Vaporwave(ヴェイパーウェイヴ)は、2010年代初頭にインターネット上で誕生した音楽ジャンルおよび視覚表現を含むカルチャーの総称である。主に1980年代から1990年代の商業音楽、企業CM、ショッピングモールのBGMなどをサンプリング・加工し、ノスタルジックかつ批評的な文脈で再構成された作品群が特徴とされる。
音楽作品に加えて、古いOSのインターフェースやギリシャ彫刻、ピンクや紫を基調とした配色など、視覚的な「Vaporwave aesthetic」も含めて一つの文化圏を形成している。
音楽作品に加えて、古いOSのインターフェースやギリシャ彫刻、ピンクや紫を基調とした配色など、視覚的な「Vaporwave aesthetic」も含めて一つの文化圏を形成している。
概要
Vaporwaveは単なる音楽ジャンルとしてではなく、インターネット文化、ミーム、視覚芸術、批評的態度を内包した複合的現象であるとされる。
その成り立ちは一種の自己言及的なカルチャー操作によって支えられており、ジャンルそのものが「ジャンルっぽさ」を先行させることで、実体を形成していった。
その成り立ちは一種の自己言及的なカルチャー操作によって支えられており、ジャンルそのものが「ジャンルっぽさ」を先行させることで、実体を形成していった。
起源と初期の戦略
Vaporwaveの起源には、アメリカのトラックメイカーVektroid(ヴェクトロイド)の存在が大きい。彼女は2010年頃よりMacintosh Plus、情報デスクVIRTUAL、New Dreams Ltd.などの複数の名義でVaporwave作品を連続的に発表。さらに、自主レーベルNew Dreams Ltd.を立ち上げ、まるで多数のアーティストによってジャンルが同時多発的に展開されているかのような流行っている風景を演出した。
このような「流行っているように見せる」戦略は、Vaporwaveが初期段階で注目を集める契機となり、後発のクリエイターによる追随、コミュニティ形成、ビジュアル表現の発展へとつながった。
現代4コマとの共通点
Vaporwaveの成立と展開は、同時期に日本で提唱された表現形式「現代4コマ」との間にいくつかの類似点を見せる。
少数から始まり、量によって文化が生まれる
どちらの文化も、ごく少人数の創作者が大量の作品を発表したことがきっかけである。
VaporwaveではVektroidが、現代4コマではいとととが、大量の作品を継続的に発表することで、「何かが始まっているらしい」という雰囲気をSNS上で醸成した。
VaporwaveではVektroidが、現代4コマではいとととが、大量の作品を継続的に発表することで、「何かが始まっているらしい」という雰囲気をSNS上で醸成した。
過去の形式を再利用し、ズラすことで新たな価値を生む
Vaporwaveは企業BGMやCM音声、古いソフトウェアのUIなどを再構成し、現代4コマは4コマ漫画の形式を借りつつ、漫画に囚われないことで新しい解釈の余地を生んだ。
内輪ノリ的出発から徐々に拡大
両者とも、初期は一部のクリエイター・ユーザーの内輪的な遊びや実験として始まり、やがてその空気感に魅了された人々が次第に増え、文化として定着していった。
余白があるから語りたくなる
Vaporwaveも現代4コマも、明確な意味や意図をあえて提示せず、受け手の解釈に委ねる構造を持つ。そのため、作品の意味や価値について考察したり、語り合ったりする余地が広く残されており、批評が文化の一部として機能している。
文化の定着と拡張
Vaporwaveは単に音楽ジャンルに留まらず、ファッション、映像、インターネットミーム、ゲームデザインにまで影響を及ぼしており、その視覚的世界観(aesthetic)だけを消費・共有する層も存在する。
この点もまた現代4コマと類似しており、必ずしも制作する側だけでなく、見る専や紹介する人々によって文化が定着・拡散していく構造が共有されている。
評価と批評性
Vaporwaveは、消費社会への皮肉・懐古主義の批評・ポスト資本主義的な想像力の試みとしても評価されることがある。一方で、ジャンルとしての明確な境界は存在せず、模倣と引用の連鎖を通じて肥大化・多様化したゆえの曖昧さもまた特徴の一つである。