幻想用語データベース @ ウィキ
椀貸淵(わんかしぶち)
最終更新:
gensousyusyu
-
view
椀貸淵/わんかしぶち
日本全国に伝わる淵の怪異・伝説。奥羽地方から九州まで広く見られ、特に群馬県や中部地方に多く見られる。伝承によっては川・池・滝・井戸・穴・塚・岩・地蔵などとされる場合もある。
宴会や饗応に使う膳や椀を貸してくれるという淵で、声や手紙で用件を伝えると、翌朝、必要な数の椀が水面に浮かんでいるというもの。
返し忘れたり、椀を壊したり傷つけたまま返そうとしたり、盗んで数をごまかして返そうとしたり、貸主の姿を見ようとすると二度と椀を貸してくれなくなるという。淵は異界と繋がっており、貸主の正体は竜神(りゅうじん)・河童(かっぱ)・大蛇・乙姫・山姥(やまんば)・美女・鼠・狸・狐などとされる。
群馬県利根郡利根村の吹割滝は滝つぼが竜宮に通じており、前日に手紙で注文すれば貸してくれ、用が済んで3日以内に礼状を送った。
群馬県吾妻郡高山村尻高の鏜々が淵も椀貸淵として知られ、以下のような伝説が残る。天安2年4月8日の花祭りの日、与五衛門という老人が藤の花を取りに行った時に鈕を落としたので水中に入ると、鈕は美人が機織りしている床に落ちていた。酒と魚を饗された後、地上に帰ってみると3日が経過していて、葬式が行われていた。与五衛門は老衰したが、饗された酒の味が忘れられず、泉照寺の僧に酒を汲んできてもらおうとした。しかし僧が瓢を淵に入れて汲もうとしても沈まなかったため、僧が着替えて祈ってから沈めると酒がいっぱい入ったという。
長野県北安曇郡松川村字鼠穴の椀貸穴(わんかしあな)や、奈良県宇陀郡御杖村のよめ穴(-あな)の貸主は鼠だとされる。
愛知県や静岡県の山間部では、水神の使いである小さい子が幽界の財宝を貸しに来る伝承がある。
岐阜県加茂郡古井(こび)村、木曽川の亀淵には竜宮に繋がる深い部分があるといわれ、大岩の傍らの龍王神社の祠で「膳椀何人前入用につき貸して下さい」と頼むと、翌朝水面に所望の物が浮かんでいたが、ある時、1つ壊してしまった者が詫びもなく返すと、淵は二度と貸してくれなくなったという。この龍王(りゅうおう)は下の病を治すことで知られ、お礼に餅2個を供える。
江戸初期の陶器椀商人・椀久(わんきゅう)の墓である伊勢の椀久塚にも似た伝説が残っている。
また、椀貸淵から借りて返さなかった椀や、貸し借りの期限を記した手紙を今でも持っているという旧家もある。柳田國男は小野宮惟仁親王を祖とする特殊技能集団の木地屋たちが、全国を渡り歩いて、村人に出会う度に自作の椀や膳に関する伝承を広めた可能性を指摘している。北見俊夫が収集した各地の椀貸淵伝承は約150例にもなった。外国にも類話が見られ、ドイツ、フランス、イギリスの他、中国の類話では調度什器・米穀・金銀を貸してくれるという。
宴会や饗応に使う膳や椀を貸してくれるという淵で、声や手紙で用件を伝えると、翌朝、必要な数の椀が水面に浮かんでいるというもの。
返し忘れたり、椀を壊したり傷つけたまま返そうとしたり、盗んで数をごまかして返そうとしたり、貸主の姿を見ようとすると二度と椀を貸してくれなくなるという。淵は異界と繋がっており、貸主の正体は竜神(りゅうじん)・河童(かっぱ)・大蛇・乙姫・山姥(やまんば)・美女・鼠・狸・狐などとされる。
群馬県利根郡利根村の吹割滝は滝つぼが竜宮に通じており、前日に手紙で注文すれば貸してくれ、用が済んで3日以内に礼状を送った。
群馬県吾妻郡高山村尻高の鏜々が淵も椀貸淵として知られ、以下のような伝説が残る。天安2年4月8日の花祭りの日、与五衛門という老人が藤の花を取りに行った時に鈕を落としたので水中に入ると、鈕は美人が機織りしている床に落ちていた。酒と魚を饗された後、地上に帰ってみると3日が経過していて、葬式が行われていた。与五衛門は老衰したが、饗された酒の味が忘れられず、泉照寺の僧に酒を汲んできてもらおうとした。しかし僧が瓢を淵に入れて汲もうとしても沈まなかったため、僧が着替えて祈ってから沈めると酒がいっぱい入ったという。
長野県北安曇郡松川村字鼠穴の椀貸穴(わんかしあな)や、奈良県宇陀郡御杖村のよめ穴(-あな)の貸主は鼠だとされる。
愛知県や静岡県の山間部では、水神の使いである小さい子が幽界の財宝を貸しに来る伝承がある。
岐阜県加茂郡古井(こび)村、木曽川の亀淵には竜宮に繋がる深い部分があるといわれ、大岩の傍らの龍王神社の祠で「膳椀何人前入用につき貸して下さい」と頼むと、翌朝水面に所望の物が浮かんでいたが、ある時、1つ壊してしまった者が詫びもなく返すと、淵は二度と貸してくれなくなったという。この龍王(りゅうおう)は下の病を治すことで知られ、お礼に餅2個を供える。
江戸初期の陶器椀商人・椀久(わんきゅう)の墓である伊勢の椀久塚にも似た伝説が残っている。
また、椀貸淵から借りて返さなかった椀や、貸し借りの期限を記した手紙を今でも持っているという旧家もある。柳田國男は小野宮惟仁親王を祖とする特殊技能集団の木地屋たちが、全国を渡り歩いて、村人に出会う度に自作の椀や膳に関する伝承を広めた可能性を指摘している。北見俊夫が収集した各地の椀貸淵伝承は約150例にもなった。外国にも類話が見られ、ドイツ、フランス、イギリスの他、中国の類話では調度什器・米穀・金銀を貸してくれるという。
別名
お椀塚(-わんづか)/お椀淵(-わんぶち)/膳椀穴(ぜんわんあな)/膳椀淵(ぜんわんふち)/宝器淵(ほうきぶち)/水穴(みずあな)/揺動淵(ようどうぶち)/よめ穴(-あな)/竜宮淵(りゅうぐうぶち)/椀貸穴(わんかしあな)/椀貸池(わんかしいけ)/椀貸石(わんかしいし)/椀箱淵(わんばこぶち)
参考文献
- 小松和彦監修『日本怪異妖怪大辞典』東京堂出版
- 志村有弘,諏訪春雅著『日本説話伝説大事典』勉誠出版
- 乾克己,小林正胤,志村有弘,高橋貢,鳥越文蔵著『日本伝奇伝説大事典』角川書店