがあり、
これが、更に社会情勢の悪化を助長した。
そして、ある時。南側に属し、北側を舌鋒鋭く糾弾していた小国が、突如として『消滅』した。
次元科学を転用して開発された、空間を丸ごと上位次元へと削り飛ばす恐るべき戦略兵器――
次元弾と名付けられたそれを、北側がその国の首都へ撃ちこんだのだ。
結果は、期待以上のものだったであろう。
小国であったとはいえ、その国の国土面積の実に二割が異次元へと消し飛び、
三割が、その異常な現象によって引き起こされた災害によって、事実上壊滅したのだから。
しかも、その事実は数年間、全く外部へ洩れることがなかった。
電脳ネットワークの大半を握り、マスコミへの強力な影響力を持つ北側は、その力を使い、
一つの強大な幻影を作り上げ、事実を隠匿し続けた。
あらゆる情報を制御し、地域への来訪者を『保護』し、航空機や衛星さえも支配下において、
その惨劇をひた隠しに隠した。
しかし、そんなまやかしが、何時までも続く筈がなかった。
死をも厭わぬ記者達の活動と、内部の人間のリークによって、
やがてこの事実は全世界に暴露され、人々を震撼させた。
これによって、北と南は完全に袂を分かち、敵意を剥き出しにして対峙することとなった。
南側は、中東に残されていた資金・資源を全体で共有し、急速に軍備を拡大。
主だった国の幾つかは《次元世界》への進出を果たし、更に戦力を増していった。
また、「破滅を呼び寄せた北側への聖戦を」と煽り立てて、反悪魔結社のテロ組織化を推し進め、
非正規戦闘による北側の勢力漸減を図った。
これらの策謀は順調に展開し、気が付けば、国家消滅が知れ渡ってから僅かの内に、
南側は北側と十分渡り合えるだけの力をつけていた。
対して、北側は情報戦略に於いて終始有利に立った。
引き続き情報統制を続け、テロ組織と化した結社との結びつきを糾弾するなど、
南側をプロパガンダによって徹底的に貶め、これを討ち果たすというカバーストーリーを流布した。
同時に、強制収容した
超能力者の『兵器化』が進められ、彼らを使った軍事作戦が予定された。
それを推進するべく、政府に従う者を厚遇し、そうでない者を捕らえて屈服させる
超能力者部隊が編成され、
各地の都市では、
超能力者狩りと呼ばれる作戦行動が見られる様になった。
こうした流れの中で、憎しみは際限無く膨れ上がっていった。南と北。富貴と貧困。正義と悪。
支配者と反逆者。迫害者と被虐者。対立する二つの狭間で、深い沼の澱みの様に、
溜まり溜まって濁り切った負の想いは、人類を狂わせ、そして感情を決壊させた。
南側は軍事同盟を締結し、北側に属する全ての国家へ宣戦を布告。
北側もこれに応えたことで、地球全土を巻き込む全面戦争が始まった。
次元世界へ進出する為に発展したあらゆる技術は、兵器を造る為に転用された。
宇宙船は戦闘用に改造され、次元を越えることは、敵への奇襲に有効と見られた。
宇宙空間は邪魔な人間を無視出来る格好の戦場となり、浮かぶデブリは、
動かせる障害物として戦術構築に利用された。
そして、終わりが始まった。
短期決戦を目論み、核攻撃を実行すべく赤道上に戦力を展開した北側と、
それを迎え撃つべく集結した南側の戦力は、 そのまま、その場を決戦場として、一斉に戦闘を開始した。
秘匿されていた戦術核は虚空に紅蓮の大華を咲かせ、無数の爆轟がそれに彩りを添えた。
地表へ墜ちていった兵器の残骸は都市を破壊し、歴史を無に帰していった。
全ては破壊し尽くされた。無数の命は木端の如く吹き散らされ、後には、灰燼だけが遺った。
――戦闘が始まってから十日目に発射されたそれが、一体何処から来たのかということは、定かではない。
唯、地球上のある場所で、戦略核に相当するエネルギーの解放があったのは確かだった。
それを切っ掛けとして、人類は、とうとう最後の引き鉄を引いた。
核抑止という平和の幻想を齎してきた悪魔は目覚め、供犠を求めて飛び立った。
契約を果たし、魂を刈り取るべく、更なる厄災をも撒き散らして、彼らは嗤った。
地上の民衆は、その時垣間見たという。大地を、天空を、海原を行く、大いなる何かの姿を。
嘗て二つの都市に煌めいた滅びの光が灼き尽くす世界に、嘆き、怒り、絶望する何かの姿を。
それまでの光景を地獄だと言うのなら、これは何であったろうか。
全てが終わり、枯れ果てた静寂が星を包む中、それに答える者は、一人としていなかった。
時に、西暦208X年__次元世紀00XX年。幾千の年を重ねた一つの惑星文明圏が、脆くも崩壊した。
era2の幕開け
文明がほぼ崩壊して長い年月が経った。
残された遺物は数限りなく、
小舟の墓場などが現れた。
核、気候の変化によって生物達は急激かつ多様な変化を強いられていた。
人間の中には外形が変化し、寿命が異常に長くなった者も少なからずいた。
彼らは自らの異常性を認識し、孤独に暮らすことを選んだ。
物資の流通は完全に途切れ、全てのものが半固定された状態となった。
人間も例外ではなく、あるものは植物が異常に繁茂した地域に逃げ込み、あるものは砂漠地帯で生活し、
またあるものは旧都市部の瓦礫の中で命を繋いだ。
その中でも徐々に連帯意識が生まれて、思想が誕生した。
都市部の残骸の中からは、また新たな人類の隆盛を望む復興論が。
自然の驚異に晒される島国からは、このままの均衡を保つ融和論が。
そして、植物繁茂の地域からは、神の存在を絶対的なものとする唯神論が。
南方の温暖化に伴う水位上昇の影響は各地に広がり、留まりを見せた。
era1から続いていた
悪魔の襲来もあったが、復興の芽は着実に芽吹いていった。
……幾百、幾千の昼と夜が過ぎていった。
暫くして、生き延びた者達は、地球という星が死に絶えていないことに気付いた。
消えたものは、余りにも多かった。
栄華を誇った文明は、僅かな残骸を遺すのみとなり、それを継ぎ担うべき命は、その殆どを失っていた。
残った者も、放射線を浴びた食物や水を糧としながら、その身体を蝕まれつつあった。
世界を滅ぼすと言われた炎の衝撃は、惑星の地軸の傾きをより小さくし、
気象システムに異常を生じさせ、本来あるべき気候を大きく変動させた。
北半球では寒冷化が進む一方、南半球への日照量の増加によって、南極大陸を中心とする地域からは氷雪が消え、温度が上がり始めた。
赤道帯では海水温の激しい上昇が起こり、其処を起点として地球上に発生していた大気現象は、その様相を変え始めていた。
また、生き残った命の間には、ある奇病が蔓延していた。
気管を通じて体内に入り込むと恐ろしい勢いで増殖・体内転移し、全身を苔の様なもので覆い尽くすそのウィルス病は、
少数の先天的耐性を持つ個体以外を、容赦無く駆逐していった。
まともな医療設備もない状況下に於いて、これを人の手で押し留めることは、到底出来るものではなかった。
しかし他方で、それらを凌いだ者達は、世界の変貌を見た。
急速に伸びていく木々。浮沈を繰り返す大地と海。空に浮かぶ虚構の異星。そして、それらへ適応する生物。
生き残りから生まれた次世代の生命は、既に、核汚染などの異常環境にさえ耐え得る進化を遂げていた。
或いは、それは、種を保存する為の本能が引き起こした、有り得ない現象だったのかもしれない。
しかし、その御蔭で彼らは、新たな世界で生きていく為の能力を得たのだ。
人に於いては、それは、新人種の誕生という形で現れた。
被爆地に程近く、強い放射線に晒され続けた者達は、その体格を縮小すると共に体組織の密度を高め、
全身の体毛を増やす事で、被曝の影響を体表面に押し留めようとした。
結果、そうした人々は極めて筋肉質で小柄な身体に、見事な髭を蓄えた姿となって、ありとあらゆる外的悪環境に対する耐性を得た。
その姿は丁度、嘗て欧州で語られ、一般化して広く知れ渡った伝承上の存在、
ドワーフに酷似したものとなった。
翻って、極めて放射能汚染の少ない地域に生きていた人々は、その地に芽生え始めた、
深く高く生い茂る樹々……
オールグリーンの中に身を埋める内に、其処で生きていく為に適応し始めた。
光の無きが故に色素が薄くなり、視界の通らない森の中で音を聞き取る為に、耳介は大きくなっていった。
そして、
オールグリーンから溢れ出る、意志に反応する摩訶不思議なエネルギー、
マナと後に呼ばれる様になるそれに触れ続けた結果、
彼らは、それを取り入れる為の器官を発展させた。
こうして生まれたのは、マナに親しみ、白磁の如き肌、金の髪、高い耳を持つ人間。
美しい妖精の代名詞としての
エルフと、瓜二つの姿を持つものである。
それ以外、上記の様な極地に置かれなかった
人類種にも、変化はあった。
外観こそ大きく変わらなかったものの、体内の構造は、放射線の被害を抑える様に、僅かながらも大きな変化を起こした。
放射線によって遺伝子を破壊された細胞をいち早く捉え、異常が他の細胞に侵食する前に完全に消去する、
極めて能率的且つ効果的な免疫システムを構築し、汚染された世界に生きていく為に、自身の身体を適応させていった。
また、この他にも、人類の眷属が居た。
太古の昔に人類から分節し、歴史の陰に日向に、人と交わり人と遊び、人と生きてきた
小さきもの。
科学の発展に伴い、自然を屈服させ、異種族を排斥する本能を強めた人間を見て、姿を次第に消していったもの。
各地に侏儒伝説という形で痕跡を残してきた小人が、再び世界に姿を見せ始めたのだ。
彼らはといえば、世界の滅びの後、放射線の雨に耐えられる程その小さな身体に発展の余地が存在しなかったことから、
各地の非汚染地域に密集して、それまでにも増して細々とした暮らしを続けていた。
しかし、そうした場所には当然、周辺の人間達も安全を求めて集まってくる。
結果、多くの小人達は、云百年ぶりに人と再会し、共に暮らしていくことを選択した。
それが広まるに連れて、小人という存在は、さして珍しいものではなくなってきた。
更に、小人が世界の表舞台に登場した事は、また新たな流れを生んだ。
彼らは、遥か遠い先祖から、代々
とある技術を受け継いできた。
それは、
超能力?と呼ばれるものであった。
本来それらは、歴史の裏に潜み続けた小人以外には扱えようもないものであったが、新たに生まれてきたマナの存在が、状況を変えた。
意志によって随意に操ることが可能なエネルギーは、それを用いた新しい形の超常現象の行使方法を創出する事に繋がった。
その非力矮躯を補う術を常に求めている小人達は、瞬く間にマナを使って魔術の再現を行う術を見つけ出した。
それはやがて、小人にも増してマナとの親和性の高い
エルフにも伝わり、体系化・発展を重ね、
その他の種族にまで広がって、何時しか、科学にも並ぶ一つの大きな力となっていった。
しかし、こうして変容を遂げたのは人だけではない。
多くの動物達も、その姿を、そして体の仕組みを変貌させ、新たな世界に適応する為に進化した。
特にその中でも、著しい変化を遂げて、一般的な進化の過程を外れた存在は、正しく怪物と称するに足る程の力を持っていた。
嘗ての文明の言葉から、これらの生物の内、特に敵対的なものを指して、人々は
魔物と呼んだ。
加えて、生物の中には、人に近しい姿に進化したものもあり、これらは、脳容積の増大に伴って知能の発達が著しく、
人類との交渉の余地が生まれたのと同時に、敵対した場合の脅威が跳ね上がっていた。
此方は、人と化した魔物、という意味合いから
魔人と称され、
魔物と同等か、或いはそれ以上に危険なものとして、人々に恐れられ、その生活を脅かした。
そして、破滅の前から、唯一不変を保つものが一つ。
悪魔である。
この異形達は、文明が一度消え去った後にも地球上の各地に出没し、
生き残った生命を殺戮する事は、以前と全く変わらない有様であった。
混迷は、未だに続く。
文明は滅び、然れども星は生き延びた。だが、その先に続く未来には、安息だけがあった訳ではなかったのだ。
era2の発達
さらに時間が経ち、文明は僅かに、だが着実に以前の様相を取り戻しつつあった。
都市部の残骸は以前の技術のベールを削り取ることに全力を注ぎ、復興論は
ソレグレイユと言う国家を組み立てるまでになった。
ソレグレイユから離脱を決意し、海を越え、旧ソルグレイユと呼ばれる部族を立てたものも少なからずいた。
彼らは以前の文明(海洋尖塔
ム・パージル)を探し当てることに全力を注ぎ続けた。
融和論は根強くはびこり、
久平と言われる中立国家群を形成するまでになった。
彼らは領土も狭く、技術後進国と
ソレグレイユ陣営からは見なされていたために、侵略に発展することは無かった。
唯神論は
オールグリーンとなった地域に遍く広がり、かつて無い隆盛を見せた。
悪魔襲来に対する各思想の区別が出た。
ソレグレイユは悪魔を忌避するものとし、完全に殺すことを絶対とした。
彼らにとって重要なのは旧文明の再興であって、昔から頭を悩ませてきた悪魔との融和ではなかった。
久平の対応は穏やかなものであった。彼らは出来るだけ悪魔をきづつけないような方法を模索し続けていた。
破壊衝動を他のものに向けさせる、網で絡めとる――原始的なやり方ではあったが、技術が進むにつれ、久平の自己防衛能力は高まっていった。
ユグドラシルのものは他の二つとは全く異なっていた。彼らは突然変異の人間(
エルフ)を擁しており、悪魔は神の力の源泉と考えていた。
彼らは悪魔の研究に没頭するようになり、
イズの古小屋の知恵を借りて、それとの融合を求めた。
era2の終結
そして、世界の大半が『
ソレグレイユ』『
ユグドラシル』『久平』と言う三陣営に組することになる。
ソレグレイユは残っていた遺跡の解読調査を行い、遥か昔に起こった
大絶滅の情報を手に入れ、それを公開する。
他陣営はそれに驚愕し、そして
オルケインと言う場所を持って、追悼式を行う。
オルケインに建てられた記念碑と供に、世界は少しづつ変容を繰り返しながら、続いていくはずであった。
しかし、
ソレグレイユの技術の手詰まり、久平が持っていた大量の遺跡情報の公開、
そして
ユグドラシルが奇跡の技とも称される、
魔法を発明すると時代はera3に突入する。
era3の幕開け
「きっと、あの国は
次元科学の開発を進めているに違いない…」
賢者イズの遺産を求めた
ソレグレイユは幾度と無く潜入部隊を送りこんだ。
が、それらの部隊が情報を持ち帰ることはなかった。
苛立ちの頂点に達した
ソレグレイユは、潜入部隊ではなく上陸部隊を送り込むことにした。
つまり、侵略戦争を開始したのである。
この暴挙を、
ユグドラシルは激しく非難、自国民の救援を口実に久平に魔導兵部隊を出兵した。
戦いは、
ソレグレイユの圧倒的有利の中で進んだ。
そもそも、文明の再興や来襲する
悪魔の研究に国力を割いていた
ユグドラシルと
貪欲に兵器開発のみを行っていた
ソレグレイユの戦力が釣り合うはずがなかったのだ。
悪魔の襲撃に対抗するため一時的に戦争は休戦となった。
さすがに人類同士で争っている場合ではなかったからだ。
しかし、その戦いの中で
ユグドラシルはある戦利品を手にした。
大量の悪魔のサンプルである。
これまでも悪魔の死体や瀕死の悪魔は入手されていたが、
ユグドラシルはそれらを研究することなく廃棄していた。
すなわち、悪魔の兵器としての利用である。
この行動を受け、
ユグドラシルは
ライクネルを包囲。皇帝
アーサーの引き渡しを求めた。
それに対し教会は、誰も想像すらしなかった方法で難を逃れる。
まさに突入しようとした大軍勢の目の前で、ロクタス大聖堂は空へと舞い上がったのだった。
果たしてどのような
魔術が使われたか定かではないが、こうして
悪魔祓い達は
ユグドラシルを後にした。
教会そのものを宙に上げることで難を逃れた
悪魔祓い達。
だが、様々な
対空術式から狙われる可能性を考え、彼らはより高く、より遠くへと飛ぼうとした。
そうして、雲を突き抜け逃避行を続ける彼らは、そこでありえない存在と出会う。
そして、この出会いこそが
第二次文明戦争に大きな波乱を巻き起こすことを彼らはまだ知らない。
『どうだ?
ユグドラシルの追撃は来てないだろうな』
『……あのー、なんかすごいものが雲の向こうにあるんですが』
『すごいもの? まさか敵か!?』
『いや、あれは……なんて言ったらいいんでしょうか。とにかく、すごいもんです』
―――教会の見張りを努めていた、C級
悪魔祓いとその上司の会話
新生土地誕生に立ち会った者は既にこの世には居らず、当時の事は子孫達の間では神話として語り継がれていた。
雲の上に昇った
ウラノスの住人たちにとって、地上の存在などそれこそオトギ話のようなものとして扱われ、
今までその存在が知られることはなかった。
そして、天空での悠々とした人生を送っていた最中、彼らはありえない存在に出会うこととなった。
『正体不明の大型物体を捕捉! 第弐戦闘配備、急げっ!』
『何があるんだ? 悪魔なのか!?』
『いえ、悪魔の反応はありません。ですがこれは……建造物か?』
『ならば同胞なのか? はやくモニターを出せ!』
―――警備塔指令室での司令官と索敵員の会話
最終更新:2022年08月31日 22:38