いととと(Itototo)は、日本の創作家・アーティスト。現代4コマの提唱者として知られる 。主な活動領域は4コマ漫画の枠組みを現代美術的手法で再発明した現代4コマ、デジタルアイデンティティの概念VirtuNym、概念創作(例:「既存漢字グランプリ」「リプナスト」など)、さらに音楽ユニット「イトトトホタル」での楽曲制作など多岐にわたる。Twitterを中心に2018年頃から活動を開始し、独創的な作品群で注目を集めた。いとととの作風は、「取るに足らない」と見過ごされがちな日常の断片やアイデアを取り上げて作品化する姿勢に特色がある。
概要
いとととは元々伝統的な四コマ漫画を描いていたが、次第に従来の枠から逸脱し「漫画ではない4コマ」を追求するようになった。そうした実験的作品群は後に自ら命名した「現代4コマ」という概念となり、ネット上でひとつのジャンルとして確立されている。現代4コマとは、四コマ形式を用いつつも内容が従来の漫画文法に収まらない前衛的な表現を指し、抽象絵画やレディメイド芸術など美術の手法を四コマに持ち込んだ前衛的運動である。いとととは現代4コマの創始者として自ら作品を多数発表するとともに、他の制作者たちの参加を歓迎し、作品への批評文化を積極的に取り入れた。彼の呼びかけによりコミュニティ内で活発な議論や批評が行われるようになり、創作と鑑賞の双方から現代4コマ文化を盛り上げていった。また、2023年以降は様々な概念を創作する活動にも本格的に乗り出している。身の回りの街中から着想を得た概念を次々と発見・提唱し(例:「しまじろう」や「来るもの拒マンホール」等) 、従来にない視点で日常を捉え直す試みを展開している。さらに、自身のデジタル上の分身ともいえるVirtuNym(ヴァーチュニム)の構想も提唱し、仮想空間における「もう一人の自分」というデジタル・アイデンティティの可能性を探求している。一方で音楽分野にも活動を広げ、電子音楽クリエイターの舞風ほたると組んだユニット「イトトトホタル」にて、楽曲を制作・発表している。
現代4コマの提唱者として
いとととは、従来の四コマ漫画の定型から意図的に逸脱し、現代4コマという新たな表現ジャンルを提唱した。現代4コマとは、四コマという形式を単なる物語の器としてではなく、芸術・批評・詩・ミームのフレームとして再定義しようとする前衛的運動であり、「内容」ではなく「枠」そのものを思考・表現の対象とする点に革新性がある。
このジャンルの萌芽は、いとととがSNS上に投稿し始めた一連の四コマ作品に端を発する。これらは起承転結やキャラクターといった従来の漫画文法から解き放たれ、視覚的違和感や意味の断絶によって観る者に「これは何なのか?」という問いを投げかける表現となっていた。その特異性は次第に注目を集め、同様の実験を志す制作者たちが現れると、いとととは積極的に交流・批評を行い、ジャンルとしての現代4コマの成立を後押ししていった。
批評文化の導入
いとととによる現代4コマのもうひとつの革新は、「批評そのものを作品の一部とする」という構造の導入である。創作者として活動を続ける傍ら、いとととは他の参加者の作品に対して積極的に感想や考察を寄せ、自身批評家として場を盛り上げる姿勢を取った。特に彼が述べた「作品を作らなくても、批評家として場を盛り上げてくれるなら大歓迎だ」という発言は象徴的であり、制作/鑑賞/反応という役割の境界を解体し、参加者全体による共同的な作品生成の場として現代4コマを育てていった。
この思想は、「作品の投稿」だけでなく「反応」「引用」「考察」までもが創作と同等に評価されるという、ネット時代のアート運動体としてのあり方を先取りするものであり、結果的に現代4コマは単なる投稿フォーマットではなく、創作文化そのものを含んだ場として認識されるに至った。
アート手法の導入と独自表現の開発
いとととは、美術の文脈における表現技法を四コマ形式に本格的に導入した最初の人物ともされている。抽象表現主義に通じる視覚的構成や、レディメイド的手法による既存物の転用、意味や文脈の脱構築といったコンセプトを四コマに応用することで、漫画というジャンルに現代美術的な視座を持ち込んだ。
このアプローチはやがて、単なる引用ではない、現代4コマ独自の技法を生み出す段階へと進化する
影響
いとととの作品群は「インターネット美学」とも言うべき独特のノスタルジーや無意味の美を湛えており、これはVaporwaveやWeirdcoreなど海外発のインターネット・アートムーブメントにも通じる感性と指摘される。一方、日本のネットコミュニティにおいてもいとととの活動はNカルチャーの文脈で語られることがある。シュールさと実験精神に満ちた作品群は、ニコニコ動画やTwitter上のユーザーによってリアルタイムで共有・消費され、コメントや派生作品を生み出す循環が起きている。これは草の根的な創作文化の盛り上がりであり、いとととはその中心的人物の一人となっている。
特に評価されるのは、いとととが創作のハードルを大きく下げた点である 。些細な着想を次々と形にして発信する彼の姿勢は、クリエイティビティの下方拡張であり、創作の民主化を底辺から成し遂げるものだと評されている。いとととの登場によって「取るに足らないことでも誇張して発表していいのだ」という風潮が広まり、多くの一般ユーザーが創作・発信に参加するようになったとも言われる。その純粋なまでの創作意欲とサービス精神は見る者を魅了し、「いとととという存在自体が我々に創作への敷居の低さと楽しさを示してくれている」との賞賛もある。また、現代4コマで培われた批評文化の醸成も見逃せない功績である。いとととは「作品を作らなくても批評家として場を盛り上げてくれるなら大歓迎だ」と述べており 、創作コミュニティ内における鑑賞者の積極的な関与を促した。このように創作者と受け手の境界を融解させる姿勢は、現代の参加型ネット文化を象徴するものとして高く評価されている。
いとととの生み出す作品や概念は、一見するとナンセンスで奇抜だが、その背後には「日常や既成概念への新たな視座を提示する」という哲学が一貫している。
空耳アワーでの実績
いとととは、テレビ番組『タモリ倶楽部』内の「空耳アワー」において、19回の採用実績を持つ投稿者である。
採用者に贈られるジャンパー・Tシャツ・ミミかき・手ぬぐい・メガホンの全賞品を唯一コンプリートした投稿者であり、ジャンパー評価を2度受けた唯一の記録保持者でもある。
採用者に贈られるジャンパー・Tシャツ・ミミかき・手ぬぐい・メガホンの全賞品を唯一コンプリートした投稿者であり、ジャンパー評価を2度受けた唯一の記録保持者でもある。