540 名前:お月見完結編(前編) 1/5 :2013/11/28(木) 20:33:23.52 ID:???
早くしないと十一月が終わってしまうので流れをぶった切って完結編投下。前中後編の予定。
なるべくいっぱいキャラ出したかったのと、やりたかったことを色々と詰め込んだらなんかカオスになった。
何も考えずに勢いで作ったから違和感あったらごめんね
気に入らなければスルーかパラレルパラレル。

警察のお月見会場はとても豪華だった。あちらこちらにテーブルが並び、その上には料理が並んでいる。
月見というよりも立食パーティのような雰囲気だ。
エレドア「運がいいよな、こんないい日に非番なんて! いや非番になるように調整したんだけどな! はっはっは!」
カレン「今日は非番の人間が多いって話だったけど…あんたの仕業だったわけだ」
エレドア「へへへ。署の同志たちと協力してな! このパーティに参加する奴はみんな非番になるよう調整したんだよ!
     イーサン警部もいねえぜ!」
カレン「その点に関しちゃ褒めてやるよ」
ミケル「でもシロー刑事はウワサのカノジョと二人っきりでお月見か…仲間と女、どっちが大事なんでしょうね」
エレドア「女だろ。わかりきったこと聞くんじゃねーよ。考えてもみろ、超絶美人の彼女とイチャイチャすんのと
    むさい野郎どもと酒飲むの、どっちがいいよ?」
ミケル「そりゃ…まあ」
フィリップ「お、やってんな!」
背後に大勢の仲間を引きつれやってきたのは、フィリップとサマナ。手土産のつもりか、両腕に酒の入ったビニール袋を提げていた。
エレドア「おーう、フィリップ。また大勢連れてきたな!」
フィリップ「へっへっへ。上の連中だまくらかした甲斐があったってもんだぜ。今日は飲むぞ! なあサマナ!」
サマナ「ほどほどにしてくださいよ…」
ミケル「あれ、ユウさんはいないんですか」
フィリップ「モーリンちゃんが張り切っちゃってなー。女がいない奴は辛いよなぁ!」
ミケル「ぼ、僕にはBBがいますよ!」
リョウ「遠距離恋愛ってのは失敗しやすいらしいけどな!」
ミケル「やめてくださいよ、縁起でもない!」

541 名前:お月見完結編(前編) 2/5 :2013/11/28(木) 20:35:50.83 ID:???
アリー「彼女いないよりはマシじゃねえか。なあ、万年童貞のリョウ・ルーツさんよ?」
リョウ「うっせえ! 俺だって女くらい…!」
シン「二次元以外で頼むぜ?」
マニングス「当たり前だが、人工知能や無機物も禁止だ」
リョウ「う…ぐぐ…がが…!」
レイヤー「そこまでだ。それ以上やると他の者もダメージを受けかねん」
エレドア「いいねいいね、なかなかにぎやかになってきたじゃないの!」
ジョン「ご要望の通り、ハンディカラオケを持ってきましたが…」
*1マクシミリアン「お、いいね! 景気づけにまず俺が一曲…」
トキオ「ちょぉぉぉっと待ったぁ!」
アニタ「あら。あなたは…」
トキオ「少年課のトキオ・ランドールです! 歌と聞いちゃ黙っていられません!」
アイリス「遅かったのね」
トキオ「思わぬ道連れが増えてさ」
レイラ「………」
ケビン「どーも! ケビン・フォレストっす!」
トキオ「どうしても退屈だって言うんで連れてきたんだけど…エレドアさん、こいつら入れてもいいですかね?」
エレドア「歓迎歓迎! お巡りさんってーのは懐が深いもんだからな! な、いいだろ?」
『おう!』
アイリス「警察、嫌いじゃなかったの?」
ケビン「トキオの奴が寂しがってんじゃねーかって思ってさ」
カール「寂しがっているのはお前のほうだろう」
ケビン「さあ飲むぞー!」
カール「未成年が酒を飲むな!」
リョウ「ようし、飲め飲め!」
カール「そして勧めるな馬鹿者!」

542 名前:お月見完結編(前編) 3/5 :2013/11/28(木) 20:38:55.43 ID:???

月見という名の宴が盛り上がっていく中、トキオは会場の端で不機嫌そうにしているレイラを見つけた。
トキオ「どうしたんだ?」
レイラ「退屈。みんなで月なんか見たって面白くもなんともないじゃない」
二人で見るものだと思ってたのに。――とは言わない。言えない。
トキオ「こういうのは、一緒になって騒いでるだけでも楽しくなってくるもんだよ」
レイラ「…よくわかんない」
トキオ「ほら、一緒に歌うぞ! 音痴に先手を取られてたまるもんか!」
マクシミリアン「誰が音痴だって!?」
レイラ「やれやれ。…まあ、退屈しのぎにはなるかもね」
うるさいのもたまには悪くないかも。トキオに手をひかれ、レイラは輪の中に入って行った。
サンダース「部外者歓迎だって?」
カレン「サンダース。遅かったじゃないか」
サンダース「ユカさんを連れてきたいんだが、いいだろうか?」
エレドア「お前ら、まだ続いてたのな…いいよいいよ! もう楽しけりゃ誰でも来いや!
     人は多い方が盛り上がるってもんだぜ!」
トキオ「マイクをよこせ!」
マクシミリアン「最初に歌うのは俺だぁ!」
アニタ「トキオさん頑張って! そこの音痴に歌わせちゃいけないわ!」
アリー「やれやれぇ! 酒と喧嘩、月に映えるよなあまったく!」
リョウ「おいケビン! 酒足りねえぞ! 買って来い!」
ケビン「未成年に買わせる気ですか!」
リョウ「いけるいける! ネオフランス辺りではよくあることだ!」
エレドア「あ、酒はたくさんあるぜ。会場の外れにあるガルダにたくさん積んであるから持って来いよ」
リョウ「そうか? じゃあ取ってこいケビン」
ケビン「わかりましたよ、まったく…!」

543 名前:お月見完結編(前編) 4/5 :2013/11/28(木) 20:42:46.81 ID:???
ミケル「ついていけませんね…」
サマナ「ほんとに。でも、みんながあっちに集中してるおかげで悠々と食事を楽しめるというもの」
ミケル「ていうかこの会場、誰がセッティングしたんですか? テーブル並んでて料理もいっぱい…飲み物まで完備って
    まるでパーティ会場じゃないですか」
サマナ「よくわかんないけど、警視正のツテみたいだよ。…あ、この料理美味しい」
マリナ「本当においひいわ」
刹那「ガンダムだ
ミケル「どれどれ…」
サマナ「って、誰ですかあんたら!」
アリー「クルジスのガキにアザディスタンの貧乏姫!? なに自然に混じってんだ!」
刹那「陸戦型ガンダムだ」
アリー「なーにを意味のわかんねーことを…」
ボッシュ「なるほど。陸戦型ガンダムか。しかし君ならEz-8やブルーデスティニー三号機ではないのかね」
刹那「それもいいが、今夜はEx-Sガンダムや陸戦型ガンダムだ」
ボッシュ「そうか、それなら仕方がない。Ez-8はアプサラスで、ブルーデスティニーはミデアだからな」
デフ「意味のわからん問答で分かり合うなっての!」
シド「ちーっす。ただ飯いただきに来ましたー」
ナヴィ「本当にタダなのかしら…」
ボッシュ「ぬう、サナリィの三馬鹿! なぜここに!」
デフ「誰が三馬鹿だ。隣であれだけ騒がれれば嫌でも気付くだろ」
シド「そんで、どーせ騒ぐなら一緒に騒いでもいいだろってことに。うちの社員連中とか色々連れてきた」
ボッシュ「なんと…いいのか、エレドア君!」
エレドア「もう誰が来てもいいんじゃないですかね。そうだ、外野歓迎の看板でも立てましょうか」
フィリップ「追加の料理来たぜ! どんどん食えよ!」
サマナ「どこから出てきたんですかその料理!」
フィリップ「ガルダから持ってきた」
ミケル(どう見ても出来立てなのに…ガルダの中で誰かが作ってるのかな? でも一体誰が…)

544 名前:お月見完結編(前編) 5/5 :2013/11/28(木) 20:46:24.54 ID:???
グラハム「来たか、少年!」
刹那「招待、感謝する」
グラハム「構わんよ! もっとも月が似合うガンダムについて、存分に語りつくそうではないか!」
刹那「ガンダムDXだ!」
コレン「いいや、あのヒゲ…∀ガンダムだ!」
グラハム「アニメ冒頭のあの迫力! ガンダムXこそが真にふさわしいと主張する!」
ニナ「月で訓練したフルバーニアンも捨てがたいわ! だって私のガンダムだもの!」
ボッシュ「フィフスルナといえばνガンダムに決まっている!」
ダニー「ムーンクライシスのゼータプロンプトも捨てがたい…!」
テム「ええい、RX-78-2こそが至高に決まっている!」
ミケル(変なの増えてる!?)

マリナ「もぐもぐもぐもぐ…」

オーティス「いぃぃぃぃくつぅぅぅもぉぉぉのあいぃぃぃぃぃ、かぁぁぁさねあわせぇぇぇぇてぇぇぇぇぇ」
マクシミリアン「93点たあやるじゃねえか爺さん!」
アニタ「そうね。15点のあなたよりよっぽど上手いわ」
マクシミリアン「なんだと!」
ロメロ「まだまだ若いもんには負けんぞ! さあ次はわしの番じゃ!」
ムバラク「待ちたまえ。ロメロくん」
サンダース「ムバラク警視総監!?」
ムバラク「若い者が張り切っておると聞くと、この老体にも気合が入ろうというもの…
     若者たちよ! わしらを踏み倒してみせよ!」
『うおおおおおお!』
シド「白熱してんなぁ。どうするよ、デフ」
デフ「何が」
シド「俺たちサナリィズは名乗りを上げないのかってことさ」
ナヴィ「野球チームみたいに言わないでよ…」
シド「機材持ってきてバンドもいいな。…あー、でも華が足りないな。ナヴィちゃんじゃちょっと魅力が足りな」ゲシッ
ナヴィ「うっさい!」
トキオ「ケビン、どうした? ガルダに行ってから顔色が悪いが」
ケビン「え? あ、ああ…見間違い、だよな…そうに決まってる。俺は何も見てないぞ…そうだ、何も見てないんだ…」
トキオ「?」

中編に続く。月見会場どんだけ広いんだってツッコミは禁止。

549 名前:お月見完結編(中編) 1/5 :2013/11/29(金) 07:33:42.00 ID:???
ミケル「あのガルダ…やっぱり気になるな。見てこよう」

――会場近く・ガルダ内部(キャンピングカー仕様・本格キッチン付き)
ストーカー「さあ! ますます盛り上がってまいりました! ガンダムファイター対抗料理対決!
ドモン「ガンダムファイターたるもの…料理くらいできなければ…!」
サイシー「ネオチャイナ料理は宇宙一! こればっかりは負けられないよ!」
ジョルジュ「なんの! ネオフランス料理こそが至高であること、教えて差し上げましょう!」
アルゴ「俺に技量はない。しかし、料理は技巧だけではないということを教えてやる」
チャップマン「妻に教え、妻に教わり作り上げた私のネオイングランド料理…一味違うぞ!」
ミケロ「…どいつもこいつもまずくて地味な料理ばっか作りやがって。ネオイタリアの味って奴を教えてやるぜ!」
レイン「ドモンったら本当に不器用ね! 見てられない! 私も手伝うわ!」
ドモン「レイン!」
シュバルツ「私もネオドイツを背負っている。全力でやらせてもらう!
      貴様たちの愛に、私のネオドイツ料理を破れるかな!?」
アレンビー「私だって女の子なんだから、男の人には負けられないよね!」
キラル「眼は見えずとも、料理法は私の体に刻まれている…簡単にはやらせんぞ」
アンドリュー「アルゴ・ガルスキー! 和解は果たしたが、勝負は勝負! 我が祖国ネオカナダの味に震えるがいい!」
シロッコ「シロップが足りんな」
カガリ「チリソースが足りない」
バルトフェルド「ヨーグルトソースを足したまえ」
タムラ「塩が足りんのですよ!」
セイット「やめてくれええええ!」

ウォン「どう見ますかな、東方先生」
東方不敗「伊達に国を背負ってはおらんということか。愛国心が出ていてよいな」
ウォン「ところで東方先生、なぜこのようなことを思いついたのです?」
東方不敗「グラハムからの注文でな。たまには皆で騒ぐこともいい刺激となろう」
ウォン「私も協力したとはいえ、これだけの食材やメンバーをそろえるには相当の資金が必要なのではありませんか?」
東方不敗「グラハム・エーカーのコネクションは伊達ではないということよ」
ウォン「他に協力者がいるということですか」
東方不敗「左様」
ウォン「しかし東方先生。ファイターたちがこうも料理にくぎ付けでは、宴を楽しむ余裕もないのでは」
東方不敗「参加者全員が満足できるだけの量を作ればいいだけのこと。ガンダムファイターならば造作もない」
ウォン「なるほど…では、我々も用意を始めましょうか。調理はお願いしますよ、東方先生」
東方不敗「デザートか。いいだろう」


ストーカー「白熱! 白熱! 爆熱! 中継されないことが惜しいほどの熱気です!」

屈強なガンダムファイターたちが普通では考えられないようなスピードで料理を作っている。
ミケル「うわぁ…」
別にうひょーでもうひゃあでも構わないが、とりあえず意味をなさない言葉。この光景を見たミケルの感想はただそれだけだった。

550 名前:お月見完結編(中編) 2/5 :2013/11/29(金) 07:34:40.55 ID:???
その頃ルナマリア。どうしてもシン達に近寄れず、一人沈んでいた。
ルナマリア「いーわよいーわよ…どーせ私なんか…」
ルイス「ルナ、ヒリングがもっと盛り上がってるところがあるからそこと合流しようって言ってるけど」
ルナマリア「先いってて…」
ルイス「だめだわね、こりゃ」
セシリー「行きましょう」


  •  ・ ・
どれほどの時間が経ったか。やってきたのはシャギアとオルバだった。
シャギア「いつまでそこで凹んでいるつもりだ? ルナマリア・ホーク
ルナマリア「…何よあんたら。どーせ私には永久にフラグ立たない呪いでもかかってんのよ。神様とかそんなのが
      私の邪魔をしてるのよだから無理なのよ。そーゆー運命なの。普通人の私には変えられない何かがあるのよ絶対」
オルバ「ティファいわく、未来は誰のものでもないらしいよ」
ルナマリア「私は違うのよー、誰かに操られてるのよー、地獄の機械とかそんなのに捕まってるのよー」
シャギア「モニク・キャディラックは君と似たような境遇だったが。彼女はその運命とやらに打ち勝ったぞ」
ルナマリア「も、モニクさんは…特別な力とか、そんなのがあるんじゃないの? オトナだし」
シャギア「彼女と似たケースをもう一つ知っているのだよ、我々は」
ルナマリア「似たケース?」
オルバ「ガロードとティファだね、兄さん」
シャギア「そうだ、オルバよ。ガロード・ラン・ガンダムティファ・アディールの予見した未来を尽く変えた」
オルバ「結局、強い意志があれば、未来や運命なんていくらでも曲げられるんだってね
    あれこれ言う前に行動すること。それが大事なのさ。誰が反対しようとも、ね」
シャギア「君を邪魔する神とやらが存在するのであれば、そいつらにお前の強い意志を見せつけてみせるといい
     どれだけ邪魔をされようとな。反対されることを恐れていては何もできまい」
オルバ「その中に、君の行動を評価する神がいれば…君は報われるかもね。君が幸せになれる未来だって、存在するはずさ」
シャギア「君は、シン・アスカ・ガンダムに好意を持っているのだろう?」
ルナマリア「う、うん…」
シャギア「ならば――何も考えずに走ってみることだ。我が道を行け。ルナマリア・ホーク」
オルバ「ここは、みんなが幸せになることを許された世界なんだよ。君も幸せになる権利がある」
ルナマリア「…わ、わかった。やってみる! ありがと!」


  •  ・ ・
シン・ステラ・マユ「………(超まったりムード)」
ルナマリア「シーン!」
シン「ルナ。どうした?」
ルナマリア「あ、あの、さ。わ、私も混ぜてほしいなー…なんて…」
シン「いいぞ。なあ、二人とも」
ステラ「うん」
マユ「みんなで見たほうが楽しいもんね」
ルナマリア「あ、ありがとう…」
二人っきりでないことには少し不満がないでもなかったが。

ルナマリア(あ…でもなんかこれ…結構いいかも…)
すぐにまったり空間に呑まれ、ルナマリアはしばらくの間幸せ気分を味わったのであった。

551 名前:お月見完結編(中編) 3/5 :2013/11/29(金) 07:35:16.53 ID:???
警察たちの月見会場は大盛況だった。サナリィに始まり、会社ぐるみで月見に来ていたさまざまな人間が集まってきている。
ザンスカール社のクロノクル・アシャーもその一人だった。
ジェリド「よう、クロノクル」
ゼハート「どうも」
友人のジェリドとゼハートだった。他のライバルキャラたちよりもなんだか気が合うということで、頻繁に交流している。
クロノクル「ジェリド先輩にカクリコン先輩。お久しぶりです。ゼハート君も来たのか」
ゼハート「私は一人ですから。先輩たちと違い…」
クロノクル「…そ、そうか。大変だな…ん?」
苦笑しながら辺りを見回し、目に入ったのは。
フラム「ゼハート様…」
わざわざゼハートからは絶対に見えないような場所からゼハートに熱い視線を送っている少女の姿。
クロノクル「………」
カクリコン「相変わらず礼儀正しい奴だな。留年しっぱなしのジェリドなんかに敬語使うことないんだぜ?
      タメ口でいいんだよタメ口で」
ジェリド「うるせえ!」
クロノクル「それで、何か…」
ジェリド「お前、最近出番が多いだろ。ちょっと寄越せ」
クロノクル「はあ!?」
ジェリド「俺と似たような境遇なのになんでお前はこんなに出番が多いんだ!? カクリコンですら出番があるってのに!」
地団太を踏みながらジェリドが言った。面倒くさい先輩だ――素直にそう思ったが、そこは常識人のクロノクル。口には出さない。
カクリコン「ですら、ってどういうことだよ!」
クロノクル「先輩はいまだキャラが固まっていないことに問題があるのでは…」
カクリコン「そーだな。あのガキによく絡むチンピラ、くらいの認識しかないんじゃねーか?」
ジェリド「亜シャアのくせに生意気だぞ!」
どこかで聞いたようなフレーズとともにジェリドがクロノクルにアイアンクローを決める。
クロノクル「いたたたたた! ギブ! ギブ!」
????「くろのくるになにすんのよ~!」
ジェリド「うごあっ!」
女の声? 声の主を思い出す前に。鈍い音が響いてジェリドが昏倒した。
ジェリドの背後にいたのは、人の頭ほどの大きさのある石を手にした金髪の少女。
石には何やら赤いものが付着していたが、クロノクルはあえて無視した。倒れたジェリドが頭から血を流していたが、やはり無視することにした。
カクリコン「お、彼女さんが来たか。それじゃあ邪魔ものは消えるとしようかね。…ほれ、行くぞジェリド」
倒れたままのジェリドを引きずっていくカクリコン
クロノクル「カテジナ!? どうしたんだ!」
カテジナ「くろのくるに会いたくなったの~」
クロノクル「大丈夫か。顔が真っ赤だぞ」
カテジナ「キスしよ~よ~」
クロノクル「か、カテジナ!? ゼハート君、ちょっと助け…いない?」

                             ダン! ダン! ダン!>

552 名前:お月見完結編(中編) 4/5 :2013/11/29(金) 07:35:54.53 ID:???
カテジナ「くろのくるぅ~」
クロノクルは、抱きついてきたカテジナから独特の匂いがすることに気が付いた。
クロノクル「…この匂いは酒か? 誰だ、飲ませたのは!」
ルイス「はぁい。私でーす」
セシリー「デレデレね、カテジナさん…」
クロノクル「ハレヴィ家とロナ家のご息女! なぜこんなことをした!」
ルイス「クロノクルさんがいるのにイチャつけないせいか不機嫌そうにしてたから、つい」
クロノクル「つい、ではない! 未成年者の飲酒は禁止されている! それも未成年が未成年に呑ませるなど…!」
セシリー「すみません…」
ルイス「反省します! だからカテジナさん介抱してあげてください!」
クロノクル「くっ…次はないからな。ほらカテジナ、こっちだ」
カテジナ「あ~い」
セシリー「…ルイス、少しやりすぎじゃなかった?」
ルイス「そう? ま、コップ一杯であんなデレデレになるなんて思わなかったけど」
セシリー「クロノクルさんも言っていたけど、未成年者の飲酒は…」
ルイス「さて、私も沙慈とイチャイチャしてこよっと。じゃね、セシリー」
特に反省の様子もなく、ルイスは手を振りながら人ごみの中に消えていった。
セシリー「はぁ…今度きつく言っておかないと…」
嘆息するセシリー。これからどうしようかと思ったところで、人ごみをかき分けてシーブックがやってきた。
シーブック「セシリー、やっと見つかった!」
セシリー「シーブック。どうしたの?」
シーブック「いや、さ。もっと静かなところで一緒に月見でも…と思ったんだけど」
ちょっと赤くなりながら言うシーブックにセシリーは微笑を浮かべた。
セシリー「いいわ。行きましょう」

553 名前:お月見完結編(中編) 5/5 :2013/11/29(金) 07:36:55.52 ID:???

その少し後。
ハマーン「ジュドー! 今日は逃がさんぞ…ともに月を眺めようではないか!」
ジュドー「げえ、ハマーン!」
オーラを出しながら迫るハマーンから全力で逃げ回るジュドー。
幼少期からの悪戯と荒っぽい遊びで鍛えられた足の速さは一級品である。
ハマーン「なぜ逃げるジュドー! 私はお前とともに月を見たいだけだぞ!」
ジュドー「それだけじゃない気がする! なんか怖いんだよあんた!」
ハマーン「さかしいことを!」
通行人たちをなぎ倒しながら走り回る二人が目立たないのかと言えばそうではない。
もっと目立つものが近くにあった。
マリア「母性を求めるフリット少年! 母は、あなたの義理の母はここですよー!」
フリット「違う! マリアさんじゃなくてマリナさ…あああああ、離してえええええ!」
ルぺ「坊やがいっぱいだなんてさ! かわいい坊やをたくさんはべらせ一緒にお風呂…
   いやむしろお湯と坊やの割合2:8の少年風呂! 夢なんだよ私の!」
デシル「犯罪じゃないか! ああ、ここで脱がそうとするのはやめて! いや! けだものぉぉぉぉぉ!」
ルぺ「あははははははは!」
カロッゾ「実の父を騙すとはお前は本当に悪い子だ…年頃の娘というものは度し難いものだな!」
セシリー「本当に度し難いのは、目的を知ったとたんに私たちの邪魔をしたがる貴方たちでしょう!?」
ザビーネ「シーブック!? シーブックぅぅぅぅ! 今日は家族と月見だと言っていたのに
     どういうことなんだシーブックゥぅぅぅぅ! だめじゃないか嘘なんかついちゃ! お仕置きしなきゃああああ!」
シーブック「く、ザビーネ!」
アンナマリー「ザビーネ! 私と月見をしていたというのになぜここに来る! シーブックやベラがそんなにいいのかい!」
ザビーネ「あのような拉致同然の月見などあるものか!」
見れば、ザビーネの手首に縄と注射針の跡が見えた。何があったのか、シーブックはあえて聞かなかった。
アンナマリー「月見が嫌なら私と一緒に死ねえええええ!」
ザビーネ「感情を処理できん人類はゴミだと教えたはずだあああああ!」
スティング「ステラぁぁぁぁぁ、どこだぁぁぁぁぁ! あの野郎、ステラをどこに連れて行きやがった!」
カオスの一言に尽きる状況に、スティングのストッパー役をせざるを得ないアウルはさじを投げた。月にまで届くほど高く。
アウル「もう止めるのもめんどくせぇ…ほっとくか。ネオあたりが止めるだろ」
ちなみに彼の言うネオ・ロアノークことムウは三人を放ってマリュー・ラミアスと二人で月見をしていたのだが
そんなことなど知る由もなく。混乱はさらに加速していくのだった。
メリーベル「盛り上がってきたね! 私がもっと盛り上げてあげるよ!」
そしてそれにあてられたメリーベルが花火を上げ、ギンガナムのターンXが援護とばかりにビームを飛ばす。
宴の雰囲気にのまれた人々はそれも余興とばかりに楽しんだ。同行してきたスエッソンは何をしているかといえば。
スエッソン「タダ飯! しかもこの味に量ときたもんだ! 喰らい尽くすぜええええ!」
ガルダから一番近くのテーブルに陣取って、運ばれてくる料理を次々と平らげていた。

568 名前:お月見完結編(後編) 1/6 :2013/11/29(金) 20:13:49.42 ID:???
スエッソンが作った料理をどんどん食い尽くしているとの情報を得たガンダムファイター達。
もう少しで自分たちも月見ができると言うところで出てきた強敵に戦慄するが、彼らは諦めなかった。
ドモン「この魂の炎!」
サイシー「極限まで高めれば!」
ジョルジュ「倒せぬ者など!」
ガンダムファイター一同『ない!』
ガンダムファイター一同『俺のこの手が真っ赤に燃える! 勝利を掴めと轟き叫ぶ! ばぁぁぁぁく熱!』
この時、彼らの心は一つであった。愛する者たちと必ず月見をすると。そのためにこの強敵を倒さねばならぬと。
一時的に明鏡止水の境地へと達したファイターたちは、さらなるスピードで料理を作り続けた。
スエッソン「面白ェ、全部食い尽くしてやるぜ!」
出てくるペースが上がったことに少々驚きながらも、そこは大食漢スエッソン。待っていたとばかりに料理の山へと飛びついた。

そして一時間後。
スエッソン「ぐ…くそ…」
立っていたのは、多くのガンダムファイターたちであった。食べても食べてもどんどん出てくる料理に、さしものスエッソンも勝てなかったのだ。
ドモン「どうした! もう終わりか!」
スエッソン「ま、まだだ…まだ終わってねえ…」
ドモンの挑発に、再び立ち上がろうとするスエッソン。再び闘志を燃やし料理の山へと挑もうとする彼を、ギンガナムが止めた。
ギンガナム「待て。無様に吐いて祭りの邪魔などするのは許さん! しばらくミンチになっていろ!」
気付けば、スエッソンの真上にターンXの脚部があった。
スエッソン「ぐ、ぐふっ…そ、それが御大将のやる…おうぇっ…ことかっ…!」
限界寸前の胃袋を抱えて避けられるはずもなく。ターンXの足から放たれたビームを受け、スエッソンはあっけなく吹き飛んだ。

569 名前:お月見完結編(後編) 2/6 :2013/11/29(金) 20:15:30.27 ID:???

ディアナ「私たちの故郷をこのような視点でみられるとは…よいものですね」
ディアナたちは周囲の喧騒もどこ吹く風という様子で、宴の会場のど真ん中にビニールシートを敷き優雅に月見を楽しんでいた。
ボディガード代わりのディアナ・カウンター達(主にハリー)やロランが放つ強烈なプレッシャーのおかげか、彼女らの周囲にだけ人がいない。実に静かだ。
ハリー「はっ」
ロラン「幸せだなぁ…ディアナ様と一緒にお月見ができるなんて…」
うっとりしているのはロラン。ディアナ、キエル、ソシエが月見をするということで、給仕として彼女らに同行しているのだ。
ソシエ「ロラーン! 何してるの! 飲み物足りないわよ!」
ロラン「は、はい! ただいま!」
キエル「ロランもソシエもディアナ様も本当に楽しそう。この場を設けた甲斐があったと言うものですね」
実に楽しそうに笑うキエル。その笑い声がリボンズ・アルマークやフロスト兄弟が悪巧みをするときに出すそれに似ていることについて、ハリーは特に触れなかった。
グエン(くっ…せっかくローラと月見ができると思えば、なぜよりにもよってリリ嬢がいるのだ!)
グエンはリリ・ボルジャーノが正直、苦手だった。嫌いではないが、いないでほしいような時に限ってそばにいる。
しかもボルジャーノ家とは懇意にしているため無碍にもできないし、あまり羽目を外し過ぎて余計な噂を流されては困る。
グエンとしてはロランがいればそれでいいとはいえ、愛しいロランに苦労をかけさせるわけにはいかない。
リリ「不機嫌そうですね。私と一緒に月を見るのがそんなに嫌なのですか?」
グエン「そんなことはありませんよ」
リリ「なら、行きましょうか。私たちがいてはロランたちもくつろげないでしょう」
グエン「え? い、いやしかしですな。一度腰を落ち着かせてしまっては…」
リリ「では私が運んで差し上げましょう」
言うと、リリはグエンの襟をつかんだ。
グエン「いけませんな。ボルジャーノ家のご息女とあろうものが、他人の襟首をつかむなど」
リリ「今の時代、女は強くなければいけません。それこそ男を引きずるくらいの勢いでなければならぬと」
その細腕からは考えられないほどの力でグエンを引きずりはじめる。名家の子女らしからぬ振る舞いに憤慨するも
ここで騒いではディアナ・ソレルやロランに醜態をさらすことになる。色々なものが邪魔をして、何も抵抗できないままグエンは引きずられていく。
グエン「な、ちょ、本当に引きずるのですか!? 女性の身であってなぜこのような力が…
    ローラ! 助けてくれ! ローラぁぁぁぁぁ!」
ロラン「幸せだなぁ…」
しかしロランと引き離されては意味がない。仕方なく助けを求めるが
この上ない幸福に浸っているロランにグエンの声など届くはずもなく。哀れグエンはそのまま引きずられ、人ごみの中へと消えた。

570 名前:お月見完結編(後編) 3/6 :2013/11/29(金) 20:17:12.83 ID:???
ソシエ「ロランったらデレデレして、みっともない!」
ロラン「そ、そんなことはないですよ! ディアナ様にデレデレするなんてなんと恐れ多い…」
顔を真っ赤にして否定(あまり否定になっていない気がするが)するロラン。この態度がソシエとしては面白くない。
使用人のくせに生意気だ。
ソシエ「ふんっ!」
キエル「本当に面白いですね。ロランたちは」
その光景を見て、キエルはくすくすと笑っていた。

フィリップ「いやあ、盛り上がってんなぁ! どんどん人が寄ってくるぜ!」
サマナ「ちょっと盛り上がりすぎじゃないんですかね…」
凄まじくカオスな光景になっている。
フィリップ「ユウとモーリンちゃんも来ればいいのにな!」
サマナ「あの二人は…」
ユウ(呼んだか)
フィリップ「うお! いたのかユウ!」
ユウ(あまりに騒がしいので気になった)
フィリップ「そ、そうか…」
サマナ「あ、あのモーリンさん…」
モーリン「後でシメます」
サマナ「怖いです。笑顔でそんなこと言うところがほんと怖いです」

シロー「お、盛り上がってるなあ!」
エレドア「隊長、来たんスか!」
ミケル「しかもカノジョまで連れて! どうしたんですか?」
シロー「どうしたもこうしたも…来ちゃいけないのか?」
サンダース「とんでもない!」
アイナ「………」
ノリス(…申し訳ありません、アイナ様)
小声でノリスがささやく。お月見の計画はギニアスに内密にしておいたはずだが、どうやってか察知したらしい。
当然のごとく邪魔され、ムードも台無し。仕方なくこちらと合流することにしたのである。
アイナも小声で答えた。
アイナ(ノリスのせいではありませんよ。それで、兄はどうしました?)
ノリス(ギニアス様はミンチにしたあと小分けにして湖に沈めました。少なくとも今宵は復活できないでしょうが…)
ギニアスはこれまで幾度もミンチにされているため、それくらいやらなければ簡単に復活してしまうのだ。
むしろ、それほどやっても一晩もすれば復活するのだから恐ろしい。
アイナ(よいのです。…よいのです)
ノリス(アイナ様、お強くなられて…)
カレン「ほら、二人とも呑みなよ! 酒も料理もなぜかいくらでもあるんだ!」
シロー「ははは…ほどほどにな」

571 名前:お月見完結編(後編) 4/6 :2013/11/29(金) 20:18:05.65 ID:???

場所は変わって、再び森の中。二つの影があった。セレーネとスウェンだ。
セレーネ「うん、やっぱりここが一番いいわね。月がよく見える」
ここはセレーネがあらゆる手段を講じて調べ上げた、もっとも星空がよく見えるポイントである。
スウェン「セレーネは月も好きなのか」
セレーネ「月だって星には変わりないわ。満月っていうのも最高ね。普段隠れている部分も、よく見えるわ
     さて、後は望遠鏡の組み立て…と」
スウェン「…なるほど。ところでなぜ俺を誘った?」
セレーネ「一人で見るのもなんかつまんないと思って。嫌だった?」
スウェン「そんなことはないが、俺のようなつまらない人間より、ソルやエドモンドでも誘った方が楽しいんじゃないか」
セレーネ「そうかしら。趣味の合わない人間同士で意味もなく盛り上がるより、同じ趣味を持つ人間と一緒の方が楽しいわ」
スウェン「そういうものか」
セレーネ「そういうものよ。少なくとも、私はね」
スウェン「なら、構わない」
セレーネ「そうそう。素直が一番。…さぁて、と」
セレーネは周囲を見渡し――そばの林に目を止めた。
スウェン「どうした?」
セレーネ「そぉい!」
スウェンの問いには答えず、セレーネはそばにある大きめの石を拾いあげ、林に向けて勢いよく投げた。
???「ぐわっ!」
鈍い音と男の悲鳴。それに続くように林の中から大きな音がする。木の上から落ちたようだ。
セレーネ「ネズミも仕留めたし、そろそろ始めましょうか。…スウェン、もっとこっち寄りなさい。望遠鏡、使うでしょ?」
スウェン「あ、ああ…」
スウェンは相手が何者か気になったが、セレーネはわかっているらしかったが、何もなかったかのように行動している。
それを見て、とりあえず危険はないと判断。月見に興じることにした。

???「セレーネ…やるようになった…!」
土と木の葉や枝にまみれて、彼女たちを監視していた男は呟いた。


574 名前:お月見完結編(後編) 5/6 :2013/11/29(金) 21:05:30.85 ID:???

宴はますます盛り上がる。遠くからそれを眺めている者たちがいた。
ジャミルとルチル、そしてサラである。トニヤが気をきかせたのか、フリーデンの他のメンバーたちは違う所で月見をしている
ルチルとサラの二人を残したのは善意に包まれた悪意か、あるいは面白いからか。どうせ後者であろうことはサラにも容易に想像がついた。

ジャミルが静かに月見を堪能している中、二人は静かに火花を散らしていた。どちらが先に動くか。相手をどう牽制するか。
女と女の睨み合いである。――沈黙を破ったのは、その中の誰でもなかった。
アムロ「やっぱりここにいたか」
アムロだ。なぜか全身擦り傷や泥、木の葉や枝にまみれている。
サラ「あなたは…」
ルチル「あら…アムロくん。久しぶり」
ルチルとアムロは面識がある。学生時代、ルチルはジャミルに会うために学校に頻繁に来ていたのだ。
ジャミルと友人の間柄であったアムロと面識があるのは当然と言える。
アムロ「もう子供じゃないんだから、くん付けはよしてくださいよ」
アムロは苦笑しながら付け加える。まさか、あの年上のお姉さんが、今は年下。妙な気分だった。
ルチル「そうね。ごめんなさい」
ジャミル「よくここがわかったな」
アムロ「学生時代、よく連れて来てくれたじゃないか」
ジャミルとアムロは先輩と後輩の間柄だった。学生のころのジャミルはもっとアクティブな性格で
友人をあちこちに連れまわしていた。この"ひみつのポイント"も、その時に彼が気に入った友達に教えていたものだ。
ジャミル「そうだったな…何か用事か?」
過ぎた日々を思い起こしたか、少しさみしげな笑みを浮かべてジャミルが聞いた。
アムロ「特にはない。なるべく人目につかないところで静かに月見をしたかっただけさ」
ジャミル「…また女か?」
アムロ「ちょっと今回は、うまく調整できそうになくてな…」
なにぶん会社ぐるみで月見に行っている人間が多いのだ。下手に一人に絞って他の人間に見つかったら恐ろしいことになる。
ジャミル「ほどほどにしておけよ。刺されても知らんぞ」
アムロ「お前に言われたくない」
ジャミル「どういう意味だ」
アムロ「知ってるか、自覚がないってのが一番面倒くさいんだ」
ジャミル「意味の解らないことを言う。ところで、どうしてそんなにボロボロなんだ? まるで木から落ちたようじゃないか」
アムロ「妹が意外とやるようになってね」
セレーネがスウェンと出かけるというので、うまく行っているか見守りに行ったのだ。セレーネの勘の鋭さは想定外だったが。
ジャミル「よくわからんが…まあ、いいか。君の妹とも久しく会っていないな。元気にしているか」
アムロ「ああ。男はいないんだけどな」
ジャミル「いたらいたで複雑だぞ」
ティファのことだろう。ガロードの嫁に行くことがほとんど確定しているようなものなので
彼女を養女として引き取っているジャミルの心境は複雑だろう。
アムロ「その複雑な気分。味わってみたいものさ」

575 名前:お月見完結編(後編) 6/6 :2013/11/29(金) 21:07:49.50 ID:???
ルチル(あれ? もしかして私たち)
サラ(お邪魔だったり…するのかしら)
トニヤ「サラもルチルさんもこっち来なよー! ロアビィ達も来てるって!」
サラ「ひとまず…休戦、ということでよろしいかしら」
ルチル「いいわ…なんだか疲れちゃった」
サラ「行きましょ…」

ルチル(でも、あの二人仲がいいのね。何かしら…この感覚
    男性同士が仲良くしているのを見ているだけでなんだか満足できそうな気g)
新たな芽生えというのか。何かが目覚めようとしているルチルの頭に、何かがぶつかった。
ルチル「わひゃっ!」
サラ「ルチルさん!?」
ジャミル「どうした!」
ルチル「いたた…何か投げられた…」
投げられたものを見やると、ぶつけられた衝撃でパーツが取れかかったガンプラだった。
MGのガンダムヴァサーゴ。フロスト兄弟がまた何かやったのだろうか
ジャミル「大丈夫か、ルチル」
ルチル「大丈夫…でもちょっと傷になってるかも…」
ジャミル「ちょっと見せてみろ!」
サラ「所長。女性の体をみだりに触ってはいけません。私が見ておきますから、会話に戻ってください」
慌てて傷を見ようとするジャミルをサラが遮った。
ジャミル「む…す、すまない。では、任せたぞ」
サラ「わかりました。…さてと」
ジャミルが元の場所に戻ったことを確認し、ルチルの方へと振り返る。案の定と言うか、不満そうな顔をしていた。
サラ「不満そうな顔しないで。一時休戦でしょう。うん、傷もないみたい…けど頭にぶつけたんですよね
   何か変わったことは?」
ルチル「特にはない…と、思う。ぶつけられる前に何か考えてた気もするけど」
サラ「その程度なら問題ないわね。さ、行きましょう」
ルチルに手を貸し立ち上がらせて、二人はシンゴ達のところに歩いて行った。

576 名前:お月見完結編(後編) 7/6 :2013/11/29(金) 21:09:17.55 ID:???
その頃、近くの木陰に二つの影があった。
シャギア「うまく覚醒を阻止できたようだな、オルバよ」
オルバ「そうだね、兄さん。…腐ったルチルは向こうだけで十分だよ」
フロスト兄弟である。空腹に耐えながらやってきたら、何やらおかしなものに目覚めかかっていたルチル・リリアントを発見。
それを阻止したのだ。
シャギア「せいぜい、ここでは違うキャラを目指すのだな。ルチル・リリアント」
オルバ「でも…これじゃ彼らの前には出られないね」
シャギア「…そうだな。困ったものだ」
よりにもよって投げたのがMGガンダムヴァサーゴだったのがまずかった。怪しまれるに決まっている。
オルバ「…お腹減ったね」
シャギア「ああ…む?」
こつん、と。シャギアとオルバの頭に何かが当たった。
紙に包まれたその中にはいびつな形をした団子が入っていた。
シャギア「月見団子…というやつか? それにしてはいびつな形だが」
オルバ「一体、誰の贈り物だろうね?」
シャギア「知らんな…まあ、ありがたくいただくとしよう」
誰が作ったのかわからないはずの月見団子を平然と食しながら、二人は月を仰いだ。
月も、意外と悪くない。美しい月を見上げ、二人は同じことを考えていた。


その後も宴は大いに盛り上がり、他の月見客や近くを通りかかった一般市民たちも巻き込んだ大宴会へと発展した。
盛大に騒ぎ、盛大に飲み、ある者は友情を交わし、またある者は対抗意識を燃やす。
長い歴史の中で幾多の派閥に分かれて醜く争いを続けていた者たちが宴に興じているその姿を見て、月は何を思うだろう。
月は何も答えない。この世の始まりから今までいつもそこにあった月は、微笑むように優しい光を放っていた。

577 名前:通常の名無しさんの3倍 :2013/11/29(金) 21:32:28.30 ID:???
市民と警察の距離を大きく縮めたこの騒ぎは、喧しいという批判が混じりながらも多大な反響を呼んだ。
市民との交流に大きく貢献したとして、この宴の主催にかかわった者たちにはもれなく
宴に呼ばれなかったハロ長官からビックリハロ(という名のバグハロ)をプレゼントされたという。


ところで、こういう祭りごとの時には必ずといっていいほど現れるシャアだが、結局会場に姿を見せることはなかった。
この時に何をしていたかと言えば――


シャア「ナナイ、今夜は満月だそうだが」
ナナイ「そうですか」
シャア「…だから、今日はちょっと早めに仕事を切り上げて――」
ナナイ「だめです。明日の朝までに終わらせなければならない仕事が山ほどあるのですから」
そう言ってナナイが示したのは書類の山。最近アムロ達にちょっかいを出して回っていたため、大量の仕事がたまっていた。
どう見積もっても夜中まで終わりそうにない。
シャア「これでは道化だよ…
ナナイ「自業自得です。しっかりとやってください。仕事が終われば…」
シャア「なんだね?」
ナナイ「なんでもありません」
シャア「そうか」
一人の変人から、大企業の社長の顔つきに戻って仕事を再開する。いつ見ても素晴らしい手際だ。
仕事が終わったら、近しい者たちで集って会社の屋上で月見をする手はずになっている。
シャアがそれを知るのは、もう少し後のことだ。

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最終更新:2014年12月17日 22:21

*1 誰?という反応があったので補足:"コロニーが落ちた地で"に登場したマイクことマクシミリアン・バーガーです