一匹狼 ◆dGUiIvN2Nw
洋風の家が建ち並ぶ繁華街。レンガ造りの家々によって形成された通りに、オタコンと思しき人間がいた。
いつものコート姿ではなく、華美なマントを羽織り、その姿はまさしくファンタジー映画に出て来る魔法使いそのものだ。
突然、正面から槍を構えた兵士が突進してくる。
オタコンは顔色一つ変えず、冷静に後ろへと下がる。
スピードでいうのなら相手の方が遥かに速い。しかし、オタコンはこの突然現れた敵との接触を恐れていない。
むしろ接触することを望むかのように、指定の位置につくと立ち止まり、敵が充分に近づいて来るまで待機する。
一秒。
二秒。
大した時間もかからずに、敵はオタコンの攻撃圏内へと入って来た。
その決定的なチャンスをオタコンは逃さない。すぐに手に持っていた魔道書を開き、宣言した。
「ハイウィンド!!」
無数の風が刃となり、兵士の身体を切り刻む。兵士はその場で倒れ伏し、その身体は光となって消えた。
いつものコート姿ではなく、華美なマントを羽織り、その姿はまさしくファンタジー映画に出て来る魔法使いそのものだ。
突然、正面から槍を構えた兵士が突進してくる。
オタコンは顔色一つ変えず、冷静に後ろへと下がる。
スピードでいうのなら相手の方が遥かに速い。しかし、オタコンはこの突然現れた敵との接触を恐れていない。
むしろ接触することを望むかのように、指定の位置につくと立ち止まり、敵が充分に近づいて来るまで待機する。
一秒。
二秒。
大した時間もかからずに、敵はオタコンの攻撃圏内へと入って来た。
その決定的なチャンスをオタコンは逃さない。すぐに手に持っていた魔道書を開き、宣言した。
「ハイウィンド!!」
無数の風が刃となり、兵士の身体を切り刻む。兵士はその場で倒れ伏し、その身体は光となって消えた。
「ふぅ~。これであと三体か」
オタコンは眼鏡のブリッジを中指であげて、再び意識を集中させる。
彼の手には小型の携帯用ゲーム機。
そう。オタコンは、殺し合いという心身張り詰める過激な催しの最中に、家庭用ゲーム機で遊んでいたのだ。
「ねぇ~。まだ終わんないのぉ?」
不満を隠そうともしない千枝の声を無視し、オタコンはボタンを押す。
今オタコンがプレイしているゲームは、俗にいわれるシミュレーションRPGというものだ。
自軍のキャラクターを駒に見立てて動かし、自分の駒が全滅する前に敵を全て倒すとゲームクリアとなる。
自分が駒を動かせば次は相手が動かす番。その次はまた自分と、ターン制でゲームは進んでいく。いわば将棋やチェスのようなゲームである。
オタコンは眼鏡のブリッジを中指であげて、再び意識を集中させる。
彼の手には小型の携帯用ゲーム機。
そう。オタコンは、殺し合いという心身張り詰める過激な催しの最中に、家庭用ゲーム機で遊んでいたのだ。
「ねぇ~。まだ終わんないのぉ?」
不満を隠そうともしない千枝の声を無視し、オタコンはボタンを押す。
今オタコンがプレイしているゲームは、俗にいわれるシミュレーションRPGというものだ。
自軍のキャラクターを駒に見立てて動かし、自分の駒が全滅する前に敵を全て倒すとゲームクリアとなる。
自分が駒を動かせば次は相手が動かす番。その次はまた自分と、ターン制でゲームは進んでいく。いわば将棋やチェスのようなゲームである。
オタコンはこれまでに一度ゲームオーバーになっている。つまり、今は二回目の挑戦ということだ。
いくら自軍が一人しかいないといっても、いくら敵が大勢いるといっても、ここまで来て再びゲームオーバーというのは、彼にとっても許せることではない。
画面の中に映る、オタコンに非常に良く似たキャラクターが指定位置に移動する。そこで自分のターンが終了し、敵のターンとなる。
敵は自分の移動できるギリギリまでオタコンに近づいて来るが、攻撃範囲には届かない。よって、その場でターンは終了する。
敵が距離を詰めてきたおかげで攻撃範囲に入っている敵を、オタコンは再び風魔法である『ハイウィンド』によって体力パラメーターをゼロにする。
「よしよし。今回はうまくいってる」
前回は突如目前に現れた敵の増援によって悲惨な結末を迎えたが、今回はその反省を活かしてうまく自軍の駒を配置した。
操作できる駒が一人だけというのはかなり苦しいものがあるが、それでも増援のタイミングさえ覚えてしまえばヒットアンドラン戦法で難なくクリアできるだろう。
「ちょっとオタコン!! 無視すんな! いいかげんゲームから離れろ!!」
「大和撫子は声を荒げないものだよ。それに、ゲームは所有者がプレイするためにある。それを僕がプレイすることに何の問題もないだろ?」
「それあたしの支給品だし! 所有者あんたじゃねーし! つか、そもそもあたし大和撫子なんか目指してないから!」
「大丈夫。千枝ちゃん可愛いから十分通じるよ」
「か、かわ……。って、今はそんな話してないっての!!」
微妙に頬を染めながら憤慨する千枝の声を右から左へ聞き流しながらも、そろそろ限界だろうとオタコンは考え始めていた。
いくら自軍が一人しかいないといっても、いくら敵が大勢いるといっても、ここまで来て再びゲームオーバーというのは、彼にとっても許せることではない。
画面の中に映る、オタコンに非常に良く似たキャラクターが指定位置に移動する。そこで自分のターンが終了し、敵のターンとなる。
敵は自分の移動できるギリギリまでオタコンに近づいて来るが、攻撃範囲には届かない。よって、その場でターンは終了する。
敵が距離を詰めてきたおかげで攻撃範囲に入っている敵を、オタコンは再び風魔法である『ハイウィンド』によって体力パラメーターをゼロにする。
「よしよし。今回はうまくいってる」
前回は突如目前に現れた敵の増援によって悲惨な結末を迎えたが、今回はその反省を活かしてうまく自軍の駒を配置した。
操作できる駒が一人だけというのはかなり苦しいものがあるが、それでも増援のタイミングさえ覚えてしまえばヒットアンドラン戦法で難なくクリアできるだろう。
「ちょっとオタコン!! 無視すんな! いいかげんゲームから離れろ!!」
「大和撫子は声を荒げないものだよ。それに、ゲームは所有者がプレイするためにある。それを僕がプレイすることに何の問題もないだろ?」
「それあたしの支給品だし! 所有者あんたじゃねーし! つか、そもそもあたし大和撫子なんか目指してないから!」
「大丈夫。千枝ちゃん可愛いから十分通じるよ」
「か、かわ……。って、今はそんな話してないっての!!」
微妙に頬を染めながら憤慨する千枝の声を右から左へ聞き流しながらも、そろそろ限界だろうとオタコンは考え始めていた。
千枝とオタコンが情報交換を始めたのが数時間前。遊園地を出て少し歩いたところでお互いの支給品を見せ合うことになり、千枝のデイバックの中から携帯型ゲーム機が出てきて以来、ずっとここでゲームをしている。
千枝としては一刻も早く仲間を探しに行きたかっただろうに、オタコンという戦闘力のない、保護すべき人間を置いていくことが忍ばれるのか、ずっと付き合ってくれている。
彼女としてはフラストレーションが溜まる一方なのだろう。
千枝としては一刻も早く仲間を探しに行きたかっただろうに、オタコンという戦闘力のない、保護すべき人間を置いていくことが忍ばれるのか、ずっと付き合ってくれている。
彼女としてはフラストレーションが溜まる一方なのだろう。
「……君は今回の殺し合い、どう見てる?」
あくまでもゲーム機から目を離さずに、オタコンは聞いた。
「どうって……こんな悪趣味なもん開催した奴なんて、ぎったぎたにした上で八つ裂きにしてもまだ足りないって思ってるくらいだけど……」
彼女があまり頭を使うタイプではないことは、出会って十分もしないうちに理解できたことだ。
オタコンはため息をついて、再びメガネのブリッジをあげた。
「僕の見立てを言おう。このゲーム、主催者が超常的な力を用いている割に、あまりにも脆過ぎる」
先ほどまでがなりたてるようにしてオタコンの真横で仁王立ちしていた千枝が、急に大人しくなってその場に座った。
「どういうこと? オタコンはここから脱出する方法をなんか思いついたわけ!?」
「そうじゃないよ。でも、その隙は十二分にあると思うね」
淡々と、しかし理知的な言葉を、オタコンは紡ぎだす。
「僕が最初に注目したのはこの首輪。脱出を目指す僕たちにとっては一番重要な要素で、それは主催者にとっても同じはず。なのに、首輪はこんなにお粗末なものでできている」
「え? うーん、これってお粗末かなぁ」
自分の首輪を指でなぞりながら、千枝は疑問の声をあげる。
確かに荘重な銀の光沢が輝く首輪は、見た目からしてもお粗末なものとは思えない。
自分の首にフィットしているにも関わらずまったく違和感も息苦しさも感じないところなど、最新技術が端から端まで行き届いているような気持ちにさせる。
爆弾に明るくない千枝にとって、この首輪がどれほどの技術で作られたものかはわからない。しかし、それは確かに古臭さなど微塵も感じさせないものだった。
「この手の爆弾なんて簡単に作れるよ。この形状の首輪だって、僕がやろうと思えば一週間もかからずに同じものを作ってみせれる」
潜入捜査には、もっと高性能なアイテムがたくさん必要になってくる。そんな中からみても、遠隔操作できる爆弾など本当に単純なものだ。
千枝の見てきた世界の技術と、オタコンの見てきた世界の技術。その差が印象の違いを生んでいた。
「会場へのワープ。ファンタジーな能力を開放したり制限したりする力。これらに比べ、この首輪は明らかに見劣りする。何故だろうか?」
そう言われれば、千枝も納得できるものがあった。
爆弾を作ることに比べ、自分達を一瞬にして拉致した能力についてはその片鱗さえも理解できていない。まさに神の所業だ。
「何故って……、たまたま…こんなのしかなかった……とか?」
オタコンの言ってる疑問は確かに分かるが、だからといってその答えを千枝が持っているわけではない。必然、自分でも「それはないだろう」と分かるような答えしか出すことができない。
あくまでもゲーム機から目を離さずに、オタコンは聞いた。
「どうって……こんな悪趣味なもん開催した奴なんて、ぎったぎたにした上で八つ裂きにしてもまだ足りないって思ってるくらいだけど……」
彼女があまり頭を使うタイプではないことは、出会って十分もしないうちに理解できたことだ。
オタコンはため息をついて、再びメガネのブリッジをあげた。
「僕の見立てを言おう。このゲーム、主催者が超常的な力を用いている割に、あまりにも脆過ぎる」
先ほどまでがなりたてるようにしてオタコンの真横で仁王立ちしていた千枝が、急に大人しくなってその場に座った。
「どういうこと? オタコンはここから脱出する方法をなんか思いついたわけ!?」
「そうじゃないよ。でも、その隙は十二分にあると思うね」
淡々と、しかし理知的な言葉を、オタコンは紡ぎだす。
「僕が最初に注目したのはこの首輪。脱出を目指す僕たちにとっては一番重要な要素で、それは主催者にとっても同じはず。なのに、首輪はこんなにお粗末なものでできている」
「え? うーん、これってお粗末かなぁ」
自分の首輪を指でなぞりながら、千枝は疑問の声をあげる。
確かに荘重な銀の光沢が輝く首輪は、見た目からしてもお粗末なものとは思えない。
自分の首にフィットしているにも関わらずまったく違和感も息苦しさも感じないところなど、最新技術が端から端まで行き届いているような気持ちにさせる。
爆弾に明るくない千枝にとって、この首輪がどれほどの技術で作られたものかはわからない。しかし、それは確かに古臭さなど微塵も感じさせないものだった。
「この手の爆弾なんて簡単に作れるよ。この形状の首輪だって、僕がやろうと思えば一週間もかからずに同じものを作ってみせれる」
潜入捜査には、もっと高性能なアイテムがたくさん必要になってくる。そんな中からみても、遠隔操作できる爆弾など本当に単純なものだ。
千枝の見てきた世界の技術と、オタコンの見てきた世界の技術。その差が印象の違いを生んでいた。
「会場へのワープ。ファンタジーな能力を開放したり制限したりする力。これらに比べ、この首輪は明らかに見劣りする。何故だろうか?」
そう言われれば、千枝も納得できるものがあった。
爆弾を作ることに比べ、自分達を一瞬にして拉致した能力についてはその片鱗さえも理解できていない。まさに神の所業だ。
「何故って……、たまたま…こんなのしかなかった……とか?」
オタコンの言ってる疑問は確かに分かるが、だからといってその答えを千枝が持っているわけではない。必然、自分でも「それはないだろう」と分かるような答えしか出すことができない。
「ちなみに、君の言っていたマヨナカテレビって、物理的な世界なのかい? ほら、アニメとかでよくある精神だけが入れる世界ってあるじゃないか。ああいうものじゃないんだよね?」
「う、うん。普通に身体からずっぽり入れるよ」
「体内のマクロファージは正常に活動するし、当然遺伝子配列が変化することもない。肉体的にはテレビの外でも中でも変わらない」
「たぶん……」
「だったらやっぱりおかしいね。僕は首輪なんかよりもよっぽど適切な脅しの道具を知っている。それを使えばまず解除は不可能だし、ほとんどの人間は諦めるようなものなのに」
フォックスダイ。
リキッド・スネークの息の根を止めた、遺伝子治療の専門家であるナオミ・ハンターが作り出した驚異のウィルス。
認識酵素により事前にプログラムされた、特定の遺伝子配列を持つ者にだけ活性反応を示すこのウィルスを事前に注入しておけば、首輪などで脅さなくても、主催者側は参加者の命綱を握ることができるのだ。
こんな専門の道具が何もない場所ではワクチンなど到底作ることができない。首輪を解除することと比べればその難易度は雲泥の差がある。
「それだけ僕たちを舐めているのか、それとも首輪に拘る理由があったのか」
「う、うん。普通に身体からずっぽり入れるよ」
「体内のマクロファージは正常に活動するし、当然遺伝子配列が変化することもない。肉体的にはテレビの外でも中でも変わらない」
「たぶん……」
「だったらやっぱりおかしいね。僕は首輪なんかよりもよっぽど適切な脅しの道具を知っている。それを使えばまず解除は不可能だし、ほとんどの人間は諦めるようなものなのに」
フォックスダイ。
リキッド・スネークの息の根を止めた、遺伝子治療の専門家であるナオミ・ハンターが作り出した驚異のウィルス。
認識酵素により事前にプログラムされた、特定の遺伝子配列を持つ者にだけ活性反応を示すこのウィルスを事前に注入しておけば、首輪などで脅さなくても、主催者側は参加者の命綱を握ることができるのだ。
こんな専門の道具が何もない場所ではワクチンなど到底作ることができない。首輪を解除することと比べればその難易度は雲泥の差がある。
「それだけ僕たちを舐めているのか、それとも首輪に拘る理由があったのか」
それとも、すでに保険として参加者全員にフォックスダイは注入されているのか。
最後の仮説だけは言葉にせず、心の中でだけ呟く。
「ここがテレビの中なのか、そうじゃないのかはわからないけど、それでもこれらの条件を鑑みれば、主催者側が他にも何か手を打ってくる可能性は非常に高いといえるね」
「手を打ってくる?」
「僕達に対して何らかの干渉をしてくる可能性が高いってことだよ。そもそもこの殺し合い自体、どうにもおかしいことだらけだ。心理的実験をするにしては参加者同士の環境に差異があり過ぎるし、娯楽目的にしては少し強制感が薄い。
殺し合うこと自体に意味があるのか、何らかのシュミレーションなのか…。
はっきりしたことは分からないけど、僕には主催者が何か別の意図を持って動いているような気がしてならない。だから今は主催者の意図を探るのが先決だと判断したんだ。それで重要なのがこのゲームだよ」
千枝は首をかしげている。まだよく分かっていないようだ。
「彼らの目的が殺し合いを促進することだと仮定しよう。すっきりしないけど、現状はこの可能性が一番高いしね。そうなると、このゲーム機はいったい何だと思う? つまり、主催者はどういう目的でこれを千枝ちゃんのデイバックに入れたのか」
「……えーっと……」
「プレイして欲しいからだよ。要は、これが主催者の干渉なんだ」
答えが出そうにないのでオタコンが先に答えを言った。
「主催者は何かを伝えたがっている気がする。それがわざわざ首輪を使用した理由で、このゲームを支給した理由。そう考えると、この殺し合いも随分と色合いが変わってくると思わないかい?」
「……つまり、あたしたちをここに連れて来た理由は殺し合いをさせるためじゃないってこと?」
「さぁ、それはどうだろうね。今の段階ではなんとも……あっ!!」
突然、オタコンが叫び声をあげた。
「な、なによいきなり! びっくりするなぁもう」
「ご、ごめん」
謝罪の言葉を漏らすが、千枝の方を振り向きもしない。目線はゲーム機の画面に釘付けだ。
何事かと千枝が画面を覗き込むと、すぐにその理由がわかった。
以前プレイした時に出現した敵の増援。オタコンはそれを警戒して自軍の駒を後方に下がらせていた。
しかしどうしたことか、今回の敵の増援はまったく別方向からのものだった。それも、ちょうど後方へと自軍の駒が下がった地点に三体も。
図らずも、前回とまったく同じ展開になってしまっていた。
「うわー。運ないねぇ。こりゃ今回も駄目っぽいな」
「……なるほど。これで確信したよ。これは当然の帰結なんだ」
「どういう意味?」
オタコンの独り言のような呟きをキャッチし、千枝が疑問を投げかける。
「僕がどこに駒を動かそうと、敵は駒のすぐ近くに出現するようになってるんだ。ほら見てよ。前回はちょうどマップ端だったから増援が来ても不思議じゃなかったけど、今回はマップの、繁華街のど真ん中だ。いくらなんでもこれは偶然とはいえない。明らかに作為的なものだ」
オタコンはゲーム機を投げ出すように地面に置くと、そのまま大の字になって寝転んだ。
「あーあ。とんだ時間の無駄使いだ。こんなゲーム、クリアしようがない」
元々防御の低い駒なのだ。三人もの敵を一気に捌くのは不可能に近い。
オタコンが嘆いたとほぼ同時に、既に思考はゲームについての様々な事柄を遮断していた。
最後の仮説だけは言葉にせず、心の中でだけ呟く。
「ここがテレビの中なのか、そうじゃないのかはわからないけど、それでもこれらの条件を鑑みれば、主催者側が他にも何か手を打ってくる可能性は非常に高いといえるね」
「手を打ってくる?」
「僕達に対して何らかの干渉をしてくる可能性が高いってことだよ。そもそもこの殺し合い自体、どうにもおかしいことだらけだ。心理的実験をするにしては参加者同士の環境に差異があり過ぎるし、娯楽目的にしては少し強制感が薄い。
殺し合うこと自体に意味があるのか、何らかのシュミレーションなのか…。
はっきりしたことは分からないけど、僕には主催者が何か別の意図を持って動いているような気がしてならない。だから今は主催者の意図を探るのが先決だと判断したんだ。それで重要なのがこのゲームだよ」
千枝は首をかしげている。まだよく分かっていないようだ。
「彼らの目的が殺し合いを促進することだと仮定しよう。すっきりしないけど、現状はこの可能性が一番高いしね。そうなると、このゲーム機はいったい何だと思う? つまり、主催者はどういう目的でこれを千枝ちゃんのデイバックに入れたのか」
「……えーっと……」
「プレイして欲しいからだよ。要は、これが主催者の干渉なんだ」
答えが出そうにないのでオタコンが先に答えを言った。
「主催者は何かを伝えたがっている気がする。それがわざわざ首輪を使用した理由で、このゲームを支給した理由。そう考えると、この殺し合いも随分と色合いが変わってくると思わないかい?」
「……つまり、あたしたちをここに連れて来た理由は殺し合いをさせるためじゃないってこと?」
「さぁ、それはどうだろうね。今の段階ではなんとも……あっ!!」
突然、オタコンが叫び声をあげた。
「な、なによいきなり! びっくりするなぁもう」
「ご、ごめん」
謝罪の言葉を漏らすが、千枝の方を振り向きもしない。目線はゲーム機の画面に釘付けだ。
何事かと千枝が画面を覗き込むと、すぐにその理由がわかった。
以前プレイした時に出現した敵の増援。オタコンはそれを警戒して自軍の駒を後方に下がらせていた。
しかしどうしたことか、今回の敵の増援はまったく別方向からのものだった。それも、ちょうど後方へと自軍の駒が下がった地点に三体も。
図らずも、前回とまったく同じ展開になってしまっていた。
「うわー。運ないねぇ。こりゃ今回も駄目っぽいな」
「……なるほど。これで確信したよ。これは当然の帰結なんだ」
「どういう意味?」
オタコンの独り言のような呟きをキャッチし、千枝が疑問を投げかける。
「僕がどこに駒を動かそうと、敵は駒のすぐ近くに出現するようになってるんだ。ほら見てよ。前回はちょうどマップ端だったから増援が来ても不思議じゃなかったけど、今回はマップの、繁華街のど真ん中だ。いくらなんでもこれは偶然とはいえない。明らかに作為的なものだ」
オタコンはゲーム機を投げ出すように地面に置くと、そのまま大の字になって寝転んだ。
「あーあ。とんだ時間の無駄使いだ。こんなゲーム、クリアしようがない」
元々防御の低い駒なのだ。三人もの敵を一気に捌くのは不可能に近い。
オタコンが嘆いたとほぼ同時に、既に思考はゲームについての様々な事柄を遮断していた。
オタコンは生粋の理系人間だ。計算で判断し、無理だと分かればすぐに切り捨て、他のことを考える。
しかし体育会系は違う。誰かが不可能だというのなら、やってみせようと言うのが真の体育会系だ。大のカンフー映画好きで、『修行』と銘打って日々足技の練習をしているような人間なら尚更。
この段階でゲーム機は主催者側のブラフだと判断し、自分の思い描く主催者像の調整を行っていたオタコンに向けて、千枝はにやりと笑ってみせた。
「よーし。じゃ、あたしがやってみせようじゃない」
奇妙なまでに血の騒いでいる千枝が腕まくりしてみせる。
「無理だよ。君の知能じゃ」
「あ! 言ったなこのインテリオタク!! 見てろ~。あたし、追い詰められたらすごいんだから」
いったい何が凄いんだい? というツッコミすらする気力が起きず、オタコンは空を仰いでいた。
しかし体育会系は違う。誰かが不可能だというのなら、やってみせようと言うのが真の体育会系だ。大のカンフー映画好きで、『修行』と銘打って日々足技の練習をしているような人間なら尚更。
この段階でゲーム機は主催者側のブラフだと判断し、自分の思い描く主催者像の調整を行っていたオタコンに向けて、千枝はにやりと笑ってみせた。
「よーし。じゃ、あたしがやってみせようじゃない」
奇妙なまでに血の騒いでいる千枝が腕まくりしてみせる。
「無理だよ。君の知能じゃ」
「あ! 言ったなこのインテリオタク!! 見てろ~。あたし、追い詰められたらすごいんだから」
いったい何が凄いんだい? というツッコミすらする気力が起きず、オタコンは空を仰いでいた。
しかし、そのポーズもすぐに解除されることになる。
突然、千枝があっと叫んだからだ。
「どうしたの? もしかして壊しちゃった?」
そう言ってゲーム機の画面を覗き込む。
オタコンも、思わずあっと叫んでいた。
その画面には、千枝に良く似たキャラクターが表示されていた。
軽装ではあるが、要所要所には防具を装備し、画面内で軽いフットワークをこなしている。
もちろん味方だ。
「ちょっと貸して」
オタコンはゲーム機を奪い、その千枝に似たキャラクターのステータスを表示させる。
オタコンのような魔法使いタイプとは違い、戦士タイプのようだ。攻撃力が高く、防御力もそこそこある。
この駒をうまく囮に使えば、増援で増えた敵も倒せるかもしれない。
「なるほど。ゲームに触った人間と似たパラメーターの駒が使えるようになるわけか」
ものすごいスピードでボタンを押しながらオタコンはぶつぶつと一人呟く。
みるみるうちに敵の体力を減らし、次々と打ち倒していく。
敵はあっという間にいなくなり、画面には大きくclearの文字が浮かび上がった。
「……すご」
いくら味方が一人増えたからといって、あれほど不利だった状況がこうも簡単に覆せるとは千枝には思ってもみなかったのだ。
「伊達にオタコンなんて呼ばれてないよ。インドアならなんでもお任せだ」
そう言ってオタコンはにこりと笑って見せた。
突然、千枝があっと叫んだからだ。
「どうしたの? もしかして壊しちゃった?」
そう言ってゲーム機の画面を覗き込む。
オタコンも、思わずあっと叫んでいた。
その画面には、千枝に良く似たキャラクターが表示されていた。
軽装ではあるが、要所要所には防具を装備し、画面内で軽いフットワークをこなしている。
もちろん味方だ。
「ちょっと貸して」
オタコンはゲーム機を奪い、その千枝に似たキャラクターのステータスを表示させる。
オタコンのような魔法使いタイプとは違い、戦士タイプのようだ。攻撃力が高く、防御力もそこそこある。
この駒をうまく囮に使えば、増援で増えた敵も倒せるかもしれない。
「なるほど。ゲームに触った人間と似たパラメーターの駒が使えるようになるわけか」
ものすごいスピードでボタンを押しながらオタコンはぶつぶつと一人呟く。
みるみるうちに敵の体力を減らし、次々と打ち倒していく。
敵はあっという間にいなくなり、画面には大きくclearの文字が浮かび上がった。
「……すご」
いくら味方が一人増えたからといって、あれほど不利だった状況がこうも簡単に覆せるとは千枝には思ってもみなかったのだ。
「伊達にオタコンなんて呼ばれてないよ。インドアならなんでもお任せだ」
そう言ってオタコンはにこりと笑って見せた。
『キャハハハハハハ!!!』
突然の笑い声に千枝もオタコンもびくりと身体を震わせた。
『第1ステージクリア~~!! 凄いのサ! こんな短時間でクリアする奴がいるとは思わなかったのサ』
画面いっぱいに映し出されたマルクの姿に、二人は口を挟むこともできず硬直していた。
『でも、まだまだ完全クリアまでの道程は長いのサ! このゲームは全5ステージ。全てをクリアしないとなぁんの意味もないのサ。た・だ・し。見事全ステージをクリアすれば、その首に巻き付いた邪魔な爆弾は解除してあげるのサ。ま、せいぜい頑張るといいサ』
「え!?」
その言葉に強く反応したのは千枝だった。オタコンは渋い顔でじっとマルクを睨みつけている。
『そゆことで、バイバイなのサ~』
そこでマルクの姿が画面から消え、先程とは違う森のステージが現れた。
「なにそれ、どういうこと? 首輪が解除って……ホントなの?」
千枝は興奮を隠し切れない様子で、オタコンを見つめた。
「……千枝ちゃん。さっきの質問の答えが出たよ」
オタコンは画面を睨みつけたまま呟くように言った。
(……僕の考え過ぎ、見当違いだったか)
頭の中で主催者像を修正し直しながら、オタコンは口を開く。
「何故フォックスダイを使わないのか。この首輪は脅しなんかじゃない。僕達に対する餌なんだ。首輪解除という目で見える安心を買わせるためのね」
「……よ、よくわかんないけど、このゲームをクリアすりゃ首輪は外れるんだよね。こっちにとっちゃラッキーなことじゃん。そんな深刻になること?」
「第2ステージ。地形と敵を見ればわかる。これはせめてあと一人くらい仲間がいないと到底勝てない。つまり、僕達はこのゲームをクリアするためにも仲間を探さなくちゃいけないということさ」
積極的に行動し、仲間を集める。それをデメリットとしてオタコンは考えていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それってどういうこと? あんた、ずっと隠れてるつもりなの?」
「ずっとじゃないよ。仲間とは合流して今後の行動について話し合いたい。僕の専門は後方支援だからね。けど、下手に参加者と接触するのは御免だ。僕は何の力もない無力な科学者だからね」
それは千枝には聞き捨てならない言葉だった。
「こうしてる間にも誰かが殺されてるかもしれない。なのにただ黙ってゲームしてろって? 助けられる命があるなら助けるのが人間でしょ!」
「誰もゲームをするとは言ってないよ。もちろん、これは攻略するつもりだけど、一番の目的はマルクを倒し、ここを脱出することだからね。そのための下準備に時間を使うつもりだ。君は、そういう努力は無駄だと言いたいのかい?」
「そ、それは……」
オタコンの主張は正論だ。それ故に、千枝も言い淀む。しかし、そこで引き下がる千枝ではない。
千枝はキッとオタコンを睨みつけた。
「……でも、それでも目の前の命を助けたい。そっちこそ、それが無駄だって言いたいわけ!?」
重苦しい空気が流れる。
千枝はずっとオタコンを睨んだまま目を離さない。しかしオタコンに自分の行動方針を曲げるつもりはない。
オタコンは自分の出来ることを知っている。そして、しなければならないことも知っている。
より多くの人間を救うためにはここで千枝の主張に頷くことはできないのだ。
『第1ステージクリア~~!! 凄いのサ! こんな短時間でクリアする奴がいるとは思わなかったのサ』
画面いっぱいに映し出されたマルクの姿に、二人は口を挟むこともできず硬直していた。
『でも、まだまだ完全クリアまでの道程は長いのサ! このゲームは全5ステージ。全てをクリアしないとなぁんの意味もないのサ。た・だ・し。見事全ステージをクリアすれば、その首に巻き付いた邪魔な爆弾は解除してあげるのサ。ま、せいぜい頑張るといいサ』
「え!?」
その言葉に強く反応したのは千枝だった。オタコンは渋い顔でじっとマルクを睨みつけている。
『そゆことで、バイバイなのサ~』
そこでマルクの姿が画面から消え、先程とは違う森のステージが現れた。
「なにそれ、どういうこと? 首輪が解除って……ホントなの?」
千枝は興奮を隠し切れない様子で、オタコンを見つめた。
「……千枝ちゃん。さっきの質問の答えが出たよ」
オタコンは画面を睨みつけたまま呟くように言った。
(……僕の考え過ぎ、見当違いだったか)
頭の中で主催者像を修正し直しながら、オタコンは口を開く。
「何故フォックスダイを使わないのか。この首輪は脅しなんかじゃない。僕達に対する餌なんだ。首輪解除という目で見える安心を買わせるためのね」
「……よ、よくわかんないけど、このゲームをクリアすりゃ首輪は外れるんだよね。こっちにとっちゃラッキーなことじゃん。そんな深刻になること?」
「第2ステージ。地形と敵を見ればわかる。これはせめてあと一人くらい仲間がいないと到底勝てない。つまり、僕達はこのゲームをクリアするためにも仲間を探さなくちゃいけないということさ」
積極的に行動し、仲間を集める。それをデメリットとしてオタコンは考えていた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それってどういうこと? あんた、ずっと隠れてるつもりなの?」
「ずっとじゃないよ。仲間とは合流して今後の行動について話し合いたい。僕の専門は後方支援だからね。けど、下手に参加者と接触するのは御免だ。僕は何の力もない無力な科学者だからね」
それは千枝には聞き捨てならない言葉だった。
「こうしてる間にも誰かが殺されてるかもしれない。なのにただ黙ってゲームしてろって? 助けられる命があるなら助けるのが人間でしょ!」
「誰もゲームをするとは言ってないよ。もちろん、これは攻略するつもりだけど、一番の目的はマルクを倒し、ここを脱出することだからね。そのための下準備に時間を使うつもりだ。君は、そういう努力は無駄だと言いたいのかい?」
「そ、それは……」
オタコンの主張は正論だ。それ故に、千枝も言い淀む。しかし、そこで引き下がる千枝ではない。
千枝はキッとオタコンを睨みつけた。
「……でも、それでも目の前の命を助けたい。そっちこそ、それが無駄だって言いたいわけ!?」
重苦しい空気が流れる。
千枝はずっとオタコンを睨んだまま目を離さない。しかしオタコンに自分の行動方針を曲げるつもりはない。
オタコンは自分の出来ることを知っている。そして、しなければならないことも知っている。
より多くの人間を救うためにはここで千枝の主張に頷くことはできないのだ。
「……しっ」
ふいに、人差し指を口に寄せ、オタコンは周囲を警戒する。
「なにか物音がした」
「え?」
言われて、千枝も耳をそばだてる。
確かに、誰かが林の中を歩いて来ているようだった。あまり体調は芳しくないようで、歩いているにしては音が不規則で、時々立ち止まったりしているようだ。
「わ、私達の声、聞かれたかな?」
「まず間違いなくね。でも、会話の内容から僕達が殺し合いに乗ってないことは分かってるはずだ。それでも敢えて音を出して近づいて来るというのは……どういう意図があるんだろうね?」
殺し合いに乗っているなら確実に殺す為にも奇襲を仕掛けて来るはずだ。
殺し合いに乗っていない、いわば同士なのだとしたら、声くらいかけてもいいはずだ。
なのに、そのどちらもない。
来訪者が何を考えているのか計ることができず、オタコンは対処に困っていた。
ふいに、人差し指を口に寄せ、オタコンは周囲を警戒する。
「なにか物音がした」
「え?」
言われて、千枝も耳をそばだてる。
確かに、誰かが林の中を歩いて来ているようだった。あまり体調は芳しくないようで、歩いているにしては音が不規則で、時々立ち止まったりしているようだ。
「わ、私達の声、聞かれたかな?」
「まず間違いなくね。でも、会話の内容から僕達が殺し合いに乗ってないことは分かってるはずだ。それでも敢えて音を出して近づいて来るというのは……どういう意図があるんだろうね?」
殺し合いに乗っているなら確実に殺す為にも奇襲を仕掛けて来るはずだ。
殺し合いに乗っていない、いわば同士なのだとしたら、声くらいかけてもいいはずだ。
なのに、そのどちらもない。
来訪者が何を考えているのか計ることができず、オタコンは対処に困っていた。
「……とりあえず、姿を隠そう。安全第一だ」
千枝としては少し不満ではあったが、有無を言わさぬオタコンの言葉に押され、こくりと頷いた。
音をたてないように草むらの中を移動し、近づいて来る参加者と距離を取る。
バタリ
そんな折だった。その参加者が何故か地面に倒れたのだ。
「わ! な、なに!? 死んだ!?」
「声をあげちゃ駄目だ!」
オタコンの制止もむなしく、千枝は立ち上がって慌てて倒れた参加者へと走り寄る。
「雪子……! ……じゃないよね。和服だからもしやと思ったけど、やっぱそうそううまくはいかないか」
オタコンもため息をついて立ち上がり、千枝の後を追った。千枝の視線の先には、煌びやかな銀色の髪をした美しい女性がいた。
千枝の言うように和服姿で、どこか顔が熱っぽい。風邪をひいているようだ。
「ねえ、大丈夫!?」
千枝もそれに気付いたのか、彼女の肩に手をやって少しだけ揺すってみた。
「……ひゅー」
どうやら意識は失っていないようだ。
ジェスチャーで喉を強調し、それから額に手を当てるようにして熱があることを主張している。
「喋れないみたいだ。声帯を潰されたか」
「あ、もしかしたら、これなんか効くかも」
先程確認した時に見つけた、支給品として入っていた治療薬だ。
千枝はそれを彼女に渡すと、すぐさまそれをひったくってごくごくと飲み干した。
「……ごほっ!! ごほっ! ……まず。なによこれ」
「あ、喋ってる」
「凄い効き目だね。何ていう薬?」
「えーっと……『万能薬』?」
「…………」
咲夜の様子を見る限り、確かに万能な薬らしい。
千枝としては少し不満ではあったが、有無を言わさぬオタコンの言葉に押され、こくりと頷いた。
音をたてないように草むらの中を移動し、近づいて来る参加者と距離を取る。
バタリ
そんな折だった。その参加者が何故か地面に倒れたのだ。
「わ! な、なに!? 死んだ!?」
「声をあげちゃ駄目だ!」
オタコンの制止もむなしく、千枝は立ち上がって慌てて倒れた参加者へと走り寄る。
「雪子……! ……じゃないよね。和服だからもしやと思ったけど、やっぱそうそううまくはいかないか」
オタコンもため息をついて立ち上がり、千枝の後を追った。千枝の視線の先には、煌びやかな銀色の髪をした美しい女性がいた。
千枝の言うように和服姿で、どこか顔が熱っぽい。風邪をひいているようだ。
「ねえ、大丈夫!?」
千枝もそれに気付いたのか、彼女の肩に手をやって少しだけ揺すってみた。
「……ひゅー」
どうやら意識は失っていないようだ。
ジェスチャーで喉を強調し、それから額に手を当てるようにして熱があることを主張している。
「喋れないみたいだ。声帯を潰されたか」
「あ、もしかしたら、これなんか効くかも」
先程確認した時に見つけた、支給品として入っていた治療薬だ。
千枝はそれを彼女に渡すと、すぐさまそれをひったくってごくごくと飲み干した。
「……ごほっ!! ごほっ! ……まず。なによこれ」
「あ、喋ってる」
「凄い効き目だね。何ていう薬?」
「えーっと……『万能薬』?」
「…………」
咲夜の様子を見る限り、確かに万能な薬らしい。
「とりあえず、お礼は言っておくわ」
「い、いや、それはいいんだけど」
礼を言っているにしては高圧的で、冷めた態度だった。
「あー、ようやく幸運が巡って来た。反動が来そうで怖いけど」
そう言って、咲夜はつかつかとオタコンへと歩み寄る。
「な、なに?」
鼻先まで近づかれ、さすがに動揺を隠し切れないオタコンを無視し、咲夜は彼の来ているコートを徐に脱がし始めた。
「これ、借りるわよ」
自分の身体にそれを包み、「は~、あったまるー」などと感嘆を漏らしながら咲夜は地面に座り込んでしまった。
オタコンと千枝は思わず顔を見合わせた。
「……ちょっと聞きたいんだけど」
随分と自由な咲夜に戸惑いを覚えながらも、千枝は口を開いた。
「なに? 簡潔にしてね。私、けっこうしんどいの」
「その怪我、どったの? 誰かにやられた……は当然か。どういう奴にやられたのかわかる?」
「どういう奴? そうねぇ。戦闘狂で気持ち悪いくらいにテンションの高い糞じじい、といったところかしら」
「は、はぁ」
「あー、思い出すとなんだか腹がたってきたわ。制限なんかなかったらちゃっちゃと殺してやれたのに」
殺すという言葉を、咲夜はまるで、片手間に料理を作る程度の軽さで使用した。それも子供が使うような短絡的なものではない。
確かな殺意と、殺人を忌避なく実行に移せることを言外に含んでいた。
「ちょ、ちょっと。殺すって本気? それ、本気で言ってるの?」
咲夜は横目でちらりと千枝を見て、何を驚くことがあるのかと言いたいかのように首を傾げる。
「本気だけど? それが何だって言うの?」
千枝の頭にかあっと血が昇るのを感じた。
「本気って、人の命をなんだと思ってるのよあんたは!」
「はあ? 話ちゃんと通じてる? 私、殺されそうになったんだけど」
「それでも、人を殺すなんて発想おかしいでしょ!? たとえそいつが殺人犯だろうとなんだろうと」
誰も殺さず、誰も殺させずに事件を解決してきた千枝だからこそ言える言葉だった。
誰も死なせたくないという想いがあったからマヨナカテレビに纏わる連続殺人事件を解決できたのだ。
他の仲間だって皆同じ想いでここにいるはずだ。
そう信じれるからこそ、千枝は声を大にして叫んだ。
殺人なんて、しちゃいけないと。
「い、いや、それはいいんだけど」
礼を言っているにしては高圧的で、冷めた態度だった。
「あー、ようやく幸運が巡って来た。反動が来そうで怖いけど」
そう言って、咲夜はつかつかとオタコンへと歩み寄る。
「な、なに?」
鼻先まで近づかれ、さすがに動揺を隠し切れないオタコンを無視し、咲夜は彼の来ているコートを徐に脱がし始めた。
「これ、借りるわよ」
自分の身体にそれを包み、「は~、あったまるー」などと感嘆を漏らしながら咲夜は地面に座り込んでしまった。
オタコンと千枝は思わず顔を見合わせた。
「……ちょっと聞きたいんだけど」
随分と自由な咲夜に戸惑いを覚えながらも、千枝は口を開いた。
「なに? 簡潔にしてね。私、けっこうしんどいの」
「その怪我、どったの? 誰かにやられた……は当然か。どういう奴にやられたのかわかる?」
「どういう奴? そうねぇ。戦闘狂で気持ち悪いくらいにテンションの高い糞じじい、といったところかしら」
「は、はぁ」
「あー、思い出すとなんだか腹がたってきたわ。制限なんかなかったらちゃっちゃと殺してやれたのに」
殺すという言葉を、咲夜はまるで、片手間に料理を作る程度の軽さで使用した。それも子供が使うような短絡的なものではない。
確かな殺意と、殺人を忌避なく実行に移せることを言外に含んでいた。
「ちょ、ちょっと。殺すって本気? それ、本気で言ってるの?」
咲夜は横目でちらりと千枝を見て、何を驚くことがあるのかと言いたいかのように首を傾げる。
「本気だけど? それが何だって言うの?」
千枝の頭にかあっと血が昇るのを感じた。
「本気って、人の命をなんだと思ってるのよあんたは!」
「はあ? 話ちゃんと通じてる? 私、殺されそうになったんだけど」
「それでも、人を殺すなんて発想おかしいでしょ!? たとえそいつが殺人犯だろうとなんだろうと」
誰も殺さず、誰も殺させずに事件を解決してきた千枝だからこそ言える言葉だった。
誰も死なせたくないという想いがあったからマヨナカテレビに纏わる連続殺人事件を解決できたのだ。
他の仲間だって皆同じ想いでここにいるはずだ。
そう信じれるからこそ、千枝は声を大にして叫んだ。
殺人なんて、しちゃいけないと。
千枝は、その時の咲夜の顔を見て、思わずぞっとした。
無表情。そこからは何の感情も読み取ることができない。
ただ、その瞳。そこには、本当に何の感慨もなく人を殺せるような、氷のような冷たさがあった。
「そろそろその鬱陶しい偽善者じみた正義感はなりを潜めてもらいたいわね」
「なっ!?」
思わず面喰ってしまった。
まさかここまで直接的に否定されるとは思ってもみなかったのだ。
「人の命は尊い。尊重すべきだ。はっ。まったくもって冗談じゃないわ。なんだってそんな価値観を押し付けられなきゃいけないのよ。オタコンだっけ? 同情するわ。こんな餓鬼と一緒じゃ、疲れて仕方がないでしょう」
再び頭に血が昇る。
ここにきて、千枝は確信した。この女と自分は、おそらく一生そりが合わないだろうと。
「あんたねぇ! 言わせておけば好き勝手に言ってるけど、人の命は大切なものだって学校で教わらなかったわけ!? そんな当たり前なことも理解できないあんたの方がよっぽどおかしいわよ! 誰かを助けられるのなら助けるのが人間として当たり前でしょ! 殺すなんて論外よ!」
「へぇ。人を助けるのが当たり前ねぇ。それは凄いわ。尊敬しちゃう」
誰が聞いても馬鹿にしているとしか思えない。
千枝が再び食ってかかろうと身を乗り出すが、それをオタコンが前に出て諫めた。
「まあまあ、二人とも落ちつこうよ。とりあえずは情報交換でもしてさ。ね?」
千枝としてはまだまだ言い足りないものがあったが、そう言われれば引き下がるしかない。
自分が間違っているなんて甚だ思わないが、それでも今は少しでも情報が欲しい時なのだ。
無表情。そこからは何の感情も読み取ることができない。
ただ、その瞳。そこには、本当に何の感慨もなく人を殺せるような、氷のような冷たさがあった。
「そろそろその鬱陶しい偽善者じみた正義感はなりを潜めてもらいたいわね」
「なっ!?」
思わず面喰ってしまった。
まさかここまで直接的に否定されるとは思ってもみなかったのだ。
「人の命は尊い。尊重すべきだ。はっ。まったくもって冗談じゃないわ。なんだってそんな価値観を押し付けられなきゃいけないのよ。オタコンだっけ? 同情するわ。こんな餓鬼と一緒じゃ、疲れて仕方がないでしょう」
再び頭に血が昇る。
ここにきて、千枝は確信した。この女と自分は、おそらく一生そりが合わないだろうと。
「あんたねぇ! 言わせておけば好き勝手に言ってるけど、人の命は大切なものだって学校で教わらなかったわけ!? そんな当たり前なことも理解できないあんたの方がよっぽどおかしいわよ! 誰かを助けられるのなら助けるのが人間として当たり前でしょ! 殺すなんて論外よ!」
「へぇ。人を助けるのが当たり前ねぇ。それは凄いわ。尊敬しちゃう」
誰が聞いても馬鹿にしているとしか思えない。
千枝が再び食ってかかろうと身を乗り出すが、それをオタコンが前に出て諫めた。
「まあまあ、二人とも落ちつこうよ。とりあえずは情報交換でもしてさ。ね?」
千枝としてはまだまだ言い足りないものがあったが、そう言われれば引き下がるしかない。
自分が間違っているなんて甚だ思わないが、それでも今は少しでも情報が欲しい時なのだ。
「何故?」
しかし、咲夜にはそんな気は一切ないようだった。
「……君も、ここで生き残るには情報は必要だろう?」
「まあ、そうね。でも、あなた達と情報交換して得るものがあるとは思えないわね」
確かに、オタコンも千枝も、これといって話せるような情報は持っていない。あるとすれば先程のゲームの話か、自分の知り合い、または自分の世界のことくらいだろう。
「お嬢様は一人でもやっていけるだろうし、私も誰かと群れる気は毛頭ない。本当なら少しはここで時間を潰してもいいんだけど、そこの餓鬼が五月蠅そうだしさっさと行くわ」
「ちょ、ちょっと! そんな勝手が──」
「私ね。人間って種族が世界で一番嫌いなの」
その刺々しい口調と、未だ研ぎ澄まされたナイフのような光を放つ瞳から、彼女が本気で人間を毛嫌いしていることがわかった。
「じゃ、そういうわけだから」
そう言ってスタスタと歩いて行ってしまう咲夜を、オタコンが慌てて止めた。
「ま、待って!」
オタコンは、このまま咲夜を行かせてもよかった。彼の目的は仲間との合流であり、不確定要素を抱え込むのは得策ではない。
ましてや咲夜は他人と協調するという概念すらも存在しないような人間だ。そんな人間を呼び止めてもメリットなどない。
オタコンはそのように判断していた。それなのに、声をかけてしまった。
「……なに?」
「君は僕達の貴重なアイテムを消費したんだよ。なら、相応の代価を支払うのが大人ってものじゃないかな」
「脱げってこと?」
「ち、違うよ! そうじゃなくて、えーっと……ぼ、僕達のボディーガードというか、戦力としてしばらく行動を共に出来ないかっていう提案だよ」
咲夜は黙っている。どうやら考えているようだ。
なんだかんだと言っても、貴重なアイテムを分け与えられたことに対しては恩義を感じてくれているようだ。
「……じゃあこれでどう?」
そう言って、咲夜はおもむろにボールを取り出して適当に放り投げる。すると、淡い光と共に中から奇妙な動物が現れた。
「……ピカ?」
「何これ、かっわいい~」
千枝はボールから出てきたねずみポケモン、ピカチュウを抱き寄せ、頬ずりし始めた。
ピカチュウはそれを少し嫌そうにしながらも甘んじて受けているようだ。
「かなりの戦力になることは保証するわ。身を持って実践済みだし」
それほどの支給品を相手に渡す程に、彼女は人間と一緒にはいたくないということらしい。
「じゃ、これで言うことはないわね」
「ま、待ってくれ!」
それでもオタコンは引き止める。
咲夜も、さすがに鬱陶しそうに眉をひそめた。
「まだ何かあるの?」
「え、えーっと……」
オタコンにはもう彼女を呼び止める理由がない。
しかし、咲夜にはそんな気は一切ないようだった。
「……君も、ここで生き残るには情報は必要だろう?」
「まあ、そうね。でも、あなた達と情報交換して得るものがあるとは思えないわね」
確かに、オタコンも千枝も、これといって話せるような情報は持っていない。あるとすれば先程のゲームの話か、自分の知り合い、または自分の世界のことくらいだろう。
「お嬢様は一人でもやっていけるだろうし、私も誰かと群れる気は毛頭ない。本当なら少しはここで時間を潰してもいいんだけど、そこの餓鬼が五月蠅そうだしさっさと行くわ」
「ちょ、ちょっと! そんな勝手が──」
「私ね。人間って種族が世界で一番嫌いなの」
その刺々しい口調と、未だ研ぎ澄まされたナイフのような光を放つ瞳から、彼女が本気で人間を毛嫌いしていることがわかった。
「じゃ、そういうわけだから」
そう言ってスタスタと歩いて行ってしまう咲夜を、オタコンが慌てて止めた。
「ま、待って!」
オタコンは、このまま咲夜を行かせてもよかった。彼の目的は仲間との合流であり、不確定要素を抱え込むのは得策ではない。
ましてや咲夜は他人と協調するという概念すらも存在しないような人間だ。そんな人間を呼び止めてもメリットなどない。
オタコンはそのように判断していた。それなのに、声をかけてしまった。
「……なに?」
「君は僕達の貴重なアイテムを消費したんだよ。なら、相応の代価を支払うのが大人ってものじゃないかな」
「脱げってこと?」
「ち、違うよ! そうじゃなくて、えーっと……ぼ、僕達のボディーガードというか、戦力としてしばらく行動を共に出来ないかっていう提案だよ」
咲夜は黙っている。どうやら考えているようだ。
なんだかんだと言っても、貴重なアイテムを分け与えられたことに対しては恩義を感じてくれているようだ。
「……じゃあこれでどう?」
そう言って、咲夜はおもむろにボールを取り出して適当に放り投げる。すると、淡い光と共に中から奇妙な動物が現れた。
「……ピカ?」
「何これ、かっわいい~」
千枝はボールから出てきたねずみポケモン、ピカチュウを抱き寄せ、頬ずりし始めた。
ピカチュウはそれを少し嫌そうにしながらも甘んじて受けているようだ。
「かなりの戦力になることは保証するわ。身を持って実践済みだし」
それほどの支給品を相手に渡す程に、彼女は人間と一緒にはいたくないということらしい。
「じゃ、これで言うことはないわね」
「ま、待ってくれ!」
それでもオタコンは引き止める。
咲夜も、さすがに鬱陶しそうに眉をひそめた。
「まだ何かあるの?」
「え、えーっと……」
オタコンにはもう彼女を呼び止める理由がない。
しかし、どうしても咲夜と行動を共にしたかった。
あの冷たい瞳。この世界で、自分以外誰も信じていないような瞳。狼のような気高い孤独な心。
昔、自分が好意を抱いた、あのスナイパーウルフのような……。
このまま行かせれば、彼女はきっと、あの時のウルフと同じ結末を辿る。そんな非論理的な考えがオタコンの中に確信としてあった。
「き、君に……その。こ、好意を…抱い…たんだ」
「「はあ?」」
咲夜だけでなく、千枝までもが疑問の声を漏らしていた。
先程会って少し話をしただけだというのに、そんなことを言われれば誰でもそうなる。
あの冷たい瞳。この世界で、自分以外誰も信じていないような瞳。狼のような気高い孤独な心。
昔、自分が好意を抱いた、あのスナイパーウルフのような……。
このまま行かせれば、彼女はきっと、あの時のウルフと同じ結末を辿る。そんな非論理的な考えがオタコンの中に確信としてあった。
「き、君に……その。こ、好意を…抱い…たんだ」
「「はあ?」」
咲夜だけでなく、千枝までもが疑問の声を漏らしていた。
先程会って少し話をしただけだというのに、そんなことを言われれば誰でもそうなる。
「……ぷ」
「あははははは!!」
しかし咲夜は、何故か腹を抱えて笑い出した。
「あーおもしろ。初対面でそんなこと言われたの生まれて初めてだわ」
笑うだけ笑うと、咲夜は千枝に抱えられているピカチュウをボールに仕舞った。
「あー! 何すんのよ!! 人がせっかく楽しんでるってのに!!」
「一応私が飼い主だから。ペットが嫌がることはさせないようにするのが飼い主の務めでしょ?」
ぎゃーぎゃーと喚く千枝を、咲夜は冷めた調子で受け流す。そんなやり取りをしばらく繰り返してから、咲夜はオタコンの方を振り向いた。
「仕方がないから少しの間だけ一緒に行動してあげるわ。ただし、あなた達と私は仲間じゃない。この行動が私にとって害にしかならないと分かればすぐにでも出て行くわよ」
オタコンはしばらくぽかんとしていたが、やがて慌てて頷いた。
オタコンにとって、この邂逅は決して恋の先駆けとは言えないだろう。
しかし、過去の清算は出来るかもしれない。ウルフが死ぬ時、何も出来ず、ただ銃を持って行ってやることしか出来なかった自分が、ウルフのような女性を今なら助けることが出来るかもしれない。
「あははははは!!」
しかし咲夜は、何故か腹を抱えて笑い出した。
「あーおもしろ。初対面でそんなこと言われたの生まれて初めてだわ」
笑うだけ笑うと、咲夜は千枝に抱えられているピカチュウをボールに仕舞った。
「あー! 何すんのよ!! 人がせっかく楽しんでるってのに!!」
「一応私が飼い主だから。ペットが嫌がることはさせないようにするのが飼い主の務めでしょ?」
ぎゃーぎゃーと喚く千枝を、咲夜は冷めた調子で受け流す。そんなやり取りをしばらく繰り返してから、咲夜はオタコンの方を振り向いた。
「仕方がないから少しの間だけ一緒に行動してあげるわ。ただし、あなた達と私は仲間じゃない。この行動が私にとって害にしかならないと分かればすぐにでも出て行くわよ」
オタコンはしばらくぽかんとしていたが、やがて慌てて頷いた。
オタコンにとって、この邂逅は決して恋の先駆けとは言えないだろう。
しかし、過去の清算は出来るかもしれない。ウルフが死ぬ時、何も出来ず、ただ銃を持って行ってやることしか出来なかった自分が、ウルフのような女性を今なら助けることが出来るかもしれない。
オタコンは過去を清算するために戦ってきた。メタルギアという自分が生んだ怪物を悪用されないように。
過去を悔いてばかりいた自分。時代に、権力に翻弄され何も出来なかった自分。スネークと出会うことで、そんな自分を変えることができた。
過去はずっと自分に付き纏う。それはこの殺し合いでもそうだ。だからこそオタコンは、それを振り払うのではなく抱えて生きて行こうと決めた。
全てを抱え切ることはできないだろうが、それでも近くにいる女の子二人くらいは守ってやれるかもしれない。
千枝は自分とは少し考え方が違う。まるで昔の自分のように、世界の本当の暗黒さを知らない。しかし、その頑なで純粋な正義感はきっと守るべきものだ。
咲夜だって冷酷かもしれないが、きっとどこかに優しさがあるはずだ。ウルフがそうであったように、本当の孤独を知る人間は、きっと人に優しくできる。
過去を悔いてばかりいた自分。時代に、権力に翻弄され何も出来なかった自分。スネークと出会うことで、そんな自分を変えることができた。
過去はずっと自分に付き纏う。それはこの殺し合いでもそうだ。だからこそオタコンは、それを振り払うのではなく抱えて生きて行こうと決めた。
全てを抱え切ることはできないだろうが、それでも近くにいる女の子二人くらいは守ってやれるかもしれない。
千枝は自分とは少し考え方が違う。まるで昔の自分のように、世界の本当の暗黒さを知らない。しかし、その頑なで純粋な正義感はきっと守るべきものだ。
咲夜だって冷酷かもしれないが、きっとどこかに優しさがあるはずだ。ウルフがそうであったように、本当の孤独を知る人間は、きっと人に優しくできる。
「すぐに放送が始まるから、準備をしておいた方がいいよ」
オタコンがそう告げると、二人はそれぞれ自分のデイバックを漁り始めた。
「にしてもさ、あんたってほんとに強いの? 全然そうは見えないけど」
「強さなんて私は重要視してないわ。勝つか負けるか。生きるか死ぬか。それが殺し合いでしょ。……ああ、あなたには“殺す”は禁句だったっけ」
「……もういい。どうせ言ってもわかんないんだし」
「あら、殊勝な心がけね」
「……その上から目線が果てしなくむかつく」
ぶつくさと文句を言いながら千枝はペンと名簿、地図を取り出した。
咲夜も自分のそれを取り出し、千枝の方を見ないで口を開いた。
「……まあ、今の私の状態じゃ、とても勝ち抜ける気はしないわね。あのソリッド・スネークとかいう男に手も足も出なかったし」
「スネーク!? 今、スネークと言ったのかい!?」
今か今かと放送を待ち構えていたオタコンが思わず身を乗り出した。
「ああ、知り合い? ほんっと、嫌な友達を持ってるわね。どれだけ迷惑かけられたか」
自分は誰よりもスネークを知っている。伝説の英雄で、その名誉に恥じることのない男だ。
そんな男が殺し合いに? 何故だ?
有り得ない。そんな考えが即座に浮かぶが、咲夜がここで嘘をつくわけがない。そんなメリットなど彼女にはないのだ。
そんなことを考えているうちに、第一回目の放送の時間になる。
まるで、オタコンの混乱に乗じるように、マルクの声が辺りに響き渡った。
オタコンがそう告げると、二人はそれぞれ自分のデイバックを漁り始めた。
「にしてもさ、あんたってほんとに強いの? 全然そうは見えないけど」
「強さなんて私は重要視してないわ。勝つか負けるか。生きるか死ぬか。それが殺し合いでしょ。……ああ、あなたには“殺す”は禁句だったっけ」
「……もういい。どうせ言ってもわかんないんだし」
「あら、殊勝な心がけね」
「……その上から目線が果てしなくむかつく」
ぶつくさと文句を言いながら千枝はペンと名簿、地図を取り出した。
咲夜も自分のそれを取り出し、千枝の方を見ないで口を開いた。
「……まあ、今の私の状態じゃ、とても勝ち抜ける気はしないわね。あのソリッド・スネークとかいう男に手も足も出なかったし」
「スネーク!? 今、スネークと言ったのかい!?」
今か今かと放送を待ち構えていたオタコンが思わず身を乗り出した。
「ああ、知り合い? ほんっと、嫌な友達を持ってるわね。どれだけ迷惑かけられたか」
自分は誰よりもスネークを知っている。伝説の英雄で、その名誉に恥じることのない男だ。
そんな男が殺し合いに? 何故だ?
有り得ない。そんな考えが即座に浮かぶが、咲夜がここで嘘をつくわけがない。そんなメリットなど彼女にはないのだ。
そんなことを考えているうちに、第一回目の放送の時間になる。
まるで、オタコンの混乱に乗じるように、マルクの声が辺りに響き渡った。
【一日目 早朝 E-2 東】
【ハル・エメリッヒ@メタルギアシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、携帯型ゲーム機 確認済み支給品0~2
[思考]
基本方針:マルクの見極めと計画の阻止
1:スネークが……?
2:放送を聞く
3:ソリッド・スネーク、雷電との合流
4:サイボーグ忍者、リボルバー・オセロットを危険視
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
【ハル・エメリッヒ@メタルギアシリーズ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、携帯型ゲーム機 確認済み支給品0~2
[思考]
基本方針:マルクの見極めと計画の阻止
1:スネークが……?
2:放送を聞く
3:ソリッド・スネーク、雷電との合流
4:サイボーグ忍者、リボルバー・オセロットを危険視
※MGS2エンディング後、MGS4本編開始前からの参戦
【里中千枝@ペルソナ4】
[状態]:健康
[装備]:アメリカ製のライター
[道具]:基本支給品一式、万能薬×2@ファイナルファンタジー4
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1:この女(咲夜)むかつく!
2:放送を聞く
3:瀬多総司、花村陽介、天城雪子の捜索
4:足立の仕業……?
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
[状態]:健康
[装備]:アメリカ製のライター
[道具]:基本支給品一式、万能薬×2@ファイナルファンタジー4
[思考]
基本方針:この事件を解決する
1:この女(咲夜)むかつく!
2:放送を聞く
3:瀬多総司、花村陽介、天城雪子の捜索
4:足立の仕業……?
※真ENDルート、イザナミと出会う前からの参戦です。
※ペルソナはトモエです。
【十六夜咲夜@東方project】
[状態]疲労大、胸骨にヒビ、鼻の骨の陥没(治療済み、衝撃を与えるとまた陥没する恐れあり)腹部に痣、下 着 を つ け て い な い
[装備]和服、防弾チョッキ 、オタコンのコート
[道具]支給品一式(食糧はなし)、ピカチュウ@ポケモンシリーズ、自分の衣服(濡れている)、
[思考・状況]基本方針;ピエロを倒して異変解決。油断はしない。幻想郷の常識は捨てる。
0:あー、やっぱ喋れるっていいな
1:知り合いを探す為に町へ向かう。放送は移動しながら聴く。
※リボルバー・オセロットを視認しました。また、リボルバー・オセロットのことをソリッド・スネークだと思っています
※漆黒の騎士の名前を聞きました。
※FE世界の事を聞きましたが、信じてません。
※漆黒の騎士、ソリッド・スネーク(リボルバー・オセロット)、足立透は死んだと思ってます
[状態]疲労大、胸骨にヒビ、鼻の骨の陥没(治療済み、衝撃を与えるとまた陥没する恐れあり)腹部に痣、下 着 を つ け て い な い
[装備]和服、防弾チョッキ 、オタコンのコート
[道具]支給品一式(食糧はなし)、ピカチュウ@ポケモンシリーズ、自分の衣服(濡れている)、
[思考・状況]基本方針;ピエロを倒して異変解決。油断はしない。幻想郷の常識は捨てる。
0:あー、やっぱ喋れるっていいな
1:知り合いを探す為に町へ向かう。放送は移動しながら聴く。
※リボルバー・オセロットを視認しました。また、リボルバー・オセロットのことをソリッド・スネークだと思っています
※漆黒の騎士の名前を聞きました。
※FE世界の事を聞きましたが、信じてません。
※漆黒の騎士、ソリッド・スネーク(リボルバー・オセロット)、足立透は死んだと思ってます
※携帯型ゲーム機
ファイアーエムブレムと非常によく似たSRPGのゲームカセットが入ったゲーム機。
全5ステージまであり、ゲーム機に触れた参加者を自軍のキャラクターとして操れる。
ファイアーエムブレムと非常によく似たSRPGのゲームカセットが入ったゲーム機。
全5ステージまであり、ゲーム機に触れた参加者を自軍のキャラクターとして操れる。
※万能薬
異常状態を回復する薬。
異常状態を回復する薬。
時系列順で読む
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投下順で読む
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