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ロスタム
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gensousyusyu
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ロスタム/Rosutam/Rustem
イランの叙事詩『シャー・ナーメ』に登場する英雄。
カイ王朝の勇士ザールとルーダーベの子。超人的な力を持ち、ラクシュという巨大な馬に乗って数々の冒険をした。
ロスタムの母・ルーダーベは臨月の際、あまりの苦しさに気絶し、無事に出産できるかが危ぶまれていた。ザールは霊鳥シームルグに助けを求めるため、その羽根を燃やしてシームルグを呼び寄せた。シームルグは「糸杉の身の丈と象の強さを持つ息子が生まれる」と彼をなだめ、酒で妻を酔わせて腹を割き、子を取り出す方法を教えた。ザールがその通りに子を取り出した後、シームルグの羽根で傷口を撫でると見事に縫合したため、母子ともに無事だった。彼女が「私は救われ(ロスタム)、悲しみは終わりました」と言ったため、子はロスタムと名付けられた。
ロスタムは生後1日から成人男性ほどの背丈があり、子供の内から、発狂して逃げ出した巨大な白象を雄牛の頭を象った矛の一撃で殺すなど、様々な武功を打ち立てていく。ロスタムの体は常人の8倍もの大きさになり、力や勇気・策謀や武術の腕・投げ縄の腕などに長けていた。しかしその巨体故に馬に乗れないことを悩んでいたが、国中を探し回って巨大な馬ラクシュを見つけた。これは神がロスタムのために用意したものだという。
その後も様々な武功を行い、スィパント山に派遣され、曽祖父ナリーマーンの仇を討った。また、寝ている間に自分を捕らえようとした悪魔アクヴァーンによって、怪物がはびこる海に投げ込まれたが生還した。『ロスタムの七道程』と呼ばれる冒険では、マーザンダラーンの悪魔に捕らえられたイラン王(カーウース王)を救うため、獅子の襲撃や砂漠などを乗り越え、80尺に及ぶ竜や媚惑的な魔女を退治し、黒鬼と称される英雄ウーラードを倒して王の居場所を聞き出し、悪魔の司令官アルザンクを打ち倒して王と配下の勇者たちを救出する。しかし彼らは長い牢獄生活で盲目になっていた。彼らの目を治すには、アルザンクをも束ねる「白鬼」と呼ばれる悪魔の脳と心臓の血が必要だという。そこでロスタムは白鬼が眠りにつく日中に奇襲をかけ、目的を達成した。
ロスタムはイランと敵対関係にあったトゥーラーン国との国境付近で狩りをしていると、ラクシュとはぐれてしまった。彼は悲しみ、トゥーラーンの属国サマンガーンに入り込んだ。サマンガーンの王は彼を温かく迎え入れ、ラクシュの捜索を約束した。そこでロスタムはサマンガーンの王女タハミーネに恋し、彼女と夫婦の契りを結んだ。しかしロスタムは敵国に長くいることが出来ないため、生まれてくるであろう子に渡すようにと、宝石を散りばめた腕輪を授けて自国へ帰った。後に生まれた子はソフラーブと名付けられ、10歳の時に出生の秘密を知らされる。そこでソフラーブは、父ロスタムと2人でイランとトゥーラーンの国を支配することを望み、イランに向かった。トゥーラーン王アフラースィヤーブはこれを知ると、父と子を争わせて同士討ちにしようと企んだ。息子が父を倒せばイラン1の英雄がいなくなり、父が息子を倒せば、事実を知った父が自殺するかもしれないと考えたのである。彼の策略により、父と子の軍勢は争うことになり、ロスタムは、息子の叔父で唯一面識があったザンデ・ラムズを殺してしまう。激昂したソフラーブはカーウース王の陣地を襲撃し、父と子は戦場で再会を果たした。息子と対峙したロスタムは彼の活躍を褒め称え、ソフラーブはその姿に心を動かされ、「お前がロスタムか」と尋ねるが、ロスタムは素性を隠して答えなかった。こうして2人はお互いの正体を知らぬまま激しく争って、ついにソフラーブの胸に短剣を突きたて、ロスタムが勝つ。ソフラーブの死に際に、ソフラーブは自らがロスタムの子であると告白し、ロスタムはひどく驚愕して「証拠はあるのか」と尋ねた。ソフラーブはロスタムが妻に渡した腕輪を見せ、お互いが親子であることを知り、ロスタムは悲しみのあまり髪を掻き乱し、血の涙を流して号泣した。そこで王に癒しの薬を求めたが、王は息子と父に復讐されることを恐れ、これを断った。絶望したロスタムはイランを離れ、故郷であるザーブリスターンに帰ってしばらく放浪の旅に出た。その後、ロスタムは700近く生きたとされる。
ゴシュタースプ王はロスタムの一族が国内の富の大半を所有することが気に食わず、息子イスファンディヤールに、彼を鎖で繋いで王座の前に引きずり出すことを命じた。しかしイスファンディヤールとロスタムは認め合う仲となり、話し合いは穏やかに進むと思われた。ところがイスファンディヤールの度重なる誤解により、2人の仲は決裂し、ロスタムは深手を負わされる。ロスタムの父ザールはシームルグにより息子を癒すが、シームルグは「イスファンディヤールを傷つける者は破滅の未来が訪れる」と助言する。そして和解の交渉をするよう諭すが、ロスタムは交渉が決裂した際に彼を殺す方法も考えた。結果的に交渉は決裂し、ロスタムはシームルグの助言に従って魔法をかけたタマリスクの矢で彼を殺した。しかし騙し討ちの勝利は彼の名誉を傷つけ、これを恥じたロスタムはイスファンディヤールの遺児バフマンを引き取って帝王学を教え込んだ。
ロスタムの異母兄弟シャガードはカブールの婿となったが、ロスタムがカブールへの徴税を緩めなかったことに怒り、彼を殺す姦計を企てた。カブール王に叛意があるとしてロスタムを呼び出し(あるいは狩りに誘ったとも)、ラクシュ諸共、無数の剣を埋め込んだ落とし穴にはめた。致命傷を負ったロスタムは最後の力で弓を射り、シャガードを彼が身を隠した木ごと射抜いた。ロスタムを失ったザーブリスターンは、偉大な王となったバフマンにより滅ぼされたという。
ロスタムの英雄譚はパルティア王朝時代のイラン東方シースターン豪族の活躍がモデルとされている。
カイ王朝の勇士ザールとルーダーベの子。超人的な力を持ち、ラクシュという巨大な馬に乗って数々の冒険をした。
ロスタムの母・ルーダーベは臨月の際、あまりの苦しさに気絶し、無事に出産できるかが危ぶまれていた。ザールは霊鳥シームルグに助けを求めるため、その羽根を燃やしてシームルグを呼び寄せた。シームルグは「糸杉の身の丈と象の強さを持つ息子が生まれる」と彼をなだめ、酒で妻を酔わせて腹を割き、子を取り出す方法を教えた。ザールがその通りに子を取り出した後、シームルグの羽根で傷口を撫でると見事に縫合したため、母子ともに無事だった。彼女が「私は救われ(ロスタム)、悲しみは終わりました」と言ったため、子はロスタムと名付けられた。
ロスタムは生後1日から成人男性ほどの背丈があり、子供の内から、発狂して逃げ出した巨大な白象を雄牛の頭を象った矛の一撃で殺すなど、様々な武功を打ち立てていく。ロスタムの体は常人の8倍もの大きさになり、力や勇気・策謀や武術の腕・投げ縄の腕などに長けていた。しかしその巨体故に馬に乗れないことを悩んでいたが、国中を探し回って巨大な馬ラクシュを見つけた。これは神がロスタムのために用意したものだという。
その後も様々な武功を行い、スィパント山に派遣され、曽祖父ナリーマーンの仇を討った。また、寝ている間に自分を捕らえようとした悪魔アクヴァーンによって、怪物がはびこる海に投げ込まれたが生還した。『ロスタムの七道程』と呼ばれる冒険では、マーザンダラーンの悪魔に捕らえられたイラン王(カーウース王)を救うため、獅子の襲撃や砂漠などを乗り越え、80尺に及ぶ竜や媚惑的な魔女を退治し、黒鬼と称される英雄ウーラードを倒して王の居場所を聞き出し、悪魔の司令官アルザンクを打ち倒して王と配下の勇者たちを救出する。しかし彼らは長い牢獄生活で盲目になっていた。彼らの目を治すには、アルザンクをも束ねる「白鬼」と呼ばれる悪魔の脳と心臓の血が必要だという。そこでロスタムは白鬼が眠りにつく日中に奇襲をかけ、目的を達成した。
ロスタムはイランと敵対関係にあったトゥーラーン国との国境付近で狩りをしていると、ラクシュとはぐれてしまった。彼は悲しみ、トゥーラーンの属国サマンガーンに入り込んだ。サマンガーンの王は彼を温かく迎え入れ、ラクシュの捜索を約束した。そこでロスタムはサマンガーンの王女タハミーネに恋し、彼女と夫婦の契りを結んだ。しかしロスタムは敵国に長くいることが出来ないため、生まれてくるであろう子に渡すようにと、宝石を散りばめた腕輪を授けて自国へ帰った。後に生まれた子はソフラーブと名付けられ、10歳の時に出生の秘密を知らされる。そこでソフラーブは、父ロスタムと2人でイランとトゥーラーンの国を支配することを望み、イランに向かった。トゥーラーン王アフラースィヤーブはこれを知ると、父と子を争わせて同士討ちにしようと企んだ。息子が父を倒せばイラン1の英雄がいなくなり、父が息子を倒せば、事実を知った父が自殺するかもしれないと考えたのである。彼の策略により、父と子の軍勢は争うことになり、ロスタムは、息子の叔父で唯一面識があったザンデ・ラムズを殺してしまう。激昂したソフラーブはカーウース王の陣地を襲撃し、父と子は戦場で再会を果たした。息子と対峙したロスタムは彼の活躍を褒め称え、ソフラーブはその姿に心を動かされ、「お前がロスタムか」と尋ねるが、ロスタムは素性を隠して答えなかった。こうして2人はお互いの正体を知らぬまま激しく争って、ついにソフラーブの胸に短剣を突きたて、ロスタムが勝つ。ソフラーブの死に際に、ソフラーブは自らがロスタムの子であると告白し、ロスタムはひどく驚愕して「証拠はあるのか」と尋ねた。ソフラーブはロスタムが妻に渡した腕輪を見せ、お互いが親子であることを知り、ロスタムは悲しみのあまり髪を掻き乱し、血の涙を流して号泣した。そこで王に癒しの薬を求めたが、王は息子と父に復讐されることを恐れ、これを断った。絶望したロスタムはイランを離れ、故郷であるザーブリスターンに帰ってしばらく放浪の旅に出た。その後、ロスタムは700近く生きたとされる。
ゴシュタースプ王はロスタムの一族が国内の富の大半を所有することが気に食わず、息子イスファンディヤールに、彼を鎖で繋いで王座の前に引きずり出すことを命じた。しかしイスファンディヤールとロスタムは認め合う仲となり、話し合いは穏やかに進むと思われた。ところがイスファンディヤールの度重なる誤解により、2人の仲は決裂し、ロスタムは深手を負わされる。ロスタムの父ザールはシームルグにより息子を癒すが、シームルグは「イスファンディヤールを傷つける者は破滅の未来が訪れる」と助言する。そして和解の交渉をするよう諭すが、ロスタムは交渉が決裂した際に彼を殺す方法も考えた。結果的に交渉は決裂し、ロスタムはシームルグの助言に従って魔法をかけたタマリスクの矢で彼を殺した。しかし騙し討ちの勝利は彼の名誉を傷つけ、これを恥じたロスタムはイスファンディヤールの遺児バフマンを引き取って帝王学を教え込んだ。
ロスタムの異母兄弟シャガードはカブールの婿となったが、ロスタムがカブールへの徴税を緩めなかったことに怒り、彼を殺す姦計を企てた。カブール王に叛意があるとしてロスタムを呼び出し(あるいは狩りに誘ったとも)、ラクシュ諸共、無数の剣を埋め込んだ落とし穴にはめた。致命傷を負ったロスタムは最後の力で弓を射り、シャガードを彼が身を隠した木ごと射抜いた。ロスタムを失ったザーブリスターンは、偉大な王となったバフマンにより滅ぼされたという。
ロスタムの英雄譚はパルティア王朝時代のイラン東方シースターン豪族の活躍がモデルとされている。
別名
参考文献
- 大林太良,伊藤清司,吉田敦彦,松村一男編『世界神話事典』角川選書
- 池上正太著『オリエントの神々』新紀元社
- レイチェル・ストーム著/山本史郎,山本泰子訳『ヴィジュアル版 世界の神話百科 東洋編 エジプトからインド、中国まで』原書房
- ジョン・R・ヒネルズ著/井本英二,奥西峻介訳『ペルシア神話』青土社