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ワイマリウィ
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ワイマリウィ/Waimariwi
オーストラリア北部のアーネムランドに住むアボリジニ、ヨルング(ヨイングとも)族の「夢の時神話」に登場する姉妹ワウィラクの内、姉の名。妹はボアリリ。
2人はローパー川付近のワワラグ地方からやって来たが、1人は父と、もう1人は兄と近親相姦をしたため、入国を拒まれた。ワイマリウィは子を1人産み、さらに妊娠していた。妹は思春期を迎えたばかりだった。妹が女児を産んでいたとする場合もある。
姉妹が、石の鏃(やじり)をたくさん入れた籠を背負ってあちこち土地を移動すると、大地は踏み均されて様々な形になった。その道中で遭遇した獣や様々な物に対して、槍を向けては名前をつけていった。さらに、通り過ぎた土地でそれぞれ異なる言語を話した。途中で根を集めたり、2匹の牝飼い犬の手助けで小動物を捕まえては名前をつけたりした。
最後に姉妹は、大きな沼(あるいは池)に辿り着いた。ここには蛇ユルングが棲んでいるため、「岩のニシキヘビの背」と呼ばれる泉だとされることもある。2人はユルングを恐れていたが、既に日が暮れていたため、籠を置き、旅の疲れを癒すために休むことにした。姉はこの地で出産した。姉妹は槍で仕留めた獲物を煮るために火を起こし、夕食の準備を始めた。しかし根・トカゲ・ワラビーなどの食べ物が、沼の神聖さによって火から飛び出し、沼に落ちてしまう。やがて激しい雷雨が起こると、姉妹は雨で産まれたばかりの赤子を洗った。その産褥の血と、妹の経血が沼に流れ落ちた(あるいは、姉が水を汲みに行って経血で沼を汚した)。姉妹は雷を鎮めるため、小屋の中の火の周りで踊り、聖なる歌を歌った。すると雷は収まったが、血の臭いでユルングが目を覚まし、上体を水面から出して辺りを見回した。姉妹がこの蛇を見ると、その頭上に虹がかかっていたという。姉妹は近づいてくる大蛇を止めるため、足を打ち、互いの体を揺すり、手を取り合って踊り出した。これによって血はみるみる一面に広がり、臭いで満ちた。ユルングは血に引き寄せられ、巣穴から出て口を大きく開けた。ユルングはまず体を伸ばして立ち上がり、身をかがめて小屋の中に頭を入れた。この時、沼の水は大地に溢れ出した。姉妹は踊り疲れ、小屋の中で寝てしまっていた。その隙に蛇は姉妹と子らに巻き付き、体を舐めて鼻に噛み付いてから、鏃と犬も含めた全てを呑み込んでしまった。呑み込まれた姉妹らはユルングの腹の中で寝ていたが、1匹の蟻が腹を刺した痛みでユルングが飛び跳ねると、その弾みで皆を吐き出した。それから蛇は再び姉妹を呑み込み、起き上がった。蛇は天に昇って(あるい東を向いて)、他の大蛇たちに人間を呑み込んだことを自慢した。しかしそれが証明できないため、地上に降りて彼女たちを吐き出してみせた。緑色の蟻が姉妹や子らに噛み付くと、彼女らは生き返った。その後、彼女らを心配した男たちが探しに来ると、姉妹は男たちに雨や洪水を止める歌や儀式の方法を教えたという。
別のパターンでは、蛇は姉妹を呑み込んだまま沼に戻ってしまい、そこは聖なる沼とされたという。
この神話は成人儀礼の際に演じられ、ヨルング族の女性が姉妹を、男性が蛇を演じる。蛇が子を呑み込む代わりに、女人禁制の聖域に男児を連れて行き、置き去りにするというもので、やがて一人前の成年として村に戻った子らは、大蛇から吐き出されたことを象徴したという。
2人はローパー川付近のワワラグ地方からやって来たが、1人は父と、もう1人は兄と近親相姦をしたため、入国を拒まれた。ワイマリウィは子を1人産み、さらに妊娠していた。妹は思春期を迎えたばかりだった。妹が女児を産んでいたとする場合もある。
姉妹が、石の鏃(やじり)をたくさん入れた籠を背負ってあちこち土地を移動すると、大地は踏み均されて様々な形になった。その道中で遭遇した獣や様々な物に対して、槍を向けては名前をつけていった。さらに、通り過ぎた土地でそれぞれ異なる言語を話した。途中で根を集めたり、2匹の牝飼い犬の手助けで小動物を捕まえては名前をつけたりした。
最後に姉妹は、大きな沼(あるいは池)に辿り着いた。ここには蛇ユルングが棲んでいるため、「岩のニシキヘビの背」と呼ばれる泉だとされることもある。2人はユルングを恐れていたが、既に日が暮れていたため、籠を置き、旅の疲れを癒すために休むことにした。姉はこの地で出産した。姉妹は槍で仕留めた獲物を煮るために火を起こし、夕食の準備を始めた。しかし根・トカゲ・ワラビーなどの食べ物が、沼の神聖さによって火から飛び出し、沼に落ちてしまう。やがて激しい雷雨が起こると、姉妹は雨で産まれたばかりの赤子を洗った。その産褥の血と、妹の経血が沼に流れ落ちた(あるいは、姉が水を汲みに行って経血で沼を汚した)。姉妹は雷を鎮めるため、小屋の中の火の周りで踊り、聖なる歌を歌った。すると雷は収まったが、血の臭いでユルングが目を覚まし、上体を水面から出して辺りを見回した。姉妹がこの蛇を見ると、その頭上に虹がかかっていたという。姉妹は近づいてくる大蛇を止めるため、足を打ち、互いの体を揺すり、手を取り合って踊り出した。これによって血はみるみる一面に広がり、臭いで満ちた。ユルングは血に引き寄せられ、巣穴から出て口を大きく開けた。ユルングはまず体を伸ばして立ち上がり、身をかがめて小屋の中に頭を入れた。この時、沼の水は大地に溢れ出した。姉妹は踊り疲れ、小屋の中で寝てしまっていた。その隙に蛇は姉妹と子らに巻き付き、体を舐めて鼻に噛み付いてから、鏃と犬も含めた全てを呑み込んでしまった。呑み込まれた姉妹らはユルングの腹の中で寝ていたが、1匹の蟻が腹を刺した痛みでユルングが飛び跳ねると、その弾みで皆を吐き出した。それから蛇は再び姉妹を呑み込み、起き上がった。蛇は天に昇って(あるい東を向いて)、他の大蛇たちに人間を呑み込んだことを自慢した。しかしそれが証明できないため、地上に降りて彼女たちを吐き出してみせた。緑色の蟻が姉妹や子らに噛み付くと、彼女らは生き返った。その後、彼女らを心配した男たちが探しに来ると、姉妹は男たちに雨や洪水を止める歌や儀式の方法を教えたという。
別のパターンでは、蛇は姉妹を呑み込んだまま沼に戻ってしまい、そこは聖なる沼とされたという。
この神話は成人儀礼の際に演じられ、ヨルング族の女性が姉妹を、男性が蛇を演じる。蛇が子を呑み込む代わりに、女人禁制の聖域に男児を連れて行き、置き去りにするというもので、やがて一人前の成年として村に戻った子らは、大蛇から吐き出されたことを象徴したという。
参考文献
- キャロル・ローズ著/松村一男監訳『世界の怪物・神獣事典』原書房
- フェルナン・コント著/蔵持不三也訳『ヴィジュアル版ラルース 世界の神々神話百科』原書房