巨大数の基本Wiki
世界一大きい巨大数は何?
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googoloeasy
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このページでは、この世で最も大きな巨大数はなにか、という疑問について解説します。
結論
まず簡潔に結論を述べます。
一番大きい巨大数は定められません。
以上です。
解説
理由を説明するための知識の解説
いやいや、おかしいだろうと思う人もいると思うので、これからその理由を説明します。少し数学の話も出てきますが、さほど難しいものではないので安心してください。
話を簡単にするために、とりあえず自然数に限って解説します(巨大数の多くは自然数です)。
話を簡単にするために、とりあえず自然数に限って解説します(巨大数の多くは自然数です)。
自然数(Natural Number)とは何でしょうか。自然数は直感的に理解、把握できる概念です。
しかし定義するとなると話は変わってきます。「1, 2, 3, 4……と永遠に続く正の数」というあいまいな言い方はできますが、それよりしっかりした(厳密な)言い方をするのは難しいと感じられることでしょう。さらにいうと、0を自然数に含めることもあるので、この言い方の正確さはさらにゆらぎます。
しかし定義するとなると話は変わってきます。「1, 2, 3, 4……と永遠に続く正の数」というあいまいな言い方はできますが、それよりしっかりした(厳密な)言い方をするのは難しいと感じられることでしょう。さらにいうと、0を自然数に含めることもあるので、この言い方の正確さはさらにゆらぎます。
厳密な数学では、自然数を以下のように定義します。0を自然数としない場合には、1.~5.にある「0」を「1」に置き換えます。
1. 0は自然数である。
2. どんな自然数にも、その自然数に1を足した自然数がある。(註)
3.0より小さい自然数はない。つまり、一番小さい自然数は0である。
4. aとbが違う自然数ならば、それぞれに1を足した自然数は異なる数である。
5. 0がある性質を満たすとき、てきとうな自然数aがその性質を満たし、しかもaに1を足した自然数(a+1)もその性質を満たすならば、全ての自然数についてその性質が満たされる。
註:とある自然数をaとするとき、aに1を足した自然数をaの 後者 または suc(a) といいます。sucは「後者」を意味するsuccessor の略です。
これは
ペアノの公理
というものです。さらに厳密な言い方(集合論)では別の定義をすることもありますが、このページでは上の公理さえわかっていれば大丈夫です。
ペアノの公理について、具体例を挙げて説明してみます。
ペアノの公理について、具体例を挙げて説明してみます。
- 2. について。例えば 3 の後者は3+1で 4 です。 100 の後者は100+1で 101 です。
- 4. について。例えば、3≠6が成り立ちますね。3の後者は4であり、6の後者は7なので、6≠7、すなわちsuc(3)≠suc(6)が成り立ちます。
- 5. は抽象的であり理解が難しいですが、(厳密性を少々省いて)できるだけ噛み砕いて解説してみます。例えをわかりやすくするため、ここでは1を最小の自然数とします。
ドミノが一直線にずっと並んでいる光景を想像してください。このドミノ同士は、前のドミノが倒れると次のドミノも倒れるくらいの距離で置かれています。
1枚目のドミノを倒してみましょう。「k枚目のドミノが倒れる」というのが、5. でいう「自然数kがある性質を満たす」ことです。
倒れた1枚目のドミノは、2枚目のドミノに当たります。そして2枚目のドミノは倒れます。
「1枚目のドミノが倒れる時、2枚目のドミノが倒れる」ことがわかります(2=1+1なので、2は1の後者ですね)。これを5. の言葉に書き換えると、「(最小の自然数である)1がある性質を満たす時、その後者である2もある性質を満たした」となります。
1枚目のドミノを倒してみましょう。「k枚目のドミノが倒れる」というのが、5. でいう「自然数kがある性質を満たす」ことです。
倒れた1枚目のドミノは、2枚目のドミノに当たります。そして2枚目のドミノは倒れます。
「1枚目のドミノが倒れる時、2枚目のドミノが倒れる」ことがわかります(2=1+1なので、2は1の後者ですね)。これを5. の言葉に書き換えると、「(最小の自然数である)1がある性質を満たす時、その後者である2もある性質を満たした」となります。
次に、k枚目のドミノが倒れることを考えます。
k枚目のドミノが倒れると 仮定する とき、kの後者である(k+1)枚目のドミノも倒れることがわかるでしょう。これを5. の言葉に書き換えると、「自然数kがある性質を満たす時、その後者である(k+1)もある性質を満たした」となります。
ここで、k=1とすると(kはどんな自然数でもOK)、2枚目のドミノが倒れるのは前述の通りです。そして、2枚目のドミノが倒れるとき、3枚目のドミノ(3は2の後者)も倒れます。これは、k枚目が倒れるときに(k+1)枚目も倒れる、という文のkに2を代入した場合です。k=1の場合から、2枚目のドミノが倒れることは確実なので、3枚目のドミノも倒れるわけです。
この調子でk=3, 4, 5, 6, 7……と当てはめていけば、どれほど遠くのドミノであってもいつかは倒れる、ということがわかります。
k枚目のドミノが倒れると 仮定する とき、kの後者である(k+1)枚目のドミノも倒れることがわかるでしょう。これを5. の言葉に書き換えると、「自然数kがある性質を満たす時、その後者である(k+1)もある性質を満たした」となります。
ここで、k=1とすると(kはどんな自然数でもOK)、2枚目のドミノが倒れるのは前述の通りです。そして、2枚目のドミノが倒れるとき、3枚目のドミノ(3は2の後者)も倒れます。これは、k枚目が倒れるときに(k+1)枚目も倒れる、という文のkに2を代入した場合です。k=1の場合から、2枚目のドミノが倒れることは確実なので、3枚目のドミノも倒れるわけです。
この調子でk=3, 4, 5, 6, 7……と当てはめていけば、どれほど遠くのドミノであってもいつかは倒れる、ということがわかります。
5. は以上のことを示しています。これは、
数学的帰納法
という、自然数がかかわる現象の証明に使われる手段の一つを示しています。
理由の説明
ペアノの公理に関する説明が長くなりましたが、一番大きい巨大数が存在しない理由の説明に必要なのは
2.
です。もう一度2. の文章を掲げます。
どんな自然数にも、その自然数に1を足した自然数がある (任意の自然数aには、その後者たるsuc(a)がある)。
これこそが、一番大きい巨大数が存在しない理由なのです。といっても、この文を見ただけではいまひとつよく分からない人もいるでしょうから、例を挙げて詳説します。
とある巨大数研究者Aさんが、今まで考案されてきたすべての巨大数よりも大きな巨大数を開発し、これを「最終ハルマゲドン数」と名付けました。最終ハルマゲドン数はその大きさから、巨大数愛好者を激しく感動させ、活発な議論を引き起こさせました。
……では、最終ハルマゲドン数は自然数の中で最も大きい数なのでしょうか?
答えは「否」です。非常に簡単で簡便な証明を示します。
……では、最終ハルマゲドン数は自然数の中で最も大きい数なのでしょうか?
答えは「否」です。非常に簡単で簡便な証明を示します。
(証明)
最終ハルマゲドン数をLaHと書く。LaHの後者は(LaH+1)であり、これはLaHよりも大きい。(終)
同語反復になりますが、ペアノの公理の2. は、どんな自然数であってもそれよりも大きい自然数が存在することを示しています。つまり、自然数に終わりはありません。永遠に続いていくのです。
自然数というくくりで考える限り、世界一大きい巨大数は存在することができません(自然数に限らなかった場合も同様ですが)。もちろん、巨大数の大きさに制限を加えるならば、その制限の中で一番大きい巨大数は存在できますが、面白みに欠けるのでまともに議論されることはないでしょう。
自然数というくくりで考える限り、世界一大きい巨大数は存在することができません(自然数に限らなかった場合も同様ですが)。もちろん、巨大数の大きさに制限を加えるならば、その制限の中で一番大きい巨大数は存在できますが、面白みに欠けるのでまともに議論されることはないでしょう。
以上で、世界一大きい巨大数が存在しない理由の説明を終了します。理解していただけたなら幸いです。
おまけ:∞は巨大数ではない
無限大(∞)こそ疑いなく完全完璧の、世界一大きい巨大数だ! と思う方へ、∞が巨大数でないことを解説します。
一般に、無限大は実数ではありません。無限大を一種の実数として扱う「拡大実数」という考え方もあるのですが、巨大数の世界では原則として無限大は数扱いされません。
巨大数の世界における無限とは、ゲームでいうチートに該当する存在であって、面白みに欠けるししかもルール違反です。
簡単に言えば、無限大は、いかなる実数よりも大きな 状態 です。「状態」という表現からも分かる通り、数ではありません。「限りなく大きい」という言い方もします。
一般に、無限大は実数ではありません。無限大を一種の実数として扱う「拡大実数」という考え方もあるのですが、巨大数の世界では原則として無限大は数扱いされません。
巨大数の世界における無限とは、ゲームでいうチートに該当する存在であって、面白みに欠けるししかもルール違反です。
簡単に言えば、無限大は、いかなる実数よりも大きな 状態 です。「状態」という表現からも分かる通り、数ではありません。「限りなく大きい」という言い方もします。
あくまでも巨大数は「数」なので、数ですらなく状態である無限大を巨大数に含めることはしないのです。
なお、「
順序数
」といって、自然数全部をひっくるめた集合よりも大きい数を考えるものがあります。順序数は記号ω で表され、実質的に計算ができないくらい大きい巨大数の大きさを表したり、そういった巨大数の大きさを比べるのに用いられます。
ただし、ここでも順序数そのものを巨大数として扱いはしません。順序数は、巨大数の規模を測る、いわば物差しとして用いられています。
ただし、ここでも順序数そのものを巨大数として扱いはしません。順序数は、巨大数の規模を測る、いわば物差しとして用いられています。