へっくしゅん(前編) ◆S33wK..9RQ
へっくしゅん
「へっくしゅん!……ずずず……はぁはぁ」
寒い。濡れた衣服が服に纏わりつく。頭も痛い。結構な時間を濡れたままで過ごしている。
早く変わりの服を見つけたいがあの男、ソリッドスネークがまだここらをうろついているかもしれないのだ。
下手に移動もできない。能力を制限されてなければ時間を止めながら移動でもしているが、今、能力を如何せん体力を酷く使う。
それに疲労感も拭いきれない。息も荒くなっている。どうやら風邪を弾いたらしい。
少々心配になってきた。自分も、知り合いの事も、そして主の事も。幻想郷で暮らしている人間、妖怪は外の知識に関してはかなり疎い。
そんな状態で外の世界での『戦士』に外の武器、『拳銃』などで襲われたらひとたまりもない。
そうだ。その状況が今、私に降りかかっている。自分の能力を駆使して尚、負けてしまった。
能力の制限さえなければ私は勝っていただろう、と言い訳がましい事をを見えない誰かに呟く。
なぜこんなことになったのか。私は昨日、自分の館でいつも通り、一通りの家事をこなして、いつも通り就寝した。
それなのに今は趣味の悪い遊戯に参加させられている。
奴は、マルクは私達をどの様な方法で拉致をしたのか。……八雲紫。私の頭にその名前が浮かんだ。しかしそれは直ぐに消えた。
あの妖怪がこの催しに手を貸す筈が無い。つまりマルク自身がスキマ妖怪だろう。
奴がもしスキマ妖怪じゃないとしても、他の黒幕の妖怪がいるだろう。
それにマルクにはそんな力があるには到底思えない。奴は道化師だ。嘘も本当も交えて喋る。
果たしてその道化は本物か偽物かどうか。
「………へっくしゅん!……でもこんなこと考えてる暇は…」
無い。正直そんなことより、服が欲しい。数時間も奴に警戒しながら移動を続けているのだ。
精神力も使うし、体力も使う。濡れた状態ではさらに体力を使う。こんな状態を主に見られたら笑われてしまう。
1時間ほど少しずつ移動を続けているがまったく進まない。
草むらをを掻き分け、樹木に隠れながら、あるいは時間を1秒だけ止めて、こんなことをしていてはいつまでたっても前に進めない。
だが、そうしなければいけない。例え体力が無くなったとしても、命は必要だ。体力も命には代えられない。
木から垂れるよくわからない植物を掻き分けながら進む。そして、目の前に唐突に現れた。あの亡霊の館、とまではいかないが豪華だ。
それは旅館だった。やっと、建物は見つけた。緊張がすこし解れる。しかしだ。まだ、まだ安心してはいけない。
奴がいるかもしれない。奴ではなくてもこの遊戯に乗った人間がいるかもしれないのだ。
落ち着け。周りを確認。人影は無い。足を進めて、続いて旅館の中を確認。人影は無い。それに気配も感じられない。
受付を見ると『クツロギ温泉受付』と書いてある。寛げるから、クツロギ温泉なのだろうか。
簡単な名前すぎるだろう。なんとも面白みがない。いや、逆にあるほうなのかもしれない。
地図を見たときは温泉としか書いてなかったから旅館とはわからなかった。
……旅館なんだ。服ぐらいはあるだろう。探すか。
そう思い、また一歩を踏み出した。その時だった。爆発音。そして、壁が崩れた。壁の向こうから強い光が漏れてきた。
「…な、に!?」
その衝撃で天井を支えていた柱が私の目の前に飛んでくる。
それは、避けきれない。無理だ。顔面にそれは衝突し、私の意識はどこかに飛んでいく。
寒い。濡れた衣服が服に纏わりつく。頭も痛い。結構な時間を濡れたままで過ごしている。
早く変わりの服を見つけたいがあの男、ソリッドスネークがまだここらをうろついているかもしれないのだ。
下手に移動もできない。能力を制限されてなければ時間を止めながら移動でもしているが、今、能力を如何せん体力を酷く使う。
それに疲労感も拭いきれない。息も荒くなっている。どうやら風邪を弾いたらしい。
少々心配になってきた。自分も、知り合いの事も、そして主の事も。幻想郷で暮らしている人間、妖怪は外の知識に関してはかなり疎い。
そんな状態で外の世界での『戦士』に外の武器、『拳銃』などで襲われたらひとたまりもない。
そうだ。その状況が今、私に降りかかっている。自分の能力を駆使して尚、負けてしまった。
能力の制限さえなければ私は勝っていただろう、と言い訳がましい事をを見えない誰かに呟く。
なぜこんなことになったのか。私は昨日、自分の館でいつも通り、一通りの家事をこなして、いつも通り就寝した。
それなのに今は趣味の悪い遊戯に参加させられている。
奴は、マルクは私達をどの様な方法で拉致をしたのか。……八雲紫。私の頭にその名前が浮かんだ。しかしそれは直ぐに消えた。
あの妖怪がこの催しに手を貸す筈が無い。つまりマルク自身がスキマ妖怪だろう。
奴がもしスキマ妖怪じゃないとしても、他の黒幕の妖怪がいるだろう。
それにマルクにはそんな力があるには到底思えない。奴は道化師だ。嘘も本当も交えて喋る。
果たしてその道化は本物か偽物かどうか。
「………へっくしゅん!……でもこんなこと考えてる暇は…」
無い。正直そんなことより、服が欲しい。数時間も奴に警戒しながら移動を続けているのだ。
精神力も使うし、体力も使う。濡れた状態ではさらに体力を使う。こんな状態を主に見られたら笑われてしまう。
1時間ほど少しずつ移動を続けているがまったく進まない。
草むらをを掻き分け、樹木に隠れながら、あるいは時間を1秒だけ止めて、こんなことをしていてはいつまでたっても前に進めない。
だが、そうしなければいけない。例え体力が無くなったとしても、命は必要だ。体力も命には代えられない。
木から垂れるよくわからない植物を掻き分けながら進む。そして、目の前に唐突に現れた。あの亡霊の館、とまではいかないが豪華だ。
それは旅館だった。やっと、建物は見つけた。緊張がすこし解れる。しかしだ。まだ、まだ安心してはいけない。
奴がいるかもしれない。奴ではなくてもこの遊戯に乗った人間がいるかもしれないのだ。
落ち着け。周りを確認。人影は無い。足を進めて、続いて旅館の中を確認。人影は無い。それに気配も感じられない。
受付を見ると『クツロギ温泉受付』と書いてある。寛げるから、クツロギ温泉なのだろうか。
簡単な名前すぎるだろう。なんとも面白みがない。いや、逆にあるほうなのかもしれない。
地図を見たときは温泉としか書いてなかったから旅館とはわからなかった。
……旅館なんだ。服ぐらいはあるだろう。探すか。
そう思い、また一歩を踏み出した。その時だった。爆発音。そして、壁が崩れた。壁の向こうから強い光が漏れてきた。
「…な、に!?」
その衝撃で天井を支えていた柱が私の目の前に飛んでくる。
それは、避けきれない。無理だ。顔面にそれは衝突し、私の意識はどこかに飛んでいく。
☆ ☆ ☆
困ったものだ。鎧に掛けられている女神の祝福が消えてしまっていたとは。
自分の鎧は鉄球により凹み、砕けて使い物にならなくなってしまった。いま自分に残っているのは申し訳ない程度に残った兜だけである。
ディープスロート殿が使った方法はいったいどの様な方法だったか。それを調べる為、鉄球が飛んできた箱を調べる。
火薬の匂い、数発残った鉄球、そして鉄線に繋がれた引き金。
つまり、鉄線に引っかかると引き金が火薬を叩き、爆破される。その爆発によっても鉄球が幾つをも発射される。
それも、風よりも早く発射されるのだ。この様な物を考えるとはどの様な技術者なのだろうか。
さらに凄いのは、元々あった武器を上手く転用するディープスロート殿だ。やはりかなりの手垂れだったのだろう。
惜しい。なぜ、なぜ彼は浮かれていたのか。もし彼が普通の状況、精神状態で私と戦っていたとしたら、結果はわからなかっただろう。
しかし戦いというのはそういうものだ。油断すれば、死ぬ。
そうだ。それでいいじゃないか。彼は油断をしていて、結果、私に打ち倒された。何があったかはそれだけでいい。
だが、なにかが引っかかる。なぜ、彼は油断をしていたか。
彼は相当の手垂れだ。殺し合いという会場に急に呼び出されても、彼が軍人なら油断も慢心もしなかった筈である。
何故か。
「……拉致をした時間の違いか?」
ある考えが浮かんだ。私の最後の記憶はナドゥス城の戦いで、崩壊に巻き込まれた。あの崩壊により私は死んだ。
しかし実際は違う。あの時、ガウェインの息子、アイクと戦っていたのは確かに私だが、私の肉体ではなく、鎧と精神を送り込んだものだ。
私は死んだ訳ではなかった。そして精神が元の肉体に戻った矢先にこの催しが始まったのだ。
もしもの話だ。もし私があの時ナドゥス城の戦いで、仮初めの鎧で戦ったのではなく、生身の肉体で戦い、崩壊に巻き込まれたら確実に死んでいただろう。
そして、死んだ矢先にこの催しに招待されたら?
わたしだったら、その時は喜ぶだろうか、それとも驚嘆と疑念に駆られ野垂れ死ぬのか。どちらかはわからない。
しかし驚嘆するのは間違い無い筈だ。死んだのにまだ生きている。これほど不思議な事はない。
つまりだ。彼が、ディープスロート殿が死んだ後に蘇生されこの催しにつれて来られたとしたら?
だとしたら彼は疑念と驚嘆に塗れた事だろう。そして私に敗れた。
「……馬鹿馬鹿しい。私が御伽話の様な事を考えるとは」
そう独り言を呟き、それを否定した。人が生き返るという事は絶対にありえない。
しかし、マルクは言った。願いを叶えると。人を生き返らせると。
奴は道化師だ。道化師は嘘と真を入り交え喋り人を欺く。奴の言う事など聞く奴はいない。
もし奴が蘇生術を持っていたら?そして時間を巻き戻せたら?そうしたら私は………
「……ふん」
自分の鎧は鉄球により凹み、砕けて使い物にならなくなってしまった。いま自分に残っているのは申し訳ない程度に残った兜だけである。
ディープスロート殿が使った方法はいったいどの様な方法だったか。それを調べる為、鉄球が飛んできた箱を調べる。
火薬の匂い、数発残った鉄球、そして鉄線に繋がれた引き金。
つまり、鉄線に引っかかると引き金が火薬を叩き、爆破される。その爆発によっても鉄球が幾つをも発射される。
それも、風よりも早く発射されるのだ。この様な物を考えるとはどの様な技術者なのだろうか。
さらに凄いのは、元々あった武器を上手く転用するディープスロート殿だ。やはりかなりの手垂れだったのだろう。
惜しい。なぜ、なぜ彼は浮かれていたのか。もし彼が普通の状況、精神状態で私と戦っていたとしたら、結果はわからなかっただろう。
しかし戦いというのはそういうものだ。油断すれば、死ぬ。
そうだ。それでいいじゃないか。彼は油断をしていて、結果、私に打ち倒された。何があったかはそれだけでいい。
だが、なにかが引っかかる。なぜ、彼は油断をしていたか。
彼は相当の手垂れだ。殺し合いという会場に急に呼び出されても、彼が軍人なら油断も慢心もしなかった筈である。
何故か。
「……拉致をした時間の違いか?」
ある考えが浮かんだ。私の最後の記憶はナドゥス城の戦いで、崩壊に巻き込まれた。あの崩壊により私は死んだ。
しかし実際は違う。あの時、ガウェインの息子、アイクと戦っていたのは確かに私だが、私の肉体ではなく、鎧と精神を送り込んだものだ。
私は死んだ訳ではなかった。そして精神が元の肉体に戻った矢先にこの催しが始まったのだ。
もしもの話だ。もし私があの時ナドゥス城の戦いで、仮初めの鎧で戦ったのではなく、生身の肉体で戦い、崩壊に巻き込まれたら確実に死んでいただろう。
そして、死んだ矢先にこの催しに招待されたら?
わたしだったら、その時は喜ぶだろうか、それとも驚嘆と疑念に駆られ野垂れ死ぬのか。どちらかはわからない。
しかし驚嘆するのは間違い無い筈だ。死んだのにまだ生きている。これほど不思議な事はない。
つまりだ。彼が、ディープスロート殿が死んだ後に蘇生されこの催しにつれて来られたとしたら?
だとしたら彼は疑念と驚嘆に塗れた事だろう。そして私に敗れた。
「……馬鹿馬鹿しい。私が御伽話の様な事を考えるとは」
そう独り言を呟き、それを否定した。人が生き返るという事は絶対にありえない。
しかし、マルクは言った。願いを叶えると。人を生き返らせると。
奴は道化師だ。道化師は嘘と真を入り交え喋り人を欺く。奴の言う事など聞く奴はいない。
もし奴が蘇生術を持っていたら?そして時間を巻き戻せたら?そうしたら私は………
「……ふん」
☆ ☆ ☆
「……これは?」
漆黒の騎士の目の前には桟橋に止めてある三台のボートがあった。
橋を渡ろうと思ったが、視界にこれが入ってきたので気になって近くに来たのである。
しかし近くに寄ってよく見えたとしても漆黒の騎士にはこれがなんなのかがよくわからない。
「……一見、船に見えるがこの変わった舵はなんだ?それに帆も張られていないとは」
漆黒の騎士はこの変わった船はデイン王国、いや、テリウス大陸全体をもって尚見たことがなかった。それも当然だが。
その変わった船は漆黒の騎士の好奇心を突き動かす。
漆黒の騎士がボートに乗り込んだ。そして色々と調べる。エンジン、舵、船首…
そしてついにキーを手にかけた。どうやら廻るみたいだ。漆黒の騎士はそれを回してみる。
「…!?これは!」
竜によく似た咆哮をあげる。もはやこれは鉄で出来た竜なのか。しかし呼吸は聞こえない。
舵に手を書ける。そして前に進んだ。
「これは爽快だ。海をこうやって自由に進めるとは。しかし…」
初めてのボートだ。そして初めての運転。百戦錬磨の漆黒の騎士であってもこの異世界の乗り物は乗り回せないだろう。
ぐるぐるとその場を廻ったり、そして急に真っ直ぐに進んだり。
まるで舵を失った船だ。しかし、彼は仁王立ちをしている。舵から手を離して。
「…………やはり、慣れない物には手をださない方が良いな」
円盤に針が廻っている。ゆっくりと右に寄っていく。そして針は振り切る。それがスピードを指す物とは漆黒の騎士もわからないだろう。
やがて、船は、崖に向かって走り出した。このスピードでは大きな方向転換はもうできないだろう。
「…む、このままでは少々危険か?……いや、あれを利用すれば大丈夫か」
崖の少し手前にある岩に向かって、少し舵を切る。そして岩にぶつかる。
しかし、そのまま船は沈まずに、空を飛んだ。岩がジャンプ台の代わりになったのだろう。
そしてこのスピードにより、船はずっと高く、高く、高く、飛んだのだ。
その高さは崖を越える。
「初めての鉄の竜だが、上手くいくものだ。さて、空を飛ぶにはどうするのだろうか?この出っ張りか?」
いや、飛びませんよ漆黒の騎士さん。それは船です。竜じゃないです。
続いて、漆黒の騎士はボタンを押す。
船に取り付けられたライトが元気一杯に点灯された。
「やるではないか!魔法を使うとは!」
いや、魔法じゃないです。ただのライトです。
そして、着地地点は変わった建物。先ほどの場所はボロボロ墓場という墓地地帯だった。そしてこの近くの建物は、クツロギ温泉だろう。
そう頭の中で整理。空中で。
やがて、着地。壁を突き壊しながら滑りながら進む。漆黒の騎士は微動だにせず。
この程度で死ぬことはない。と自分で自覚しているから動かないのか。それとも本当に動けないのかどうかは誰も知らない。
「この音で参加者がこちらに来る可能性もあるがそれもいい。見事打ち倒してみせよう」
旅館が崩れる音は結構響いた。この音でこちら側に来る者は、殺し合いに乗ったものしかいないだろう。
唯の市民ならこちらの方向からは逃げていくだろう。
「……む?」
視線をしたに下ろすと、ずぶ濡れのメイド服を着た少女が居た。死んでいるのか。そう思い、呼吸を確認。どうやら生きているらしい。
少女の鼻は折れ曲がっていた。どうやらこの衝撃により破片が顔面に飛んできたらしい。
「……これは無礼な事をした。この償いはどうすべきか」
漆黒の騎士の目の前には桟橋に止めてある三台のボートがあった。
橋を渡ろうと思ったが、視界にこれが入ってきたので気になって近くに来たのである。
しかし近くに寄ってよく見えたとしても漆黒の騎士にはこれがなんなのかがよくわからない。
「……一見、船に見えるがこの変わった舵はなんだ?それに帆も張られていないとは」
漆黒の騎士はこの変わった船はデイン王国、いや、テリウス大陸全体をもって尚見たことがなかった。それも当然だが。
その変わった船は漆黒の騎士の好奇心を突き動かす。
漆黒の騎士がボートに乗り込んだ。そして色々と調べる。エンジン、舵、船首…
そしてついにキーを手にかけた。どうやら廻るみたいだ。漆黒の騎士はそれを回してみる。
「…!?これは!」
竜によく似た咆哮をあげる。もはやこれは鉄で出来た竜なのか。しかし呼吸は聞こえない。
舵に手を書ける。そして前に進んだ。
「これは爽快だ。海をこうやって自由に進めるとは。しかし…」
初めてのボートだ。そして初めての運転。百戦錬磨の漆黒の騎士であってもこの異世界の乗り物は乗り回せないだろう。
ぐるぐるとその場を廻ったり、そして急に真っ直ぐに進んだり。
まるで舵を失った船だ。しかし、彼は仁王立ちをしている。舵から手を離して。
「…………やはり、慣れない物には手をださない方が良いな」
円盤に針が廻っている。ゆっくりと右に寄っていく。そして針は振り切る。それがスピードを指す物とは漆黒の騎士もわからないだろう。
やがて、船は、崖に向かって走り出した。このスピードでは大きな方向転換はもうできないだろう。
「…む、このままでは少々危険か?……いや、あれを利用すれば大丈夫か」
崖の少し手前にある岩に向かって、少し舵を切る。そして岩にぶつかる。
しかし、そのまま船は沈まずに、空を飛んだ。岩がジャンプ台の代わりになったのだろう。
そしてこのスピードにより、船はずっと高く、高く、高く、飛んだのだ。
その高さは崖を越える。
「初めての鉄の竜だが、上手くいくものだ。さて、空を飛ぶにはどうするのだろうか?この出っ張りか?」
いや、飛びませんよ漆黒の騎士さん。それは船です。竜じゃないです。
続いて、漆黒の騎士はボタンを押す。
船に取り付けられたライトが元気一杯に点灯された。
「やるではないか!魔法を使うとは!」
いや、魔法じゃないです。ただのライトです。
そして、着地地点は変わった建物。先ほどの場所はボロボロ墓場という墓地地帯だった。そしてこの近くの建物は、クツロギ温泉だろう。
そう頭の中で整理。空中で。
やがて、着地。壁を突き壊しながら滑りながら進む。漆黒の騎士は微動だにせず。
この程度で死ぬことはない。と自分で自覚しているから動かないのか。それとも本当に動けないのかどうかは誰も知らない。
「この音で参加者がこちらに来る可能性もあるがそれもいい。見事打ち倒してみせよう」
旅館が崩れる音は結構響いた。この音でこちら側に来る者は、殺し合いに乗ったものしかいないだろう。
唯の市民ならこちらの方向からは逃げていくだろう。
「……む?」
視線をしたに下ろすと、ずぶ濡れのメイド服を着た少女が居た。死んでいるのか。そう思い、呼吸を確認。どうやら生きているらしい。
少女の鼻は折れ曲がっていた。どうやらこの衝撃により破片が顔面に飛んできたらしい。
「……これは無礼な事をした。この償いはどうすべきか」
☆ ☆ ☆
「爆発音、ではないな。この音は、船のエンジン音か。そしてコンクリートに、木造建築物……それの破壊音か?」
移動を続けていると、何かが壊れた音が響いた。迅速にその音を分析。
頭の中でシミュレーションをする。なんてことは無い。船が住宅等の建造物にに突っ込んだのだ。
しかし、船が建造物に突っ込む?どういう状況なのか。……いや戦場では何があるのかは予想出来ないのだ。
戦場で、常識を持ってはならない。あの女も妙な手品を使って瞬間移動をしたではないか。
常識なんか捨ててしまえ。この右手も、どうやってここにつれて来られたとかの理由も、どうでもいいことだ。
そこに参加者が居て、私が殺す。それだけでいいのだ。戦争は。殺し合いは。
私は焦燥を、快感を、緊張を。
「それを感じればそれでいいのだ。そう、ここでは。」
リボルバー・オセロットは歩き出す。ただ、そこに居るものが逃げ惑う弱者では無い事を願おう。
移動を続けていると、何かが壊れた音が響いた。迅速にその音を分析。
頭の中でシミュレーションをする。なんてことは無い。船が住宅等の建造物にに突っ込んだのだ。
しかし、船が建造物に突っ込む?どういう状況なのか。……いや戦場では何があるのかは予想出来ないのだ。
戦場で、常識を持ってはならない。あの女も妙な手品を使って瞬間移動をしたではないか。
常識なんか捨ててしまえ。この右手も、どうやってここにつれて来られたとかの理由も、どうでもいいことだ。
そこに参加者が居て、私が殺す。それだけでいいのだ。戦争は。殺し合いは。
私は焦燥を、快感を、緊張を。
「それを感じればそれでいいのだ。そう、ここでは。」
リボルバー・オセロットは歩き出す。ただ、そこに居るものが逃げ惑う弱者では無い事を願おう。
☆ ☆ ☆
「あん?何の音だ?」
爆発音、にしては周りには煙が上がってはいない。つまり、この音は爆発ではなく、ただの破壊音だな。
あの餓鬼共だったら確実に殺してやろう。それ以外だったら、猫を被って利用をしてやろうじゃないか。
自分はここに来てからは興奮しっぱなしである。まるで新しい玩具を与えられたみたいに。
「あのマルクっていうには気に入らねえが、なかなか面白いことを考えてくれるじゃないの。」
入れ替わって運営するのもいいねぇ。そういえば、あの餓鬼から奪った支給品、まだ確認してなかったな。
………ん?剣が一つだけ?それに穴が開いていやがる。どこかに落としたのかあいつは。やっぱ餓鬼はこういうことをするから嫌いなんだ。
せめて俺の役に立てってんだよ。……『魔剣グルグラント』?へっ、たいそうな名前を付けやがる。
「……でけえんだよ。こんなもんどうやってつかえってんだ」
この重さじゃ、自分では扱えない。デイパックにしまっておこう。……どうなってんだこのデイパックは。まあどうでもいいかそんなことは。さあてと行こうか。精々俺を楽しませてくれよ。
爆発音、にしては周りには煙が上がってはいない。つまり、この音は爆発ではなく、ただの破壊音だな。
あの餓鬼共だったら確実に殺してやろう。それ以外だったら、猫を被って利用をしてやろうじゃないか。
自分はここに来てからは興奮しっぱなしである。まるで新しい玩具を与えられたみたいに。
「あのマルクっていうには気に入らねえが、なかなか面白いことを考えてくれるじゃないの。」
入れ替わって運営するのもいいねぇ。そういえば、あの餓鬼から奪った支給品、まだ確認してなかったな。
………ん?剣が一つだけ?それに穴が開いていやがる。どこかに落としたのかあいつは。やっぱ餓鬼はこういうことをするから嫌いなんだ。
せめて俺の役に立てってんだよ。……『魔剣グルグラント』?へっ、たいそうな名前を付けやがる。
「……でけえんだよ。こんなもんどうやってつかえってんだ」
この重さじゃ、自分では扱えない。デイパックにしまっておこう。……どうなってんだこのデイパックは。まあどうでもいいかそんなことは。さあてと行こうか。精々俺を楽しませてくれよ。
☆ ☆ ☆
「咲夜さーん!咲夜さんってば!」
うーん。ここはどこなのだろうか。
「咲夜さん!やっと起きましたね!咲夜さんが珍しくお昼寝してるなんて…」
目の前には美鈴が居た。ここは…紅魔館?
「あら、咲夜。珍しいわね。お昼寝なんて」
それにパチュリー様もいる。やはり、ここは紅魔館なんだろう。
「そんなんじゃあ、この館のメイドは務まらないわよ」
レミリア様まで。じゃあ、いままでのは夢だったのか。
「……すいません。私、疲れていたみたいですわ。」
そう、悪い夢だ。あの悪夢も、あの男も。
急にあんなところに招待されるなんてことは普通ありえないだろう。
そういえば、洗濯はもうしたのかしら。妖精メイドは私が居ないと全く働いていないから困る。
「すいません。この紅魔館に相応しいメイドとして、今日も善処します」
そうレミリア様に謝った。紅魔館の一日を、途中からだが、また始まる。
「え?紅魔館?なにいってるんですか咲夜さん」
そのときだ。美鈴が訳のわからない事を言い始めた。
「…?ここは紅魔館でしょ?なに言ってるの?美鈴」
そう返した。しかし、混乱は続く。
「寝ぼけているの咲夜?ここが紅魔館ですって?」
パチュリー様もまた、変なことを言う。
そして、続いて、レミリア様も。
「咲夜。ここはしっこくハウスでしょう?何を言っているの」
しっこくハウス?どういうことだ一体。
「レミリア様まで私の事をからかう気ですか?残念ですが、私はレミリア様が望む良いリアクションなんてできませんわ」
そう丁寧に返す。しかし返答は斜め上を行くものだった。
「レミリア様?なにを改まって敬称なんてつかって。いつも通りレミリアでいいのよ」
「そう。なんで私にも敬称を使っているのかしら。パチュリーでいいわよ」
二人とも訳の分からない事を続いて言った。
どこかが可笑しい。私はいままで二人を呼び捨てにしたことはない。
しかし、いままで敬称を使わずに呼び捨てをしていた事になっている。
なんだこれは。
「…レミリア様、パチュリー様、私を最後までからかう気ですか?レミリア様も、パチュリー様も目上の人だから敬称をつかっているのですわ。ましてやこの館の主であるレミリア様の事を呼び捨てになんてできません」
どこかが可笑しい。私は白昼夢でも見ているのだろうか?
あれが夢で、これも夢なのか?どれがどれだかわからない。
「私がこの館の主ですって?面白い冗談ね。あ、そろそろあの御方が起床するわ」
どうやら、私は悪い夢を見ているらしい。しかしあの出来事が夢で、これも夢で、
「咲夜さん、出てきますよ。あの扉から」
「咲夜、敬意をもちなさい」
「咲夜さん」
「咲夜」
「咲夜」
ここは紅魔館じゃない。いやだ。これは酷い夢に決まっている
やがて、扉から何者かがでてきた。
うーん。ここはどこなのだろうか。
「咲夜さん!やっと起きましたね!咲夜さんが珍しくお昼寝してるなんて…」
目の前には美鈴が居た。ここは…紅魔館?
「あら、咲夜。珍しいわね。お昼寝なんて」
それにパチュリー様もいる。やはり、ここは紅魔館なんだろう。
「そんなんじゃあ、この館のメイドは務まらないわよ」
レミリア様まで。じゃあ、いままでのは夢だったのか。
「……すいません。私、疲れていたみたいですわ。」
そう、悪い夢だ。あの悪夢も、あの男も。
急にあんなところに招待されるなんてことは普通ありえないだろう。
そういえば、洗濯はもうしたのかしら。妖精メイドは私が居ないと全く働いていないから困る。
「すいません。この紅魔館に相応しいメイドとして、今日も善処します」
そうレミリア様に謝った。紅魔館の一日を、途中からだが、また始まる。
「え?紅魔館?なにいってるんですか咲夜さん」
そのときだ。美鈴が訳のわからない事を言い始めた。
「…?ここは紅魔館でしょ?なに言ってるの?美鈴」
そう返した。しかし、混乱は続く。
「寝ぼけているの咲夜?ここが紅魔館ですって?」
パチュリー様もまた、変なことを言う。
そして、続いて、レミリア様も。
「咲夜。ここはしっこくハウスでしょう?何を言っているの」
しっこくハウス?どういうことだ一体。
「レミリア様まで私の事をからかう気ですか?残念ですが、私はレミリア様が望む良いリアクションなんてできませんわ」
そう丁寧に返す。しかし返答は斜め上を行くものだった。
「レミリア様?なにを改まって敬称なんてつかって。いつも通りレミリアでいいのよ」
「そう。なんで私にも敬称を使っているのかしら。パチュリーでいいわよ」
二人とも訳の分からない事を続いて言った。
どこかが可笑しい。私はいままで二人を呼び捨てにしたことはない。
しかし、いままで敬称を使わずに呼び捨てをしていた事になっている。
なんだこれは。
「…レミリア様、パチュリー様、私を最後までからかう気ですか?レミリア様も、パチュリー様も目上の人だから敬称をつかっているのですわ。ましてやこの館の主であるレミリア様の事を呼び捨てになんてできません」
どこかが可笑しい。私は白昼夢でも見ているのだろうか?
あれが夢で、これも夢なのか?どれがどれだかわからない。
「私がこの館の主ですって?面白い冗談ね。あ、そろそろあの御方が起床するわ」
どうやら、私は悪い夢を見ているらしい。しかしあの出来事が夢で、これも夢で、
「咲夜さん、出てきますよ。あの扉から」
「咲夜、敬意をもちなさい」
「咲夜さん」
「咲夜」
「咲夜」
ここは紅魔館じゃない。いやだ。これは酷い夢に決まっている
やがて、扉から何者かがでてきた。
「やあ、(´・ω・`)ようこそ、しっこくハウスへ」
☆ ☆ ☆
「うわぁぁぁっ!………………………………………ゆ…ゆ、め?」
「起きたか。おはよう」
なんという悪夢だろうか。思わず飛び起きてしまった。なんだあのもふもふは。どうやら酷く疲れてるらしい。自分の思ったよりもだ。
ここはどこだろうか。どうやら布団の中にいるらしい。
布団から出て、周りを見渡す。……その時、初めて衣服を着ていない事に気付く。つまり全裸。
そこには兜を被った男が居た。
「私はデイン王国四駿、名は漆黒の騎士。どうやら私の無用心で貴婦人を怪我させてしまったみたいだ。
どうかこの無礼を許して欲しい……貴婦人、にはまだ若すぎるかだろうか?」
「……十六夜咲夜。咲夜でいいですわ」
どうやらこの男が突っ込んできたせいで私は気絶してしまったのだろう。
……つまりこちらの方が現実だったらしい。
あの夢の方が現実だったとしたらどんなにいいことか。
あの白いモフモフに仕えるのは嫌だが。
掛け布団で素肌を隠し、バスタオルの様に体に巻いて、隠すところは隠した。
この男はどこを見ているかはわからないが、私にだって羞恥心はある。
「咲夜殿。なにか償いをさせてもらいたい。そのまえに……」
「その前に貴方は殺し合いに乗っているのかしら?」
刹那。話を切り、咲夜は男の後ろに回りこんでいた。そして手には宝剣ギャラクシアを持ち、男の首筋に当てている。
時間を止めて、移動したのだ。ついでに武器になりそうな物をデイパックから奪って。
看病をしてくれたが、この男が危険人物ではないと確証はない。安全の確保をするにはこうやって脅し聞くしかないのだ。
「……どうやったは知らないが。私はその質問に答えよう。乗っていないと言えば嘘になる」
男はこの瞬間移動に驚く素振りを見せるが、それは微小なものだった。その反応からこの男は場慣れしていると感じる。
「では、なぜ私を助けたのかしら?」
そう質問をした時、体が言うことを聞かなくなってきた。
…やばい。体力はあまり回復をしていなかった。時間を止めたのは失敗だったか。
「私は騎士道精神を重んじる。正々堂々とした戦いが望みなのだ。しかし咲夜殿を奇襲の様に怪我をさせては私の精神に反する。
さらにそれが女子供ならば尚更だ。」
「じゃあ、な…ぜ…?」
聞きたいことは沢山ある。しかし意識がまたどこかに飛んで行きそうになる。
しかし、剣を落として、私はまた倒れる。
「……無理をするな。その瞬間移動の手品も体力を使うだろう。」
「はぁ…はぁ…私を…殺す…のか…しら?」
「それはしない。まだ償いをしていないからな。先ずは咲夜殿の鼻を治すとしよう」
「…鼻?」
その時に初めて自分の鼻の違和感に気付いた。触ってみると何かが可笑しい。まさか折れているのか。
そして、男が、なにかを取り出す。文鎮だ。丁度習字で使うような。
いや、ちょっとまて、まさかそれを。
確か鼻の骨折、脱臼の治療は麻酔も効かない物であり、更に鉄の棒を穴に入れて向きを修正するという荒療治ではなかったか。
それは想像を絶する痛みの筈だ。
「…まって…心の準備が…」
「その体で私を襲う気力があるのだ。これぐらいの痛みは我慢できるであろう?」
漆黒の騎士は私の鼻にそれを突っ込む。充分これだけでもいたいのに。
「では。歯を食いしばるがよい。……む?この様な錆びれた鉄棒では安心できないか?その点は安心するがよい。ちゃんと熱湯で消毒をしたものだ」
「ちょっ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そういう問題では無い、と突っ込みを入れようとした瞬間に言葉にならない痛み。
ゴリゴリと。
「! ! ! ! !…!…! !い!あ!」
「戦場で鼻の骨折は命取りと言われている。圧力の関係で視界が可笑しくなってしまうからだ。最悪の場合は眼球が飛び出してしまう」
「んぐ!!!!つああああ!!!」
ゴキンと、私の頭の中で心地よい音が響いた。
そして、文鎮が抜かれると、鼻血が噴出す。
「元に戻ったみたいだな。意外と早く終わった。咲夜殿が動かなかったお陰だ。気絶しないだけ偉いぞ」
「あ…あ…あ…」
動きたくても、しっかりと抑えられて動けなかっただけだ。私はそのまま敷き布団に倒れる。鼻血を垂れ流しながら。まだ鼻がキンキンと響く。
もうなにも考えたくない。
「……さて、では本題だ。私は咲夜殿をもはや奇襲の様な形で怪我をさせてしまった。
なにか償いをしたい。なにをお望みか?……と聞いてみたが、痛みで耳には届いていないらしいな」
「……………」
答える気力なんてない。ああ、私が何をしたっていうのか。今日はなにかと運が悪い。
ぐっすりと休みたい。例えば温泉に入って。
「起きたか。おはよう」
なんという悪夢だろうか。思わず飛び起きてしまった。なんだあのもふもふは。どうやら酷く疲れてるらしい。自分の思ったよりもだ。
ここはどこだろうか。どうやら布団の中にいるらしい。
布団から出て、周りを見渡す。……その時、初めて衣服を着ていない事に気付く。つまり全裸。
そこには兜を被った男が居た。
「私はデイン王国四駿、名は漆黒の騎士。どうやら私の無用心で貴婦人を怪我させてしまったみたいだ。
どうかこの無礼を許して欲しい……貴婦人、にはまだ若すぎるかだろうか?」
「……十六夜咲夜。咲夜でいいですわ」
どうやらこの男が突っ込んできたせいで私は気絶してしまったのだろう。
……つまりこちらの方が現実だったらしい。
あの夢の方が現実だったとしたらどんなにいいことか。
あの白いモフモフに仕えるのは嫌だが。
掛け布団で素肌を隠し、バスタオルの様に体に巻いて、隠すところは隠した。
この男はどこを見ているかはわからないが、私にだって羞恥心はある。
「咲夜殿。なにか償いをさせてもらいたい。そのまえに……」
「その前に貴方は殺し合いに乗っているのかしら?」
刹那。話を切り、咲夜は男の後ろに回りこんでいた。そして手には宝剣ギャラクシアを持ち、男の首筋に当てている。
時間を止めて、移動したのだ。ついでに武器になりそうな物をデイパックから奪って。
看病をしてくれたが、この男が危険人物ではないと確証はない。安全の確保をするにはこうやって脅し聞くしかないのだ。
「……どうやったは知らないが。私はその質問に答えよう。乗っていないと言えば嘘になる」
男はこの瞬間移動に驚く素振りを見せるが、それは微小なものだった。その反応からこの男は場慣れしていると感じる。
「では、なぜ私を助けたのかしら?」
そう質問をした時、体が言うことを聞かなくなってきた。
…やばい。体力はあまり回復をしていなかった。時間を止めたのは失敗だったか。
「私は騎士道精神を重んじる。正々堂々とした戦いが望みなのだ。しかし咲夜殿を奇襲の様に怪我をさせては私の精神に反する。
さらにそれが女子供ならば尚更だ。」
「じゃあ、な…ぜ…?」
聞きたいことは沢山ある。しかし意識がまたどこかに飛んで行きそうになる。
しかし、剣を落として、私はまた倒れる。
「……無理をするな。その瞬間移動の手品も体力を使うだろう。」
「はぁ…はぁ…私を…殺す…のか…しら?」
「それはしない。まだ償いをしていないからな。先ずは咲夜殿の鼻を治すとしよう」
「…鼻?」
その時に初めて自分の鼻の違和感に気付いた。触ってみると何かが可笑しい。まさか折れているのか。
そして、男が、なにかを取り出す。文鎮だ。丁度習字で使うような。
いや、ちょっとまて、まさかそれを。
確か鼻の骨折、脱臼の治療は麻酔も効かない物であり、更に鉄の棒を穴に入れて向きを修正するという荒療治ではなかったか。
それは想像を絶する痛みの筈だ。
「…まって…心の準備が…」
「その体で私を襲う気力があるのだ。これぐらいの痛みは我慢できるであろう?」
漆黒の騎士は私の鼻にそれを突っ込む。充分これだけでもいたいのに。
「では。歯を食いしばるがよい。……む?この様な錆びれた鉄棒では安心できないか?その点は安心するがよい。ちゃんと熱湯で消毒をしたものだ」
「ちょっ……!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そういう問題では無い、と突っ込みを入れようとした瞬間に言葉にならない痛み。
ゴリゴリと。
「! ! ! ! !…!…! !い!あ!」
「戦場で鼻の骨折は命取りと言われている。圧力の関係で視界が可笑しくなってしまうからだ。最悪の場合は眼球が飛び出してしまう」
「んぐ!!!!つああああ!!!」
ゴキンと、私の頭の中で心地よい音が響いた。
そして、文鎮が抜かれると、鼻血が噴出す。
「元に戻ったみたいだな。意外と早く終わった。咲夜殿が動かなかったお陰だ。気絶しないだけ偉いぞ」
「あ…あ…あ…」
動きたくても、しっかりと抑えられて動けなかっただけだ。私はそのまま敷き布団に倒れる。鼻血を垂れ流しながら。まだ鼻がキンキンと響く。
もうなにも考えたくない。
「……さて、では本題だ。私は咲夜殿をもはや奇襲の様な形で怪我をさせてしまった。
なにか償いをしたい。なにをお望みか?……と聞いてみたが、痛みで耳には届いていないらしいな」
「……………」
答える気力なんてない。ああ、私が何をしたっていうのか。今日はなにかと運が悪い。
ぐっすりと休みたい。例えば温泉に入って。
「あ……温泉」
「温泉?」
「温泉?」
☆ ☆ ☆
チャポン、といい音がした。
このクツロギ温泉で湯に漬かっているのは男女二人。しかし混浴というわけではなく、ちゃんと壁によって分けられていた。
咲夜は本当は露天風呂の方に行きたかったが、残念ながらそちらの方は湯が枯れていて入れなかった。
ふと、視線を下ろすが、その視線を邪魔するものはなく、自分のふとももが見える。……はぁ。
「咲夜殿。湯加減はどうか」
「最高ですわ。疲れが吹き飛ぶ、なんて言っても過言ではないかと。殺し合いという状況でなければ完璧ですけど」
本当にこの温泉はいい湯だ。ソリッド・スネークと戦った時の疲労は全て取れた。さすがに胸の骨は治らないが。
温度も丁度いい。頭痛もすっかり消え、冷え切った体を温めてくれる。お肌もつるつるになりそうな勢いだ。
……彼は温泉に入っても兜は外しているのか、とどうでもいい事を気にしてしまう。なぜか、一緒のタイミングで入ることになってしまった。
「咲夜殿。お望みはもうお決まりか?早く決めて欲しい」
「あら。レディに催促なんて。そんなんじゃモテないわよ。漆黒の騎士さん…本当の名前はなんというのかしら?名簿にも『漆黒の騎士』って記載されてるけど」
漆黒の騎士。名前に『の』が入るのは可笑しいだろう。どこからが苗字でどこからが名前なのか。
そんな疑問は生まれるわけではないが、この名前が正式な名前とは思えない。
「……ゼルギウスだ。……本当の名など、どうでもいいであろう?」
「私にとっては結構重要な事ですわ。情報というのは持てるだけ持ったほうがいいもの。
それと、望みについては出てからじっくりと考えることにします。ここから脱出する為の、ね」
情報、それがこの殺し合いで一番重要なものだろう。
しかしだ。こいつの話はまるで役に立たない。デイン王国?テリウス大陸?それにベオクにラグズ?
どこのファンタジー小説だそれは。……まさかこいつは『外の世界』以外の『世界』が存在するとでもいうつもりなのか?
馬鹿馬鹿しい、と一蹴りしそうになったが、自分の住んでる幻想郷も殆どそんな感じなのでやめた。
情報は情報。情報がなければこの会場で右往左往しながら死んでしまうだろう。まずは情報収集。次に首輪の解除だ。
今、体に身に着けているのはこの首輪しかない。
そして、向こうも身につけているのは首輪だけだろう。
漆黒の騎士、ゼルギウスは、殺し合いに乗っているのだ。
だから私がデイパックを自分が介抱されていた部屋に置いて来させたのだ。
これなら彼は私を殺す事はできないだろう。
それに、彼は、私に借りがあるらしく殺そうとはしてこないだ。
それならデイパックを置いてこなくてもよかった のでは。そう思うが、念には念をだ。そっちの方が安心だろう。
「……脱出?」
「ええ。あなたが殺し合いに乗っているのが当たり前の様に、私はこの会場から脱出するのが当たり前なのよ。
……まさかどこかのオジサマみたいに殺さない方が可笑しいだなんて、貴方は言わないわよね?」
「脱出、か。面白いではないか。見事、成功することを願おう」
予想外の返事が返ってきた事に自分でも驚いた。殺し合いに乗っているのに、私を殺さず、そして脱出を願う?何を言っているんだ。
「……よくわからない人ですわ。貴方の意図がよくわからない。私を混乱させてから殺そうっていう魂胆?」
「咲夜殿。何度も申しあげるが、私は騎士だ。その様な卑しいやり口は好みではない。正々堂々と戦う事が私の望みなのだ。咲夜殿が脱出しようがしまいが私には関係無い」
壁の向こうから強調する様に返答が来る。つまりだ。この男は戦闘狂だ。ソリッド・スネークよりは良心的な戦闘狂。
危険人物である。ここで始末してしまおうか。知り合いに被害がでても良い気分ではないだろう。
しかし、この男は私に借りがあるのだ。もっとも勝手に借りていかれた、という代物だが。
償いをしたいと私に言うのだ。まだ、利用価値がある。脱出の手立てに仲間が居れば心強い。
「ねぇ、漆黒の騎士さん。私の望みがが『殺し合いをやめろ』だったらどうするかしら?」
「出来ぬ相談だ。償い、といってもそれ相応の償いしか私は出来ない」
「あら、『出来ぬ相談』ですって?それに『それ相応』?こんな少女を怪我させて、服を脱がせて痴態を晒させて、挙句の果てに酷い荒療治で死ぬほどの痛みを味あわせたのよ」
「咲夜殿。調子に乗るな。私は騎士だ。戦うことしかわからない騎士だ。それなのに『殺し合いに乗るな』?馬鹿も休み休み言え。それに私はもう一人、葬っている。もうその願いは聞き入られない。そうしなくては私が葬ってきた者が報われないのだ。だから私は咲夜殿に償いをしたくてもそれだけは絶対に出来ない」
「では、『殺し合いに乗るな』では無く、『脱出を手伝う』っていうのはどうかしら?良い案でなくて?勿論、私だけじゃなくて知り合いも…」
「いい加減にしろ。私はそこまで言う事を聞く様な犬ではない。それ相応、と言っただろう。戦場では骨折や想像を絶する痛みは当たり前だ」
……駄目だ。こいつは。交渉決裂。こちらも譲歩したというのに。こいつは根っからの戦闘狂ではないか。もはや、交渉の余地は無い。
「……先に部屋に戻ってるわ。そのあとで、また交渉を再開しましょう」
このクツロギ温泉で湯に漬かっているのは男女二人。しかし混浴というわけではなく、ちゃんと壁によって分けられていた。
咲夜は本当は露天風呂の方に行きたかったが、残念ながらそちらの方は湯が枯れていて入れなかった。
ふと、視線を下ろすが、その視線を邪魔するものはなく、自分のふとももが見える。……はぁ。
「咲夜殿。湯加減はどうか」
「最高ですわ。疲れが吹き飛ぶ、なんて言っても過言ではないかと。殺し合いという状況でなければ完璧ですけど」
本当にこの温泉はいい湯だ。ソリッド・スネークと戦った時の疲労は全て取れた。さすがに胸の骨は治らないが。
温度も丁度いい。頭痛もすっかり消え、冷え切った体を温めてくれる。お肌もつるつるになりそうな勢いだ。
……彼は温泉に入っても兜は外しているのか、とどうでもいい事を気にしてしまう。なぜか、一緒のタイミングで入ることになってしまった。
「咲夜殿。お望みはもうお決まりか?早く決めて欲しい」
「あら。レディに催促なんて。そんなんじゃモテないわよ。漆黒の騎士さん…本当の名前はなんというのかしら?名簿にも『漆黒の騎士』って記載されてるけど」
漆黒の騎士。名前に『の』が入るのは可笑しいだろう。どこからが苗字でどこからが名前なのか。
そんな疑問は生まれるわけではないが、この名前が正式な名前とは思えない。
「……ゼルギウスだ。……本当の名など、どうでもいいであろう?」
「私にとっては結構重要な事ですわ。情報というのは持てるだけ持ったほうがいいもの。
それと、望みについては出てからじっくりと考えることにします。ここから脱出する為の、ね」
情報、それがこの殺し合いで一番重要なものだろう。
しかしだ。こいつの話はまるで役に立たない。デイン王国?テリウス大陸?それにベオクにラグズ?
どこのファンタジー小説だそれは。……まさかこいつは『外の世界』以外の『世界』が存在するとでもいうつもりなのか?
馬鹿馬鹿しい、と一蹴りしそうになったが、自分の住んでる幻想郷も殆どそんな感じなのでやめた。
情報は情報。情報がなければこの会場で右往左往しながら死んでしまうだろう。まずは情報収集。次に首輪の解除だ。
今、体に身に着けているのはこの首輪しかない。
そして、向こうも身につけているのは首輪だけだろう。
漆黒の騎士、ゼルギウスは、殺し合いに乗っているのだ。
だから私がデイパックを自分が介抱されていた部屋に置いて来させたのだ。
これなら彼は私を殺す事はできないだろう。
それに、彼は、私に借りがあるらしく殺そうとはしてこないだ。
それならデイパックを置いてこなくてもよかった のでは。そう思うが、念には念をだ。そっちの方が安心だろう。
「……脱出?」
「ええ。あなたが殺し合いに乗っているのが当たり前の様に、私はこの会場から脱出するのが当たり前なのよ。
……まさかどこかのオジサマみたいに殺さない方が可笑しいだなんて、貴方は言わないわよね?」
「脱出、か。面白いではないか。見事、成功することを願おう」
予想外の返事が返ってきた事に自分でも驚いた。殺し合いに乗っているのに、私を殺さず、そして脱出を願う?何を言っているんだ。
「……よくわからない人ですわ。貴方の意図がよくわからない。私を混乱させてから殺そうっていう魂胆?」
「咲夜殿。何度も申しあげるが、私は騎士だ。その様な卑しいやり口は好みではない。正々堂々と戦う事が私の望みなのだ。咲夜殿が脱出しようがしまいが私には関係無い」
壁の向こうから強調する様に返答が来る。つまりだ。この男は戦闘狂だ。ソリッド・スネークよりは良心的な戦闘狂。
危険人物である。ここで始末してしまおうか。知り合いに被害がでても良い気分ではないだろう。
しかし、この男は私に借りがあるのだ。もっとも勝手に借りていかれた、という代物だが。
償いをしたいと私に言うのだ。まだ、利用価値がある。脱出の手立てに仲間が居れば心強い。
「ねぇ、漆黒の騎士さん。私の望みがが『殺し合いをやめろ』だったらどうするかしら?」
「出来ぬ相談だ。償い、といってもそれ相応の償いしか私は出来ない」
「あら、『出来ぬ相談』ですって?それに『それ相応』?こんな少女を怪我させて、服を脱がせて痴態を晒させて、挙句の果てに酷い荒療治で死ぬほどの痛みを味あわせたのよ」
「咲夜殿。調子に乗るな。私は騎士だ。戦うことしかわからない騎士だ。それなのに『殺し合いに乗るな』?馬鹿も休み休み言え。それに私はもう一人、葬っている。もうその願いは聞き入られない。そうしなくては私が葬ってきた者が報われないのだ。だから私は咲夜殿に償いをしたくてもそれだけは絶対に出来ない」
「では、『殺し合いに乗るな』では無く、『脱出を手伝う』っていうのはどうかしら?良い案でなくて?勿論、私だけじゃなくて知り合いも…」
「いい加減にしろ。私はそこまで言う事を聞く様な犬ではない。それ相応、と言っただろう。戦場では骨折や想像を絶する痛みは当たり前だ」
……駄目だ。こいつは。交渉決裂。こちらも譲歩したというのに。こいつは根っからの戦闘狂ではないか。もはや、交渉の余地は無い。
「……先に部屋に戻ってるわ。そのあとで、また交渉を再開しましょう」
☆ ☆ ☆
交渉を再開する気など、無い。とっととここをおさらばしよう。ついでにデイパックを奪って。
……濡れたままのメイド服がデイパックの隣に丁寧に畳んで置いてある。凹んだ防弾チョッキと、下着も。
あの男が黙々と脱がしたのだろうか。想像をしたくない。あの男は『かっこいい』部類にはいるだろうが、それはそれで嫌だ。デリカシーが無いじゃないか。
代わりの服を見つけて早く知り合いを探そう。
デイパックを担ぐ。もちろんゼルギウスの物もだ。
「……望みはあなたのデイパックってことにしておきましょう。それであなたは納得するわよね」
それを独り言の様に呟いた。彼は償いをしたいと言っていた。それならこれぐらいはしても怒られはしないだろう。
そう思い、部屋から飛び出す。早歩きで。(走ると巻いた布団がはだけるから)
彼だってのんびりと温泉に漬かってる訳ではないだろう。こちらの意図に気付いて戻ってくるかもしれない。
早く服を探さなければ。
だが、想像通りに上手くいかないものだ。
それは旅館の廊下を飛び出した時だった。あの嫌でも耳に残る音がまた鳴った。
……濡れたままのメイド服がデイパックの隣に丁寧に畳んで置いてある。凹んだ防弾チョッキと、下着も。
あの男が黙々と脱がしたのだろうか。想像をしたくない。あの男は『かっこいい』部類にはいるだろうが、それはそれで嫌だ。デリカシーが無いじゃないか。
代わりの服を見つけて早く知り合いを探そう。
デイパックを担ぐ。もちろんゼルギウスの物もだ。
「……望みはあなたのデイパックってことにしておきましょう。それであなたは納得するわよね」
それを独り言の様に呟いた。彼は償いをしたいと言っていた。それならこれぐらいはしても怒られはしないだろう。
そう思い、部屋から飛び出す。早歩きで。(走ると巻いた布団がはだけるから)
彼だってのんびりと温泉に漬かってる訳ではないだろう。こちらの意図に気付いて戻ってくるかもしれない。
早く服を探さなければ。
だが、想像通りに上手くいかないものだ。
それは旅館の廊下を飛び出した時だった。あの嫌でも耳に残る音がまた鳴った。
銃声。
その音が響いた瞬間、壁に銃創が出来上がる。ああ、なんてことだ。後ろを振り向くと老人が銃を持っていてそこに立っていた。
「あら、そんな姿をしていたのね。私、スネークさんの姿を見れて大変嬉しいですわ。出来たら二度、いや一度も見たくなかったけど。近眼で外してくれて大変助かるわ」
「生きていたか小娘よ!……外した?いいや、わざとだ!頭に当たって、一発というのもあっけないだろう!?」
最悪の展開だ。やはり今日の私は運が悪いらしい。夢の中でも、現実でも。なんでこうタイミングが悪いのだ。
しかも今は防弾チョッキを着ていない。あの威力であの速さの弾を喰らったらひとたまりもない。
唯一の安心点は弾幕では無い事ぐらいだ。だが、私はあんなものと正々堂々と戦う程の無鉄砲ではない。ここは逃げる方が得策だ。
「この私を欺くとは、とんだ手品師だ!いや、魔術師かっ!?それとも超能力者っ!?いや、そんなことはどうでもいい!今一度楽しもうではないかっ!この緊張をっ!」
「丁重にお断りさせて頂きますわ。私にはそんな暇ないですの」
オセロットが銃を向け引き金に手を掛けたその瞬間、咲夜の姿が消えた。 また銃声が鳴り、壁に銃創を作る。
どこに消えたのだあいつは。オセロットはその疑問を浮かべる。
その咲夜も、時間を止める度に体力を使うのだ。先ほど、温泉に入って大分楽になったものの、時間を操る為にはやはり体力を削る。
長い時間を止められないから近くの部屋に逃げ込むくらいしかできなかった。その部屋の襖に小さく隠れる。
「……くくく。どこに隠れた?私には聞こえるぞ!お前の心音が加速していくのがな!」
隠れた矢先にその言葉を発する。こちらの方の戦闘狂は気でも違ってしまったのか。どの様な環境で育てばこうなるのかが気になるわね、と思う。
実際、心臓音は加速している。緊張を楽しもうだって?こんな吐き気を催す様な緊張なんか感じたくない。
こうなってしまってはあの銃と戦うことも考えなければ。デイパックの中に入った使えそうな武器は剣が二本。ナイフだったらいいがそんな贅沢なんか言ってられない。
それを取り出し、構える。
そして奴は、この部屋に入っていた。
「どこだ?隠れてるだけではどちらも緊張を楽しめないぞ?」
また奴が言葉を発する。このままどこかに行けばいいのだ。が、私はとんでもないミスを犯してしまう。
能力の使用により、削られた体力は呼吸を荒くさせた。それがいけなかったのか。
胸の骨が肺を圧迫させ、息がむせる。そして。
「………………………ごほっ」
「そこか!」
なんてことだ。居場所がばれてしまい、奴はゆっくりとこちらに近づいてくる。襖の隙間からそれが見える。
もう逃げる場所は無い。奴がこちらに銃を向ける。万事休すか。だが、ただでやられるほど私はお人良しではない。
襖を破り、剣を投げた。投げナイフを投げる様に剣を投げた。重かったが、それでも目標には向かっていく。
しかし、奴は軽々と避けた。
「…………拍子抜けする。なにか奥の手があると思ったが、ただ、剣を投げてきただけだと?……つまらん」
「………私と戦う事は貴方に利益は無いわよ。そんなに戦いたいなら、その後ろの人と戦えばいいのではないのかしら」
その時、オセロットは気付く。後ろを振り向くと漆黒の兜を被った男が立っている。こいつはいつからいたんだ?
咲夜はオセロットに剣を投げた訳ではなく、漆黒の騎士に投げ渡したのだ。
「漆黒の騎士さん、あなた、私に償いをしたいのでしょう?なら、私を助けて、というのはどうかしら?」
「了解した。それで私の罪が晴れるなら軽い物だ。ただし次に出会うことがあったならば、その時は咲夜殿、私と正々堂々と戦っても貰おう。」
ついでにデイパックもくださいな、と心の中で付け足す。もう二度と会いたくない。
私は二人の間から、その部屋を抜け出した。
「あら、そんな姿をしていたのね。私、スネークさんの姿を見れて大変嬉しいですわ。出来たら二度、いや一度も見たくなかったけど。近眼で外してくれて大変助かるわ」
「生きていたか小娘よ!……外した?いいや、わざとだ!頭に当たって、一発というのもあっけないだろう!?」
最悪の展開だ。やはり今日の私は運が悪いらしい。夢の中でも、現実でも。なんでこうタイミングが悪いのだ。
しかも今は防弾チョッキを着ていない。あの威力であの速さの弾を喰らったらひとたまりもない。
唯一の安心点は弾幕では無い事ぐらいだ。だが、私はあんなものと正々堂々と戦う程の無鉄砲ではない。ここは逃げる方が得策だ。
「この私を欺くとは、とんだ手品師だ!いや、魔術師かっ!?それとも超能力者っ!?いや、そんなことはどうでもいい!今一度楽しもうではないかっ!この緊張をっ!」
「丁重にお断りさせて頂きますわ。私にはそんな暇ないですの」
オセロットが銃を向け引き金に手を掛けたその瞬間、咲夜の姿が消えた。 また銃声が鳴り、壁に銃創を作る。
どこに消えたのだあいつは。オセロットはその疑問を浮かべる。
その咲夜も、時間を止める度に体力を使うのだ。先ほど、温泉に入って大分楽になったものの、時間を操る為にはやはり体力を削る。
長い時間を止められないから近くの部屋に逃げ込むくらいしかできなかった。その部屋の襖に小さく隠れる。
「……くくく。どこに隠れた?私には聞こえるぞ!お前の心音が加速していくのがな!」
隠れた矢先にその言葉を発する。こちらの方の戦闘狂は気でも違ってしまったのか。どの様な環境で育てばこうなるのかが気になるわね、と思う。
実際、心臓音は加速している。緊張を楽しもうだって?こんな吐き気を催す様な緊張なんか感じたくない。
こうなってしまってはあの銃と戦うことも考えなければ。デイパックの中に入った使えそうな武器は剣が二本。ナイフだったらいいがそんな贅沢なんか言ってられない。
それを取り出し、構える。
そして奴は、この部屋に入っていた。
「どこだ?隠れてるだけではどちらも緊張を楽しめないぞ?」
また奴が言葉を発する。このままどこかに行けばいいのだ。が、私はとんでもないミスを犯してしまう。
能力の使用により、削られた体力は呼吸を荒くさせた。それがいけなかったのか。
胸の骨が肺を圧迫させ、息がむせる。そして。
「………………………ごほっ」
「そこか!」
なんてことだ。居場所がばれてしまい、奴はゆっくりとこちらに近づいてくる。襖の隙間からそれが見える。
もう逃げる場所は無い。奴がこちらに銃を向ける。万事休すか。だが、ただでやられるほど私はお人良しではない。
襖を破り、剣を投げた。投げナイフを投げる様に剣を投げた。重かったが、それでも目標には向かっていく。
しかし、奴は軽々と避けた。
「…………拍子抜けする。なにか奥の手があると思ったが、ただ、剣を投げてきただけだと?……つまらん」
「………私と戦う事は貴方に利益は無いわよ。そんなに戦いたいなら、その後ろの人と戦えばいいのではないのかしら」
その時、オセロットは気付く。後ろを振り向くと漆黒の兜を被った男が立っている。こいつはいつからいたんだ?
咲夜はオセロットに剣を投げた訳ではなく、漆黒の騎士に投げ渡したのだ。
「漆黒の騎士さん、あなた、私に償いをしたいのでしょう?なら、私を助けて、というのはどうかしら?」
「了解した。それで私の罪が晴れるなら軽い物だ。ただし次に出会うことがあったならば、その時は咲夜殿、私と正々堂々と戦っても貰おう。」
ついでにデイパックもくださいな、と心の中で付け足す。もう二度と会いたくない。
私は二人の間から、その部屋を抜け出した。