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ロロ・キドゥル
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gensousyusyu
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ロロ・キドゥル/Loro Kidul
インドネシアのジャワ島南海岸で信仰される海の女神。
美しい女神や醜い女、レプラを病む女など様々な姿に変身し、地上に洪水・旱魃・疫病・不作や鼠害をもたらすこともある。
伝承によれば、元々ロロ・キドゥルは西ジャワのパジャジャラン王国の女王だったが、結婚を嫌がったため、男装して王宮を抜け出し、山で禁欲生活を行っていた。後に南海に王宮を築いた。
また別説では、若い頃にレプラ(癩病)を患い、南海岸近くの井戸で水浴して治療していた。ある日顔を洗おうとして水面を覗き込むと、そこに映った自分の姿に驚き、海に飛び込んだ。以降、霊界の住人になったという。
他にもこのような別説がある。その地の王には息子ができず、第2王妃に息子を産ませた。すると第2王妃は、第1王妃とその娘を疎んじるようになり、邪悪な巫女に頼んで2人に呪いをかけた。病に倒れた第1王妃は、自身の病気の原因を森の聖者に話した。聖者は虎を遣わして巫女を退治した。呪いで醜い姿になってしまった第1王妃の娘は放浪し、南の海岸沿いに来た時、海から「待っている」と婿の声が聞こえた。彼女は海に身を投じたが、海に婿などおらず、悲しみに暮れた娘はロロ・キドゥルとなった。以降、彼女へ供え物をしないと、怒りを買って海で死ぬことになるという。
ロロ・キドゥルは民話や伝承にも登場する。ある日、父と共にイワツバメの巣を獲りに行った少年が空腹のあまり、彼女への供物をつまみ食いしてしまった。するとロロ・キドゥルは怒って少年を洞窟に棲むトカゲに変えてしまったという。
別の物語では、ガムラン楽師である兄弟の兄が急死し、弟が師匠に理由を訊くと「ロロ・キドゥルに連れ去られた」と言う。弟は師匠の助言で南の海の宮殿を訪れることを決めた。河口から海を見ると、海の代わりに立派な宮殿が目に入った。宮殿にいた精霊に尋ねると、「女王の息子がムラピ火山の王女を嫁に迎えるので、祝いのために皆が集まって、歌って踊る」と言う。宮殿の大広間では兄が太鼓を叩いていた。弟は兄に一緒に帰るよう説得するが、兄は、給料・アヘン・おいしい食べ物があるために拒んだ。すると、その2人の言い合いを聞きに寄った精霊が気絶してしまった。精霊の長老によると、人間の生臭さで気を失ってしまったのだという。その長老も気絶してしまい、その後気を取り戻すと、兄弟に帰るよう助言し、帰りの旅費を渡した。兄弟が河口から宮殿を振り返ると、そこには海しかなかったという。
カラン・ボロン地区では特に信仰が盛んで、新たな収穫の前に必ずロロ・キドゥルの寝床へ供物が供えられる。また、女神の怒りを買うと言われる緑色の服を着ることを避けるという。ヒンドゥーやイスラムの影響以前から信仰されていた女神で、インドネシアのジョクジャカルタでは王家スルタンが守護神として崇拝する。
16世紀後半、マラタム王朝創始者セナパティはロロ・キドゥルと結婚し、彼女に従うあらゆる霊と婚姻関係を結ぼうとした。ある夜、セナパティがジョクジャカルタのパラン・トリティスの海岸近くで瞑想しているとロロ・キドゥルが現れ、セナパティを自分の宮殿に招き、3日3晩愛し合った。セナパティは彼女に求婚したが、ロロ・キドゥルは南海を統べる地位を選んだ。だがセナパティには精霊や悪霊を克服する術を教え、さらにセナパティの子孫に永遠の庇護を与え続け、その子孫のみが彼女の姿を見ることができたという。
ジャワ島中心部の宮廷では、セナパティとロロ・キドゥルの結婚を記念する神聖な儀式が行われる。王は即位の記念日に「ベドヨ・クタワン」という舞踏を見学する。9人の女性が踊り手として参加するが、それにはロロ・キドゥルも含まれる。しかしその姿は王にしか見えないという。
王の誕生日には王の衣類をパラン・トリティスまで厳かに運び、海に流す。すると海から女神が従者を従え、恐ろしい嵐となって現れるという。船人を引きつけて事故を起こさせるといわれ、漁師たちはロロ・キドゥルに祈って事故を避ける。
名のロロは「未婚の娘」「処女」、キドゥルは「南」の意。
美しい女神や醜い女、レプラを病む女など様々な姿に変身し、地上に洪水・旱魃・疫病・不作や鼠害をもたらすこともある。
伝承によれば、元々ロロ・キドゥルは西ジャワのパジャジャラン王国の女王だったが、結婚を嫌がったため、男装して王宮を抜け出し、山で禁欲生活を行っていた。後に南海に王宮を築いた。
また別説では、若い頃にレプラ(癩病)を患い、南海岸近くの井戸で水浴して治療していた。ある日顔を洗おうとして水面を覗き込むと、そこに映った自分の姿に驚き、海に飛び込んだ。以降、霊界の住人になったという。
他にもこのような別説がある。その地の王には息子ができず、第2王妃に息子を産ませた。すると第2王妃は、第1王妃とその娘を疎んじるようになり、邪悪な巫女に頼んで2人に呪いをかけた。病に倒れた第1王妃は、自身の病気の原因を森の聖者に話した。聖者は虎を遣わして巫女を退治した。呪いで醜い姿になってしまった第1王妃の娘は放浪し、南の海岸沿いに来た時、海から「待っている」と婿の声が聞こえた。彼女は海に身を投じたが、海に婿などおらず、悲しみに暮れた娘はロロ・キドゥルとなった。以降、彼女へ供え物をしないと、怒りを買って海で死ぬことになるという。
ロロ・キドゥルは民話や伝承にも登場する。ある日、父と共にイワツバメの巣を獲りに行った少年が空腹のあまり、彼女への供物をつまみ食いしてしまった。するとロロ・キドゥルは怒って少年を洞窟に棲むトカゲに変えてしまったという。
別の物語では、ガムラン楽師である兄弟の兄が急死し、弟が師匠に理由を訊くと「ロロ・キドゥルに連れ去られた」と言う。弟は師匠の助言で南の海の宮殿を訪れることを決めた。河口から海を見ると、海の代わりに立派な宮殿が目に入った。宮殿にいた精霊に尋ねると、「女王の息子がムラピ火山の王女を嫁に迎えるので、祝いのために皆が集まって、歌って踊る」と言う。宮殿の大広間では兄が太鼓を叩いていた。弟は兄に一緒に帰るよう説得するが、兄は、給料・アヘン・おいしい食べ物があるために拒んだ。すると、その2人の言い合いを聞きに寄った精霊が気絶してしまった。精霊の長老によると、人間の生臭さで気を失ってしまったのだという。その長老も気絶してしまい、その後気を取り戻すと、兄弟に帰るよう助言し、帰りの旅費を渡した。兄弟が河口から宮殿を振り返ると、そこには海しかなかったという。
カラン・ボロン地区では特に信仰が盛んで、新たな収穫の前に必ずロロ・キドゥルの寝床へ供物が供えられる。また、女神の怒りを買うと言われる緑色の服を着ることを避けるという。ヒンドゥーやイスラムの影響以前から信仰されていた女神で、インドネシアのジョクジャカルタでは王家スルタンが守護神として崇拝する。
16世紀後半、マラタム王朝創始者セナパティはロロ・キドゥルと結婚し、彼女に従うあらゆる霊と婚姻関係を結ぼうとした。ある夜、セナパティがジョクジャカルタのパラン・トリティスの海岸近くで瞑想しているとロロ・キドゥルが現れ、セナパティを自分の宮殿に招き、3日3晩愛し合った。セナパティは彼女に求婚したが、ロロ・キドゥルは南海を統べる地位を選んだ。だがセナパティには精霊や悪霊を克服する術を教え、さらにセナパティの子孫に永遠の庇護を与え続け、その子孫のみが彼女の姿を見ることができたという。
ジャワ島中心部の宮廷では、セナパティとロロ・キドゥルの結婚を記念する神聖な儀式が行われる。王は即位の記念日に「ベドヨ・クタワン」という舞踏を見学する。9人の女性が踊り手として参加するが、それにはロロ・キドゥルも含まれる。しかしその姿は王にしか見えないという。
王の誕生日には王の衣類をパラン・トリティスまで厳かに運び、海に流す。すると海から女神が従者を従え、恐ろしい嵐となって現れるという。船人を引きつけて事故を起こさせるといわれ、漁師たちはロロ・キドゥルに祈って事故を避ける。
名のロロは「未婚の娘」「処女」、キドゥルは「南」の意。
別名
参考文献
- 山北篤監修『東洋神名事典』新紀元社
- 吉田敦彦,松村一男編著『アジア女神大全』青土社
- 松村一男,森雅子,沖田瑞穂編『世界女神大事典』原書房