ふたば系ゆっくりいじめ 1238 風の流れる街

風の流れる街 35KB


虐待-普通 制裁 観察 悲劇 自業自得 家族崩壊 駆除 野良ゆ 赤ゆ 子ゆ 都会 現代 独自設定 羽付きシリーズ


「風の流れる街」


羽付きあき

 ・人間視点とゆっくり視点が混ざっています
 ・観察物
 ・独自設定を幾つか混ぜております

春も目前と言ったこの季節。最後の寒波も終わり、肌寒くもあるが暖かい風が時折吹くような風が頬を撫でていた。
・・・ゆっくりにとって厳しい冬はもうすぐ終わりを迎え、暖かな春、ゆっくりとした夏。そして秋へと季節は緩やかに揺れ動いていく。
街にも四季はある。街ゆっくり達も当然それぞれの季節にそれぞれやるべき事があるのだ。

私はこれまで幾度も疑問に思っていたことがある。
それはこの季節になるとふと記憶の奥底から微かに頭をよぎるのだ。
この街では、いや、どこもそうらしいが街ゆっくりは山野に行くことがない。
よくあることだが、山野のゆっくり。特にドスが無計画にゆっくりを増やしに増やして山や森がそのゆっくりの分まで賄える恵みの限界が来たときに、その場所を捨てて別の所に移動したりする。
・・・そんな群れはあっという間になくなる。人が手を加える間もなくゲスゆっくりが増長して、またはドスにかかる負担が大きすぎて・・・または他の山の群れのドスとの縄張り争いに敗れ、様々な理由で数を減らし、そして消えてゆく。

だが、街にドスはいない。いたとしても山野で見かける2~4mもあるような大型なものではなく。せいぜい80~120cm程度。
ドススパークやゆっくりオーラすらも使えない。ただの大きいだけの饅頭が極稀に現れては「まちのけんじゃ」を自称するぱちゅりーの甘言に乗せられ、どこかに乗り込み、あっという間に駆除される。
ましてや群れ等街のゆっくりは殆ど作らない。多少例外はあり、「地域ゆっくり」として纏まっている所もあるが、そこはちゃんとすっきりをコントロールしたりして決して貪るだけ貪るような事はしないのだ。
ドスを見た事がない街ゆっくりですらも餡子の奥底に記憶があるのか「ドスと森」についてどこはかとなく知っている節があるようだ。
街ゆっくりからすればドスが治める楽園の様なゆっくりプレイスは魅力的なはずだろう。
痛んだ何かを食べてカビで溶ける事もなく、夏場は照り返しと直射日光でカピカピの乾燥饅頭になる事もない。
車に踏みつぶされ、鬼意山に叩き潰され、身を切るような寒さにおびえ、汚れからくるカビに怯える。
それなのに決してこの街から出ようとはしない。・・・逆に考えれば街ゆっくりはここでしかその居場所がないのだ。

・・・反対に山野から街に入ってくるゆっくりは極端に多い。
往々にして春に入ってくるそれらのゆっくりは「とかいは」「ゆっくりできる」と言う幻想を抱いてやってくるらしい。
ありす種の様に「とかいは」に対して強い関心を持っているゆっくりならば尚更魅力的に映るのだろう。
多少想像ではあるがこういった感じだろうか?
毎日毎日、見慣れた場所で見慣れた事をするだけの日々。
ドスがいかにゆっくりできると言っても、いざ上に居ればうるさいだけだ。
すっきりの時期すら決められ、食料はその半分をドスの洞窟に入れなければならない。
いざという時のための食料なんて言っているが、今の今までそんな事は起こった事もない。
そのくせ、冬籠りは各々で勝手にやれという。冬は一歩も出れないというのに洞窟の食料はどうやって配られると言うのか。

そんな山野にゆっくり達からすればとても自由で、驚きと「ゆっくり」にあふれた街というのはかなり「とかいは」なのだろう。
ドスや群れに嫌気がさした、またはもっと「とかいは」で「ゆっくりとした」場所に行きたい。
そしてこの街という舞台に舞い込んでくる。そう、まるで光に集まる虫達の様に。
あと少しでそんな山野のゆっくり達がやってくる。その前に少し変わったゆっくりを見た。
私があの時、羽付きと見たのは「とかいは」な幻想に導かれて街から出て行こうとした一体のありすの顛末である。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

街ゆっくりに厳密な越冬はない。
冬でも食料を探しにこうと思えば行けるし、出歩いても雪に埋もれて溶ける・・・なんて事は殆どない。
なので春を前に控えた季節にもなると結構なゆっくりが少し早めに越冬を止めて活動を開始する。
羽付きや「地域ゆっくり」は越冬など全くせずに冬の間はずっと街を歩き続けている。羽付きも例外ではなく、その脇で他にも色々と仕事をこなしていたようだ。
街で越冬のために籠るメリットはハッキリ言って薄い。だがゆっくりは四季のサイクルの中にそれを定義づけている。受け継がれた遠い山での記憶なのだろうか
公園の中に入ったあたりであろうか?一体のありすが羽付きと私の前にボヨンと跳ねてやってきた。

羽付きが明らかに怪訝そうな顔をしている。私もでいぶやゲスの類かと勘繰っていた最中、そのありすは口を開き始めた。
「ゆ、ゆっくりしていってね!」
羽付きの顔がピクっと微かに動いた。何か遠い昔の嫌な思い出でも思い出すかのように。
「・・・ゆっくりしていってね」
「ま、まりさ。ゆっくりありすのおはなしをきいてちょうだい!」
ありすが声を上げる。ゲスやれいぱーの類ではないようだ。だが・・・
「いやだぜ」
羽付きが一言呟くように言った。
それを傍目に見ながら私は思う。
羽付きがありす種に対して何らかの過去があるのはわかるが、話も聞かずに突っぱねるのは今まで見たこともなかった。
そう思っているとありすは羽付きにすり寄り、こう切り出し始める。
「す、すーりすーり!まりさはとってもとかいはね!ゆぎゃっ!」
すーりすーり、それはゆっくりにとってコミュニケーションの一種だ。だが、初対面のゆっくりにするにはあまりにもなれなれしすぎる。
普通のゆっくりなら良い顔はしないだろう。だが羽付きの態度は明らかに過剰であった。

「さわるな!!」

羽付きがすーりすーりをするありすを体当たりで弾き飛ばしたのだ。
ありすはコロンと一回転回って吹っ飛ぶ。カスタードクリームを少し漏らしたがそれでも羽付きに媚を売り続ける。
「と、とかいはなまりさにおねがいがしたいの!はねのついたまりさはとってもとかいはだってきいたから…ゆ!?」
「とかいはとかいはってさっきからうるさいんだぜ!いきなりすーりすーりをするようなありすにするはなしなんてないんだぜ!」
・・・かなりイラついているようだ。確かに明らかにこんな下手に出られた上に馴れ馴れしくされれば怪しむ以前に怒るだろう。
だが、流石に見かねたので私が羽付きに声をかける。
「やりすぎじゃないかい?話だけでも聞いてあげたら・・・」
それを聞くや否や羽付きは声を荒げて私にこう反論した。
「こんなありす。はなしをきかなくてもなにがもくてきかわかるんだぜ!どうせしょくりょうめあてで"ありすとずっといっしょにゆっくりしようね"ってすりよるかにんげんさんにとりいってありすをかいゆっくりにしてねだとかそんなはなしだぜ!もううんざりなんだぜ!そういうことはっ!」
「違うかも知れないじゃないか。そんな目的ならとっくに別の所に行ってるだろ?羽付きはゆっくり同士の話も聞いてるって言ってたじゃないか」
それを聞くと羽付きは帽子を目深に下げて暫くじっとしていた。その動作で冷静さを取り戻そうとしているかのように私の目には映った。
やがて上を向くとありすにこう言った。
「・・・さっさとこびをうるまえにまりさにはなしをするんだぜ」
ありすの顔が明るくなる。そして話を始めた。
ありすの口から飛び出した言葉は、私の常識を覆すものであった。
「あ、ありすを・・・ありすをとかいはなどすのいるやまにつれていってほしいの・・・」
「どすの?」
「そ、そうよ・・・ありすはまえはぎんばっじのかいゆっくりだったわ・・・でも・・・」
ありすの寒天の両目から一筋の砂糖水の涙が零れ落ちる。
詰まりながらも説明を続けた背景にはこんな話があったと言う。

曰く、このありすは銀バッジのゆっくりとしてとても「とかいは」な毎日を過ごしていたらしい。
しかし、人間さん(飼い主の事だろう)のために毎日「とかいはなこーでぃねいと」をしてあげたのになぜか怒って捨てられてしまったそうだ。
街ゆっくりになった後、とあるまりさと番になり、4体の子ゆっくりが蔓から落ちたとありすは言った。。
子まりさ二体、子ありす二体と言った構成で、とてもゆっくりとしたとかいはな毎日を過ごしていたらしいが、それも冬の前までの話だったという。
ある日、まりさはあぶれゆっくりの居る餌場に行ってしまい、以降戻ってくる事はなかったという。唯でさえありすが狩りに行かない上に子ゆっくりが四体と言う負担が起こした悲劇であった様だ。
・・・ありすの主観が強すぎるため掻い摘めばここぐらいまでしかわからない。

多少の創造での保管も入れるならば、恐らくこのありす、あまりよくない銀バッジだった様だ。
よくある話だが、ありす種と言うのは「こーでぃねいと」という概念がある。
ゆっくり視点でゆっくりできる場所に作り替えるというものだ。
ありす種の場合はそれが特に顕著で、よくわからないガラクタを飾りたてたりすると言われている。
「にんげんさんのためにとかいはなこーでぃねいと」と言って家中のものをひっくり返したりするありす種の話はよく耳にする。
金バッジともなればそれが迷惑な行為だとわかるが、それ以外ではその事がそもそも理解できない(理解できるならすでに銀バッジ試験の前に教えられている)
なので、その筋で捨てゆっくりになってしまったんだろう。
最近のバッジシステムは結構いい加減なので銀バッジは特に上と下の差が激しいのだ。
慣れない狩りも手伝ってかどんどんジリ貧になっていったありす達は恐らく飼いゆっくりだった頃に聞いた「とかいはなどすのいるやま」とやらに活路を見出したというわけだ。

だが、私はありすのその言葉に驚いた。
そもそもこの街から外に街ゆっくりが出た事はない。
逆はあってもそれ以外はあり得ないのだ。
街ゆっくりは餡子の奥で秘かにわかっているのかもしれない。自分達が街でしか生きていけないという事を。

「どすのいるやま?にんげんさん、このちかくにどすがいるやままでいったいいくらぐらいあるんだぜ?」
羽付きが目だけを動かしてそう問いかけた。
私はざっとではあるが答える事にする。
「大体40kmぐらい。この街の端から端まで4つ分ぐらいだね。」

・・・羽付きはその言葉聞いて暫く考えこんだ。無理だという事はどんなゆっくりでもわかる。
・・・ゆっくりが長距離を移動する手段は大体が三つある。うーぱっく、すぃー、群れでの移動だ。
一番最後は論外だとして、うーぱっくはどうか?うーぱっくの速度は遅い。その上それ相応の食料が必要になる。うーぱっくに渡す分と自分の分を考えても現実的には無理だろう。
と、なると最後に残ったのはすぃーによる移動しかないが・・・
すぃーはスピードも速く、この街の端4つ分ならまっすぐ走っても10日程度で移動できるはずだ。
だが、問題はある。自分も人間さんもドスのいる山の正確な位置を把握してはいないし、態々行く義理もないのだ。「とかいはなどすのやま」なんて言っているが。
ドスまりさの群れがあった所で入れてくれる保証もない。どう考えても無理がありすぎる。
それにありす一体ならまだしも子ゆっくりが四体も・・・と来たものだ。
可能性は限りなく低いがありすだけならまだたどり着くかもしれない。ギリギリ考えても子ゆっくりは一体が許容範囲と言ったところだろう。
ならば言う事は一つだ。それに自分はありす種とあまり関わりたくはない。

「はっきりいってむりなんだぜ。ありすだけならまだしもおちびちゃんはどうするつもりかぜ?つれていけてもせいぜいいっこ・・・」
自分の言葉を遮るようにありすが口を開いた。
「じ、じゃあ、いちばんとかいはなおちびちゃんといっしょにいくわ!」
・・・何を言っているんだ?このありすは
頭がありすの言葉を理解するのに数瞬かかった。
人間さんの顔をちらっと見る。表情はあまり見えなかったが驚いてはいるだろう。
バッジ付きのゆっくりが子ゆっくりを踏み台にするような事は殆どない。「ゆっくりする」事に重点を置いて考えるからだ。
「・・・ほんきでいってるのかぜ?あとのおちびちゃんはどうするつもりなのかぜ?」
「で、でもしょうがないわ!とかいはなどすのところにいくには・・・」
このありす。子ゆっくり一体を連れていけて成功率は100パーセントと思っている様だが・・・
先にも言ったように100なんて夢のまた夢。せいぜい10回に一回と言ったところだろう。
それに街ですられみりゃやふらんが郊外からやってくるというのにこの街の外に出ればどうなるかの想像もつかないのだろうか?
雨だってあるし、捕食種の襲撃だってありうる。それほど過酷を極めるというのに・・・
それにドスまりさやその群れが受け入れてくれる保証がない。

「どすのところにいけたとしてもむれにいれてくれるほしょうはどこにもないんだぜ・・・はるになるまえとはいってもこのじきにほうりだされればおちびちゃんたちはどうなるのかわかってるのかぜ?」
「あとのおちびちゃんだってとってもとかいはなおちびちゃんよ!かならずとかいはなゆっくりになるわ!」
・・・本気で言っているのか?本気で子ゆっくりが「とかいは」なゆっくりだから大丈夫なんて思っているのか?

"まりさとありすのおちびちゃんだよ!きっととかいはでゆっくりとしたゆっくりになるよ!"
"ゆ!なかないでね!おぼうさんがなくてもおちびちゃんはとってもゆっくりできるゆっくりだよ!"
"ほんとうだよ!おちびちゃんはいつもゆっくりしているからかならずくるよ!だからなきやんでゆっくりしていってね!"

不意に自分の言葉がよぎった。それを聞いて確信する
そうか、このありすは・・・

「・・・わかったんだぜ。すぃーはこっちがよういしておくからいちばん"とかいは"なおちびちゃんとしょくりょうをもってくるんだぜ」
人間さんが怪訝そうな顔で見つめている。当り前だろう。ギブアンドテイクも見込めないありす相手にここまでする必然性がないからだ。
だが、自分には理由ができた。

このありすは、昔の自分にそっくりなんだから。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日の明け方・・・

「ゆゆ?おきゃあしゃん?どうしちゃにょ?ありしゅはまだしゅーやしゅーやしたりにゃいわよ?」
「・・・おちびちゃんゆっくりきいてね・・・これからありすとおちびちゃんはどすのいるとかいはなばしょにいくの」
「ゆ!どしゅ?どしゅはちょっちぇもゆっきゅりできちぇちょかいはだわ!」
「すぃーさんをよういしてあるの、おちびちゃん、いまからおかあさんのくちのなかにはいるのよ」
「ゆゆ?ほきゃのいもうちょちゃちは?」
「・・・あとでついてくるわ。まずさきにどすのいるゆっくりぷれいすでおうちをこーでぃねいとしてからじゃないととかいはじゃないでしょ?」
「ゆ!しょうぢゃわ!いもうちょちゃちがちょかいはにゃゆっきゅりににゃるちゃめにもこーでぃねいとがいきちょどいたおうちはひつようなんぢゃわ!」
「ゆっくりわかったらありすのおくちのなかにはいるのよ」
「ゆっきゅりわかっちゃよ!」

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


・・・あれから三日が経った。
「ゆゆーん!ちょかいはにゃありしゅちゃちのおぢょりをみちぇにぇ!ちょかいは~ちょかいは~♪」
「ゆ~ゆ~♪」
「あまあまをおいちぇいきゅんだじぇ!ちゃくしゃんぢぇいいんだじぇ!」

寒い風が吹きすさぶ道路の端で、帽子を一個だけ置いて子ゆっくり三体が踊りやお歌を歌っている。
見ればわかる。あのありすの子ゆっくり達だ。
風貌は以前より小汚くなっている。小麦粉の皮のハリやつやもない。その状態から見るに、この三日碌な食糧も口にしていないのだろう。
子ありすがクネクネと小麦粉の皮をくねらせながら踊っている。その脇で子まりさ二体が体をくーねくーねさせながら音程も何もない歌を歌っているのだ。
声だけは元気だがそれも空威張りと言った所か?
・・・あれからありすの行方は知らない。

すぃーにありったけの食料を詰め込んでそのまま朝日とともにこの街へと出て行ってしまった。
ドスまりさの群れに迎え入れられ「とかいは」でゆっくりとした毎日を送ると思っているんだろう。
好きなだけ食らい、好きなだけ跳ね、好きなだけゆっくりする。
そこには捕食種も車も何もいない。ドスが守るゆっくりプレイス。

・・・自らの子ゆっくりを容赦なく切り捨てたありすにたどり着けるはずがない。それにその資格もないだろう。
この街を出ようとしたゆっくりがどうなるか。前例がなかったわけではない。
嫌と言うほど自分は知っている。「とかいは」という言葉を便利な何かの様に使うようなありすはどうなるのかも、街を出て行こうとしたゆっくりの末路も。

「羽付き、あのありすはドスの所に行けるのかな?」
人間さんがふと自分に聞いた。
「むりにきまってるんだぜ。もしついたとしてもどすのむれにいれてもらえるわけがないぜ。それにあのしょくりょうだけじゃもたないんだぜ」
そう、絶対に「辿り着けない」
この街に流れてくるゆっくりは、「ゆっくりする」という言葉をどこまでも追求した結果身を崩してここに入ってくる。
自分は「みんながゆっくりすればゆっくりできる」と言う蜃気楼の様な言葉で、そしてこれから山から下りてくるゆっくりは「すきなだけゆっくりできないむれ」から「ゆっくりしてとかいは」な新天地を夢見て
この街にやってくるのだ。
試しに出て行こうとすれば良い。と自分はいつも言う。この街ですら「ゆっくりできない」と言っているのだから山野に下った所でそんなゆっくりはずっとゆっくりできないだろう。
ましてやドスの群れでとかいはな毎日を過ごす・・・と言っているがしなければならない事は山もここも変わらない。食料を自分で集め、越冬に備えて「おうち」を補強する。すべてドスがやる訳ではないのだ。
人間さんがこっちを見て口を開く。
「それを知ってて?」
その一言の中にはいろいろな意味が含まれているんだろう。色々と言いたいが、なぜか一言しか言葉が出なかった。
「・・・そうだぜ」
そう、「とかいは」なんて甘言を囁いて子ゆっくりを放り出すようなゆっくりに少し嫌気がさしたのだろう。
こんな宙ぶらりんな事をするのに、理由はそれしか思い浮かばなかった。

「・・・わかった」
それを聞いたきり人間さんは黙りこくってしまった。
子ありす達の歌声は春目前の空にか細く鳴り響いている・・・

「ちょ~かいはな~あ~りしゅ~を~ゆ~っくり~♪」
「だじぇ~だじぇ~♪」
「あまあまをおいちぇいくんだじぇ!」

ふと見ると、子ありす達が一人の男の前に進路をふさぐように並び歌を歌い出した。
業を煮やしたのだろうか?
ソフトボールほどのサイズの子ゆっくり達。それもバッジも何もないし、飾りだってボロボロ、それに見てくれだって良くないゆっくり。
誰から見てもそこらの街ゆっくりにしか見えないだろう。
男は舌打ちをしながらバツが悪そうに口をゆがめると子ありす達に対してこういった。

「どけ」

・・・随分と優しい人の様だ。
自分は少なくともそう思う。
誰がどう見たって山から街に入ってきて、離散した子ゆっくりの片割れか何かだと思うだろうに。
「ありしゅのときゃいはにゃおうちゃをきいちゃらあまあまをおいちぇいきゅのよ!」
「「おいていくんだじぇ!」」
流石に膨れはしないが中々不遜な物言いだ。
・・・無理もない。「いちばんとかいはなおちびちゃん」はもういないのだから、そしてそれを止める親ゆっくりすらも。
それにあのありすが言っていた話のかぎりではこの子ゆっくり達が教わったのは街で生きる術ではなく、ただ単にありすの自己満足の「とかいは」な振る舞いだけだろう。
男の口の端がつりあがった。笑っているそれではない。不快な何かを耳にしたり、目にしたりした時の表情といった感じだろうか。
男は片足をつま先立ちの様に上げて一気に振った。
子ありすを中心に左右に子まりさがいるという感じの配置であったが、その内の右側の子まりさが小麦粉の皮が捲れるんじゃないかという勢いでつま先にのめり込んで吹っ飛んだ。
「ゆびょっ」
「「ゆ?」」

子ありすと残った左側の子まりさが対応できぬまま遅れて言葉を出した。
右側の子まりさは電柱にぶつかりそのままポトリと落ちるとブルブルと震えたまま突っ伏していた。
か細く「ゆ”・・・ゆ”・・・」と言う声が聞こえるのが自分の耳に聞こえる。
小麦粉の皮がのめり込んだ形のままでどういった状態なのかはここからでははっきり見えないが、辺りに飛び散った少量の餡子と砂糖細工の歯を見る限り強い衝撃を受けたようだ。
子ありすと子まりさが大きく口をあけて砂糖水の涙と涎をまき散らしながら、凍りついた状況から再び動き出した時間の中で叫び始める。
「ありぢゅのいもうぢょがあああああああああ!!」
「ゆんやああああああ!!」
残った子まりさと子ありすが近づき、舌を伸ばしてぺーろぺーろを始める。
「ゆっきゅりなおるのよ!ぺーろぺーろ」
「ぺーろぺーろ!」
「ゆ”ぅ"ぅ"・・・ぃだぃ・・・ぃぃ・・・ばりぢゃの・・・ばっ!?」
「「ゆうう!?」」

必死にペーロペーロを続ける子ありすと子まりさ。
だがそれを遮るかの様に男のつま先が深々と子まりさの口の中に突き刺さった。
「ぁ…ぎ・・・ぁ"ぐぅぅ・・・」
小麦粉の皮がブチブチと真横に二つに裂けていく。子まりさは寒天の両目からボロボロと砂糖水を流している。
男がつま先をひねった、見た限りで左右に2~3往復ほど。
「ぁ・・・ぁ”ぁ”ぁ”ぉ”ぉ”ぉ”お”お”お”お”お”お”お”ごぐがぁ"ぁ"ぉ”ぉ”ぉ”!!!」
ミチミチと言う音が聞こえると同時に子まりさがグネグネと動き始めた。
底部だけがぷりんぷりんとメトロノームの様に動くが一向にどうにかなる気配ではない。
「きょにょいなぎゃもにょおおおおおお!ゆっぎゅりばなじぇえええええええ!!」
「ゆ!ゆ!ばりじゃはぢゅよいんだじぇええええ!だがらばなずんだじぇええええ!」
残った子ありすと子まりさは必死に男の足に体当たりを繰り返すが全く動じる気配はなく、ただ足がぐりぐりと回るばかりだ。
「お”・・・!お”・・・!ぉ”・・・!」
激しく底部をぷりんぷりんと動かしていた子まりさであったが、餡子が漏れるたびに動きが鈍くなっていき、やがては完全に裂け饅頭となって地面に転がった。
「ありぢゅのいぼうぢょぎゃあああああああああああああ!!ぎょんにゃにょどぎゃいばじゃにゃいいいいいいいいいいいい!!」
「ゆっぐりでぎないんだじぇえええええええええええ!!」

泣き叫ぶ子ありすと子まりさ。自業自得と言えるのだろうか?
見ているのは自分と人間さんだけ、後の人はまるでそこだけ何もないかのように通り過ぎて行っている。
男は子まりさの帽子をひょいととる。だが、それに気付いた子まりさは・・・
「ばりぢゃのおぼうじじゃんんんんんんん!ゆぐっ!ゆぐぐぐ・・・!!」
なんと帽子のつばに砂糖細工の歯を立てて食らいついたのだ。
必死に帽子を離すまいとする子まりさではあったが、そのまま男が腕を上げると、帽子に食らいついたまま持ち上がって行く。
「ごのいにゃぎゃもにょおおおお!ゆっぎゅりありぢゅのいぼうぢょをおろぢぇえええええ!」
子ありすが垂直に跳ねるがせいぜい男の膝程度までしか飛びあがれない。そのままピョンピョンと跳ねるばかりだ。
男が腕を振り上げた、そのまま帽子をかすらせるように下の子まりさだけを狙い澄まして手刀ではじく。
「ゆぐっ!?ゆぎっ!ゆぎぎぎぃ・・・!」
子まりさの小麦粉の皮がグニャリと歪み、ゴボっと餡子が食いしばった砂糖細工の合間から漏れ出た。
それでも帽子は離さない。
男はそれを続けた、一回、二回・・・と
「ゆぐっ!ゆぐっぶ!」
底部をくねらせ水飴の汗が玉の様に滴り、砂糖水の涎が餡子と一緒に落ちていく、それでも帽子は離さなかった。

男が子まりさを残った片方の手で握り始める。
「ゆぐぶぶぶっ!ゆぎぐぐぐ・・・!」
子まりさの体は丁度「▽」の様な形に変化を始めた、餡子が行き場をなくしてどんどん子まりさの寒天の両目と口が膨らんでいく。
男が力強く握りしめた。
「ゆぐびょっ!」
「あ”あ”あ”あ”あ”!?あでぃずのいぼうぢょがああああああああ!?」
子まりさの寒天の両目が飛び出し、口から餡子がドバッと漏れた。
小麦粉の皮になった子まりさと帽子がヒラヒラと地に落ちる。

男は手をふるって餡子を払い落しながら子ありすの方に近づいて行った。
「ゆ!?あ、ありしゅはちょっちぇもちょかいはにゃにょよ!いまにゃらゆるしちぇあげりゅから・・・ゆうううう!?」
子ありすの体がふわっと持ち上がる。
指でしっかりとロックするように掴まれた子ありすは小麦粉の体をグネグネと動かすが一向に効果はない。
「ばなじじぇええええええ!ぎょんなにょちょがいばじゃにゃいいいいい!!」
寒天の両目からダバダバと砂糖水を流し、しーしーもうんうんも砂糖水の涎も一切合財漏れて滴り落ちてゆく。
男が大きく腕を上げるとそのまま子ありすは地面に向けて急転直下でたたきつけられた。
「どがいばあああああびゅっ!」

前面部分・・・つまり顔から突っ込んだ形になったためか、カスタードクリームが漏れた様子はあまりない。
突っ伏したままピクピクと動いていたが、やがて底部を左右に振ってズルズルと離れ始めた。
「ゆ”・・・ぎぃ・・・ぢょがい・・・ば・・・」
自分はあのありすの表情を見る事が出来た。人間さんも同じようにみているだろう。
落ちた所にカスタードクリームに混じって丸い寒天が二つ落ちていた。
子ありすが口を開くたびにポロポロとカスタードクリームに混じって砂糖細工の歯が落ちて言っている。
どこへ行こうと言うのか、ぽっかりと空いた三つの穴からカスタードクリームが落ちていき、跡を残してズルズルとどこかへと這っていく。
「ありぢゅは・・・ぢょがいばぢゃがら・・・いぼうぢょのぶんまぢぇ・・ゆっ・・・ぎゅ・・・り・いぼう・・・びょ」
・・・あっけないほどに子ありすは自分の目の前でグシャグシャに潰れた。
男の足が振り下ろされたのだ。足が上がるとカスタードクリームと小麦粉の皮がグシャグシャになった何かがあるだけである。
男は縁石につま先を擦りつけるとそのまま何事もなかったかのように再びどこかへと歩いて行ってしまった。

・・・簡単に、本当に簡単にありすに捨てられた子ゆっくり達は潰れた。
恐らく最後までありすに捨てられたと気付かないままで。
自分と人間さんはその場所で長い間立ち尽くし続けていた・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あれから二日が経った。
羽付きに連れられ私は街の入り口に近い繁華街に足を延ばしている。
羽付きの表情は硬い。
何かあの子ありす達に考えさせられるものがあったのだろうか?

「かならずあのありすたちはもどってくるんだぜ」

そう羽付きは私に言った。
それがどういった裏打ちがあるのかはまったくもってわからない。だがこれだけは言えるだろう。
少なくともあのありすがドスのいる山までたどり着ける可能性は0だったという事だ。
・・・調べてみてわかった事だがここの近くの山にドスまりさがいたのは3年前の話。
つまり現在山にはそもそもドスまりさは存在しないのだ。
だからこそ山から街にゆっくりが入ってくるのだろう。

制限をかけていたドスまりさがいなくなったため山では爆発的にゆっくりが増えた。
いかに恵みが豊かな山と言えどもそれを上回るスピードで増えるゆっくり達に会わせられるはずもない。
当然ゆっくり達の一部(「とかいは」にあこがれている若いゆっくり等)が無鉄砲に山を下りてゆくのだ。
山に残ったゆっくりからすれば止める必要もないだろう。言った所で聞かないのだがら。
山から出ていくゆっくりの方が多いという状況の中、もしあのありすが山にたどり着けていたとしても群れに入れないだろう。
ただでさえ数が多すぎるのだから、増えてしまえばその分食料の取り分が減ってしまう。
・・・つまりはたどり着こうが着くまいがあのありすは「とかいはなどすのやま」に行く事は永遠に不可能と言う事だ。
そもそもドスもいないし、群れにも入れてもらえない。よしんば山で暮らしたとしても街のそれとはまったく違う「狩り」に対応できるはずがない。
羽付きはそれを見越した上であのありすを行かせたのだ。

ここで疑問がつく。羽付きはありすからあまあますらもらわなかったと言った。
自前ですぃーまで用意し、ありすからのあまあまは「食料に回せ」と言って受け取らなかったと言ったのだ。
なぜ損になるような事をあの羽付きがしたのだろうか?私は疑問が残ったが羽付きには最後まで聞けずじまいであった。

羽付きがふと立ち止まる。
繁華街の雑踏に紛れて聞き覚えのある声が微かに聞こえてきた。
「・・・ばず・・・っぐり・・・ざ・・・」
「どっ・・・も・・・どがい・・・な・・・おぢびぢゃ・・・でず」
近づくにつれて声はより鮮明に大きくなっていく。
そこで私と羽付きが目にしたものは・・・

「おでがいじばずっ!あでぃずをがいゆっぐりにじでぐだざいっ!あでぃずはぎんばっじのゆっぐりでじだ!でぼいながぼのなにんげんにずでられだんでずっ!」
「ありぢゅどおぎゃあじゃんはぢょっぢょもぢょがいばなんでず!ありぢゅはぢょいれじゃっでぢゃんどでりゅじおうだぢゃっでおぢゃえりゅんでぢゅっ!」
あのありすと子ありすであった。五日前より風貌はボロボロであったが・・・
飾りはなくなっており、ありすは所々砂糖細工の髪が抜け落ちていた。子ありすの方に至ってはカッパの様に中心部が丸く禿げあがっている。
小麦粉の皮は生傷だらけで、ありすの背部には縦に大きな傷ができていた。れみりゃにでも襲われたのだろうか。
道行く人々に声を張り上げてはのーびのーびをして涙とも涎とも判別できない砂糖水を流している。
なぜ戻ってきたのか、その理由は知る由もない。

「おにーざんっ!あでぃずをがぶぁぁ!」
「あ”あ”あ”あ”あ”!!おぎゃあじゃああああああああん!?」
すーりすーりをしようと近寄った若い男にありすは蹴りあげられた。
「ゆぐぎっがぁ・・・おでがいでずっあでぃずを・・・あでぃずをぉぉ・・・!」
「・・・汚ねぇな、離れろよ」

なんとありすはズボンの裾に食らいついて埃と泥にまみれた体ですーりすーりを続けているのだ。
そこまで必死なゆっくりを私は今まで見た事がない。
「離れろつってんだろ!」
「ゆっぎぃっ!ゆぐぅぅ!ゆ”!ゆ”!ゆ”!あでぃずをぐぅっ!?どがいばなあでぃずばぁっ!」
何度踏まれようともありすは一向に話す気配がない。砂糖細工の歯がカスタードクリームに混じって落ちて行っても食らいついている。
「チッ!」
「ゆぎっ!」

ズボンの裾の一部を食いちぎってありすが離れた。男は勢い余って、そのまま思いっきりありすを蹴りあげる。
「あっ!ズボンがっ!」
「ゆっぎばぁっ!」
「おぎゃあじゃああああん・・・ゆ”ぶ!?」

ありすの小麦粉の体が大きく宙を舞った。
そのまま子ありすの上へと落ちていってしまう。
グシャッと音が微かに響いたように聞こえた。
「おでがいでずううう!あでぃずどおぢびぢゃんをっ!・・・お・・・ぢび・・・ぢゃん?」
ガバッと起き上がり再び詰め寄ろうとしたありすであるが、急に後ろを振り向くとそのまま凍りつくかのように固まり出した。
ありすが見た物の先には・・・
「ゆ”・・・!ゆ”・・・!」

そこには子ありすが、口からカスタードクリームをぶちまけてドラ焼きの用に平たく潰れたままアメーバの様にグネグネと体を動かしていた。
砂糖細工の歯は飛び出して吐き出されており、その重量の凄まじさを物語る。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!?おぢびぢゃんんんんんんんんんん!?」
ありすが体をのーびのーびさせて凄まじい速さで子ありすに近づいた。
「ゆっぐりなおるのよおおおお!ぺーろぺーろ!ぺーろぺーろおおおおおおおお!!」
「ゆ”・・・!いぢゃ・・・いぃ・・・おぎゃ・・・じゃ・・・ど・・・ぼじ・・・ぢぇ・・・」
「ぢがうのおおおおおお!おぢびぢゃん!ごれはぢがうのおおおおおおおおおお!!」
必死に舌を動かしながら叫ぶありす。
だが破裂したゴムボールの様に敗れた場所からカスタードクリームが噴出しているのだ。助かる見込みはない。
「おぢびぢゃんんんんんんんんんんんんんんん!!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばっ!どがいばぁっ!どがいばぁぁっ!どがいばあああ!どがいばあああああ!どがいばあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「ぢょ・・・がい・・・ば・・・ぢょ・・・が・・・・・・い・・・ぢょ・・・が・・・ぢょ・・・ぢ・・・」
必死に「とかいは」と口にするありす、一番大事な言葉なのだろうか、少なくとも私にはなぜそんな言葉を叫び続けるのか理解できなかった。
当初はモゾモゾと口だった小麦粉の皮の部分が動いて反応していた子ありすだったが、やがて動かくなってしまった。完全にありすの手によってつぶれ饅頭となってしまったのだ。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!どがいばあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!!!!!」
凄まじい声を放って叫ぶありす。ここから聞いても耳をふさぎたくなる声だ。
羽付きはただその光景を食い入る様に見つめている。

ありすは口を大きく開けて叫びきると既にゆっくりにとってはかなり遠くに行ってしまった中年の男を寒天の両目を見開いてみるとこう叫んで凄まじい勢いで上下に体をのーびのーびさせて近づいていく。
「ごのいながぼのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!よぐもあでぃずのおぢびぢゃんをおおおおおおおおおおおおおお!!じねえええええええええええええ!!ごろじでやるううううううううううううううううううううううううう!!!ごろじでっ!!!ごろじでっ!ごろじでやるううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!」
先ほどのありすとは思えないほどの口調だ。抑えつけられた今までの怒りが爆発したのだろう。まるで鎖が千切れたかの様に。
「こーでぃねいと」は理解されず、ドスのいる山にも行けず、地を這いつくばるような日々を送った。客観的になぜそうなったのかを考えずに限界を超えたとき、それは無責任な憤怒となって現れる。
正直な話、逆上も良い所だがその気合いに気おされてしまう
だが、男はただ淡々とありすを見つめていた。
跳ねずにのーびのーびによる地面を這うようにして進む進み方でこんな速さをたたき出すありすを見て動じないのが不思議で仕方がない。
「じねえええええええええええええええ!!っぶぁああああああああ!!」
ありすが男の足に体当たりをくらわせようとした時であった。男はそれを見透かしたかのようにつま先でありすを蹴りあげたのだ。
「っゆぎいいいいいい!!ゆぐぐっ!?」
そのまま吹っ飛んだありすに近付きありすを動けないように踏みつけた。
「ぢぐじょうっ!ぢぐじょうっ!ぢぐじょうっ!ぢぐじょうっ!ぢぐじょううううううううう!!ばなぜごのいながぼのおおおおおおおおお!!」
砂糖細工の歯を食いしばり、口の端から砂糖水が微かに垂れている。それほど逆上しているのだろうか?
男はそれをまるでどうと言う事もないかのように見下ろしているだけだ。
「おい、調子に乗るなよ。そもそも勝手に突っかかってきたのはお前だろうがよ」
「だばれだばれだばれだばれだばれええええええええええええええ!!ごろじでやるうううううううう!!おばえびだいないながぼのはごろずううううううううううううううう!ごろじでやるうううううううううううううう!!!!だがらばなぜええええええええええ!!」
その言葉を聞いた途端に静かに男が足をグリッと押し付けた。
「ああ?今なんつった?なんつった?おい?ああ!?なんつったんだ!ああああ!?」
男がこめかみに青筋を浮かべてありすを踏みつけ始める。

一発で凄まじく潰れたありすは口からカスタードクリームを吐き出した。
「ゆっばぁ!ぢぐじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!ごのぐぞいながぼのがああああああああ!!ぢぐじょおおおおおおおおおおおおお!!」
まだ男に罵声を浴びせかけられるようだ。
今度はありすの顔面に足が降りる。
「ゆっぎぃぃ!」
また一発、また一発と重くそして強い衝撃がありすの小麦粉の体を襲う。
そのたびにありすはトランポリンの様に跳ねて元の形に戻るのだ。
「ゆぎゃあああああ!!ゆぎいいいいい!ゆぎょおおおおお!あ”あ”あ”あ”!!あでぃずはどがいぶごっ!!どがいばっぼ!?どがいっ!どがいばっび!どが!どごぅっ!ゆぐっ!あ”ぎょ”お”お”お”お”お”お”お”!!」
・・・砂糖細工の歯が宙を舞った、カスタードクリームが地面に散らばる。擦れるようにして小麦粉の皮が砂糖細工の髪ごと根こそぎ持っていかれる。
「・・・ゆ”・・・いなが・・・ぼ・・・」
「ああ?なんつったんだ?」
「いな・・・ぎょお”お”お”お”お”お”お”お”お”!!!???」
男の足がありすの口の中にすっぽりと入った。
踝まで入ったので中でどのようになっているかは定かではない。
真上に向いたまま男が足を激しくグリグリ動かしている
つまり中のカスタードクリームが中枢餡ごとグシャグシャにかき回されているという事だ。
「ぎょおおおおおおおおおおおおおおお!!あぎょおおおおおおおおお!!ぎぐぎゃぎぎいいいいいいいがああああああああっぎぎょおおおおおおおおおお!!あああぉぉぉおおああぁぁぁああおぉぉおおおおあああぉぉああああっぉぉおおおおおああおあおあおああああああああああっ!!っぎぃびいいいいいいいいいいいいいいい!!」
寒天の両目がタコメーターの様にグルングルンと回る。うんうんがもりもりとあにゃるから出ている。
それでも男は動きを止めない
「かっ・・・!かはっ・・・!ゆ”・・・ぎぃ・・」
やがて動きも鈍くなってありすは動かなくなってしまった。
止めとばかりにありすを蹴りあげる男。
ありすはゴロゴロと転がるとそのままあにゃるを上向きにして動かなくなった。
・・・時間にして約三分ほどだろうか、そこには小麦粉の皮が不規則に凸凹になったゆっくりらしきものがそこにあるだけだ。
あにゃるを向けて突っ伏しているためその表情はどのようなものか知る術はない。
男はポケットに手を突っ込むとそのまま歩いてどこかへ行ってしまった。
・・・これが「街を出て行こうとしたゆっくり」の末路だ。
道中で何があったのかは知らないが、そもそも方角すらおぼつかない街ゆっくりが単体で40km近くも進めるはずがない。
ドスまりさが率いる群れですら移動してせいぜい10~20kmと言うのに・・・

・・・山野のゆっくりがこの街に入ってくるのはなぜか?
それは山野のゆっくりが増え過ぎているからにすぎない。1000体単位で山から下りてこの街に流れ着くのだ。
その頃には100体近くまで減っているがそれでも多い。
だが、それが数カ月も粛々と続くのである。
それほどの過酷な道のりを経てくるゆっくりに類するものはあのありす達にはあったのだろうか?
その答えはありす達が街に戻ってきたという事実以外に他ならない。
結局引き返して戻らざる負えなかったのだ。
私は、ふと羽付きの顔を見る。その表情はどこか物哀しそうであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・温い風が「おうち」の角に当たってズーッと言う音が響いている。
その音の奥に何やら微かにゆっくりが跳ねる様な音が聞こえてきた。

「ゆ!ゆ!はねまりさ!ゆっくりおきてね!」
「おうち」の前で何やら騒がしい声がする。
もそもそと出て行ってみるとそこには胴バッジを付けたまりさの姿がそこに会った。
「どうしたんだぜ?」
「ゆゆ!このあいだいってたこゆっくりのうけいれだけどなんとかあきができたよ!」
銅バッジまりさが水飴の汗を流しながら息を整えてそう言った。
・・・だが遅い、もう遅いのだ。あの子ありすや子まりさ・・・三体の子ゆっくり達はつぶれ饅頭と化してしまったのだから。
「・・・そのはなしだけどもういいんだぜ」
自分がそういうと銅バッジまりさは首をかしげた。
「ゆうう?どうしたの?なんとかいれてほしいってあれだけいってたのに・・・はねまりさがあんなにいっしょうけんめいたのむからなんとかしようとしたんだよ・・・?」
「もうおそかったんだぜ・・・」
「ゆゆ・・・まさかはねまりさがむれにいれてほしいっていってたこゆっくりたちは・・・」
「とにかくうごいてくれてゆっくりありがとうだぜ。むりいったのにもうしわけないんだぜ」
「ゆ・・・それはだいじょうぶだよ!はねまりさにはいつもおせわになってるからできるだけゆっくりしてほしいってむれのみんながいってるよ!」
・・・結局地域ゆっくりとの付き合いも自己保身の内だ。自分がどう思っていようと周りからはそうとしか思われないだろう。ならばいっそ割り切った方が良い。
銅バッジまりさは何度もこちらを振り向きながらゆっくりと跳ねて帰って行った。
銅バッジまりさが去った後、河原に暫くボーっと立っていた。
風はまだヒュウヒュウと頬をなでている。その温い風になぜか自分は不愉快な気分になってしまうのを不思議に感じていた。

・・・群れに入れば何とか地域ゆっくりとして生活できると思って頼んではみたが結局結果は断られた。
「こーでぃねいと」の意味を履き違えているありすの子ありす、それの周りにいた子まりさは必ず軋轢が生じるようになると群れのありす達の反対があったからだ。
皮肉なものだ。ありす種のチャンスをありす種が潰したのだ。
それに今の時期は子ゆっくりを育てて地域ゆっくりとしての教育を施す時期。
途中から入られれば足並みが乱れるし、子ゆっくりの数に対してぱちゅりーの数がギリギリなのも理由の一員であった。
銅バッジまりさがなんとか頼みこんで説得してくれたのはありがたいが、かなり無理をさせてしまったようだ。
せめてあの子ありす達だけでも助けようと思ったが、何もできなかった。いや、何もしようとしなかったのだ。人間を恐れたのか、「とかいは」と言う幻想におぼれた子ありす達を見限ったのか、理由なら後で幾らでもつけられる。
あの子ありす達は助からなかった。ただそれだけの話だ。
所詮、街ゆっくりの殆どから「にんげんとつるむげす」と言われている自分がすればただの偽善なのだろうか?
・・・答えは誰も教えてくれない。

暖かい風が吹いている。あの子ありす達の存在も風に流されて行く様に忘れ去られて行くだろう。
せめて自分が最後まで忘れないでいる事が今できるせい一杯の事なのかもしれない。


過去に書いたもの


ふたば系ゆっくりいじめ 504 かりすま☆ふぁいたー
ふたば系ゆっくりいじめ 516 サバイバル・ウィンター
ふたば系ゆっくりいじめ 527 シティ・リベンジャーズ
ふたば系ゆっくりいじめ 582 ビルディング・フォレスト
ふたば系ゆっくりいじめ 587 バトル・プレイス
ふたば系ゆっくりいじめ 592 コールド・ソング
ふたば系ゆっくりいじめ 604 ロンリー・ラック
ふたば系ゆっくりいじめ 625 ループ・プレイス
ふたば系ゆっくりいじめ 632 フェザー・メモリー(前編)
ふたば系ゆっくりいじめ 643 フェザー・メモリー(後編)
ふたば系ゆっくりいじめ 690 ウィンター・ブルース
ふたば系ゆっくりいじめ 706 シティ・エレジー
ふたば系ゆっくりいじめ 1051 街を跳ねるもの達
ふたば系ゆっくりいじめ 1052 UNDER
ふたば系ゆっくりいじめ 1069 CLOUDY
ふたば系ゆっくりいじめ 1070 静寂な高音
ふたば系ゆっくりいじめ 1079 花と雨と貝殻と



トップページに戻る
このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね!
感想

すべてのコメントを見る
  • 銅バッジまりさ、普通に善良じゃね?銅バッジはゲス化する傾向が多いのに -- 2011-07-20 01:37:23
  • 羽根つきの優しさは、ゆっくり達に伝わるのだろうか…
    賢さ故に孤立してるよなぁ -- 2011-01-13 12:03:17
  • ↓反省や後悔するまで殺されなかった運のいいゆっくりでもあるな -- 2010-09-25 01:29:21
  • 失敗は人間にもゆっくりにもある。がその失敗を反省し自分を振り返ってみて
    貴重な経験として後のゆん生に生かす奴は決して愚かでも馬鹿でもない
    羽根付きはその反省ができる希有なゆっくり
    その他の野良はおおむね失敗をすぐ忘れて経験にすることができない馬鹿なゆっくり -- 2010-08-29 09:45:56
  • 馬鹿というか、、後悔したから成長したからな羽根付き。
    飼い主をゆっくりさせなかった時点で殺さなかっただけ偉いと思う。 -- 2010-08-20 21:55:16
  • 羽根つきを捨てた人間は馬鹿だ、そう思うだろう? -- 2010-08-05 01:20:44
  • 羽根つきもうゆっくりじゃないだろ。 -- 2010-07-24 16:16:15
  • ズボン食いちぎられた人間さんは優しいよね
    ゴミが身勝手な逆上をしなかったらたぶんそれ以上危害を加えなかっただろうね -- 2010-07-23 20:49:15
  • A:あわれなありすね。せっかくとかいはなこーでぃねーとをしてあげたのにすてられるなんて…
    M:やっぱりにんげんさんはゆっくりできないんだぜ。ありすにあやまるんだぜ! -- 2010-07-16 01:31:03
  • 羽付きがゆっくりらしからぬ良いゆっくりだと言う事は解った
    そしてゴミ一家マジで救えNEEEE -- 2010-07-12 02:46:38
  • ゴミが数個掃除された 珍しくもないいつもの光景です これが日常 -- 2010-07-12 00:59:25
  • 面白かった。 -- 2010-06-21 01:59:16
最終更新:2010年05月25日 15:09
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。