きくぞうさんが「天井」のことを「言い間違いではなく軽妙なトークの言い回しのひとつだ」と主張しはじめたのだが、実際のところ彼にはそんなスキルは微塵も備わっておらず、その場を取り繕うために老化した言語中枢をしゃかりきに鞭打ってなんとか格好のつく言い回しをひねり出そうとして、「カタカナを使っとけば、とりあえずかっこよくなるんじゃね?」という昭和的価値観から生まれた「トーク」という言葉と、賢さを象徴するものとして漢字の熟語を使えばなんとか頭良さそうに見えんるじゃないかという浅はかな猿知恵から生み出された「話術」という言葉を用意したまではいいものの、ここまで無理やり働かされていた彼の言語中枢は このタイミングであえなく力尽きてしまったようで、思いついた単語をなんの加工もなくそのまま吐き出してしまった結果、「トーク話術」という同じ意味の言葉をふたつ繋げただけの安直で違和感満載のフレーズとなってしまった。
この「言い間違いに反論しようとした言葉で言い間違える」という様式は、そんな力もないのに背伸びしようとするとロクなことにならないという、現代の寓話のようなホロ苦い教訓を我々に残したのであった。