ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

1/6の夢旅人

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1/6の夢旅人 ◆eQMGd/VdJY


思えば、この島に来てから電車と言うものは、ずっと神宮司奏と一緒にあった。
駅まで出た事こそあれど、それより先の地を踏んだ事が無い。
まるで運命に遊ばれているかのように、この「線の上」に縛り付けられている。
しかしそれは、逆に奏の命の糸も縛り付けていたとも言えよう。
少なくともこれまで、駅の中で危険に晒された事がなかったからだ。
もっとも、一番最初の事を含めればそうとも言い切れないのだが。
つまり、駅は安全なもの。そんな考えが、奏の心の何処かにあったのかも知れない。
そしてその考えは、先程の騒動で全て粉々に破壊されえた。
奏と九郎に危険を伝えた謎の男。それを追ってきた二人の男女。
ふと、持っていたハンカチに視線を落とす。
純白で柔らかな肌触りだったそれは、真っ赤に染まり糊を塗ったように固まってしまっている。
頬に浴びたその血は、紛れも無く本物であると、奏の心へ十分に理解させた。

「血が……流れるのですね……」

刃が身体を駆け抜ければ、皮膚は破け肉が露になり、血管は刺激に耐え切れず穴を開く。
誰だってそう。あれほどに屈強そうな男ですら、鋭利な武器に傷をつけられるように。
奏は床に転がる短剣をそっと拾い上げる。刃の先端には、微かにだが赤い汁がこびり付いている。
銃の時もそうだったが、この短剣を持った時も鼓動が激しく暴れ、その度に胸が痛む。
列車の速度よりも早いように感じる、自分の大切な心臓の刻み。
と、その高鳴りを加速させる声が、車内全体に響き渡る。放送だ。
読み上げられていく誘惑の言葉。理性の外堀を埋めていく言葉。
胸を破り飛び出してきそうな心臓を押さえつけ、奏は放送に集中する。
地図を広げ、禁止エリアを丁寧に書き込んでいく。何か作業する事で、心の乱れを取り戻そうと。
だが、その作業すら許さないかのように、次の情報が車内全体に飛ぶ。
遂に死者の発表が始まるのだ。握ったペンを両手で包み、奏は神に祈る。
一人目。そこで一瞬視界が歪む。大十字九郎の探していた、自分が出会った男が死んだ。
本当に数時間前、言葉を交した人間が島から運命の糸を切り離された。
怯えが奏の全身を駆け巡っていく。知り合いと言うだけでこの有様。
蘭堂りのが呼ばれたら、果たして自分は生きていられるだろうか。
そんな気持ちなど無視するように、名前が次々に読み上げられていく。
知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。知らない。
ここで名前の読み上げが終わる。奏の緊張が一気に解け、身体がゆっくりと座席に倒れる。
もはや残りの放送を聞く気力が、彼女には残っていなかった。
集中しただけ疲労は大きく溜まり、安堵ともにそれが奏の身体を押し倒す。

(りの……良かった)

けれども、その代わりに九人の人間が死んだ。
心の底から喜ぶなどと、奏にはどうしてもできない。
仮にもし、名を読み上げられた人間の誰かが、この島でりのを助けてくれていたのならば。
そしていま、誰かの死がりのに伝わったのだとしたら、その心は傷ついているはず。
守ってあげないといけない。こんな時だからこそ、自分が支えになってあげたい。
だから心の中で強く呼びかける。この島の何処かにいる、りのを求めて。
姿勢を正し座りなおす。この島で初めて、奏は自分の力を使おうと試みた。
九郎に告げていなかった、奏の持つ力が二つある。「言霊」の存在を。
一種の洗脳と言っても差し支えない能力を、奏は好いてはいない。
この力は神宮司である証であり、彼女を運命から逃がさない「拘束具」でもある。
そしてももう一つ。いま奏が心でりのに語りかける行為が、もう一つの力。
言葉を必要としない、以心伝心の能力。
だが、距離が遠すぎるのか、それともあの神父達の言うように力が封じられているのか。

「ぁ――」

一瞬だけ。ほんの僅かだが、りのを何処かに感じた。
もちろん同じ島にいるのだから、生きていれば何処かにいるのだろう。
今はまだ会えなくても、必ず出会えると信じて。奏は祈りを込める。
そして思う。りのの為に自分に何が出来るだろうかと。
奏がいた所では、いわゆる「裏の仕事」は隠密部と呼ばれる腹心。否、仲間が処理してきた。
だがここには、その頼もしい仲間は存在しない。
かといって、奏が隠密を模倣して行動しても、上手く行く保証など皆無。
適材適所という言葉を、深く噛み締める。

「私、生徒会長さんなんですよね」

では神宮司奏に出来る事。それは、上に立つ人間として殺し合いと言うものを考える事だ。
まずこの人数を集められる力。これは恐らく単独では成し得ない。
それを可能とするならば、多くの手が必要となる。つまり人員の確保。
加えてそれを統率する人材。ホールにいた二人がそうである可能性が高いか。
あの二人の口振りから考えるに、もう一つ上の役職があるのだろう。
そしてそれは、この殺し合いを仕組んだ張本人のはず。

(どなたかしら)

組織を形成する力の一つに、ある種のカリスマ的なものも考えられる。
こんな島まで用意出来たのだ。財力も神宮寺に匹敵するか、下手すればそれより上。
また、多種多様な人間が集団となる場合、共通する目標が掲げられる。
そしてその目標の先には、何かしらのメリットが生じもの。
ここまで大きな事を引き起こしてもなお、主催者は何か得たいと考えているのだろう。
仮にそれが手に入ったとして、後始末はどう済ますつもりなのか。

(そうですよね。だったらデメリットもあるはず)

少しだけの自由を求め、未来と言う名の代償を払う奏だから思う。
どんな些細な願いであったとしても、失ってしまう何かは必ず存在するはずだと。
だが、何を代償としたかなど、奏に思いつくはずもなかった。
ここまで用意できる主催者の願いが解かる者など、主催者当人ぐらいだ。
一人で考えられるのもそこまで。これ以上は憶測が過ぎる。

「せめて、あの二人の事を知ってらっしゃる方とお会いできればいいのですが」

主催者は不明だが、少なくとも下にいる二人の人間はまだ近い。
しかも確か、あの場で神崎黎人と呼ばれる男に声を掛けた人物がいた。
名前はそう――

「静留さん……ええ。確かそんな名前でした」

もしかしたら、そこから糸口を掴めるかも知れない。
とにかく、りのや九郎と合流するまで遊んでいられない。出来る限りの事をしてみよう。
立ち上がり、両足でしっかり床を踏みしめる。胸が少しばかり熱いくらいだ。
列車の出口まで足を運ぶ。電車はいつの間にかドアが開いていた。いよいよ駅ともさよならだ。
ふと、デイパックに仕舞っておいた銃を取り出そうと思ったが、それをやめる。
武器を握れば、きっと心が飲まれてしまう。
本当に心の判断が必要になった時に、溺れて沈んだ心では何も出来ない。
だが、いつかきっと武器を握るときが来る。それだけは覚悟しておく。
列車のドアを跨ぎ、駅のホームへと降り立つ。

「あ、あら?」

集中し過ぎて気付いていなかったのか、奏のいる場所は文字通り終着駅。
本人の知らぬ間に、路線到達制覇完了した瞬間だった。




【F-2 駅のホーム/1日目 朝】
【神宮司奏@極上生徒会】
【装備】:なし
【所持品】:支給品一式。スラッグ弾30、ダーク@Fate/stay night[Realta Nua]、
      SPAS12ゲージ(6/6)@あやかしびと -幻妖異聞録-、不明支給品×1(確認済み)
【状態】:健康。爪にひび割れ
【思考・行動】
0:あ、あら?
1:自分にしか出来ない事をしてみる。
2:蘭堂りのを探す。
3:できれば、九郎たちと合流したい。
4:駅を出てアルたちを捜索?もしくは折り返して九郎と合流?
5:藤野静留を探す。
6:大十字九郎に恩を返す。
【備考】
加藤虎太郎とエレン(外見のみ)を殺し合いに乗ったと判断。
浅間サクヤ・大十字九郎と情報を交換しました。
※第二回放送の頃に、駅【F-7】に戻ってくる予定。
ウィンフィールドの身体的特徴を把握しました。
※主催陣営は何かしらの「組織」。裏に誰かがいるのではと考えています。



085:無題(後編) 投下順 087:復讐者
085:無題(後編) 時系列順 087:復讐者
062:楽園からの追放 神宮寺奏



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