巨大数の基本Wiki
指数と指数表記
最終更新:
googoloeasy
-
view
このページでは、ある程度までの巨大数の大きさを測るのに便利な道具である、指数について解説します。
※画像が表示されるまでに少々時間がかかるかもしれません。お待ちください。
※画像が表示されるまでに少々時間がかかるかもしれません。お待ちください。
指数とは
指数は乗算・冪乗・超冪(テトレーション)など、各種の演算について でも少し取り上げましたが、冪乗 において、数を何回掛けるか、を表す値です。下に図を示します(aは整数、nは自然数)。

この図では、aが底 、nが指数です。※掛ける度合い(回数)を指定される数を底(bottom)といいます。

この図では、aが
「指数」という語は複数の意味があるので、ここでの指数を特に冪指数 ともいいます。巨大数に使用される指数は、ほとんどが自然数です。
また、「冪乗」とは、(指数が自然数の範囲では)同じ数を何回も掛ける計算のことと定義されます。
たとえば、3⁴では、3が底、4が指数(冪指数)です。
また、「冪乗」とは、(指数が自然数の範囲では)同じ数を何回も掛ける計算のことと定義されます。
たとえば、3⁴では、3が底、4が指数(冪指数)です。
指数が自然数であるときに、以下の指数法則が成り立ちます。aとbは0でない実数、mとnは自然数とします。
いくつか例を挙げてみます。
- 法則1の例:
- 法則2の例:
- 法則3の例:
指数の拡張
さて、ここまで指数は自然数としてきましたが、指数が自然数でないときを考えてみましょう。たとえば、指数が負の整数であったり、分数であったり、ルートで表される数であったりする場合です。
そういった場合についても計算ができるようにするため、指数の拡張を行います。
そういった場合についても計算ができるようにするため、指数の拡張を行います。
(註)拡張とは
限られた範囲でしか運用できない法則や規則などを、より広い範囲で運用できるようにすることを拡張といいます。拡張の際には、都合よく定義を改造することがままあります。
このページでは、自然数の範囲でしか運用できなかった指数を、これから整数や有理数、無理数へと拡張していきます。
限られた範囲でしか運用できない法則や規則などを、より広い範囲で運用できるようにすることを拡張といいます。拡張の際には、都合よく定義を改造することがままあります。
このページでは、自然数の範囲でしか運用できなかった指数を、これから整数や有理数、無理数へと拡張していきます。
もう一度、指数が自然数であるときに成り立つ指数法則を掲げます(aとbは0でない実数、mとnは自然数)。
整数全体への拡張
次に、指数が整数全体である場合を考えます(ここから、mとnは整数とします)。このとき、先程掲げた指数法則が成り立つとしますと、法則1から
となるので、0でないどんな実数aに対してもa⁰=1が成り立ちます。
また、法則2を利用すると、
、すなわち
が成り立ちます。a≠0としているので、両辺を
で割ると(註:割るというのは、逆数を掛けることと同義)、
が成り立ちます。
また、法則2を利用すると、
よって、指数が整数全体であるとき、指数法則が少し変化して以下のようになります。

例をいくつか挙げてみます。
- 法則1:
- 法則2:
- 法則3:
- 法則4:
註:この節の始めのほうで、自然数全体でのみ成り立つとしていた指数法則が整数全体でも成り立つと仮定しました。法則を我々にとって都合よくなるように変更したわけですが、変更後も数学の論理には反していないので、問題はありません。
+ | 補足:指数をさらに拡張してみよう |
+ | コラム:0の0乗の値は? |
指数表記と指数タワー
指数表記とは
純粋な炭素の塊12.012gに含まれる炭素原子の個数は、約602214000000000000000000個です。その炭素原子を回っている電子一個の質量は、およそ0.00000000000000000000000000000090194gです。
また、観測可能な宇宙の全質量は、一説では30000000000000000000000000000000000000000000000000000kgであり、観測可能な宇宙に存在する原子の総量は
100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000個程度であるとされています。
このような0が多く連なった極めて大きな(小さな)数を書くのは面倒ですし、0の数を書き間違える可能性もありますし、視認性にも欠けます。
また、観測可能な宇宙の全質量は、一説では30000000000000000000000000000000000000000000000000000kgであり、観測可能な宇宙に存在する原子の総量は
100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000個程度であるとされています。
このような0が多く連なった極めて大きな(小さな)数を書くのは面倒ですし、0の数を書き間違える可能性もありますし、視認性にも欠けます。
そういった数を簡便に表すには、指数表記という表記法が便利です。指数表記は、以下のように表されます。
ただし、1≦a<10であり、かつnは整数です。aを仮数部、nを指数部と呼びます。aが1の場合、省略される場合があります。
指数表記を使えば、ながーく続く0の個数を、指数部の数で表すことができます。先程あげた数量を、指数表記で表してみましょう。
指数表記を使えば、ながーく続く0の個数を、指数部の数で表すことができます。先程あげた数量を、指数表記で表してみましょう。
- 12.012gの純粋な炭素に含まれる炭素原子の個数:6.02214×10²³個
- 電子一個の質量:
- 観測可能な宇宙の質量:約3.0×10⁵²kg
- 観測可能な宇宙に存在する原子の個数:約1.0×10⁸⁰個
正の数では、最も位が大きい数を除いた数字の桁数が、指数部の数になります。
例:1234000000=1.234×10⁹
この例では、最も位が大きい1の後に続く234000000の桁数が9なので、指数部が9となっています。
例:1234000000=1.234×10⁹
この例では、最も位が大きい1の後に続く234000000の桁数が9なので、指数部が9となっています。
負の数を指数表記で表すときは、指数部を負の整数にします。
例:
例:
指数部は、小数点以下に続く0の個数に1を足した数にマイナスをつける、と覚えれば簡単です。
いくつか、身近な巨大数を指数表記で表してみましょう。
- 成人の血管をすべて繋ぎ合わせたおよその長さ:100000000m=1.0×10⁸m (1億m)
- 世界人口(2021年):約7875000000人=約7.875×10⁹人 (約78億7500万人)
- 小麦の収穫量(2019年):約765760000000kg=約7.6576×10¹¹kg (約7657億6000万kg)
- 地球上の全生物の総重量(概算値):1100000000000トン=1.1×10¹²トン (1兆1000億トン)
- 日本の実質GDP(2019年, 概算値):554400000000000円=5.544×10¹⁵円 (554兆4000億円)
- スーパーコンピューター京における、1秒あたりの浮動小数点演算可能回数(FLOP):10000000000000000回=1.0×10¹⁶回 (1京回)
- 2021年現在、地球上の国家で印刷された最も大きい数の紙幣:100000000000000000ペンゲー紙幣=1.0×10²¹ペンゲー紙幣 (10垓) ※ペンゲーは、ハンガリーのかつての通貨です。
- 地球の質量(おおよその値): 5972400000000000000000000kg=5.9724×10²⁴kg (5杼9724垓kg)
- ジョーカーを除くトランプ52枚を並べる場合の数:52!≒80658175170943880000000000000000000000000000000000000000000000000000通り=8.065817517094388×10⁶⁷通り (8065不可思議8175那由他1709阿僧祇4388恒河沙通り)
- 囲碁の場合の数(盤面の駒の状態):1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000通り=1.0×10¹⁷⁰通り
- 囲碁の場合の数(ゲーム木複雑性):1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 0000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000 00000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000通り=1.0×10⁴⁰⁰通り
指数タワー
確かに、指数表記は大きな数を表記するのに便利です。数十、数百と並ぶゼロを、10の右上に指数部を置くだけで表すことができるのですから。
しかしながら、指数表記にも限界はあります。あまりにも指数部が大きくなると、指数部の数を把握するのが難しくなってきます。
その好例として、仏典『大方廣佛華嚴經 』に出てくる中で最大の数の単位、不可説不可説転 を挙げましょう。
不可説不可説転は、
です。
指数部の数が何なのか、ぱっと見て判断できましたでしょうか。京や垓は超えているけれど、詳しくはわからない、という方が多いでしょう。
不可説不可説転の指数部を単位をつけて表すと、10の37潤 2183溝 8388穣 1977秭 6444垓 4130京6597兆6878億4964万8128乗となりますが、これでも大きすぎてうまく把握できないでしょう。
その好例として、仏典『
不可説不可説転は、
指数部の数が何なのか、ぱっと見て判断できましたでしょうか。京や垓は超えているけれど、詳しくはわからない、という方が多いでしょう。
不可説不可説転の指数部を単位をつけて表すと、10の37
このような指数部が大きすぎる数の表記に、指数タワーを用います。指数タワーとは、指数部を指数表記で表し、塔 のように数を表記することです。先ほどの不可説不可説転を指数タワーで表すと、概数で
となり、すっきりした姿になります。
計算
指数タワーの計算は、右上から行います。
ただしい例:

=
ただしい例:

誤った例(左下から計算した):

=

また、
は「3の3の3の3乗乗乗」と読みます。これは、「 [3の{3の(3の3乗)乗} 乗]」であると考えると理解できるでしょう。
なお、3乗の3乗の3乗の3、と読むと、上記の誤った例を表します。

なお、3乗の3乗の3乗の3、と読むと、上記の誤った例を表します。
指数タワーの具体例
指数タワーで表される数に身近なものはほぼありません。単純に大きすぎるためです。
指数タワーで表される数をいくらか挙げてみます。
指数タワーで表される数をいくらか挙げてみます。
- 1個の栗まんじゅうにバイバインをかけ、1000年放置した場合の栗まんじゅうの個数(理論上):
(個)
- アボガドロ数のアボガドロ数乗の概算値:
-
SCP-1941
に登場する巨大数:
- 不可説不可説転(概数):
- トンネル効果によって、全ての物質がブラックホールになるまでにかかる時間:
(時間の単位は何でも構わない)
- 物理学的偶然によって、熱的死に至った宇宙で初期宇宙並のエネルギーが発生するまでにかかる時間:(時間の単位は何でも構わない)
- この世に存在する様々な宇宙の、そのすべての質量を一つのブラックホールに変換して一つの箱に詰め込み、そのブラックホールが蒸発してなくなり、それからポアンカレの回帰定理に従って再びブラックホールが生まれるまでにかかると予想される時間:(宇宙論で使われた最大の数)
もはや想像のつかない数ばかりですね。
指数タワーの先へ
指数タワーによって表記される数は、異常に大きいものとなります。しかし、指数タワーにも限界はあります。
現実的に考えて、指数タワーの段数には限りがあるためです。段数は、せいぜい積み重ねたところで10段くらいが限界と言えるでしょう。
現実的に考えて、指数タワーの段数には限りがあるためです。段数は、せいぜい積み重ねたところで10段くらいが限界と言えるでしょう。
では、巨大数はここで限界を迎えるのでしょうか?
否。
指数タワーのその先を見てみましょう。指数タワーは、巨大数の世界の入り口に過ぎないのです。
演習問題
最後に演習問題を用意しました。指数を身につけるために解いてみてください。
問題篇
第一問
(1) 冪乗における指数とは何か、簡潔に説明せよ。この問での指数は自然数に限る。
(2) 指数という語を(1)での意味に限定する意味で、特に何というか。
(3) 指数が自然数のときに成り立つ指数法則を3つ示せ。
(4) 指数が整数のときに、(3)で示すべきものに加えて成り立つ指数法則を2つ示せ。
(5) 0⁰の値を求めよ。ただ一つに求められないならば、とりうる値を一つ示せ。値が全く求められないならば、「不定」と記せ。
(6) 指数を積み重ねる表記法を答えよ。
第二問
(1)~(6)および(8)では、示された式を計算せよ。
(1)~(6)および(8)では、示された式を計算せよ。
(1) 3⁴
(2) (3³)²
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
を3乗した値を答えよ。
(8)
の値に最も近いものを以下の(甲)~(丁)から選べ。
(甲)
(乙)
(丙)
(丁)
(甲)
第三問
註:万以上の数の単位は、億、兆、京、垓、𥝱、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由多、不可思議、無量大数 である。単位が一つ上がるごとに、値は1000倍になる。
註:万以上の数の単位は、億、兆、京、垓、𥝱、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由多、不可思議、無量大数 である。単位が一つ上がるごとに、値は1000倍になる。
(1) 指数表記は、1以上の整数a, nを用いて
と表すことができるが、aの値には限りがある。aのとりうる範囲を示せ。
(2) (1)における a および n の名称をそれぞれ答えよ。
(3) 100000000000 を指数表記で示せ。
(4) 123456789101112 を指数表記で示せ。ただし、(1)における a の有効数字は3桁とする。
(5) 0.00000041を指数表記で示せ。
(6) 月の質量は、約734垓6000京kgである。この数値を指数表記で示せ。
(7) 物理学的に意味があるとされる最大の温度であるプランク温度は、約1溝4168穣K である。プランク温度を指数表記で示せ。
(8) ジョーカーを除くトランプ52枚を一列に並べる順列は、約8066不可思議 通りである。この数値を指数表記で示せ。
(9) 観測可能な宇宙の総エネルギーは、約674無量大数J である。この数値を指数表記で示せ。
(10) アボガドロ数のアボガドロ数乗は、約
である。この数値を指数タワー表記で示せ。
解答篇
+ | クリックまたはタップで展開 |